アムールナイツは、水星・金星・火星・木星の主要四惑星国家の守護戦士ガーディアン・ソルジャーから選出された優秀な戦士達で構成された月の王国の精鋭たちである。その彼らが異国の地、月の王国の守護戦士に赴くのに、どうして素直に従っているのか、ヴァルカンの問いに、ヴィーナスは答えられなかった。
月の王国の太陽系に齎した平和と安定と繁栄は、各惑星国家の為政者たるヴィーナスたち王族にとっては、月の王国の役割の重要性は余すところなく感じ取れるのかも知れない。
しかし、ガーディアン・ソルジャーや一般の住民にとっては、まったく計りしれない異国の情勢よりも、全て自国のためにその任を務めるのが本来の自分の役目のはずだった。
だが、一部のそれも優秀なガーディアン・ソルジャーは、アムールナイツとして、縁もゆかりもない異国の地に赴き、自国とまったく関係のない月の王国の守護戦士として勤めを果たさなければならないのである。
いくら月の王国に、自国のプリンセスがセーラー戦士として籍を置いていたとしても、彼らは彼女達ただ一人に忠誠を誓っているわけではないのである。あくまで彼らの本来の忠誠の対象は出身地である自国だったのである。
その生まれてからずっと培ってきた忠誠を破棄されて、新たに月の王国への忠誠を強いられるのは、彼らにとっては屈辱でもあったであろう。
いくら今の世が全ての国家に対しても平和で安定していても、いつそれが崩れ去るのか分からない。そうなった場合、アムールナイツは、月の王国の戦士として、下手をしたら自国と戦わなければならないのである。
アムールナイツは、自国を捨てる覚悟をしいられた戦士達なのである。
「その見返りが、ヴィーナス、彼らの直接の上官であるあなたとの、この地での性交渉なのです」
ヴァルカンの言葉に、ヴィーナスは悄然とした表情で、口元を歪める男を凝視することしかできなかった。
アムールナイツは、それに相応しい見返りを求め、それがヴィーナスとの性交渉にあると言う。
男性からなるアムールナイツにとって、女性であるヴセーラーヴィーナスは、美の女神の化身の如く美しく気高い存在の女性なのである。彼らが秘かにヴィーナスへ思いを寄せるのは当然の結果でもあったのである。それがどんな形であるにしろ。
一介の戦士に過ぎないアムールナイツたちにとって高嶺の花であり、どんなに努力しても身分や階級の違いで、ヴィーナスとの性交渉など、万に一つもありえるはずがなかったのである。
だが、それは逆に自国を捨ててまでの見返りとしては、対等なほどの魅力でもあり、アムールナイツの月の王国への忠誠が、上官であるセーラーヴィーナスとの性交渉によって、契約のような形で成り立つこととなったのである。
それこそが、まさしくセーラーヴィーナスの宿命であり、アムールナイツの使命でもあったのである。
そしてそれは、アムールナイツ創設以来、連綿と受け継がれ、歴代のセーラーヴィーナスとアムールナイツが辿ってきたれっきとした慣例の行事になっていたのである。
「………………」
ヴィーナスは何も言葉が出てこなかった。ヴァルカンに押さえられていた体が、ガクガクと震える。
まだ少女のヴィーナスにとっては、その歴史は信じがたいほど恐怖を植えつけていた。この蹂躙が、すでに歴史的な決定事項であったことに、もはや恐ろしいまでの衝撃として受けるしかなかった。
「そういう事です。表の月の王国で、あなたとアムールナイツとのこの慣例を行なうわけには行きませんから、このムーンバックヘルがあるんです。年に数回、この地を訪れることこそ、その慣例を実行する唯一の機会なのです」
そして、それは表の世界では極秘にされ、他のセーラー戦士には一切内密にされているのである。そのことは当然の処置でもあるだろう。ヴィーナスとアムールナイツの問題であり、他のセーラー戦士は関係ないのだから。
そしてヴァルカンは、アムールナイツの特殊能力は、ヴィーナスとの性交渉によって、さらに強化されると言う。何故そうなるのかは分からないが、今までの結果はそうであり、ヴィーナスとの性交渉をすればするほど、その能力の強化は確実に行なわれるという結論に達していた。
この凌辱劇が、月の王国のために行なわれる行為だとどうしても信じることができずにいながら、あの時のアルスの言葉や今のヴァルカンの話のようにアムールナイツの経歴を思えば、ありえないことではないという、二つの相反する思いが、無垢な心の中でせめぎ合っていた。
まだ幼い彼女にとってはあまりにも衝撃的な歴史であり、信じる信じない以前に、頭の中が混乱の嵐が吹き止むことなく荒れ狂い続けていた。
それが、まるで今のヴィーナスの状況さえ、理解できないほどの心の混乱を招いていた。
ベッドの上で、両腕を体の横に投げ出しまま、仰向けの上半身には、白く滑らかな二つの型の整った丸い山が突き出し、呼吸に合わせ僅かに上下している乳房、その頂上に生える桃色の芽は天へと昇るかのように小さく突き出した乳首。二つの山の麓から降りる丸みの帯びたラインは次第に細くなり、綺麗な形のへその穴が白い肌にぽっかりと洞窟のように口を開けていた。そこから緩やかに太くなる腰は、太腿の付け根との逆台形のラインを描き、ベッドの外へと外れていった。
ベッドからはみ出した両脚は左右に開かれ、ヴァルカンの体によって閉じることができずに、台形の短い下辺には、湧き出していた汚れた濁液もようやく止まり、残った愛液によってキラキラと透明な輝きを放つ薄桃色の肉襞が、開いた秘裂の谷間から顔を覗かせていた。
その少女の体にしては滑らかなラインを描く魅力的な肢体には、大量の汗をきらめかせ、汚れた濁液が所々に付着して、もともとの白く清らかな素肌との対比の上に、淫靡な官能の景色を思わせた。
美の女神の寵愛を受けて確実に成長している可愛らしい美しい顔は、目を見開いたまま涙を溢れさせながらも、未だに混乱の中で彷徨い、羞恥と怖れに彩られた表情で、涙に濡れた瞳を天井に向け続けていた。半開きになった口から浅い呼吸音が響き、頬に赤みがさしている。
それはヴァルカンの嗜虐の心をさらに昂ぶらせ、聖なる者、か弱き者、美しく可憐な者を支配し征服する優越感を得られるのに、十分なほどの哀れな少女の姿でしかなかった。
ヴァルカンは、ヴィーナスを立たせると、部屋の壁に向かい新たな扉を出現させ、その扉を開いて中に入っていった。
抵抗すらせずに、従順に従うヴィーナスは、心を閉ざしてしまったかのように、手を引かれるままに、おぼつかない足取りでヴァルカンの後に続いていた。
その扉の中は大きな浴場になっており、奥に広々とした床から少しだけせり出し湯船が広がっていた。十人前後が余裕で入れるような広さの湯船には、並々と満たされたお湯が張られており、白い湯気が立ち上っている。
「さあ、ヴィーナス。湯船に浸ってその汚れた体を清めてください」
ヴァルカンは、それだけ言うとヴィーナスの腰を押した。
ふらふらと吸い寄せられるかのように、ヴィーナスが湯船に寄っていく。
生きた屍のような姿に、ヴァルカンは、あまりの衝撃にヴィーナス自身の心が本当に壊れてしまったのではないかと心配した。それはひとえに己の征服欲のためにのみの心配ごとであり、ヴィーナス自身の心身を案じてのものではなかった。
ヴァルカンにとって、ヴィーナスへの肉体的な征服欲もさることながら、ヴィーナスの蹂躙されてしまう恐れと羞恥と絶望の負の感情こそが、ヴァルカンの征服欲の最も重要な悦楽の感情だったのである。
ヴィーナスは、そのまま湯船の縁に近寄ったが、そこに縁があるのかどうか分からないといったように、単に前に進みだし、湯船の縁に足を取られて、ザッバーンと湯船の中へ倒れこんでしまった。
「ヴィーナス!」
あまりにも正気を失ったような動きで、湯船のお湯の中に落ちたヴィーナスに、思わず驚いて声をあげ、湯船の傍まで駆け寄った。
湯船のお湯の中に体を沈めながら、黄金の長い髪だけがお湯の表面に広がる様は、神秘的なほどであったが、なかなかヴィーナスが顔を上げてこないのに、ヴァルカンはあせり始めた。
いくらヴィーナスでも、お湯の中では呼吸はできるはずもなく、窒息に至ってしまうのではないかと思ってしまったのである。
だが、ヴィーナスの顔の辺りに、ぶくぶくと泡が湧き出し始めると、慌てたようにヴィーナスが顔を上げた。
「ぷはっ! こ、ここっ………えっ!?」
ヴィーナスの瞳に正気が戻ったように、顔を上げて呼吸をすると、慌てたように顔にかかった水気を両手で振り払いながら、辺りを見回し立ち上がった。湯船の深さはヴィーナスの膝の辺りまでしかない。
「あっ!」
そしてようやく、傍にヴァルカンが居ることに気づいて、表情を驚愕に歪めた。
どうやら、先ほどまでの死んだような状態から、元に戻ったようだった。その瞳にはっきりと怯えの色がヴァルカンに向けられていた。
ヴァルカンはじっとそのヴィーナスを舐めるように見た。穢れた体とはいえ、湿った長い髪が体に張り付き、血の気の戻った白い肌に透明な雫が滴り落ちる姿は、まさに海中より生まれた女神のような美しさだった。
そのヴァルカンの視線に気づいたヴィーナスが、慌てて両腕で胸を隠して、湯船の中に腰を下ろし、体をヴァルカンから庇うように丸めた。
「その汚れた体を洗い流してください、ヴィーナス」
ヴァルカンは、正気を戻したヴィーナスを嬉しそうに見ながら言った。
「………お風呂?」
その言葉に、ヴィーナスは改めて回りを見回して呟いた。
「あの部屋の隣に造られた、あなたのための浴場です。明日からアムールナイツの相手をするのですから、体を綺麗にしておくのです」
「あ、アムールナイツ………」
ヴィーナスの怯えた表情に、絶望のような諦めの表情が浮かんできた。
「そう………夢じゃ………なかったんだ………」
アムールナイツとの関係の話を夢の中の話だと思っていたようにヴィーナスが俯いてポツリと呟いた。
「あたしは………アムールナイツに………これも………シルバーミレニアムの………ためなの?」
独り言のように呟く。
どうやら月の王国シルバーミレニアムのためのアムールナイツをつなぎとめておく手段が、この地でのヴィーナスとの契りだと、諦めたような姿だった。
「そう、これも月の王国のためです。アムールナイツとの交わりは、昔からの習わしでもあり、紛れもない真実なのです」
ヴァルカンの言葉に、ヴィーナスが顔を上げて、諦めたような表情で、不安に駆られた瞳を向けてきた。
「あなたもシルバーミレニアムに忠誠を誓うセーラー戦士なら、シルバーミレニアムのために、その身をアムールナイツに捧げる覚悟を決めるのです。月の王国、太陽系の平和と安定と繁栄は、アムールナイツがいて始めて成り立つのです。彼らが成す兵役のおかげで、月の王国の住民は、兵役を免除され、繁栄のために専念した仕事ができるのですから」
だが、ヴァルカンは月の王国の住民が、自分達の安穏のためにしか動いていないと思っていた。だが、今はヴィーナスが自分から、この境遇を受け入れる様にと、若干言葉を偽って説いた。
「………」
ヴィーナスは、無言のまま再び俯き、お湯の表面にぽたぽたと零れる雫を垂らした。
「それが………あたしの………与えられた………宿命なの………」
ヴィーナスは啜り泣きながら、か細い声で呟いた。
その場でしばらく啜り泣き、肩を震わせていたヴィーナスだったが、ヴァルカンの視線に気づいたように、湯船の奥の方へ移動し、背中を向けて体をお湯で洗い流し始めた。
ヴァルカンは、ヴィーナスのその姿をしばらく眺めて、浴室を後にした。
ヴァルカンが、ヴィーナスの監禁部屋のベッドに腰を下ろし待つことしばらく、ヴィーナスがゆっくりと開かれた扉から出てきた。
すっかり裸身に付着した男たちの欲望を洗い流したヴィーナスは、体に付いた水滴を滴らせながら、赤みを帯びた肌を曝け出し、両手で胸と股間を隠したまま、ゆっくりとベッドに腰掛けるヴァルカンの元に歩みよってきた。
体が温まりほんのり桜色に染まった頬に、鮮やかな桃色の唇、長い睫毛に縁取られた目を細め、その奥の瞳を伏せながら、恥ずかしそうに俯いていた。水分を含んだ髪は、滝のようにヴィーナスの背中に流れ、キラキラと部屋の明りに反射していた。
「覚悟ができたようですな、ヴィーナス」
ヴァルカンはじっとそのヴィーナスの顔を睨みつけるように言った。
ヴィーナスが少し逡巡してから、僅かに首を縦に振る。
その仕草に満足して、ヴァルカンが立ち上がる。
ビクッと、ヴィーナスの体が強張ったのがヴァルカンにもはっきりと分かり、そのままヴァルカンはヴィーナスの肩を抱き寄せた。
「ふふ、なかなか素直になったじゃないですか、ヴィーナス」
すでに裸になっていたヴァルカンが、体を触れさせたのに、ヴィーナスは唇を噛んで目をきつく閉じ、顔を背けながら、体を小刻みに震わしていたが、抵抗することはなかった。
シルバーミレニアムのために、犯されてしまうことを完全に受け入れるしかないと言う諦めたようなヴィーナスの姿だった。
「あああ!」
ヴィーナスを引き寄せながら、ヴァルカンはベッドの上にヴィーナスを放り投げた。ヴィーナスの口から悲嘆の息が漏れ、ヴィーナスは、ベッドの上にその濡れたままの裸身を投げ出す格好のまま、これからされる行為を怖れるように体を震わせていた。
「ヴィーナス、あなたは、この地にいる間、昼間はアムールナイツの、夜は俺の相手をしてもらいます。それがこの地でのあなたの役目なのですよ」
ヴァルカンは、ベッドに乗りながら、ヴィーナスの上に覆い被さるようにしながら言った。
「俺とアムールナイツとの間には休息時間もちゃんととってやります。さっきの風呂も自由に使って構いません。それに、先ほどあなたに飲ませたドリンク、あれも栄養がたっぷり詰まっていますから、合間合間に飲ませて差し上げます」
ヴァルカンは、一つ一つ今後のことを説明しながら、ヴィーナスを仰向けにして、両手を体から引き離して両脇に投げ出させた。
「うっ………ううっ………」
溜まらずきつく閉じた目から涙が滴り落ち、声を漏らし始めたヴィーナスに、ヴァルカンは、完全に勝利したような歓喜の想いを抱きながら、ヴィーナスの裸身の上に圧し掛かった。