序章 : [大きな穴をまっさかさま]
-ウサギさんはどこ?-
「お尻がはれて大きくなったら許さないんだから」
いくら茂る木がクッションになったとは言っても、強かに打ったお尻が気になってしょうがないアリスは、ウサギさんに追いついたら小言の一つでも言わないと気がすまないわ、とご立腹。
落ちた先の白黒通路を左に折れると、ウサギが突き当たりのトビラに入って行くところでした。
「あそこね!」
アリスはようやく追いつくと思ってトビラまで走りました。
ガチャガチャガチャ
ノブを回しますが、顔が真っ赤になるくらい力をいれても、うんともすんとも言いません。
「なによ、、、カギ穴も無いのにどうしてまわらないの、、、あら?」
それは白いウサギが落としていったものでしょうか。
足元に一冊の本がありました。
分厚くも無く、薄くもない、表紙に絵が載っている訳でもない、何の特徴も無い本でした。
アリスはその本を不思議そうに手に取ります。
「題名も何も無いわ。白いウサギさんが落としたのかしら」
届ければお礼にお茶でも誘ってくれて、ともすれば、仲良くなれるかもしれないわ。
そんな想像をふくらませますが、トビラが開かないのでは届けることができないと、改めて目の前にイライラをつのらせます。
「もう、折角がんばったのに、、、そういえば本に開け方が書いているなんてことないかしら」
それはいい考えね、とアリスは手にした本を開きました。
「えっ、なにっ、、、、!?」
何か(明るいのか暗いの、眩しいのか恐ろしいのか。兎に角、目を瞑らないと大変なことになると思うようなもの)が本から這い出すと、声ごとアリスを包み込み・・・