第 一 章
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 某国の山林の中に、隠れるように立っている施設。
 窓一つ無いコンクリート打ちっ放しの外観をした無骨な建物だが、巧妙に隠されたセキュリティシステムが周囲に散りばめられている。
 この施設内では年若い少女達に対して、非合法で非人道的な研究が行われている。
 囚われた少女達にここから逃れる術は無く、ただただ悲哀と悦楽の悲鳴を上げる事しか出来ない。
 だがその悲鳴さえも、施設の外に漏れる事は決して無いのだ。


 被検体番号208。通称、陽菜。
 肩で真っ直ぐに切り揃えられた黒色の髪と、同色の瞳を持った東洋系の容姿をした少女。
 大人しく気弱な性格で、いつもおどおどとしている。
 同時期に配置された他の被検体に比べ、身体的に未成熟過ぎると判断された為にこの部署へと送られてきた。
 この施設で行われている実験では、性的感度が発達していないと精神的・肉体的に致命的な苦痛を受けてしまう場合が多々ある。
 しかし、この施設に送られて来る少女達の多くは性的な経験がほとんど無いのだ。通常は実験の中で感度を徐々に高めて実験に適合させて行くのだが、稀に簡単な実験にさえ掛けるのが難しい被検体が送り込まれてくる。
 ここはそんな被検体の身体的強度を高めるための投薬実験が行われる部署だ。
 陽菜にはさっそく経口摂取及び静脈注射によって性的感度を向上させる薬剤を投与した。
 その際、注射をされる事が恐かったのか、陽菜は両目を強く瞑って小刻みに身体を震わせていた。小さい子にはよくある事だ。
 注射針が刺さった際にはビクリと大きく震えた。思ったよりも痛く無かった事で恐る恐る薄く目を開けたが、自分の腕に針が刺さっているのを見て再び強く目を瞑ったのだった。
 ――投与から三十分。
 陽菜の身体に薬剤の影響が出始めた。
 頬が上気し、全身にうっすらと汗を掻き始めている。
 そろそろ良いだろう。投薬の成果を確認する実験を開始する。



「あぅ……ぅ……おっ、おろして……!」
 下着を剥ぎ取られた上に、服をはだけられた陽菜。
 手足と腰、首を機械によって拘束され、中空に固定されている。
 身をよじって逃れようとしているようだが、拘束は強固で、少女の力で外れるような代物ではない。
 手足の先をバタバタと揺らめかせる事くらいしか彼女には出来はしない。
「うぅっ、うぅぅぅぅ……。何を……するの……?」
 いくら暴れてもビクリともしない拘束に、逃れる事を諦めたのだろう。陽菜は恐る恐る私に尋ねてくる。
「投薬によって上昇した被検体の性的感度を確認する実験だ」
 私は即座に実験内容を彼女に告げる。
 実験内容を被検体が知る必要は無いという研究者も居るが、私は最低限の情報は与えられるべきだと考えている。
 もっとも、それを理解出来るかどうかは被検体次第だが。
「ひ、ひけん……? せい……えっと、かん……?」
 どうやらこの少女には私の言葉が理解出来なかったらしい。混乱した表情で私の言葉を繰り返している。
 理解出来ないのならば仕方が無い。
 彼女が理解出来るまで説明を続ける気も時間も私には無いのだ。
 実験を続行する。
 パネルを操作すると、陽菜を拘束した機械の各所が開き、細くしなやかなパーツが彼女に向かって伸びる。



「きゃっ……! んっ、くっ……あぁっ、ひっ……あっ、あはっ、あははははっ……!」
 パーツの先端が更に開き、無数の細くうねる機械の触手が陽菜の脇と足の裏をくすぐる。
 身動き出来ない状態でくすぐられ、耐えきれずに彼女は全身を震わせて大きな声を上げる。
「はぁっ、あっ、ひっ、ひぃっ……くすぐっ……あひぃっ、やめっ、やめてぇっ……!」
 脇の下や足の裏は感覚神経が鋭敏な部分な為、実験の初期段階としては最適だ。
 感度を上昇された彼女の身体は通常時に比べて倍以上もくすぐったく感じているはずだ。
「はぁっ、はぁっ、ひぅっ、うぁあっ……あひっ……あっ、あぁっ、あぁぁっ……!」
 だが彼女の身体で上昇させたのは性的な感度だ。投薬が成功していれば、いつまでもくすぐったいばかりでは無い。
 少女の様子が徐々に変化を始める。
「はぁっ、あっ……ひっ、んっ、んくぅっ……あぁっ、あっ、あぁっ……!」
 彼女の声に快感の要素が混じって来た。
 頃合いを見計らい、私は実験を一段階進める。



「ひぅぐっ……!? うぁっ、あっ……! ひぃいぃぃんっ……!」
 三本のパーツが機械から伸び、陽菜の両乳首および陰裂を柔らかな触手が這い回る。
 少女の身体の中で最も性的な神経が集まっている場所を同時に責められ、彼女が悲痛な声を上げる。敏感過ぎる感覚が刺激を痛みとして感じてしまっているのだ。
 だがそれもすぐに治まる。
「はぅぅっ、あっ、あぁっ……ひんっ! あっ、あっ、あぁっ、あぁあぁぁっ……!」
 陽菜の身体が刺激に適応し、触手の動きを性的な快感として認識し始めたのだ。
「あぅっ、うぁぁっ……な、なに……これぇ……! あぁぁっ、ひっ、おむねがっ……あぁっ、やぁあぁぁっ……!」
 無数の極細触手によって丹念に責められた陽菜の乳首が硬く大きく突起する。
 突起した事で更に刺激を受け易くなり快感を増す。
「ひぅっ、あっ、うぁっ……! んひっ、ひっ、あぁぁっ、あぁぁっ、あぁあぁぁっ……!」
 生まれて初めて感じている性的快感に戸惑い、涙を流しながら身体を震わせている。
 この様子ならば次の段階に進んでも問題無い。



「あひぃあぁぁぁっ……!? あぁっ、ひっ、ひっ……あぁあぁぁぁぁっ……!?」
 更に5本のパーツが機械から伸びて陽菜の肌を這う。
 その内の三本は先端が吸盤状になっており、彼女の肌に吸い付き刺激しながら這い回る。
「ひぐっ、ひっ、いぁあぁぁぁっ……あぎぅっ、うっ、あぁっ……!? アリッサ、たすけ……あぁあぁぁっ、あぁあぁぁっ……!」
 全身余すところ無く機械の触手に這い回られ、身体中から発生する快感に少女は何が何だか分からなくなってしまっているのだ。
 その瞳は明後日の方向を向き、口を開きっぱなしにして喘ぎ声を上げるだけになってしまっている。
 アリッサとは陽菜と同じ日に研究所へ連れて来られた被検体の事だ。陽菜は彼女に非常に懐いている。
 だがアリッサが陽菜を助けに来る事はあり得ない。彼女も別の部署で実験を受けているのだから。

「ひぁっ、あっ、あっ、あぁっ……んひあぁぁっ、あぁっ、あぁぁっ、あぁあぁぁっ……!」
 陽菜の身体が触手のもたらす快感を安定して享受している事を目視及びデータで確認。
 少女の性的感度は目標値を十分にクリアしている。パネルを操作し、触手達の動きを強化する。
「ひきぃいぃぃっ……!? ひっ、ひっ、ひっ……いぃいぃぃあぁあぁぁぁぁっ……!?」



 ブシャッ、シャッ、ジャァアァァァァァッ……!
「あぎぐっ、うっ、うぅうぅぅっ……ぎっ、ひっ……ぃ……あぁあぁぁぁぁぁぁっ……!」
 陽菜の陰裂から琥珀色の液体が勢い良く噴き出し、放物線を描いて実験室の床へと落ちて行く。
 彼女は目を裏返らせ、歯を食いしばりながら全身をガクガクと震わせている。
 強化された触手の刺激を受けて、性的快感が限界値を超えて絶頂を迎えたようだ。機器に表示されているデータからもそれは明らかだ。
「はぐっ、うっ、ひっ……ひぐっ……ぐっ……うぅっ……うぅぅ……」
 この少女のような未成熟な身体では、快感を得る事はあっても絶頂に達する事は稀だ。
 投薬の成果が確実に現われている。
 このまま経過を観察しよう。
「あがっ、ぐっ……うぅっ……も、もう……ひぎっ、ぐぅ……やめ……あぁぁぁぁっ……!」
 絶頂を終えても止まらない機械触手の責めに、陽菜が根を上げる。
 投薬と初めての絶頂によって身体が敏感に成り過ぎ、感覚を制御する事が出来ないのだ。
 だがデータ上は身体的な問題は現われていない。問題は無い。
「あぐぅぅぅっ、ひっ、ぎっ……!? いぁっ、いあぁっ……あぁあぁぁぁぁぁっ……!」

 シャッ、シャァアァァァッ……!
「はぁあぁぁっ……! あっ、あぁっ……で、ちゃっ……あぁっ……あぁあぁぁぁぁ……」
 陰裂から再びの排尿が行われる。
 連続して絶頂に達してしまったのだ。
「あがっ、かっ……あぁっ、あっ……あぁっ……あぁぁっ……あぁっ……」
 身体中がビクンビクンと痙攣したように震えている。
 それでも機械触手の責めは止まらず、陽菜の身体を延々と責め続ける。
「うぎっ、ぎっ……ひっ……あぁっ、あっ、あぁあぁぁぁぁぁぁぁっ……!?」
 間を置かずに三度目の絶頂に達した。
「あっ……が……ぁ……ぁぁ……ぁ……」
 少女の全身がガクガクと震え、力が抜ける。その目は裏返り白目を剥いてしまっている。
 度を超えた快感と絶頂によって精神が耐えきれず、失神してしまったようだ。
「ぁっ……ぁっ……ぅぁ……ぁっ……」
 意識を失っていても、動き続ける機械触手の刺激に反応して彼女の身体はピクピクと痙攣する。
 それから更に一時間ほどの間、陽菜は機械に拘束されたまま責め続けられたのだった。


 少女が過剰な快感に身悶える様を、我々研究者は冷酷とも言えるほどに感情の籠もっていない目で見つめ、その全てを記録し続ける。
 我々研究者は性的な興奮とは無縁な生き物だ。
 それは我々だけではない。この世界の男性のほとんどが同様の状態になってしまっている。
 性的な興奮を感じる事が出来ず、生殖機能が衰えた人間達。数年前から増え始め、この現象は世界中に拡がっていった。
 男性は射精する事が困難になり、女性は子供を産む事が困難になった。
 ……狂ってしまったこの世界を元に戻す事は出来ないかもしれない。
 だが、せめて少しでも長く維持する為に、この狂った研究を続けるしかないのだ。


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