「外敵」とは人間ではなく「シャフロー」という名前のモンスター。
二ヶ月ほど前から夜になると蜘蛛の様な形態と人間の背丈を超える体高を誇る六本足のモンスターが何処からともなく大群で現れ、人家を襲うようになったとか。人々に深刻な被害をもたらしているシャフロー。もともとは暗い洞窟の奥深くに棲み、苔を食べるおとなしい生物だそうで、凶暴化の原因は不明……
ところが、町の人達は女である私は戦闘に参加しない方がいいと言う。
モンスターは破壊するだけではなく、若い女の子のみを狙って連れ去るのだとか。蜘蛛型モンスターが女の子だけをさらうなんて、おかしな話しだけど、ますます放っておけない!蜘蛛型モンスターの動きは至って緩慢。足先に付いている杭のような爪にさえ注意すればザコの群れでしかなかった。
……でも異様に数が多い。私一人で既に10体以上は倒したはずなのに新手が次々に襲ってくる。まるで、この先にあるものを知っているかのように。夜は固く閉ざされている防壁の堅牢な門扉があっさりと突破され、道という道、路地という路地にひしめく多脚モンスターの群れが巨大な爪で石造りの街路をカチカチと不気味な足音を踏み鳴らしながら月のない闇夜の町中を蹂躙していく。
私が立つ道の先にあるのは礼拝所。そこにはお年寄りや女性、子供達が避難している。絶対にここを突破されるわけにはいかない。「雷よ!」 その言葉に応えるように、夜の冷たい空気が震え、私の周囲に金色の矢が集う。 雷の精霊達……
なぜ雷の精霊達が私に加護を与えてくれるのかは私自身にも分からない。でも、これが私の剣に強大な力を与えてくれる。凄腕の剣士や邪悪で強大な魔物と互角に渡り合えるのも、この力があってこそ。この力……雷の力が無ければ……?
一瞬、悪い予感めいた言葉が脳裏をよぎるも、瞬時に雑念を振り払い、意識を集中させて構えた剣に雷を集める。 構えた剣が輝き、硬く尖った爪の餌食にするべく群がってきたモンスター共を金色に照らした。洞窟に生息するシャフローは光りに敏感なのか突如発生した光源に怯み、一斉に足を止める。
でも、もう遅い!
「喰らえっ! サンダー・スラッシュ!!」