駅は、いつもの様に混んでいた。
電車が入って来る。
電車は、窮屈そうに奈美を含む人々を飲み込んで、目的地へと向かう。
奈美は、その窮屈な空間にいる苦しさに耐えながら毎日出社している。
「こんな事なら、もう少し田舎で就職した方が楽だったのかしら…」
そう思う事もしばしばだが、都会の華やかな空気を知ってしまった今では、田舎に住むのも勇気がいる。
「隣の芝生は、青く見えるものなのね…」
奈美は、心の中で溜め息をついた。
『っ!!』
奈美の身体が強張る。痴漢だ。
『ぁ…、ゃ…』
奈美は痴漢が好きだ。
然し、自分が嫌らしい女だと周りの人に気付かれるのが怖くて、やはり拒んでしまうのだ。