背中から抱きついて持ち上げた細く小さな身体は硬直しながらも小刻みに震え、顔の近くに寄せた可憐な美しい顔は蒼白で唇を震わせていた。あまりの光景に目を見開いたまま、怯えた表情のヴィーナスの顔を脇からのぞきこんだヴァルカンは、口元をにやりと歪ませた。
ヴィーナスの更なる恐怖を堪能した。
「自分からこの部屋にやってきたのですからね、この部屋で存分に御もてなし致すことにしましょう」
ヴァルカンの声に、ヴィーナスの怯えた瞳がゆっくりと瞼の中だけで動き、横目でヴァルカンを見据えた。
「いっ、いやあぁぁぁぁあぁあああ!」
「おうっ」
いきなりヴィーナスが渾身の力を出して暴れ始めた。一瞬ヴァルカンはその力に押され体を抱きしめる腕を放しそうになったが、すぐに力を込めた。
「――――いやああ! 放してぇぇえ! 放してくださいぃぃぃぃいい!!」
それでも必死で暴れるヴィーナス。だが、ヴァルカンはその暴れる様をも楽しみに変えていたのである。
「はなしてぇぇええ!」
必死に哀願するセーラーヴィーナス。すでに彼女は誇り高き月の王国の戦士の姿ではなく、一人の少女のように襲い来る恐怖に怯えていた。
ヴァルカンは、抵抗するヴィーナスを部屋の隅の壁に連れて行く。その壁には高い位置から鎖で吊るされた二つの枷があり、床には左右に開いた位置から伸びた鎖につながれた枷があった。四つとも妖しい光沢を見せる黒い革製だった。
そして、そのヴィーナスの丁度胸の辺に、二本に枝分かれした細い金属製の大きなフックが飛び出ていた。それは半円のような形で、壁に近いところでは急な弧を描きながら、下向きに弧を伸ばし、一本が二本に枝分かれして、左右に徐々に拡がりながら、ゆるく弧を描いて上向きに、斜め外側に向かって伸びているフックであった。
ヴァルカンは、ヴィーナスの身体を、壁を背にするように向けなおすと、高い位置から吊るされた二つの枷をヴィーナスの両手首に嵌めた。両腕が万歳する形に頭の上に伸ばされる。
「いやぁ! 止めてぇぇえええ!!」
ヴィーナスは身体を揺すり、ジャラジャラと鎖を鳴らし必死で拘束から逃れようをした。
壁から突き出る妖しいフックがヴィーナスの脇の下に当たっていた。
ヴァルカンは、にやりと笑みながら、今度は床に転がる枷をヴィーナスの左右の足首に嵌めたのである。
「な、何するのぉぉおお! やめてぇぇえ!!」
四肢を拘束されたヴィーナスの懇願の声を聞きながら、壁の脇にある壁と一体となったボタンを押した。
ジャラジャラと音がして、高所から釣り下がった鎖が巻き上がっていく。
――――中略――――
「おねがい………です………やめて………くださ――――いぃぃ」
哀願の言葉をかけても、男が止めるはずもなく、身体の疼きと甘美な刺激は、ますますヴィーナスの誇りを犯していったのである。
「ぱっくりと開かれましたよ、ヴィーナス。これなら十分でしょう」
ヴァルカンの声にも、ヴィーナスは返事を返す気力さえなくなり、身体の疼きに悶え、荒く呼吸をしながら、火照る身体を震わせているだけだった。