「俺はやっていないんだー!!」

悲痛な叫びが駅のホームに響き渡る。

男は、痴漢の容疑で同車両に乗っていた女性警察官に捕まった。

今は若干免罪に対しての理解が深まってきたが、

実際のところ、捕まったら最後である。

男は裁判へと望んだがもちろん敗訴、職と妻を失った。

それから10年のときが経った。



 〜10年後〜

ガタンゴトン・・・

「全く、なんて暑さなの・・・」

佐山響子はハンカチで額を拭った。

その日は特に暑い日だった。

クールビズが浸透してきたにしろ、

こうも混んでいる電車の中では特に意味をなさない。

佐山も半そでのYシャツとスカート姿であったが、

先ほどから流れ出る汗の処理に追われていた。

佐山は女性警察官である。

胸はそれほどでもないが、臀部は形・はりが良く美脚である。

30
を過ぎた今でも崩れることは無く、その体形からか

学生時代より痴漢や変質者にはとても縁があった。

警察官になった10年前、初めて痴漢を捕まえてから味をしめてから

その体形を生かし痴漢をおびき出しては捕まえていた。

佐山にとって犯人を捕まえることは、一種の快感であった。

昔か不快な思いをされていたものに対しての復讐を、

仕事と称して行えるからだ。

(
いい加減、完全に車両を分けるべきだわ!)

脂ぎった中年の男たちに囲まれ、佐山は心の中で嘆いた。

(
でも、こういう暑い日、薄着の日こそ奴らがでるのよ・・・いたわ!)

脂ぎった親父の隙間からかすかに見える女子校生が、

顔をこわばらせ、うつむいていた。

佐山は10年の経験から、すぐに痴漢だと判断できた。

(あいにく、今日は動けないほどではないわ、いくよ!!)

「ちょっとすいません」

プォー!!

佐山は気合を入れなおし、正面にふさがっている男にどいてくれるよう声をかけた。

佐山の気合に呼応したのか、ちょうど汽笛も鳴り響いた。

しかし、男は聞こえなかったのか特に動くそぶりは見せなかった。

(汽笛と声がかぶったかしら?)

「すいません、どいてくれます?」

佐山は再度、男に声をかけた。

だが、また男は動くそぶりを見せず、こちらを見ることもなかった。

(今度はちゃんと聞こえているはず。この男、最初から動くつもりがなかったんだわ!!)

佐山は頭にきて、勢い良くバックから警察手帳を取り出し無言で男に見せつけた。

さすがに男もこちらを振り向いた。

「佐山響子・・・」

男は警察手帳を見て、そう小さくつぶやいた。

佐山はなぜ男が自分の名前を確認したのか、

少しあっけにとられた瞬間だった。

「んっぐ!」

いきなり後ろから手で口を押さえつけられ、

四方からは手をつかまれて、動きを封じられた。

(何!?話なさいよ!!)

ジタバタと抵抗するが所詮女性の力、多数の男たちの力の前では無力だった。

「間違いない、こいつだ」

その姿を見て正面の男はにやりと笑みをうかべ、そう言った。

「こいつが佐山か」

「すっかり老けちまったな」

「悲しいことだが、体はまだまだいけるな」

周りにいる男たちが次々と佐山を見てそう言った。

(一体何?囲まれているの?こいつらは一体!)

いきなりの出来事に状況が飲み込めないまま、

佐山は意味の無い抵抗を繰り返していた。

すると、先ほど女子校生を痴漢していた男がこちらを振り向き、

近づいてきた。

「ボス、こいつです。こいつが佐山響子です」

「こいつが・・・佐山、佐山響子か!」

ボス、と呼ばれた男が不気味な笑みを佐山に向けた。

周りの男たちが4060代ならば、

ボスと呼ばれた男はまだ20代程度と若く見てとれる。

(反応からして、どうやら初対面みたいね。一体、この青年は・・・な・・・なに!?)

ブブ・・・ブブブ!

頭の整理もつかないまま、佐山の下腹部で何かが振動を始めた。

(い・・・いったいこれは・・・アァ・・・ひ・・・響く!)

ボスと呼ばれる男は、いきなり佐山の下腹部に電マをあてがった。

「んん・・・・むぐっ・・・」

手で押さえられている口から、声が漏れ出す。

振動による快楽は恐ろしいものがある。

ペニスにあてがえば勃起し、ヴァギナにあてがえば快楽を呼び起こし、

濡らしていく。

(アアァァァ・・・な、なにこれ・・・。なんなの、この感覚・・・やめて、やめてぇ!)

快楽を呼び起こされ、佐山は首を左右に振りながら、

電マから逃れるためにだんだんと佐山は爪先立ちになっていく。

下着には染みが浮き出し始め、佐山の頬はどんどんと赤く染まっていった。

佐山は、痴漢たちに会い続けた経験から、

男性に対して心を許さなかった。

そのため、イクことどころか電マや性の知識がほとんどなかったのだ。

だからといって、この状況では逃れる術はないのだが・・・。

「よし、STOPだ」

急に、佐山の秘部から電マ離された。

佐山の心の叫びが通じたか、ボスと呼ばれた男は電マをそっと下ろしたのだ。

ガクガクと体を震わせ、力が抜けた佐山を周りの男たちが支えた。

その後、佐山の真後ろにいる男に合図を送り、

首筋にナイフをあてがう替わりに、口から手を下ろさせ、

ボスと呼ばれた男は佐山の顔を覗き込んだ。

「さすがの佐山も電マの前では、女に戻るか。もう濡れているぜ」

めくれたままのスカートの下着を見て、ボスと呼ばれた男が言った。

すっかり純白の下着には、秘部を中心として染みが広がっている。

それだけ、電マは強烈に佐山の性感の真芯をとらえていたのだ。

「そんな・・・ことは・・・ありません。今日は暑いから・・・」

「下手な良い訳だな」

佐山は鼻穴を大きくさせ、呼吸を荒立たせて言った。

快楽に侵食されている頭での、精一杯の言い訳だった。

だが、すぐに気合を入れなおし、呼吸を整え佐山はボスと呼ばれた男に問いかけた。

「一体・・、あなたたちは何者なんですか」

勢いはよいが、ナイフをあてがわれているのでとりあえず小声となった。

「俺はともかく、周りの人間には気づいていいはずだがな、まぁ良い。

10
年前の、この日、覚えてはいないか・・・?寺田直樹が捕まった事件があった・・・」

佐山は、その名前を聞いてハッと思った。

(寺田直樹、忘れるはずも無いわ)

佐山はそう心の中でつぶやいた。

それもそのはず、寺田直樹の捕まった10年前の事件こそ、

女性警察官、佐山響子がこの道で生きていくことを決定づけた事件だったからだ。

初めて捕まえた憎き痴漢、そして女性を痴漢から救った達成感、

それが寺田直樹に持たされたものだったのだ。

その後10年間で、佐山はとにかく免罪であろうとも有無を言わさず

痴漢を捕まえてきたのであった。

「どうやら覚えていたようだな。あれから10年、忘れているかと思ったよ。

アンタを探すのには、苦労しなかった。

寺田直樹の事件から、アンタは次々と痴漢を捕まえた。

やがて、周りの痴漢たちから痴漢ハンターと呼ばれるほどにな」

そう言って、ボスと呼ばれた男は周りを見回した。

(まさか・・・全員痴漢?)

佐山も周りを見回してみると、前に捕まえた顔もちらほらと確認することができた。

そして、確信した。

自分は、最初から囲まれていたことに。

佐山は愕然とし、恐怖とありえない現実を目の当たりにし頭がおかしくなりそうだった。

そこに、さらに追い討ちをかけるかのように、ボスと呼ばれた男は言った。

「そして俺は、寺田直樹の息子だ!!」

ブィィィン!!

怒りと呼応するように、電マが最大出力に設定されうなりをあげ、

再び、佐山の秘部に襲い掛かった。