「キヤ!」
彼女の名前は「キヤ」。年齢が私と同じ19歳の彼女はモンスターの襲撃で住んでいた村と両親を同時に失うという不幸な出来事に堪え、エアロの町に身を寄せていた。今夜は他の女性達と一緒に礼拝所に隠れていたはずなのに……
痩せた男が右腕を彼女の細い首に回し、左手に握った短剣をチラつかせている。「ライディ! 私に構わずこいつらをやっつけて!!」
「うるせえよ、この豚!」 道の先から複数のたいまつがこちらに近づいて来るのが見えた。
戻らない私を心配した町の人達が捜しに来たのだ。
カランカラーン
私は地面に剣を捨てた。 地面に倒れ落ちる直前に抱え上げられた私の身体が大男の肩に担がれて闇の中を運ばれていく。
(泣かないでキヤ、私は大丈夫だ……から…………)
次に覚醒した時、私は馬の背に腹這いに乗せられてどこかへ向かう途中だった。目隠しと猿ぐつわ、縄で手足の自由を奪われ、さらに馬の背に縛り付けられてどこかへ運ばれた。
馬は曲がりくねった坂道を長い時間登っていたと思う。次に目を覚ますと、岩の牢獄に全裸で立たされていた。
鎖で岩壁に繋がった手枷で両手首を拘束されて身動きがとれない。 とりあえず、意識を失っている間に「それ以上のこと」は、されてないみたいね……覚醒しきっていないぼんやりとした頭を巡らしてここから脱出する手段を探してみる。牢獄は天井が低くてトイレのように狭い。目につく物といえば、数メートル先に金属製の扉が一つあるだけ。
金属製の扉は閉まってはいるけどボロボロに腐食していて、蹴飛ばしたら壊せそう。
足は拘束されてはいないけど、壁に繋いだ鎖が短いので壁から離れることも、座ることもできそうにない。
窓が無いせいか湿度が高くて異様に蒸し暑い。裸なのにこんなに暑いなんて。私はなま暖かい岩壁にお尻を付けてため息をついた。
「お風呂……入りたいな」
ジャラ
腕を動かしてもいないのに鎖がこすれる音……と同時に、お尻が寄りかかっていた岩壁が急に柔らかくなった!