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地下室に運び込まれた大型犬用の檻の中には、睡眠薬で眠り続ける絵美の姿がある。

 ホストの経験を持つ由紀の手下がナンパしたところ、簡単に引っ掛かり、薬入りの酒を出すバーへとまんまと誘き出されたらしい。

 騙すことは考えていても、騙されることを考えていない辺り、由紀の言っていた小娘という表現は、本当に的を射ている。

【絵美】「ここ、どこよ……」

 俺がじっと観察して数分、浅い呼吸を繰り返していた絵美が、ついに目を覚ました。

【絵美】「――イタっ!」

 睡眠薬が切れた絵美は、周りを確認しないまま立ち上がろうとして檻へと頭をぶつけた。
 その間抜けな姿に苦笑を浮かべながら、俺は絵美を見下ろすように檻の傍へと近寄っていく。

【謙一】「まったく、お前は本当に馬鹿犬らしいな。身体を動かす前に、周りくらい確認するのが普通だろう?」

【絵美】「だ、誰よ、あんた? ここ、どこなのよ。そうよ……それに、これってどういうことよ!」

 ボウっとしていた頭が、ようやく回り出したんだろう。自分が首輪だけを着けた状態で、四つん這いのままで檻の中に閉じ込められていることに、今さらになって絵美は気がついたらしい。

【謙一】「何だ? そんなことは少し考えれば分かるだろう? いや、全部を説明してやらないと分からないんだから、馬鹿犬としては正しい質問なのかもしれんがな」

【絵美】「何よ、バカイヌ、バカイヌって! 人を裸にして、こんな檻に放り込んで、アンタ――変態ってヤツね。そんなヤツが、アタシをバカにするんじゃないわよ!」

【謙一】「おいおい、少しは物を考えてしゃべれよ」