体験版 第1話 |
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「ふぅっ……」 お風呂から上がってパジャマへと着替えた奈美香は、真っ先に部屋へ戻ると、ある物思いに耽っていた。 部屋に立てかけておいた写真立てを棚から取り出すと、奈美香はどうしても溜め息を洩らさずにいられない。 すでに成長を遂げていた奈美香は、大人の女性らしい身体の変貌と引き換えに、まるで大切なものを置き去りにしてしまったような、物悲しい気持ちを抱え込んでいた。 (この頃が懐かしくてたまらないなぁ……本当は私がお姉ちゃんなんだけど、翔月に……翔月お兄ちゃんにたっぷり甘えて、すっごく楽しかったな) 奈美香が眺めている写真立てには、小さな頃に弟の翔月と一緒に撮った、とても大切な思い出が刻まれていた。 まだ小さな弟へと向けて、奈美香は抱えていた願望を明かした後で『妹』になりきって甘える自分自身の姿が映し出されている。 オネショが治らない弟と同じように、紙オムツを穿いたまま腕に抱きつく自分の姿を見ると、奈美香は当時の思い出をありありと思い返していく。 訪れてしまった第二次性徴に抗うかのように、奈美香は子供じみた行為に耽っていた……上半身では膨らんだ乳房を抱えながら、下半身では薄いブルーの紙オムツを身に着けて、幻の『兄』へと甘えている。 ギュッ。 (でも、今の私じゃ無理があるわよね。翔月に甘えるなんて……大学にも通い始めたって言うのに。こんなに身体も成長しちゃって……) 昔の甘い思い出を頭の中で思い起こした後、奈美香は途端に現実へと引き戻されて、またしても肩を落としてしまう。 女子大生になったばかりの奈美香は、写真に映し出された頃よりも身体が成長してしまった事実を、胸元で膨らむ膨らみから気づかされていた。 当時もクラスメート達より膨らんでいるのを気にしていた乳房は、思春期としての成長とともに膨らみを増して、もう子供の頃には戻れない事実をありありと思い知らされる。 大きすぎる乳房がコンプレックスに感じている、と言うまで深刻な悩みでもなかったけど、それでも成長を遂げた自分の身体では、いくら願い続けても弟に甘えられないのが、奈美香にとって唯一の心残りだった。 小さな頃の自分自身を懐かしんでも、子供じみた素振りなど弟の前で見せられないはずだ……そう思うだけで、奈美香は切ない気持ちに苛まれてしまう。 (女子校に通っていた頃の方が、もっと気楽で良かったんだけどなぁ……男子達からヘンな目で見られずに済んでたのに) どうして女子大生になったばかりの奈美香が、小さな頃の思い出を振り返ってしまうのか……それは最近迎えた環境の変化に原因がある。 今まで通っていた女子校と違い、共学の大学に通うことになったので、奈美香は不慣れな男子達とも交流を持たないといけなかった。 最初に男子達から受ける視線は、豊満な膨らみを蓄える乳房だった。 自分が異性からどんな目で見られているのかを考えるだけで、奈美香はどうしても不安な気持ちに駆られてしまう。 その結果、奈美香は小さな頃の思い出を……弟の翔月を兄に見立てて、妹として甘え続けていた日々に気持ちを寄せていたのだ。 弟と同じ紙オムツを身に着けたり、子供向けのアニメを一緒に見たり、わざとトイレに行かないままオシッコをお漏らしした後、大好きなお兄ちゃんの手で紙オムツを取り替えてもらったり……女子大生になった今でも忘れられない、奈美香の大切な思い出だった。 * * * * * * 「お姉ちゃんってば……また今日も一人で思い悩んでるみたいだ。ここ最近、ずっとあの写真立てなんて眺めて……」 奈美香が部屋の中で物思いに耽っている様子を、翔月はドアの隙間からそっと覗き込んでいた。 あともう少しで成人まで手が届く年頃だった姉に悪いと思いながら、翔月はどうしても姉の様子に心配を寄せずにいられない。 大学に通うようになってから元気がない奈美香の様子が、弟として気になっていた翔月は、少しでも原因を探ろうとしていたのだ。 最初はお風呂上がりにパジャマへと着替えた後の、色っぽい奈美香の姿を確かめようと、翔月はこっそりと部屋を覗き込むのが習慣になっていた。 「ボクがお姉ちゃんのために、お兄ちゃんになってあげた時の写真なんて、どうして毎日のように見てるんだろう……きっとお姉ちゃんも恥ずかしくてたまらないはずなのに」 今日も奈美香が写真立てを取り出しながら眺めている様子に、翔月は意識を吸い寄せられてしまう。 こっそりと姉の部屋に侵入した後、写真立てに何の写真が収められていたのか、翔月はすでに確かめていたのだ。 小さな頃に、姉の奈美香が自分に対して『お兄ちゃん』と言う言葉を口にしながら、まるで『妹』のように甘えてきた時の写真だと知って、翔月も最初は驚かずにいられなかった。 どうしても昔を懐かしまずにいられない奈美香の様子を、翔月はドアの向こう側からじっくりと眺めていく…… 「それにしても、お姉ちゃんの身体……相変わらずスゴい成長っぷりだなぁ。胸だってあんなに大きくなっちゃって……」 ずっと奈美香の様子を気に掛けるうちに、翔月は段々と別の事柄が気になってしまう。 自分が制服を着込むような年頃を迎えた翔月は、数年前の姉と同じように第二次性徴を迎えると、自然と性的な興味を抱くようになっていた。 いくら身内だとしても、大人の女性としての変貌を遂げている奈美香の姿を眺めるだけで、翔月はどうしても胸の高鳴りを感じずにいられない。 背丈も自分と比べて高い上に、パジャマの上からでも分かるほどの膨らみを携える、奈美香の胸元に翔月は熱い視線をぶつけていく……奈美香がFカップのブラを着けていた事実もすでに掴んでいる。 「正直、お姉ちゃんにしておくのが惜しいくらいだよ……でも、もし今のお姉ちゃんが小さな頃みたいに、ボクを『お兄ちゃん』なんて言ってくれたら……」 姉自身にも明かせないけど、翔月は自分より年上の奈美香に、言い表しようのない気持ちを抱いていた。 他のクラスメート達よりも一早く、大人の女性への変貌を遂げていた奈美香は、翔月にとっての自慢だったのだ……そんな姉が、過去に自分を『兄』と慕ってくれた事実が、今でも翔月の胸に焼き付いて離れない。 まだオネショが治らなかった自分と一緒に紙オムツを穿いて、アニメを見ながら一緒に過ごしたり、さらに姉は一度もトイレに向かわずに、わざと自分の前でオシッコをお漏らしし続けていた。 紙オムツの中にオシッコを溢れさせた後は、自分が可愛い『妹』のために、新しい紙オムツを取り替えてあげていた……大きく膨らんでいる乳房や、薄黄色い液体で濡れた股間を思い返すだけで、翔月は抑えられない感情を漲らせてしまう。 すでに自分も思春期を迎えた年頃で、本来なら姉弟同士として許されないことだとしても、もし叶うなら奈美香とともに甘い時間を過ごしてみたいとすら、翔月はずっと思い込んでいたのだ。 ムクムクムクッ。 「くうぅっ……! どうしよう、お姉ちゃんのことを想像するだけで、こんなになっちゃって……」 あまりにも奈美香の姿に夢中になるあまりに、翔月は思わず小さな呻き声を洩らす。 翔月は目の前にいる姉への欲情を抱いたせいで、気づいたらオチンチンを勃起させてしまう。 きっと奈美香も知らないはずの思いに、翔月自身もじれったい思いを数え切れないほど抱え込んでいた。 もしも奈美香が許してくれるなら、抱え込んでいた熱い気持ちをぶつけてしまいたい……それでも実の姉である奈美香を相手に、エッチな気持ちを抱いてはいけない事実も思い知らされる。 姉の前で少しも明かせない気持ちに、翔月の気持ちは募る一方だった…… 「……ねぇ、翔月ちゃん。いるの?」 翔月がドア越しに悶々とした気持ちを抱えていると、気づいたら姉の方から話しかけてきた。 ドアの方から気配を感じた奈美香は、すぐさま弟の存在に気づいて、眺めていた写真立てを棚へと戻す。 どんなに昔の思い出が輝いて見えても、自分も弟も成長を遂げた後で、少しも叶えられない思いだと奈美香は諦めるしかなかった。 「……あ、お姉ちゃん」 段々とドアの方に近づきながら声を掛けてくる姉へ向けて、翔月は恐る恐る返事を返していく。 まさか部屋の中にいる奈美香の様子を、ずっとドア越しに眺めていたとは言えず、翔月の気持ちはひとりでに焦り出してしまう。 翔月がなかなか返事を返せないうちに、ドア越しに奈美香の足音が近づいてくる。 ガチャッ。 「一体どうしたの、翔月ちゃん。早く寝ないと、明日学校に遅刻しちゃうわよ?」 ついにドアを開けた奈美香は、部屋の前に立っている翔月の様子を気に掛け始める。 すでに夜も更けていたにも関わらず、まだ寝ようとしない翔月を、奈美香は姉として心配していたのだ。 どうして部屋の前に立っていたのか、翔月のおかしな様子を奈美香は疑問に感じていたけど、それでも大好きな弟を放ってはおけなかった。 「ご、ゴメン。お姉ちゃん……あの、耳掻きがどこにあるか、お姉ちゃんは知らないかな?」 姉の奈美香から投げかけられた質問に、翔月はとっさに思いついた言葉を口にした。 さすがに姉の部屋をずっと覗いていたとは言えなかったので、翔月はその場を誤魔化すために、耳掻きのありかを恐る恐る奈美香へと尋ねる。 別に耳が痒かったわけではないけど、この場を乗り切るには他に方法がなかった。 今でも激しい勃起を続けていた翔月は、すぐ傍にいる姉の姿を目の当たりにして、どうしても気まずい気持ちに苛まれてしまう……まさか下半身に漲っている興奮が、目の前にいる奈美香へと向けられたものなど、翔月は口が裂けても言えそうにない。 「はい、翔月ちゃん。いつもここに置いてあるからね?」 翔月の返事を受けた奈美香は、パジャマ姿で一緒にリビングまで向かい、耳掻きをそっと手渡してきた。 弟の他愛もない用事であっても、奈美香はどうしても聞き入れてあげたかったのだ。 今までずっと物思いに耽っていた相手を前に、奈美香も思わず胸の奥底を熱くさせてしまい、傍に居る翔月の前で気持ちを誤魔化すのが精一杯だった。 「あ、ありがとう。お姉ちゃん……」 奈美香から耳掻きを受け取った後、翔月はそっとお礼の言葉を投げかける。 本来ならその場を乗り切るための用事でも、自分のためにリビングまで付き添ってくれる、奈美香の優しげな素振りに翔月はますます胸を高鳴らせてしまう。 姉の柔らかい手触りを手に感じながら、翔月はこそばゆい感情を抱えずにいられない。 (お姉ちゃんにちょっと気を遣わせちゃったかな。でも、下らない用事なんかに付き合ってくれるお姉ちゃんのこと、ボクも放っておけないよ……) 自分のために耳掻きを手渡してくれた姉は、すぐさま自分の部屋へと戻っていった……もしかしたら部屋の中で、また写真立てを眺めているかもしれない。 翔月も同じようにリビングを後にしたけど、奈美香への仄かな気持ちは燃え上がる一方だった。 年の離れた姉弟とは言え、自分に気を遣ってくれる奈美香の素振りに、翔月は言い表しようのない感情を芽生えさせていく…… * * * * * * 「ふぅっ……」 また別の日に、奈美香はパジャマ姿へと着替えた後で、同じように写真立てを手元に引き寄せる。 弟に対して『お兄ちゃん』と口にしながら追い縋った日々は、すでに奈美香の気持ちを鷲掴みにしていた。 たとえ背が低くても、写真の中に映し出されている翔月は、兄としての立場を振る舞いながら、自分に対して優しく接してくれるのだ。 すでに成長した身体を抱えながら、自ら願った思いを叶えてくれる翔月の姿を思い返しながら、奈美香はまたしても溜め息を洩らしてしまう。 (翔月ちゃん……私、この頃に戻りたくてたまらないよぉ。もう一度、翔月ちゃんの前で……) 慣れない大学生活を送るうちに、奈美香は自然と幻の『兄』の存在を追い求めるようになっていた。 まだ学校に通う年頃でなかったはずなのに、第二次性徴を迎えてしまい、思いがけない不安に駆られていた自分を『妹』として甘えさせてくれる翔月の姿に、奈美香はますます抑えられない思いを抱え込んでしまう。 もしも翔月が許してくれるなら、もう一度『妹』として追い縋りたい……そんな気持ちを胸の奥底で募らせるせいで、奈美香は切ない表情を浮かべずにいられない。 コンコンッ。 「誰なの?! もしかして……翔月ちゃん?」 不意に聞こえてきた音に、奈美香は思わず肩を震わせてしまう。 部屋の中で写真立てを見つめていると、ドアをノックする音が聞こえてきたので、奈美香もさすがに戸惑いの表情を浮かべずにいられない。 まさか実の弟である翔月に対して、あらぬ思いを抱いていたなど、決して知られてはいけなかった。 「お姉ちゃん、ちょっと良いかな?」 ガチャッ。 そんな姉の気持ちも構わず、翔月は恐る恐る部屋の中へと脚を踏み入れる。 昨日と同じような時間に姉の部屋を訪れた翔月には、どうしても自分の手で確かめておきたいことがあった。 どうして姉が小さな頃の写真を眺めながら、一人だけで秘かに思い悩んでいるのか……翔月はどうしても奈美香の真相を探らずにいられなかった。 「もうっ、翔月ちゃんってば。いきなり私の部屋に入ってきて。ビックリするじゃない?」 部屋を訪れてきた翔月の姿に、奈美香は思わず戸惑いの表情を浮かべてしまう。 今まで弟に向けてきた感情のせいで、どうしても奈美香は気まずさを感じずにいられなかった……すでに思春期を迎えた弟を相手に、まさか当時のように甘えることなど考えられなかった。 奈美香はまるで自分の気持ちを誤魔化すかのように、手に握り締めていた写真立てをすぐさま隠し始める。 大学生になっても、弟にあらぬ感情を抱いていたなど、奈美香はどうしても知られたくなかったのだ。 「ゴメンね、お姉ちゃん……でもボク、どうしても気になることがあって……」 何かを隠そうとしている姉の素振りに、翔月はすぐさま注目を寄せ始める。 どんなに奈美香が誤魔化そうとしても、後ろに持っていって両手で何を握り締めているのか、すでに翔月は知り尽くしていた。 今日も夜な夜な写真立てを手にしながら、小さな頃の思い出に耽っていた奈美香の気持ちを、翔月はこれ以上無視することなど出来そうにない…… スッ。 「きゃんっ! 翔月ちゃんってば、いきなり何するつもりなの?!」 気づいたら翔月が腕を伸ばして、手に持っていた写真立てを奪われていた。 ずっと隠し続けていた写真立てを、翔月の手であっけなく奪われて、奈美香は思わず慌てふためいてしまう。 必死の思いで言葉をぶつける奈美香だけど、眺めていた写真立てはすでに翔月の手に握られた後だった。 (どうしよう、このままじゃ翔月ちゃんに気づかれちゃうよぉっ……) 翔月がまじまじと写真立てを眺める様子に、奈美香は思わず焦り出してしまう。 いくら昔を懐かしむために眺めていたとしても、小さな頃の写真などを弟に見られるわけにはいかなかった。 第二次性徴を迎えたばかりにも関わらず、翔月と同じ薄いブルーの紙オムツを身に着けながら、嬉しそうに笑みを浮かべている自らの姿を、今になってうらやましいと感じていたなど、奈美香にはあまりにも恥ずかしくてたまらない。 それでも今の奈美香にとって、小さな頃の気分を思い返すことの出来る、とても大切な写真には間違いなかった…… 「お姉ちゃん、今でもこんな写真なんて取って置いてたんだね」 翔月は写真立てに収められた写真を見つめた後、目の前にいる姉にそっと言葉を投げかける。 小さな頃に自分を『兄』と慕ってくれた頃の姉の姿に、翔月は胸の内に秘めた思いを改めて思い返す。 自分が制服を着込むようになった年頃を迎えた今でも、当時の姉は可愛く写っていたのだ……クラスの女子達とは少しも比べ物にならない。 さらに今は女子大生になって、大人の女性への変貌を遂げようとしている姉の姿に、翔月はますます熱い気持ちを募らせてしまう。 「もう、翔月ちゃんってば……私も思い出すの、恥ずかしくてたまらないんだから……」 あまりにも熱い視線をぶつける翔月の様子に、奈美香は返す返事にも困ってしまう。 いくら当時の自分をうらやましいと思い込んでいたとしても、あられもない格好を写された写真など、今さら弟の目で確かめられたくなかった。 オネショ癖が治らなかった弟に倣って紙オムツを身に着けながら、わざとトイレに向かわないまま、起きている間にオシッコをお漏らしして、自分から『お兄ちゃん』と言う言葉を翔月にぶつけながら甘えてしまう……そんな自分自身を振り返るだけで、奈美香にはあまりにも照れくさい。 さらには、そんな小さな頃の思い出が少しも忘れられない自分自身を、目の前にいる翔月に見透かされているような気がして、奈美香は少しも気持ちを落ち着かせられそうにないのだ…… 「それなら、お姉ちゃん……どうして小さな頃に撮った写真、ここ最近になって毎日のように眺めているの?」 目の前で顔を赤らめる奈美香へと向けて、さらに翔月は言葉をぶつけていく。 何故今頃になって、小さな頃の写真を毎日のように覗いているのか、ずっと気になっていたと奈美香の前で告げ始める。 ドアの隙間からそっと覗きながら、写真立てを眺めては憂鬱な気持ちを抱える奈美香の姿に、翔月も段々とじれったい気持ちを抱え込んでいた。 姉がずっと目にしている写真立てには、小さな頃に自分の『妹』になりきった奈美香の姿が収められていた事実も、翔月はどうしても気に掛けずにいられない。 当時の頃を振り返るだけで、翔月は姉へのあらぬ思いを呼び起こされてしまう……もしかしたら目の前にいる奈美香も、同じような気持ちを抱えているかもしれないと、翔月は仄かな思いを募らせていた。 「か、翔月ちゃんってば……」 カアァッ…… 続々と翔月から告げられる言葉に、奈美香の気持ちはますます揺さぶられてしまう。 昔の思い出を振り返っていた事実を、ついに翔月に気づかれた上に、胸の内に秘めていた思いまで暴かれようとしていた。 まさか昔の思い出を振り返りながら、許されるなら翔月に甘えてしまいたいなど、今の奈美香は少しも口には出来そうにない。 それでも目の前にいる翔月は、ずっと自分の返事を待ち続けているのだ…… (もう、翔月ちゃんは知ってたんだ……私が小さな頃の翔月ちゃんに甘えてた思い出に、ずっと振り返っていたのを) 今まで募らせていた思いを、もしも目の前にいる翔月に知られた後、自分がどう振る舞えば良いのか……今の奈美香には少しも理解出来そうにない。 すでに弟の翔月も第二次性徴を迎えて、性への欲求も少なからず抱いているはずなのに、もしも自分の願いを口にしたが最後、姉弟同士であられもない行為にも及んでしまいそうだった。 さらには女子大生になった自分が、思春期を迎えたばかりの翔月を相手にして、妹のように甘えた素振りなどを見せてしまえば、きっと変に思われても仕方がない……そんな気持ちが不意に脳裏をよぎってくる。 自ら抱え込んでいる思いのせいで、奈美香は恥じらいの気持ちに駆られてしまい、目の前にいる翔月に対して、上手く返事を返すことも出来ない。 「あまりヘンなことなんて聞かないでよ、翔月ちゃん。たまたま昔の写真が懐かしくなっただけなんだから……」 それでも奈美香は弟の翔月に対して、恐る恐る言葉を投げかけていく。 小さな頃の写真を眺めていたのも、単に昔の思い出が懐かしくなっただけだと、奈美香は翔月の前で必死の思いで気持ちを誤魔化してみせる。 もしも自ら抱えていた思いを、弟の翔月がいる前で明かしてしまえば、きっと取り返しの付かないことになる……そんな思いに駆られていた姉は、何としても自分の気持ちを振り払うしか他になかった。 何とか翔月の前で反論を返した後も、少しも昔のように振る舞えない自分自身に、奈美香は切ない思いを抱え込んでしまう。 「それよりも翔月ちゃん、早く寝ないと明日遅刻しちゃっても知らないからね?」 翔月から写真立てを取り返した後、奈美香はすぐさま部屋から立ち去るようにと言いつける。 あまり夜遅くまで起きていると、また明日の学校に遅刻してしまうと翔月の前で切り出してみせる。 いくら『妹』として振る舞いたい気持ちを抱えながら、奈美香は本来あるべき姉としての立場を、翔月の前でずっと見せ付けることしか出来ないのだ。 何とか自分の気持ちを取り繕うことが出来た奈美香だけど、自ら翔月へとぶつけた言葉を思い返しながら、どうしても肩を落とさずにいられない…… (あれ、お姉ちゃんの首にあるのって……どう見てもスイッチだよね?) 奈美香が一瞬だけ身をたじろがせた後、必死に自分の気持ちを誤魔化している様子が丸分かりだった。 それでも無理に気持ちを誤魔化す素振りを見せる姉の身体に、ある唐突な物体を翔月は見つけてしまう。 お風呂上りに髪を巻き上げていた奈美香の首元に、見慣れない『スイッチ』らしきものが存在していた。 普段はセミロングの髪で隠れている姉のうなじから、無機質なスイッチが突き出していたのを、翔月はどうしても見過ごすことが出来ない。 「……ねぇ、お姉ちゃん。首に何かヘンなモノが付いてるみたいだよ?」 スイッチの存在がどうしても気にせずにいられない翔月は、恐る恐る奈美香へと尋ねていく。 何故首元にスイッチが取り付けられているのか、奈美香自身に理由を聞こうと思い立ったのだ。 普通なら身体からスイッチが突き出しているなど、あまりにも考えられない状況だったので、翔月はどうしても姉自身に確かめてもらいたかった。 スリスリッ。 「翔月ちゃんってば、今度は何を言い出すつもりなの? 別に何も付いてないじゃない……」 翔月に告げられるまま、奈美香はそっと首の方へと手を回してみるけど、少しもスイッチの存在を確かめることが出来ない。 どんなに首筋を撫で続けても、弟が言うようなスイッチに触れられないのだ。 それでも翔月がしつこくスイッチの存在を訴えるので、奈美香はじれったい気持ちに苛まれてしまう。 きっと自分の気を引こうとして、翔月が変なことを言い出したのだろう……そう思い込みながら、奈美香はそっと首筋から手を遠ざける。 「もう、お姉ちゃんってば。ここだよ……ボクが取ってあげるから、じっとしててね?」 カチッ。 少しも存在を認識出来ない奈美香に代わって、翔月がそっとスイッチを弄ることにした。 姉のキレイなカーブを描くうなじに、今でも表面が硬そうなスイッチが突き出していた……にも関わらず、奈美香自身がどんなに手を触れても確かめられないらしい。 今でも目の前に存在しているスイッチが幻でないことを信じて、翔月はスイッチへと手を伸ばした後、すぐさま押し込んでみることにした。 たとえ姉自身が気づかないとしても、首筋に埋め込まれたスイッチを押してあげれば、きっと奈美香も存在に気づいてくれるはずだと翔月は考えていたのだ…… ガクガクガクッ…… 「い、イヤぁんっ……!」 翔月の手でスイッチを押し込まれた途端、奈美香の身に異変が引き起こっていく。 スイッチを切り替えた直後に、何の前触れもなく悲鳴を上げたかと思えば、さらには全身を震わせ始めた。 その場に立ち尽くしたまま、奈美香は身体を小刻みに震わせながら、それでも襲い掛かってくる衝動のせいで、弱々しい声をすぐさま響かせてしまう。 段々と身体を前に倒しながら、苦しげな表情を浮かべる奈美香の姿に、さすがに翔月も焦りの気持ちを抱えずにいられない。 「ど、どうしたの? お姉ちゃんってば……」 目の前で弱り果てていく奈美香の姿に、翔月は恐る恐る言葉を投げかける。 まさか首筋から生えているスイッチを押しただけで、ここまで姉の身体をおかしくさせてしまうなど、さすがに翔月も想像出来なかった。 それでも奈美香は肩を震わせながら、内から訪れる衝動を身に受けて、少しも気持ちを取り戻せそうにない。 一体姉の身にどんな事態が訪れたのか、奈美香の傍に立ち尽くしながら、翔月はずっと見守ることしか出来なかった…… ショワショワショワッ、ピチャピチャピチャッ…… 「きゃ、きゃうぅんっ……」 翔月が茫然と佇んでいるうちに、奈美香の足元から水音が響き出してきた。 スイッチを押し込まれたショックのせいで、激しい衝動に駆られていた奈美香は、そのまま失禁行為まで冒してしまったらしい。 身に着けていたパジャマの股間部分を続々と濡らしながら、生地の表面から水滴を垂らし続けたり、脚を伝うように流れていったオシッコのせいで、みるみるうちに足元へと水溜まりを作り上げてしまう。 延々とオシッコを垂れ流した後も、奈美香が抱えている身体の震えは収まらないらしく、さらに弱々しい悲鳴を響かせながら、薄黄色く染まった水滴を続々と垂らし続ける。 どうやら奈美香自身も、突然の事態に驚くことしか出来ないらしい。 (どうしよう……お姉ちゃんの身体に付いてるスイッチを押しちゃったせいかな。お姉ちゃんってば、いきなりオシッコなんてお漏らししちゃって……) あまりにも唐突な奈美香の異変に、翔月は何も出来ないまま戸惑い続けてしまう。 首元にあるスイッチを押し込んだショックが、どれくらい姉の身体を支配しているのか……今でも目の前で身悶えている奈美香の姿から、翔月はありありと思い知らされていた。 今でも奈美香は全身を震わせたまま上半身を傾けて、恥ずかしげに膝を重ね合わせながら、股間から新しい迸りを生み出している。 奈美香がお漏らししたオシッコは、股間の辺りだけでなく下半身全体にも及んで、太股から足首までを一気に伝っては水滴を垂らしたり、薄い生地から滲み出ては飛沫を上げたり、さらに姉の身体を濡らす一方だった。 成人も近い身にも関わらずしでかした奈美香の、あられもない失禁の瞬間に、翔月は複雑な気持ちを抱え込んでしまう。 自分がいたずらに身体へと触れたせいで、姉の身体をおかしくしてしまった……そんな思いに苛まれながら、一刻も早く奈美香を救い出してあげようと、翔月が思い込んでいる時だった。 「えうぅっ……ひっく。か、翔月お兄ちゃん……助けてよぉっ!」 ポタポタポタッ、グシュグシュグシュッ…… 目の前ではしたない失禁行為をしでかした奈美香は、さらなる事態を迎えてしまった。 股間から大量にオシッコを溢れさせた後、思いも寄らない粗相に泣き崩れた姉が、目の前にいる翔月にとんでもない言葉を口にする。 小さな頃に姉から聞かされた『お兄ちゃん』と言う単語を、翔月は数年ぶりに耳にしてしまった。 今でも瞳から涙を零しながら、ずっと傍で立ち尽くす翔月に顔を向けて、奈美香は甘えたいような表情を向けてくるのだ。 「えっ、お姉ちゃんってば……どうしてボクを『お兄ちゃん』だなんて呼んでくるの?!」 奈美香が不意に見せてきた、あまりにもおかしな様子に、翔月は思わず驚きの表情を浮かべてしまう。 女子大生であるはずの姉が、まさか自分を相手に『お兄ちゃん』と言う言葉をぶつけてくるなど、さすがに翔月も考えられなかった。 それでも目の前にいる奈美香は、足元に広い水溜まりの上に脚を止めながら、オシッコで濡れた下半身を抱えたまま、必死の思いで翔月に追い縋ろうとしてくる。 不意に投げかけられた言葉に驚かされた翔月だけど、しっかりと奈美香の気持ちを受け止めていく……あられもない発言には、奈美香の気持ちがしっかりと込められている気がしていたのだ。 あまりにも考えられない奈美香の素振りを受けて、翔月はどんな返事を返せば良いか、どうしても思い悩まずにいられない…… |
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