フロンティアV−01

長い長い一夜が明けた。
夕べはリィズの事が気がかりで一睡もできなかった。
僕にとって何よりも大切な妹が、あの変態仮面の欲望の餌食に
なっていると思うと、激しい怒りと悔しさが
込み上げてきて、睡眠どころではなかったのだ。
そして今、心身ともに疲れきった僕の目の前にその二人が居る。
アツアツの新婚カップルの様に、二人仲良く寄り添って・・・。

「グフフフ!夕べは驚いたぞ、リィズ!お前の
乱れっぷりと言ったら・・・ヒヒヒ!あんなに大声で
喘いだら、艦の外にまで聞こえてしまうぞ!」
「だってぇ・・・お兄ちゃんがリィズのアレを・・・
あ、あんなにしちゃうからぁ・・・」
「ゲッヘッヘ!お前だって私のソレをアレしたいと
自分からおねだりしたじゃないか!このスケベめ!」
「やぁっ・・やだぁ!お兄ちゃんのいぢわるっ!もぉ、知らないモン!」
大げさにブリッ子して、拗ねてみせるリィズ。

妹のあんなに甘えたしぐさを見たのは、もう何年ぶりだろうか・・・。
しっかり者の妹があんなに無邪気に甘えている姿を見ると、
兄として鉄仮面に嫉妬せずにはいられなかった。
それほどまでに、奴から強力な洗脳を受けたというのか・・・。

002

僕はこらえ切れずに大声で叫ぶ。
「リィズッ、思い出せ!そいつはお前のお兄ちゃんなんかじゃない!」
「・・・・お兄ちゃん、あの人・・誰? どうして牢の中に入っているの?」
「ああ・・あの男は演説中の私を狙撃した、テロリストの仲間だよ。
奴らの情報を聞き出すために、今はこうして捕らえているのだよ」
「何っ・・・!なんてデタラメをっ!」
リィズの顔がみるみる青ざめる。
「そんなっ・・・私の大切なお兄ちゃんを傷付けようとする
なんて・・・!なんて悪い人!私・・絶対許せないっ!」
「違うんだっ、リィズ!お前の兄はこの俺だ!思い出せ!」
「なっ、何を言って・・・!お兄ちゃんっ、この人変な事言ってる!
自分が私のお兄ちゃんなんだって・・・リィズ、怖いよぉ!」
「大丈夫、リィズには私が・・お兄ちゃんが付いているからな!
フフフフフ・・・この男はどうやら、捕虜になったショックで
記憶が混乱している様なんだ。 それであんな世迷言を・・・」
「そ・・そうだったんだ。 私、ビックリしちゃった!」
「うっ・・・違うんだ、リィズ!俺の話をっ・・・」
僕を完全に無視して、話を続ける二人。

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