それは、家を一歩出た瞬間の出来事だった。

 柔らかく粘着質で、けれども強靱な、得体の知れないモノに足を絡め取られた。

 それを認識したのと同時、紫色の光が地面から溢れ出した。

【冬真】
「こ、これはっ……!?」

 光が怪しげな方陣を地面に描いていた。

 トラップ――そんな単語が脳裏に浮かぶ。

 

 視界がぐにゃりと歪み、明滅して――暗転した。

【冬真】
「……う……」

 目眩が消えたとき、僕が最初に意識したのは景色の違いではなく、空気の違いだった。

 淫気が充満している。

 一息吸うだけで手足が痺れるほど濃密に――人間界にはこんな場所は存在しない。

【冬真】
(まさか――ここは……)

【???】
「ウフフ、イイ匂い。とびきりの上物がかかったわ――あのコの言った通りだったみたいね」

 背後から聞こえたのは、妖気がこもった淫靡な声。

 

 


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