痴漢王!!

それは、全ての痴漢の頂点に君臨する存在。

戦後、初代痴漢王が誕生してから何十年と経つが、

その間、僅か3人しか痴漢王は生まれていない。

初代痴漢王、シェイクヒップ。

戦後の乱れた裏社会をまとめ上げ、

慎ましい恋愛の概念を吹き飛ばし、

性のある本当の愛を広めた男。

その男の名は、未だ裏SNSの名前に使われ、

痴漢たちのコミュニティサイトとして存在する。

2代目痴漢王、本田勝彦。

とにかくしつこく、狙った獲物は何日かかろうと逃さない

性欲異常者。別名、悪戯王。

彼の執拗な痴漢により、世間は痴漢師の存在を

認めざるを得なくなっていた。

現在は裏社会に潜伏し、痴漢テロを画策している。

3代目痴漢王、寺田武。

父親の冤罪により人生を狂わされた男。

復讐の為に冤罪を引き起こした女性警察官、

痴漢ハンター佐山を警察の前で犯した佐山事件、

自分たちをハメた弁護士、痴漢クラッシャー拝島を

犯した拝島事件、と武勇伝をいくつも持つ。

寺田武の勢力は百鬼夜行とも称され、

ついには、表裏の社会で勢力を伸ばしていた

レイプ請負組織のトップとも言える

痴女女王モリガンをも撃破。

痴女女王との戦いは第1次痴漢大戦として

痴漢史に刻まれた。

この戦いを最後に東京を去った。



このように、痴漢王と呼ばれる存在になるには、

技、カリスマだけではなく、どれだけ大きな事を起こしたか?

ということも大きく関ってくる。

そのため、数々の通り名の付いた札付きの痴漢師は

歴史上多く存在してきたものの、痴漢王と呼ばれるものが

少ないのである。

そして3代目痴漢王、寺田武が東京を去ってから

すでに4年が経とうとしていた。

次期痴漢王候補である息子、佐山武。

寺田武が起こした事件、佐山事件で生まれた

痴漢ハンターと痴漢王のサラブレッドだ。

特に第1次痴漢大戦での功績は、

四天王ともタメをはるものであった。

誰もが武の痴漢王を疑わなかったのだが・・・・・。



「アッアン!!ア・・・ハァ!!武ィ!!アアァア・・・ソンナ・・・カキマワサナイデェ!!!」

キシッキシッと小刻みにベッドが揺れている。

女性は悶え、男はモヤモヤしたキモチを吹き飛ばそうと

一心不乱に女性を愛撫していた。

「ダ・・ダメェ!!ハ・・・ハゲシィ・・ヒィィア・・・アハァ・・ア・・・モウ・・・・ダメェ!!」

グチュ!グチュ!グチュ!

静寂の中、グチュグチュという音だけがその場を支配する。

指だけでの責めだが、すでに女性は限界だった。

「オ・・オネガィィィ!!モット・・・アァァ・・ア・・・キ・・・キチャゥゥゥ!!!!!」

プシャァ!!

見事な潮が吹き上がる。

武は、挿入せずして女性を満足させ、女性を他所にタバコに火をつけた。

「フゥ〜」

「珍しいね。本番・・・したくなくなっちゃった?」

「ちょっと考え事をしていてな・・・」

武は、痴漢王になれなかった。

時代が悪かった。

3代目痴漢王、つまり武の父が表裏で力を発揮していた

レイプ請負組織、ダークストーカーズを解散させたため、

表社会の膿が一気に絞りとられたのだ。

痴漢犯罪の罪が重くなるということは、

性スキャンダルが最も避けたい事である。

痴漢の影響で女性が力を持ち始めたこの世界、

レイプ請負組織を利用する政治かも少なくは無かった。

結果として社会は良い方向へと進み、

劣悪な社会が生み出した負の産物である痴漢師たちは、

軒並み裏社会を去って行ったのだ。

安定した社会、その中でハクをつける事件も起こせず、

武は女を抱いてはイラ立ちを冷ましていたのだが、

それもそろそろ限界を迎えてきていたのであった。

「ねぇ・・・武・・・アァ!!」

ジュバァ!!

武は不意に、女性の乳頭を吸い込み、コロコロと縦横無尽に転がす。

「アァア・・・チョ・・ットォ・・・」

「ハハッ・・・ハハハ・・・・この淫乱女め!!」

クリっと、軽く乳頭を噛む。

「イッ!!アァァアッゥアァハァ!!」

(こんなに簡単に、女を喜ばせるテクがある。

しかし、親父や歴代の痴漢王には・・・及ばないってことなのかよ!!)

そのまま武は勢いに任せ女性を抱き上げ、駅弁の体位で挿入した。

「アッ・・アアァアアァァアア!!」

「オラ・・・オラ・・・オラオラオラ!!」

ブシュ・・・グシュ!!

女性の秘部からは、イヤラシイ音が響く。

体はすでに痙攣を初め、あっという間に追い込まれていった。

「ハッハッハァア・・アッツアアアァアァァアア!!!イィィア・・・サイコーォォォ!!

オマンコ・・・・キモチィィl・・・オマンコ・・アァァあ・・・・イク・・・イキアア・・ア・アイッチャゥゥォウォウ」

「いくぜ・・・この雌豚が!!3代目痴漢王の技・・・セックスプロージョン!!」

武は駅弁の形から飛び上がり、着地と同時に深々とペニスを突き出し、

Gスポットを激しく刺激した。

「アアァァァァアイッチャゥゥゥゥゥ!!!!!!」

爆発的な快楽が女性の脳天まで響き渡る。

女性は体を痙攣させながら、気を失った。

武は女性をそっとおろし、布団をかけてあげると、支払いを済ませてその場を後にした。



大学

「武ちゃん、またホテルからかい?」

「おうシゲ、まぁな・・・」

第1次痴漢大戦より時は流れ、武は大学生になっていた。

チーム西遊記を3代目痴漢王より受け継いだものの、

通り名の付いた札付きの痴漢師たちは軒並み引退。

仲間であり、恩師でもあるチチクリマンボウでさえも、

痴漢師を辞め元の教師へと戻っている。

武はチーム名をTKO(痴漢王)と改名したのだが、

かつて百鬼夜行とも言われたチームには程遠く、

まともに仲間と呼べるのも、小学生の時に一緒に教師を痴漢した

石川茂、彼を含めて数えるほどしかいなかった。

「どうした、元気ないな。フラれたのか?」

「そんなんじゃねぇよ。ただ、昔はよかったなーって」

「昔?まだ俺たち20歳にもなってないじゃん」

「年季が違うんだよ。くぐってきた修羅場がな・・・。」

「おっと、そういや授業前にチョロさんと待ち合わせしてたんだったな。

シゲ、講師には遅れるって言っといてくれよ」

「またか?このままじゃ単位落とすぜ?まぁサボリ癖もほどほどにな」

いつものことか、とシゲは手を振って授業へと向かっていった。



「おう武!」

「チョロさん、久しぶりですね」

武は珍しく笑顔を見せた。

チョロ、通り名「城孤社鼠」、札付きのスリ師だ。

拝島事件で知り合った2人は、それからも交友を重ね、

たまに稼いだ日はこうして顔を出す。

「久々にかなりの儲けがはいってな」

そう言うとチョロはポンっと膨らんだ胸ポケットを叩いて見せた。

「相変わらず凄いですね。今では裏社会では5本の指に入るスリ師、

城孤社鼠を知らない人はいませんよ。

相変わらず、腐った政治家とかからしか金はとってないんですか?」

「まぁな、こんな時代で弱者から金をとっちゃあ可哀想だ。

何だかんだ、寺田さんと会ってから、考えがかまってしまったな。

生活する最低限のこと以外は、私利私欲で動くことは無くなったよ


で、寺田さんからは連絡とかは無いの?」

「それが全く」

武はお手上げのポーズを見せた。

「あれから4年か・・・。すっかり平和になってきたもんだ。

寺田さんの威光のおかげで、俺たちの地位もそれなりに確立されているしな」

「どうだか・・・。全く俺にこってはいいこと無しですよ。

マンボウ先生も引退してしまいましたしね・・・」

「ハハッ、そう言うと思ったよ。マンタローさんは気分しだいでやっているようだけれど、

あの頃の痴漢師は四天王も岡田さんも皆、いなくなってしまったしな・・・。」

2人は仲間たちと過ごした時を思い出していた。

腐った社会が生み出した産物である痴漢師は孤独だ。

不況で仕事が無くなった者、家庭を失った者、だから、仲間意識も結束も強いのである。

しんみりとした空気を振り払い、チョロが何か思い出したかのように切り出した。

「そうそう、今日はスーさんからいいネタを持ってきたんだ」

そう言うと、チョロは掲示板を印刷した紙を武に渡した。

ちなみに、スーさんとはチョロの兄貴分。

情報屋で知られるスリ師でもあり痴漢師でもある。

「イカない女・・・?」

「そう、今痴漢師の中で徐々に火が付き始めているネタさ。

何でも、イカない女がいるらしく、札付きの痴漢師たちも失敗に終わっているらしい。

で、こいつをイカせた奴が・・・」

「痴漢王って訳かよ!!チョロさん、ありがと!!」

鉄は熱い内に打て、武は颯爽と走り去って行った。

「やれやれ、本当に卒業できるんかねアイツは・・・寺田さん・・・」

桜の花が咲き始めたこの季節、そろそろ卒業式の季節だ。

出会いと別れの季節、チョロは3代目痴漢王寺田たちのことを思い出していた・・・。