「お前…」


そこに倒れていたのは
いつも炊き出しで顔をあわせる、あの少女だった。

たしか、今日の午後から
隣町に引っ越していくと言っていたはずだが…
それがなぜ、こんな時間にこんな場所に…。

いや、今はそれよりも
彼女の無事を確認することが先決だ。


「おい、お前!しっかりしろ!

どこか怪我してないか?
どこか痛いところはないか?」

「………」

「おい、俺の声が聞こえるか?
俺が誰だかわかるか!」

「…せん……せ…い…………」

「よかった…意識はあるようだな」

「…ぅ……うわぁぁぁぁぁぁん!」


俺の顔を見てホッとしたのか、
少女は堰切れたように大声をあげて泣きはじめた。


「…とりあえず、うちに来るか?」


俺がそう問いかけると、
少女は無言のまま小さくうなずいた。



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