妖怪と呼ばれる生き物が存在するこの世界。
科学は進歩し、妖怪など既に存在しないかとも思われがちですが
彼らは人の暮らす街に降りてきては盗みや殺しなど平気で行なっていましたが
最近では街に結界を張って入れないようにしていますがそれでも
入ってくるよう者達は即刻殺し、大きな事件にはなっていないようです。
人間達はというとそんな妖怪達に対抗する術者を生むため
力のある者とそうでないものとを別けて教育し始めました。
そして彼女も力ある者として、学校に通い
術を得る勉学に励んでいるのですが・・・・・・・。
「キラ!!貴方、また学校からお問い合わせが来たわよ!!」
「うっ・・・うそ」
キラ・ヤマト、今年で十五歳。
名門高校に通う少女なのだけど朝っぱらから母に詰め寄られて
頭の中は反省の色は全くなくどうやって逃げるか考え中。
「学校に無断で休んだりして、ダメでしょ!!」
「だって・・・途中でお腹が痛くなって」
「嘘おっしゃい、だったらどうして家に帰ってこないの!!」
実は病院に行っていたとか言ったが調べればすぐにわかってしまう嘘ばかり
勉強もキライだけど学校はもっと嫌いなのだ。
「きょっ・・・今日は行くよ、なら良いでしょ」
「よくないわ!!キラ、貴方もしかして・・・」
逃げられない、問い詰めるカリダに隙はなかったのだが。
「カリダ、新聞は何処だ?」
ひょっこり顔を出してきた父のおかげで隙が出来、弁当を持って
猛ダッシュし、玄関に向かう。
「あっ!!こら、キラ」
「いってきまーーーす」
まだ話は終わってないと止めようとしたが逃げるのだけは早いのかもう見えなくなっていた。
「あんまり叱ってはいけないよ、あの子が学校に行きたがらない理由、解っているだろう」
「ええ・・ですが・・・・」
中学で仲の良かった子達の行った高校に転校させてあげれば
毎日、足取り軽く学校にだって行き出すのに
それが出来ないから学校を避け、行きたがらない。
力が世界の全て。
皆はそう言うがそれだけが世界の全てではない。
だからこそキラは、あそこが嫌いなのだ。
「おはようございます」
お上品な挨拶ばかりが耳に聞こえてくる。
中学までは普通の学校通っていたのに高校に上がるときに
持っている霊力の高さを調べる検査をしたんだけど僕のレベルが
かなり上で良いところで勉強するべきだとして仲良かったクラスメイトと
離されてこんな学校に行く事になってしまったんだけど・・。
「あら、ヤマトさん。風邪だって聞いていたけどもう平気なの?」
「うっ・・うん、ありがとう」
クラスメイトの一人に一見心配されたように声をかけられた。
でも実際はそうではない。
「でもさ、馬鹿は風邪引かないって言うから心配ないんじゃないのかしら」
「そうよねーーー」
笑いながら彼女らは行ってしまった。
僕はまだこの学校で友達一人も作れていない。
話しかけても話の輪には入れてくれないし、あんな風に言われるのもいつものこと。
時々、靴に画鋲とか入れられたりして要チェックしないと。
教室に入っていも誰もやっぱり挨拶してくれない。
やっぱり今日も一人か・・・、溜め息していると後ろの方で女の子の黄色い声が聞こえてきた。
たった一人の僕が知っている人がやってきたんだ。
「ちょっと、入り口に立ってないでよ。ジャマよ」
「あっ・・ごめん」
まったくもう、とピンク色の髪をした女の子と青い髪をした男の子が入ってきた。
腕に手を回してまるで恋人同士みたいに歩いているが実際に二人は
将来結婚する事を約束した婚約者同士。
ちらっと青い髪の子を見たけど、僕の方は全然見てくれなかった。
「おはよう、アスラン君vv」
「おはよう!!」
「ああ・・・」
上級階級の貴族のアスラン・ザラ君。
頭脳は勿論、運動神経も凄くて女の子や男の子も
皆憧れているだ、顔だってモデルさんみたいにカッコイイし。
僕の・・・幼馴染なんだけど。
小さい頃によく遊んでたんだけど、7歳の頃に婚約を結んでから
遊んじゃいけないってアスランのお父さんに言われて随分会ってなかったけど
この高校に来て、久しぶりに色々お話がしたかったけどアスランの隣には
ミーア・クラインって言う婚約者の子もいたし、アスランは僕が話しかけても
全然答えてくれないし、僕も事だって見てくれない・・・。
時間が経ちすぎていたんだ。
しょうがないって納得するしかなかった。
授業が終わってみんな、友達とお弁当を食べている。
でも僕の席の前の子が僕がいると友達と食べられないからどいてほしいって
いうから僕は自分の席でお昼が食べられない。
だから一人、屋上でいつも食べている。
実は立ち入り禁止の場所だから誰の目線もないから気楽で良い。
「はぁ・・・・・・・」
凄い力があるって・・・言われたけど。成績はいつだって最下位。
運動神経だって逃げ足だけが速いだけで全然とりえすらない。
学校の授業だって難しすぎて追いつけないし。
「・・・・・・学校、やっぱりこなければよかった」
一人だったら学校よりもどこか別の場所のほうが良い。
ズル休みをしている間は僕の家の裏にある山で昼寝とかいろいろやってそっちの方が楽しい。
なんで僕らって学校に通わなきゃいけないんだろう・・・。
こういうの考えたのって誰だろう・・・・。
「今回の課題は難しいぞ。文献などを調べ、必ず出すように」
先生が出した課題・・・、ものすごく難しそうだ。
見るのだって嫌だ、でも今回のもしもまたミスッたらまたまた最下位。
どこから攻略するか悩んでいると数人の女子が近づいてきた。
「ヤマトさん、大丈夫?
どんなに凄い力でも使えなければ意味がないもの」
「本当にあの伝説の陰陽術師『ヴィア・ヒビキ』の孫なのかしら?」
多くの妖怪達を倒し、人々を救ったとされる女性陰陽術師。
僕のお祖母ちゃんでもある人物、でも僕が生まれる前に死んじゃって
顔は写真でしか見たことないけど、凄く強かったってお母さんが言ってた。
ちゃんと僕の中にもお祖母ちゃんの血が流れているのか僕だって不安だ。
「だっ大丈夫ですよ、今後こそ」
「そう?落第しないように頑張ってね」
また、笑われてしまった。
話しかけてくれるときは皆嫌味ばっかり、だからもう仲良くなりたいとは思わない。
(なんで力がないといじわるばっかりするんだ・・酷いよ)
「アスラン、二人で一緒にやりましょう♪今日アスランの家に泊まっても良いでしょう?」
難しい課題だというのにミーアはとても楽しそうだった。
だがアスランは返事だけ、僅かに視線をキラに向けていた。
見返してやる。
僕だって嫌味言われ続けて平気なほど馬鹿じゃないだ。
仁王立ちして立ち向かおうとしているのは大きな蔵。
この中には文献とか課題をやり遂げられるものが多くあるに違いないと確信していた。
鍵は母から借り、いざ中へ。
「ぶえほっ・・・!!」
出迎えてくれたのは数年溜まった埃だった。
何年かに一度、虫に食われないようにって家族総出で掃除をしているからとはいえ
やっぱり物を退かす埃が舞うの何の。
「えーーと、本を入れたのはどれだったかなー」
軽くハンカチで口を押えながら探しているけど、埃が上手く前が見えず
壁に手を当てながら歩いていたけど中央の壁に手を触れると壁がいきなり軽くなり
そのまま床に倒れこむ。
「いたたた・・・あれ?此処は・・・」
後ろには蔵、でも前は違う場所。
とりあえず立ち上がり状況確認、蔵の後ろは大きな岩の山がくっついていて
もしかしてこれは・・・・その中???
「へぇ・・・・、秘密基地みたい」
探索していると中央に置いてある棺桶に似た箱を見つけた。
(ヴィアお祖母ちゃんちゃんのへそくりでも入っていたりして・・・)
懐中電灯片手に近づいてみたけど開けるのは無理だとすぐ解った。
強力な施錠がされているから、しかも一つではない沢山の数の。
よっぽど中に入っているものを見られたくないみたいだけど
それほどにまで隠しておきたいものってなんだろう。
思い出してみれば掃除の時も奥の壁にちょっと手を触れただけで
母がなんか慌てたというか隠しているように見えた。
あの時は腐っているから強く触れるなって言っていたけど壁は腐ってなかった。
隠し扉になっていて床に落ちているし。
「ドラキュラ伯爵とか居たりして・・・」
西洋の妖怪で人の血を吸うとか、笑いながら棺に手が触れた瞬間に
弾ける様に施錠の鎖が外れていった。
「えっ・・うそ!!」
触れただけなのに、ほんのちょっとだけ・・・。
やばいよ・・どうしよう。
少しだけ慌てたけど、でも・・・外れたって事は中身が見れるってことだよね。
「・・・見てから考えよう」
また施錠しなおせば良いんだから。
蓋に手を掛けて押し、中の光が差し込む。
「お宝はいけーーーん♪・・・・・・・・・・・・って・・・」
中には金銀財宝のへそくりなんてなかった。
あったのは人。
黒い髪をした僕よりもちょっと歳が上そうな男の子。
でもどうしてこんなところに、だって・・ずっと入ったとしたら飢え死にとかしちゃうし・・。
あることを忘れていた。
『彼』がそうだしたら。説明が付く。
「妖怪・・・・・なの?」
化け物とかそういう姿をしているものも多いけど
人の姿をしているものもいると聞いたことがある、封印されていたのかももしかして。
だったらますますまずいよ。
その封印を僕が破ってしまって、もしもバレたりしたら一大事だ。
どうしようと混乱している間に、少年は目を覚まし起き上がった。
パニックしてたキラはまったく気が付いていない。
後ろからキラの肩を掴み、床に押し倒した。
「あっ・・・・・・」
紅い炎の色。
真っ赤で血みたいな・・・・・・・・・・・。
目が逸らせない、それに・・これって・・押し倒されている???
始めて経験(?)で逃げないとと言うよりも心臓の音が激しくて身動きが取れなかった。
体中の血がいつもの数倍のスピードで流れていく。
逃げなきゃ、逃げなきゃだめなのに・・・!!
キラを見たまま、彼は一言・・・・・、声にはならないけど何か口にした。