ヴィーナスは最初、彼の姿に気付かなかった。
体中に感じる激しい凌辱の刺激に、朦朧とした意識の中でさえ、その責めの苦痛は全身を襲っていたのである。
すぐに理解するのは無理があった。
だが、次第にその姿が涙に濡れたかすんだ瞳の先に、幻ではないと消えずに残っていると、彼が誰だか理解し始めた。
(ア、アルタリオス! 助けてぇぇ!!)
ヴィーナスの視線の先に立つ戦士の姿に、この凌辱から抜け出せる術が残っていたという希望が沸いてきた。
この月の裏側ムーンバックヘルに一緒にやってきたアムールナイツの戦士の一人、火星出身の大柄な男アルタリオスが、目の前に立っていたのである。
アムールナイツは月の王国の勇敢な戦士達であり、月の王国への忠誠や、セーラー戦士達との信頼関係も信じるに値する実直で紳士的な戦士達だとヴィーナスは思っていた。
昨日この部屋に連れ込まれてから、今日まで姿を見せない自分を探していたに違いないと思い、そして、この惨劇の現状を知って、自分を嬲り続ける男から、自分を救い出してくれるに違いないと、ヴィーナスは苛まれ続ける中で、わずかばかりの希望を見出したのである。
(助けてぇ! アルタリオス!!)
ヴィーナスは必死にアルタリオスに助けを求めた。その懇願の声が、口枷によって上手く伝わらなくても、アムールナイツの戦士ならきっと自分の意図を汲んでくれる、この現状を見れば、必ず助けてくれると信じていたのである。
たとえ、アルタリオスの前で無残な姿を晒していても、ヴィーナスは助けて欲しい一心で、何度もアルタリオスに呼び掛けた。
アルタリオスの登場で、さしものヴァルカンも虚を突かれたのか、ヴィーナスを責める動きを止めており、ヴィーナスはアルタリオスへの懇願に集中できたのである。
(お願いぃ! 助けてぇぇ!! もう、こんなの嫌なのぉぉ!!)
ヴィーナスは縋りつくようにアルタリオスに視線を送り、息継ぐのを忘れるほど、何度も何度も懇願の声を出した。
だがしかし、アルタリオスはじっと立ったまま、その視線をヴィーナスに向けていた。
「アルタリオスか………」
ヴァルカンの声が頭の方から響いた。低くくぐもった声だ。
その声にアルタリオスに対してどんな感情が含まれているのか、ヴィーナスには分からなかったが、ヴィーナスを解放する気がないと言う雰囲気だけは読み取れた。
果たしてセーラー戦士である自分でさえ勝てないヴァルカンに、アムールナイツの将軍クラスの一人でしかないアルタリオスが、勝てるのだろうかと不安が広がってくる。
しかし、それなら他の仲間、この地にやってきた残りのアムールナイツに応援を求めに行って欲しいし、クイーンセレニティへの連絡を入れても欲しかった。
その間だけなら、何とかこの凌辱者の間の手から、耐えてみせるという淡い誇りも持ち合わせていた。
いずれ、アルタリオスがここにきた事で、すぐにでも解放され、残虐な凌辱者は処罰されるだろうと期待した。
だが、ヴィーナスの期待と淡い希望ははかない砂上の楼閣であった。
「お楽しみの間、お邪魔して申しわけありません、ヴァルカン様」
アルタリオスの声は、アムールナイツの上司であるはずの自分を救うものではなく、背後で体を密着させて、体の中に凶悪なモノを刺し貫いていた男への、謝罪の言葉だった。
「ああ、かまわんさ。ずいぶん遅かったな」
それに平然と返答するヴァルカン。
凌辱の罪の現場を見られた者の反応ではなかった。
「そうですか、来る前にちょっと表から連絡がありましてね」
「連絡?」
「アルスからです。アルスたちは明日朝一番にこちらに付きます。明後日にはアムールナイツ総勢四十二名勢ぞろいするという事です」
「ほう、明後日にはか、意外と早いな」
「アルスたち将軍クラス、残り四名は明日くると言う事です」
「そうか」
それはアムールナイツたちの業務報告みたいなものであった。
だが、それを何故直接の上司であるはずのヴィーナス本人にではなく、それを無視するように、凌辱者に報告するのか、ヴィーナスはいっこうに自分を助けようとしないで、関係ないはずのヴァルカンに報告をするアルタリオスの真意が分からず戸惑っていた。
そして、アルタリオスはその視線をヴィーナスに向けた。
(ア、 アルタリオス………な、なんで?)
その目は、異様な光を放ち、決して聖なる月の王国の戦士が見せるような、強い輝きではなかった。
まるで、陵辱者ヴァルカンと同じような、自分の体を値踏みするような、それでいてどこか睨んでいる目だった。
「ヴィーナス、俺が助けに来たとでも思っているのか? 生憎だったな」
その上、アルタリオスの口から出た言葉は、ヴィーナスの希望と期待を一瞬の内に崩れさせた。
その口調は上司として敬うものでもなく、年上の男が苦しむ年下の少女を労るのでもなく、明らかに恨みのこもった小ばかにした口調だった。ヴァルカンに向かって言っていた丁寧な言い方とはまったく正反対の、蔑んでいるような威圧感を含んでいた。
「しかし、俺はこんな小娘に負けたのか………いくらセーラー戦士だからって、ついこの間までは、お姫様だったって言うのに」
アルタリオスは悔しそうに言った、
代替わりしたばかりの頃、ヴィーナスはアムールナイツとの顔合わせをかねて、模擬戦闘を行なったことがあった。その時、ヴィーナスは、アルタリオスを始め、アムールナイツの将軍クラスにことごとく打ち勝ったのである。それによって、アムールナイツたちは、今のヴィーナスを自分達の上司として認めるに至ったのである。
元々金星の王女時代においても、第二王女の自分が後々セーラー戦士になるかも知れないと考えて、訓練は怠らなかったヴィーナスが、更に歴代セーラーヴィーナスの知識を持つオーブの力を受け継いだのである。
いくら代替わりしたばかりとはいえ、セーラー戦士とアムールナイツとでは、本来持っている体格体力面はともかく、基礎的な戦闘能力の差は歴然であったのは常識でもあった。
しかも、アルタリオスは力技で押してくるタイプで、それほど機敏性もなければ、特殊能力の攻撃性も、ヴィーナスにとっては組み易かった一人でもあったのである。
「しかし、こうなっちゃ、お前もたんなるガキだったんだな――――まあ、いいや」
そう言うと、アルタリオスは口の端を歪めて不気味な笑みを浮かべ、着ている服を脱ぎ出した。
(なっ、なんなの!? うそっ――――いやぁぁああ!!)
服を脱ぎ出したアルタリオスの異常な言動に、混乱していたヴィーナスは、いきなり体を持ち上げられ、膣からヴァルカンの極太ペニスが引き抜かれた。
「アルタリオス、さっきまで俺のが入っていたが、かまわんだろ?」
「ええ、構いませんよ。俺もたっぷりとこのメスの中に出してやりますよ」
ヴァルカンは、ヴィーナスを抱えたままベッドの上で膝立ち姿勢になった。
「ひふぅぅぅ!」
背後のヴァルカンに抱えられた、緊縛姿のヴィーナスの正面に、服を脱ぎ捨てたアルタリオスが近づいてきた。
股間にはヴァルカンに負けないほどの太い凶悪な肉竿が剛直していた。
それが何を意味しているのか、ヴィーナスにも分かった。
(いっ、いやぁ、なんでっ、どうしてぇぇぇ!)
アムールナイツのアルタリオスが何故、ヴァルカンと共に自分を犯そうとしているのか、ヴィーナスには分からない。
たとえ模擬戦闘に負けて、個人的に自分を恨んでいても、アムールナイツとセーラー戦士の信頼関係は確かなはずで、アムールナイツは実直な戦士のはずだった。
こんな月の王国の忠義に反するような背徳の行為に、アムールナイツが加虐者として加わる事などあり得ないはずだった。
「ふん、事情がまだ飲み込めていないようだが、まあ、その辺はいいや。こんな小娘でも、一応女なんだからちゃんと奉仕してくれよ」
アルタリオスが鼻を鳴らしながら、なおヴィーナスに近寄ってくる。
(いや、来ないで、お願い………アルタリオス………正気に………えっ? ひいぃぃい!!)
ヴィーナスが、アルタリオスに向けていた混乱と恐怖に苛まれていると、いきなり菊門にペニスの感触が当たった。
そしてそのまま、ズブリとヴィーナスの肛門の中にヴァルカンの極太ペニスが差し込まれてしまった。
――――中略――――
アルタリオスの声を沈みかけた意識の中で聞いたヴィーナスは、体の中に荒れ狂う激痛に襲われながらも、困惑の意識が芽生えた。
(なっ、なにを………他の………奴ら? 認める………なんで? どういうことなの………)
闇の中で聞こえる言葉を理解できぬまま、ヴィーナスは、体の中の二つの穴の奥に、煮えたぎるような感覚を受けてしまうほど、凶悪な粘液を放出されてしまった。
(い、いやぁぁぁぁああああああ!!)
そして、ヴィーナスの意識は、その現実から逃れようとするかの様に、暗い闇に中に落ちて行った。