全裸よりはまだマシと自分に言い聞かせてコスチュームを身に着けてみる。ちょっと胸がキツイ気もするけど、とりあえずサイズはピッタリだった。
戦闘服というよりは踊り子さんの衣装。これを着て闘技場で踊れと言わんばかりの。ガチャ、ギイィィ
錆びてボロボロに腐食した扉はあっさり開いた。通路の道幅は人がすれ違える程度の幅があり、私は右側の岩壁に手を添えながら慎重に通路を歩き出した。
岩壁の壁面から弱い光りが漏れ、真っ黒な地面をオレンジ色に照らしていた。通路の先にも点々と同様の明かりが私を誘導するかの様に暗い道のりをぼんやりと照らしている。壁面の穴を除くと壁に埋め込まれた油壺に火が灯されていた。壁や低めの天井は等間隔で古びた木材の柱や梁で補強されている。恐らく、ここは閉鎖された鉱山か採石場の跡地を再利用したものかもしれない。
まあ、何にせよ陰気で陰険な魔導師さんにお似合いの隠れ家ってわけね。暗い坑道を進むと別の通路に出た。通路は二つに分岐し、左右に別れた道の左側には頑丈な木製の柵が降ろされ、道が封鎖されていた。もう一方右側の道、その先には明るい場所が見える。
道なりに進みましょうか。私は明るい場所へと歩を進めた。まるで、巨大な岩をくり抜いたかのような空間は地下とは思えない程に広い。狭い場所の連続だった私には尚更、広く感じられた……
地下空間の岩壁は地下牢や坑道のそれとは違い、表面が滑らか。その壁面が緩やかに湾曲して円筒形の空間を形作っていた。均一の角度でカーブする壁を見上げる。その高さは私の身長の四倍はありそう。
空間を覆う高い天井は壁とは違う種類の岩石に覆われ、その中央には奇妙な半円形で半透明の巨大な膜のような物体が張り付いていた。 その膜の先ではマグマのような紅い流体が熱い光りを放ちながらうごめいているのが見える。あの紅くドロドロしたものが溶岩だとしたら、それを包み込んでも破れないあの膜はいったい……?
ブロアに聞けば殺風景な地下空間を彩る灼熱のオブジェとでも言うのかしら?地面に目を転じると砂地の上には数本の古びた鎖が砂地の上に点々と無造作に横たわっている。砂と鎖、それ以外には何もなかった。
私は意を決して、紅い光りが照りつける砂地を踏みしめた。気味が悪いほどに静かな空間に人影は見あたらない。空間全体に紅い光りが照りつけるものの、見た目ほど暑くはなかった。でも、天井の膜が破れて今にもマグマが頭上から降り注いで来そう……
ドシ――ン!!
すぐ背後で轟音と共に重厚な木製の柵が降ろされた。