「運命の闘技場へようこそ。戦士ライディ!」
そびえ立つ壁のふちに魔導師ブロアが立っていた。
私は闘技場の中央でブロアを睨みつけると右手に持った剣の切っ先を壁の上に立つブロアに向けた。
「見物客はアナタだけ? それとも一人目の対戦相手はアナタかしら!」
「えっ!?」
ブロアの言葉が終わらないうちに私は慌ててその場から飛び退いた。 ビョウン戦いは既に始まっていたのだ。
「ウヒョーッ、やっぱいい尻してんな〜、ついつい見とれちまったぜ!」「ブロア様! この女をヤッてもいいんですよね!」
「ピストン、真面目にやらんと女に勝っても、その後のお楽しみは無しだ。むしろオレがお前をブチ殺す」
違っていたのは両手に武具を携えていたこと。左手に盾を構え、そして右手に持った鉄棒の先端には金属製の鞭が四本つながった独特な形状の武器を手にしていた。
「分かってますぁ……ヒヒヒ安心しな女戦士さんよ、殺しゃしねえ。今からコイツで捕まえて、その後でじっくりと時間を掛けて牝豚に変えてやる!」ビョウ ビョウ ビョウ ビョウ
鞭の束を振り回しながら歩み寄るピストン。右手首を微妙にくねらせ、回転する金属製の鞭の軌道にも微妙な変化を与えている。
その先端にはそれぞれ重さの違う分銅が取り付けられ、四本の鞭それぞれが微妙に異なるタイミングで回っている。見掛けによらず器用な男。
使い慣れない者にとっては、さぞ使いづらそうな武器を巧みに操っている。タイミングをずらした鞭で相手の剣と身体を同時に搦め捕り、抵抗する手段を奪われた相手をジワジワといたぶる……目の前にいる男の性質を考えれば、あの複雑な武器を習熟できた理由もよく分る気がする。
「お前は大事な商品だ。そのエロい身体にキズはつけたくねえ。大人しく捕まっちまえよ」「アンタになんか絶っ対に捕まるもんですか!」
それは威嚇や強がりではなく、本心。生理的嫌悪感が発した魂の叫び。