(´・ω・`) 2037年  晩春  某マンションの一室 (´・ω・`)


  それは、新聞に押しつぶされて少しひしゃげた、薄い水色をした封筒だった。

   俊章
   「わざわざ部屋を回って投函か・・・・・・、一階に集合郵便受けあるのに、ご苦労さんだなぁ
・・・・・・

  どうせセールスや勧誘の類だろうと思い、よく確認せずにリビングのゴミ箱へ向かう。
  ゴミ箱に投げ込む直前、何の気はなしにささっと封筒の裏表を流し見て、違和感を感じ手を止めた。

   俊章
   「
・・・・・・ん? ・・・・・・あれ?」

  封筒をよく見ると、表面には柔らかいタッチの手書き文字(女性が書いたのだろうか?)で「高岡俊章様へ」とだけしか書かれていない。
  住所や企業名などの差出人に関する記載も何も一切無い。


   俊章
   「なんだこれ
・・・・・・。ダイレクトメールなら・・・・・・普通は印刷で大量生産だよな・・・・・・

  不特定多数を対象に量産された郵便物ではなく、僕個人へ宛てられた物らしい事に気付いて、急に興味が湧いてきた。
  も、もももしかしてラブレターかも
・・・・・・!?

   俊章
   「
・・・・・・・・・・・・いや・・・・・・それはねーな・・・・・・

  自分で自分にツッコミながら(一人暮らしのせいか、最近独り言が増えた気がする)仕事部屋に行き、
  封筒の端を切り開けて中身を取り出すと、中には三つ折にされた便箋と写真が一枚ずつ入っていた。
  便箋を開くと、宛名同様、やはり柔らかい女性のものらしき手書き文字が現われた。
  さて、内容は一体
・・・・・・


   「
     突然のお手紙失礼します。
     私達は、夫や恋人とのセックスだけでは満足出来ない女性の集まりです。
     欲求を解消するお手伝いをしてくれる男性を探しています。
     もし興味がおありでしたら、
     ○月○日の午後2時、○○線○○駅前の広場までいらして下さい。
     同封の写真と同じ服装で、お待ちしています。


                                           志保
                                                   」     
   

         chapter102


  同封の写真には、赤いオーバルフレームの眼鏡をかけて、長い黒髪をポニーテールに纏めた女性が写っていた。
  その〝志保〟さんは20代後半~30歳そこそこに見える、しっとりとした色気を漂わせた女性だった。
  ブラウスにネクタイ姿でキャリアウーマン風、
・・・・・・ネクタイを押し上げている胸の膨らみは、とても立派だ。
  口元に添えられた左手の薬指には、彼女が夫を持つ身である事の証が輝いている。
  潤んだ瞳に上気した頬が何ともエロチックだ。
  わずかに開かれた艶かしい唇に、僕はしばらく見とれてしまう。

   俊章
   「これは
・・・・・・一体・・・・・・どういう・・・・・・?」

  予想もしていなかった封筒の中身に、僕の頭は混乱する。
  誰かのイタズラ……? それとも美人局の類だろうか?
  いやいや、その前にこの手紙の送り主は、一体どうやって僕の嗜好を知ったんだ?
  エロ通販の購入履歴や何やらが流出したのか!?
  それとも瞳が友達に喋って、それがどこかに伝わっていったんだろうか!?


   想像上の瞳
   「ウチのお兄ちゃん? ウチのお兄ちゃんはねぇ
・・・・・・自宅で翻訳の仕事してるんだけど……、
    ちょっと趣味が特殊でさ、人妻モノのAVが大好きなんだよね……」
   ↓
   想像上の瞳の友達A
   「聞いた~? 瞳のお兄さんて引き篭もって人妻モノのAVばっかり見てるんだって~」
   ↓
   想像上の瞳の友達B
   「うっわぁマジ? 瞳も大変だよねぇ~」


  想像してみた。
・・・・・・有り得る・・・・・・自分で想像して怖くなってしまった。
  
・・・・・・でも瞳とは同居してないし、まぁ住所は調べれば分かるだろうけど・・・・・・、そんなイタズラするだろうか・・・・・・

   俊章
   「うぅ~ん
・・・・・・

  僕は唸って、もう一度手にした写真に目を落す。

   俊章
   「
・・・・・・それにしても・・・・・・美人だな」

  しかもこれ、彼女の後ろに写っているのはダブルベッドだ。
  ベッドの周囲を見るに、この写真はラブホテルで撮影されたものに違いない。
  それに気付くと、ただでさえ色っぽい雰囲気の女性が余計にエロく見えてしまい、僕の妄想はどんどん膨らんでいく。
  撮影してるのは誰だろう
・・・・・・、セルフ撮影かな・・・・・・、女友達に撮ってもらったのかも・・・・・・
  でももし男だったら撮影だけで済む訳ないよな
・・・・・・、この後一体どんな事をしたんだろう・・・・・・、いや、コトの後かも知れないぞ・・・・・・
  誘いに乗ったら、僕がこの奥さんとあんな事やそんな事を
・・・・・・
  頭の中がもやもやしたまま、手紙を読み返しては写真の女性を見つめ、また手紙を、
・・・・・・という事を何度も繰り返した。
  やがてこれから晩飯を食べようとしていたところだった事を思い出した時には、
  コンビニのレンジで温めてもらった弁当は、すっかり冷たくなってしまっていた。





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