第23話 淫靡な舞台

 各惑星の守護戦士ガーディアンソルジャーの精鋭たちによって組織された、月の王国シルバーミレニアムの守護を務めるアムールナイツ総勢四十八名の九十六の目が、突き刺さるようにヴィーナスの身体に注がれていた。
「ふっ………ふぐぅぅ」
 ヴィーナスは、猿轡の奥からくぐもった声を上げて顔を背けた。
 ムーンバックヘルの地下に造られた広い空間、大講堂の一段高い舞台に、ヴィーナスは縛られた後ろ手から伸びたロープの先をヴァルカンに握られている。
 細くしなやかな身体に回されたロープが、二つの乳房を強調するように搾り出している以外は何も身につけていないヴィーナスは、内腿を擦り合わせるようにして、足を震わせ立っていた。
 舞台の先には、アムールナイツたちが目を疑うような視線を向けている。
 ヴァルカンに犯され、将軍クラスに蹂躙されて、いよいよ古の慣例にならって、残りのアムールナイツに犯されるためのお披露目をされてしまっていたのである。
「ふぐぅぅ………ふうぅ………」
 ヴィーナスは見世物のように大勢の前で拘束された裸身を晒された激しい羞恥と、これから行なわれる恐るべき行為への恐怖とに不安が渦巻き、閉じた瞼の奥から止まらない涙が溢れていた。
 いくらシルバーミレニアムのためにこの身を捧げなければならないと諦めようとしても、実際大勢の目に晒され、犯されると思うと、不安と羞恥と恐れが渦巻いてしまう。
「おい、本当にヴィーナスだぞ………あれ」
「あの話は本当だったのか?」
「いいのかよ、本当に………」
 口々に囁くアムールナイツたちの疑心暗鬼の声。
 アムールナイツたちは全員が古の慣例を覚えているわけではなかった。
 表の世界で不意に漏れてしまう心配を考えて、前回の慣例が行なわれた後は、ヴィーナスを含めて全員の記憶操作が行なわれるのである。そのために、表の世界に戻ったアムールナイツたちは、この地でヴィーナスを蹂躙し続けた記憶を覚えていないのである。しかし、月の王国を守護する代償としてのヴィーナスへの凌辱の契約は、深層心理の中で守られてきたのである。
 だから今、裸で拘束されたヴィーナスを見詰めるアムールナイツは、自分達の上官のあられもない醜態を目の当たりにしても、はっきりと嫌悪感や拒否反応を示すものはいなかった。
 皆あまりの事に驚きながらも、口々にざわめきたっているだけだった。
「諸君らもすでに将軍クラスから説明を受けていると思うが、この古の慣例に否定的な意見があれば今のうちに申し出るように」
 すでにアムールナイツには、ヴィーナス蹂躙という古の慣例による契約の説明はされていた。
 ヴァルカンが改めにこの慣例に反対する者がいないかどうか問う。
 ヴィーナスは諦めきった面持ちながら、一人でも多くこの慣例に反対してくれる者が現れることを願っていた。
「いないよだな」
 ヴァルカンがアムールナイツ一同を見回して言う。
「ふっ、ふぐぅぅ………」
 ヴィーナスの体はますます震え上がる。
 あの自分を敬愛して一番の忠誠を誓ってくれたアルスでさえ、古の慣例に逆らう事がなかったのである。一般のアムールナイツが逆らうはずはないと思えてしまう。
 それは自分が彼らに、この地にいる間常に嬲り者にされてしまうことを意味し、大勢の男達の欲望が自分の身体に群がってきてしまうという思いが脳裏をよぎって、ヴィーナスはどこまでも深い地獄の闇に落ち続ける思いだった。

 ――――中略――――

第24話へ続く