薄くらい部屋の中で、陵辱から解放されたヴィーナスは、傷つき疲れた体に休息を与えるように、ベッドの上で眠りについていた。
だが、眠りについてもなお、心の平穏はヴィーナスに訪れなかった。
時折、うわ言のように哀願を繰り返し、小さく悲鳴を上げては、閉じた瞼から涙を零していた。
ヴァルカンという陵辱者に戦いで破れて、体を弄ばれ続けたヴィーナスが、ようやく解放されても、この監禁部屋に閉じ込められたままと言う事実は、恥虐と被虐のおぞましい陵辱がまだ終わっていないと言う事を物語っていたのである。
その事実が、ヴィーナスの心に重く圧し掛かり、睡眠を貪るかのように眠るヴィーナスをも苦しめていた。
視界に薄くらい天井が飛び込む。
虚ろに目を開けたヴィーナスは、眠りのおかげで大分体の痛みや疲れが取れてはいたが、それでも完調には程遠く気だるさが残る体と、陰湿な部屋の空気、そして視界に移る薄くらい天井の光景に、今までの事が夢でもなく、解放もされていない事を、理解するのに十分だった。
「うっ………」
自然と再び涙が零れそうになる。
「ようやくお目覚めですか? ヴィーナス」
泣き出しそうになったとき、悪魔のような響を持った男の声が、耳に飛び込んできた。
「あっ!」
その瞬間、体を硬直させたヴィーナスだったが、すぐに弾かれたように体を起こす。
再び現れた男に対して、また陵辱を受けるのではないかという恐怖がヴィーナスの脳裏をよぎり、出来るだけ体を小さく丸めるように、抱くようにベッドの上で壁に寄りかかった。
「お、お願いです………もう、許して………」
きつく目を瞑り、立てた膝に顔を埋めて、涙声で哀願する。
「お願いです、許してください、ですか? あなたはそれ以外言えないのですかな」
しかし、ヴァルカンの口調は丁寧だったが、意地悪く楽しんでいるようだった。
「お願いです………」
それでもヴィーナスは、許しを乞う言葉しか出てこなかった。今のヴィーナスは、まさに目の前の陵辱者の情けに訴えるしか、この苦境から抜け出す事は出来なかったのである。
「ふむ、そんなに私との交わりがお嫌ですか」
ヴァルカンの呆れた口調に、ヴィーナスは何も言えなかった。
嫌いなのは当然であったが、そうだからと言って、頷いたり肯定の意思を表してしまうと、それに対して目の前の陵辱者が、どう変貌してしまうのか分からずに、ヴィーナスは肩を震わせて恐怖に耐えているしかなかった。
「まだ一日しか経っていないのですよ、予定では二十日間でしたね。そんな事で、これからの性処理道具としての試練に耐えられるんですか?」
ヴァルカンの言葉に、ヴィーナスは驚愕した。
あの悲劇の陵辱劇からまだ一日しか経っていない上に、それが後数日、つまりアムールナイツとの合同訓練の期間である二十日間も、同じような事が繰り返されるというのである。
「そ、そんな………ど、どうして………」
その事実がヴィーナスを更に不安に駆らせ、なおさら恐ろしさが込み上げてきてしまった。
「………後々分かりますよ。それに、これにはあなたの意思など、関係ないのですからね」
ヴァルカンは口元を歪めた。
「――――!」
それが合図のように、部屋の中央にいたヴァルカンが、ヴィーナスのいるベッドに近づいてきた。
ヴィーナスは一気に緊張が走る。
「い、いやぁあ!」
ヴィーナスはベッドの上でヴァルカンから逃れようと立ち上がって、端の上へ駆け出し、ベッドから降りる。
しかし、ベッドから降りても、ヴィーナスは出入り口のない監禁部屋の中では、どこにも逃げ場所はなかった。ただ一つの扉は、禍々しい拷問部屋へ続くだけなのである。
「こ、来ないで――――」
部屋の隅に身を寄せて、震える体を抱える怯えた表情を向けるヴィーナス。
ヴァルカンは、そのヴィーナスの怯えの感情を愉しみながら、ゆっくりと近づいて行く。
「ふふふ、私はあなたの初めての男なのですよ、そう邪険にならずとも良いではないですか。あなたの中はとっても気持ちよかったのですよ、だから何回もしたんですよ」
昨日の陵辱をわざと言う。
これから受けてしまう陵辱に激しい不安と恐怖を感じているヴィーナスへ、更に昨日の陵辱を思いださせて羞恥心を煽り、その時のヴィーナスが受けた心と体への苦痛と苦悶を思いださせて、ヴィーナスをとことんん陥れようとする。
本来のヴァルカンの最大の至福こそ、ヴィーナスの陵辱への悲哀の感情だった。
「い、いやぁぁああ!!」
ヴィーナスは、ヴァルカンの言葉に耳を塞いで頭を激しく振り、涙を撒き散らした。
「あなただって何度もイッタではないですか、嫌だ嫌だといいながらね。ずいぶん気持ちよさそうな顔していましたよ。ふふふ」
ヴァルカンが更に追い討ちをかける。
「違う、違うぅぅうう!!」
ヴィーナスは激しく声を上げる。ヴァルカンが近づいてくるのを感じ取って、横に走りヴァルカンの届かない位置に来ると、部屋の反対側に逃げる。
「そういつまでも逃げられるものではありませんよ。さあ、昨日はあなたの素晴らしい体に見惚れてしまって、普通の性交渉しか出来ませんでしたから、今日はちょっと変った遊び方をしましょう」
ヴァルカンは、逃げるヴィーナスをわざと捕まえようとせずに、ヴィーナスの心に更なる恐怖を与える言葉を発する。
「か、変った………遊び………かた………?」
ヴィーナスにとっては、未知なる陵辱の方法に、ますます顔を蒼ざめさせる。
「そうですよ。まずあなたのその切れ切れのコスチュームを全部剥ぎ取り、全裸にした上で、身動きできないように、体をロープで縛りましょう」
ヴァルカンはこれからどういったやり方で、ヴィーナスを弄ぶか、当のヴィーナスに教える事で、その陵辱の方法への恐怖を煽っていた。
「………」
全裸にして体を縛ると言われたヴィーナスは、言葉さえだせない程動揺し、恐怖に苛まれたまま、奈落の底に落とされる寸前のような哀れな表情で、頭を弱々しく振る。
ヴァルカンの目にもはっきりと分かるほど、ヴィーナスの肩は震え、白く細い脚がガクガクと膝が踊っていた。
もはや逃げようとさえ出来ないほど、ヴィーナスは怯えていた。
「あっ――――」
恐ろしさに震えあがるヴィーナスの正面に、ヴァルカンが来たとき、驚いたように顔を上げ、小さな声を漏らした。
上目遣いで怯えた瞳を向けるヴィーナスに、見下しながらヴァルカンはにやっと笑い、硬直したヴィーナスの胸に右手を差し出した。
「――――い、いやぁああああああ!」
ヴァルカンの右手が、ヴィーナスの胸のブローチを掴むと、ヴィーナスは弾かれたように甲高い悲鳴を上げた。
ヴィーナスの悲鳴と同時に、ヴァルカンは右手に掴んだヴィーナスのブローチをコスチュームから引き剥がした。
その瞬間、ヴィーナスの全身が、眩いばかりの黄金の閃光に包まれた。その輝きは薄暗い監禁部屋やヴァルカンを、全てを、飲み込んだ。
それはほんの一瞬の輝きだった。
清廉なる黄金の輝きは、急速に薄れ、元の監禁部屋の薄明かりに戻っていく。
仁王立ちのまま、右手にコンパクトを握り締めたヴァルカンは、満足そうな笑みを浮かべながら、目の前のかよわき美の女神の寵愛を受けた少女を見下ろしていた。
セーラー戦士は常にセーラータイプのコスチュームを着ているわけではなかった。数少ないプライベートでは、私服なども着る。
しかし、いざというときのために、常にセーラーコスチュームに着替えられるようにと、変身用の道具を携帯していた。
ヴィーナスの場合、それは化粧用のコンパクトであり、変身コマンドを叫ぶと、それまで身につけていた衣服が消失し、強化コスチュームを身に纏う仕組みになっていたのである。
そして、変身用の道具は胸のブローチに変化し、変身を解くときには、その胸のブローチを握り締めてコマンドを発すればよかった。
だが、強引にブローチを剥ぎ取られ、コマンドの変わりに悲鳴を上げたヴィーナスは、強制的にコスチュームを脱がされる事となり、そして元着ていた衣服をも、着られぬ状態になってしまったのである。
黄金の光が完全に消失した薄くらい部屋の中で、目の冴えるような真っ白い肌の少女の一糸纏わぬ全裸の姿が、ヴァルカンの目の前にあった。
少女の緩やかで滑らかな曲線を描く裸身は、まだ幼さを残しながらも、まさしく美の女神の寵愛を一心に受けたような女性の体の美しい造形を醸し出していた。
形の良い胸の膨らみを両腕で隠し、内腿をぴったりと閉じたまま、体が固まってしまったように動かないヴィーナスの表情は、あまりの出来事に恐怖や不安さえも忘れて、ただ呆然とし、真直ぐ正面に視線を向けていた。
ヴァルカンは、手に握ったコンパクトの感触を確かめ、己の目で、心此処にあらずのような面持ちのヴィーナスの裸身を、じっくりと観賞した。
「ほほう、これはなかなか美しい体をしているではないですか? 少々幼いながらも、立派な裸ですよ、ヴィーナス」
ヴァルカンは、頭の上から脚の先まで観賞してから、ヴィーナスに賛辞の言葉を述べた。
「い、いやぁぁああああ!」
その言葉はヴィーナスにとっては賛辞ではなく、凄まじい羞恥心を呼び覚ました。勢いよく悲鳴を上げると、寄りかかった壁からずるずると落ちるように、晒された裸身を隠すために丸くなろうとしゃがみ込み始めた。
しかし、ヴァルカンはそれを許さなかった。
「やぁぁああ! 痛いぃぃ! やめてぇぇぇえええ!!」
ヴィーナスがしゃがみ込もうとする途中で、ヴィーナスの後頭部を鷲掴みにした。
鷲?みにされた髪の付け根に痛みが走り、ヴィーナスは中腰のまま、両手をヴァルカンの腕に当てて悲鳴を上げた。
そうすると、ヴィーナスの隠していたはずの乳房が全て顕わになった。ヴァルカンはヴィーナスの悲鳴を聞きながら、二つの小ぶりながら丸く膨らむ乳房を観賞した。
「お願いです! はなしてぇぇ! 痛いぃぃ!! 痛いのぉぉおお!!」
ヴァルカンの手に思わず力が入って、ヴィーナスは裸身を隠す事さえ忘れるほど、髪の付け根に走る痛みに悲鳴を上げて、必死でヴァルカンの手を振り解こうと、両手を押し当てていた。
すでにヴィーナスは爪先立ちにまでなってしまって、閉じた太腿もうっすらと開き、昨日侵入された秘裂さえ曝け出していた。
「なかなか結構です。立派な性処理道具になりますよ、ヴィーナス」
ヴァルカンは、痛みに悲鳴を上げるヴィーナスに顔を近づけて、口元に笑みを浮かべた。
「い、いやぁぁああ! いやですぅぅぅ!! お願い許してぇぇぇええええええ!!」
ヴィーナスは、痛みと羞恥に涙を大量に零しながら、悲痛な悲鳴を上げた。
裸のヴィーナスの髪を鷲?みにして、爪先立ちに立たせたヴァルカンは、ヴィーナスの悲鳴を聞きながら、口元を歪めて、加虐心の昂ぶりを押さえ切れなかった。
「さて、約束通り、次は縛りましょうか、ヴィーナス」
あえて次の行動を宣告する。それはヴィーナスへ恐怖を煽る加虐心の表れだった。
「い、いやぁああ! そんなぁあ!! 許してぇぇえええ!」
羞恥を極める全裸にされたヴィーナスは、身動きできないほど縛られてしまうという、ヴァルカンの言葉を思い出したように、悲痛な叫びを上げて、逃れようと激しく体を揺すった。
だが、鷲?みにされている髪の毛からヴァルカンの手が離れる事はなく、ヴィーナスはただ痛みを受けてしまうだけだった。
「許してぇぇええ! お願いですぅぅ! これ以上、お願いしますぅぅ!!」
泣き叫び懇願するヴィーナスを、ヴァルカンは強引にベッドのところに連れて行く。
「お願いです! もう許してくださいぃぃい!」
ベッドの上に放り投げられたヴィーナスは、あらん限りの声で泣きながら懇願する。
髪の付け根の痛みはなくなったが、縛られてしまうという事への不安と恐怖が、哀れな心に深く刻み込まれてしまっていた。
ベッドの上でお尻を晒し、必死で体を丸めて、懇願するヴィーナスを完全に追い詰めて、ヴァルカンは笑みを浮かべた。