第一ランナー
729D
八幡浜 13:30発
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宇和島 14:28着
経由:予讃線
走行距離34.8km
使用車輌:キハ185形
〔展望台〕
↑四国の冒険は八幡浜駅からスタート。
■第二の人生■
四国の旅のスタートは、港町の八幡浜から。
スタートを切る列車としてやって来たのは、
キハ185形
の2両編成でした。
2人掛けの回転クロスシート、アクリルカバーの付いた室内灯・・・・・。普通列車にしておくには勿体ないほど、車内は豪華です。そう、元々、この車輌は特急列車に使われていたのです。それが足の速い
振り子式
気動車に置き換えられ、でもまだ廃車するには新しかったので、一部はJR九州にお嫁に出され、残りのほとんどは急行列車の廃止で普通列車に格下げ使用されていた高齢の
キハ58系
気動車を置き換えるのに使われたのです。
座席のリクライニング機能を封じられ、特急列車に追い抜かれ、トイレなしの車輌どうしでだけ編成を組むことを許され、ただひたすら普通列車に徹する毎日。ところが九州へ行った仲間は、まだまだ特急列車として活躍中。装いも新たにされて、ますますその身体に磨きをかけています。
かつて共に同じ道を歩み、もしかしたら同じ編成に連結されていたかも知れない仲間たち。でも今は、全く別の運命を辿っています。
でも、四国のキハ185形によって、普通列車の質が良くなったのは事実です。
↑元特急用のキハ185形参上!
乗客の数は、おおよそ2、3席に1人くらいの割合。大きなカバンを手にした、おそらく運動部の練習帰りと見られる高校生が多く乗っています。私の近くに座っている高校生は座席でくつろぎながらヘッドホンで音楽を聴き、その音がこちらにまで聞こえます。何の曲か分かるくらいの大音量!周囲に迷惑なのはもちろん、公共の空間で外界から自分を遮断するのはいかがなものかと。ここは自分の家ではないのです。それに耳にもダメージを受けるので、あまり長く続けると将来難聴になります。
しかし、外でも安心してくつろげる日本は、本当に平和な国だと思います。国家が国際平和を、国民が秩序を守るからこそ、できるワザなのかも知れません。国際関係がギクシャクしている国や、犯罪の多い地域では、こうはいきません。いつ襲われるか、分からないからです。
さて、列車は勾配を登り始めました。街並みが下に下がっていきます。谷筋がはっきりと分かるようになり、ゆっくりゆっくり走りながら斜面の中腹まで登ると、今度は隧道が連続して待ちかまえていました。あたりに人家は見えず、久々に集落が出てきたら双岩駅に到着。でもそこを発車すると、また急カーブだらけの勾配区間に。隧道と隧道の間では日陰に雪が残っていて、屋根の上や枯れ草の上で、お空の光を受けて青白く輝いています。列車はエンジンに力を入れて、あえぐように斜面を登っていきます。
上り勾配の隧道と切り通しを抜けると、今度はやや広い盆地のような所に出ました。平らな底は水田地帯になっていて、稲が所々積み上げられています。円柱形にされたそれは、それぞれにとんがり帽子のような稲ワラを載せて、遠目にはまるでおとぎの国に出てくるお家に見えます。そんなどこかメルヘンチックな平野を、列車は銀色の車体を輝かせながら軽快に走っていきます。
上宇和駅のあたりから、今度は人間用の本物の住宅が増えてきました。上宇和駅で10人ほどが下車。駅を出るとマンションまで出現しました。
でも平野の旅は、もうすぐおしまい。間もなく再び斜面が近付いてきました。下宇和駅で行き違いの特急『宇和海14号』に道を譲り、その間に列車は息を整えます。
発車し、隧道を抜けると、山の中腹の足場の悪そうな場所に出ました。周囲に民家はありません。右側を見ると、遠くに宇和海が、その水面を銀色に輝かせています。しばらく進むと、狭い谷底に、へばりつくようにして存在している集落を見て取れました。
このあたりはリアス式海岸になっていて、漁港もたくさんあります。その地形を活かして真珠やハマチなどの養殖水産業が盛んに行われ、宇和島市をはじめとしたこの辺り一帯が、真珠や鯛の養殖で日本一の中心的産地になったこともあります。食品工業も盛んです。
現在は過剰生産による価格低下や真珠貝の大量死で、かつてほどの繁栄は見られなくなっているのだとか。宇和島市は南予地方の中心地でありながら、平地が少ないことから陸上での産業面の力が弱く、経済面が芳しくないことから人口が流出しています。
隧道を何度もくぐって高度を下げ、宇和島市の立間駅に到着。宇和島発松山行きの普通列車4736Dとすれちがい。13時52分に宇和島駅を発車したこの列車が終点に到着するのは、17時1分です。3時間以上も走り続けるのに、この列車にもトイレがありません。しかもそちらはオールロングシート。まぁ、全区間乗り通す乗客が普段は極めて少ないので、削れるところは徹底的に削って、少ない車輌で大勢の旅客をさばくことに特化するスタイルをとったのでしょう。
民家が集中してくると伊予吉田駅に到着。6人ほど下車し、女性3人組が乗車。発車すると再び、隧道を何度もくぐりながら走っていきます。入り江も見えていましたが、最後の長い隧道を抜けると、海が見えなくなってしまいました。
山と山との間の平地には、山に近いところに民家や小規模の工場などが並び、底には水田があります。その住宅が増え、予土線と合流すると北宇和島駅に到着。駅前にはマンションの姿も見えます。ヘッドフォンの高校生と、伊予吉田駅から乗ってきた女性3人組が降りていきました。
さぁ、いよいよ次は終点の宇和島駅。2分で到着します。降りる準備をして出口に行きます。
車窓からは民家がびっしりと並んでいるのが見て取れます。さすがは城下町です。
列車を待ちかまえていたのは、先端部分が平面の通路で隣のホームと繋がった、櫛形ホームでした。2番線に到着。次の乗り換えまで少々時間があるので、とりあえず駅舎に行きます。
↑隘路は続くよどまでも(八幡浜〜双岩)
↑とんがり帽子がメルヘンチック。(双岩〜伊予石城)
↑下宇和駅で小休止。
↑たくさん魚がいそうな海。(下宇和〜立間)