【冬真】 (戻れたときのために、もう少し情報を集めておこうかな……)
現在、人間が自力で淫魔界に侵入する方法は、僕が知る限りでは存在しない。
だから淫魔界について、わかっていることはほとんどない。
淫魔が生まれ、死んでいく――その程度。
淫魔界の景色だけでも、価値がある。
【冬真】 (動画で……)
僕は懐から携帯を出して、動画モードで撮影を始める。
眼下に建物は少ない。
植生はよくわからないが、空の色が違うからといって、木の色まで違うということはないようだ。
遠くに、巨大な建物があって、その周囲に家々が固まっている。
城と城下町といったところか。もちろん、近づきたくはないけど。
【???】 「――きみ、人間だよね?」
【冬真】 「……ッ!?」
背後から聞こえた声に背筋が伸び上がる。
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