3月の雪が降る。

こういう珍しい時ってのは、何かが起きるものだ。

まさか、こんな事態になるとは・・・・・。



寺田武、3代目痴漢王。

帰郷してから、すでに4年の歳月が経とうとしていた。

祖父、寺田権六より受け継いだ東北の痴漢王と、

雌豚教育委員会会長の座に座り、

寺田はその職務をこなしていた。

時に悪政に苦しむ地区の議員を痴漢し、

(痴漢のために女性が地位を持つ時代になり、

性スキャンダルがもっとも心象が悪いため)

時に痴漢のプロフェッショナルとして冤罪事件を解決し、

時に痴漢の快楽で活を入れ、人々に生きる気力を与えたり、

痴漢たちを制御して1ヶ月の痴漢量を抑えたり、と

すっかり下の者からの信頼も厚くなってきていた。

そんな時、雌豚教育委員会定例会議が開かれていた。



定例会議

定例会議では、それぞれ東北6件の痴漢王たちが集まり、

議題を出して今後の方針を決めていくと言うものである。

一通り話し合いが終わった頃、秋田の痴漢王、

嶋田より話が上がった。

秋田の痴漢王嶋田、雌豚教育委員会副会長で

寺田の右腕でありブレーンである。

なまはげによる痴漢も彼によって考案されたもので、

様々な痴漢を考える痴漢界の天才だ。

格好もいかにもインテリな七三眼鏡、

通り名、きりたんぽなまはげ。

柔らかくも鬼の用に熱いペニスを持つことから言われている。

そんな彼も、16歳の娘を持つ立派な親なのだ。

話と言うのは、その娘のことであった。

「と、言う訳でして、私の娘ばかりを狙う痴漢がいるのですよ」

「なんと・・・」

「ストーカーかも知れんの」

「して、会長どういたしますか?」

各地の痴漢王たちが寺田に答えを仰ぐ。

「そうだな。ちょっとそいつは危険だ。

委員会に属していない、ルーキーだろう。

いつも同じ相手から同じ時間と言うことは、

そろそろ事が起きてもおかしくは無い」

「そうなんです会長!!だからと言って私がついていけば、

ただでさえ年頃で嫌われているのに、ばれたら嫌われてしまいます。

それに、この話も嫁との話し合いを盗み聞きしたものなんですぅ!!」

嶋田は必死に寺田に訴えかけていた。

(彼も、こう見るとただの父親だよなぁ・・・)

「分かった、俺と権ジイで秋田に遠征する。それで良いだろう?」

喰いかかって来る様に訴える嶋田を宥め、秋田へと向かうことにした。

「あ・・あありがああとうございあぁあぁ」

「分かった・・・分かったから・・・あー鼻水が!!」

涙と鼻水に歓迎され、寺田と元会長権六こと権ジイは秋田へと

旅立っていった。



ガタン・・・ゴトン・・・

通学電車。田舎でも、学生の通学時では満員電車になることもある。

そこに、顔も白くひ弱で、引きこもりのような青年の姿があった。

彼の名前は地井寛、女子高生が大好きなフリーター。

高校の頃に引きこもりになり、何だかんだと28歳、

やっとのことでバイトくらいには社会復帰できるようになった。

しかし、この先の人生を考えると何も希望が無い。

地井は絶望の中、痴漢に走り、嶋田の娘を執拗に痴漢するようになっていた。

次は・・・駅・・・足元に気をつけて・・・・・

終点に着く。

地井も電車を降りた。

(ああ・・・今日も少ししか触れなかった・・・・。

このままでは、あの子といつになっても結ばれない。

どうせ、幸せになれない人生・・・。

それだったら、いっそのこと・・・・・)

「おい、君!危ないぞ、もっと内側を歩きなさい!!」

駅員が呼びかけるが、地井の耳には全く声は届かない。

「おい・・・君・・・」

地井の頭の中には、いかに彼女をヤるか?ということしかなかった。

すがすがしいほどの青空をボーッと見つめながら、

地井は駅のホームを後にした。



「2時間か・・・ついたな・・・」

鈍行で2時間、酒田から秋田には乗り換え無しでずっと座りっぱなし。

寺田と権ジイはホームに降り立ち、大きく伸びをした。

「ほぉーおるのぉ・・・黒タイツの女学生たちがのぉ!!」

春が近かったが、更に北に来たことでまだ足元は肌寒い。

黒タイツを履いた女子校生を見て、権ジイは興奮を抑えきれないでいた。

「おいおい、もういいかげん10代の女に発情するのはどうかと思うぜ?」

「武、何を言う?黒タイツ・ミニスカ・Tバック!!男はロマンを感じるんじゃて」

「そうか?流石にもう俺は女子校生には魅力は感じないがな。

それにTバック履いてる奴なんて、今まで1人くらいしかいなかったけどね」

「現実ばっかり見る奴じゃのぉ。黒タイツ越しに見えるTバック、

それを69の状態で見たときの興奮ときたらのぉ・・・」

「あーもうあきれた。嶋田さんとの待ち合わせには時間あるんだろう?

俺はフォーラス行って、ギターとか服とか見てくるけど?」

「あーそーかい。女子よりギターの方が良いかい。

ギターが恋人かい。それでも痴・・・ムググ」

寺田は必死で権ジイの口を押さえつけた。

きっと、寺田が押さえなければ、痴漢師!!と

駅のホームで高々に吼えていただろう。

「分かった、分かったって!とりあえず、俺は自由行動に入る。

いいか、あくまでも今回は嶋田の娘さんの件で来ているんだからな。

目立ったこと、特におさわりは止めてくれよ」

「分かったわい。ほれ・・・早くサーカスだかフォーカースだかに行って来い」

「フォーラスだよ。じゃあな。ホストにも気をつけなよ」

(たくっしょうがないジジイだぜ・・・)

寺田はさっさと権ジイを置き、フォーラスへと向かって行った。

それを見た権ジイはニヤリと笑みを浮かべ、

駅のホームへ向かって行ったのであった。