姉妹ヒロイン魔改造

体験版 第1話

「……以上が、ここ一週間のうちに篭浦区で確認された被害の状況である。二人とも、ちゃんと理解してもらえたかな?」

 とある施設の一室に設けられたモニターに、数週間前から記録されていた事件の概要が次々と表示されていく。
 世間では学園都市として知られている篭浦区の女学生が相次いで、巨大な触手による襲撃を受けていると言う報告を受けて、異変調査団「ティル・ナ・ノーグ」が調査の準備を進めていたのだ……巨大な画面には行方不明になった彼女達のプロフィールや、事件が起こった現場が立て続けに映し出されていた。
 動画が終わった後、会議室に呼び出した二人の女性を相手に、室長はさりげなく言葉を投げ掛ける。

「えぇ、十分なほど……それにしても女学生ばかりが被害に遭ってるなんて。あまりに可哀想で……」
「もしかしたら、わざわざ女の子ばっかり狙って襲ってるのかな。いくら何でも酷過ぎるじゃない……絶対に許せないよね、お姉ちゃん?」

 室長の報告を受けて、会議室に呼び出された二人の女性はすぐに口を開く。
 事件報告に目を通す間も、二人は白を基調とした上着に色鮮やかなレオタードを合わせた姿をありありとさらけ出す……様々な危険が伴う調査活動に適応した『ニンフ』の証しとして特殊なコスチュームを、彼女達は自らの立場を表すために装着していたのだ。
 篭浦区で勃発した事件の概要を胸の奥で噛み締める間も、ニンフ・ローゼライト=雨塚あめづか 琴香ことかと、ニンフ・アズライト=雨塚あめづか 藍夢あいむの姉妹はつい胸を痛めずにいられない。

「……そこで、これから君達には篭浦区の調査に当たってもらいたいと思う。被害を受けている女学生の護衛に、年代も近い君達なら接触もしやすいので適任だろうと言う上層部からの判断だ。たとえ鍛錬をこなしている君達でも、相手の正体が分からない以上、いつ危険な目に遭うかも分からない。心して任務を果たしてもらえないか?」

 モニターの映像を閉じた後も表情を曇らせている姉妹へと、室長はある依頼を口にする。
 これ以上の被害が出ないうちに奇怪な事件を収束させるべく、二人を篭浦区へと派遣するつもりでいたのだ。
 そっと返事を待っている間も、彼女達がどんな心境を抱えているのか、こわばった表情からひしひしと伝わってくる。

「……かしこまりました。今回の異変調査、我らにお任せください!」
「あの子達がこれ以上おかしな目に遭わないよう、精一杯頑張ります。私とお姉ちゃんをすぐ篭浦区に行かせてください!」

 張り詰めた声のまま、琴香と藍夢は室長へと返事を返す。
 自分達と年も近い女学生ばかりが被害に遭っていると聞かされて、言い表しようのない気持ちへと掻き立てられていたのだ。
 すぐにでも篭浦区へと駆けつけて、謎の生物による襲撃からか弱い者達を救いたい……自分達に託されている『ニンフ』としての任務を果たしたい決意が徐々に湧き上がるのを感じるだけで、つい胸を熱くせずにいられない。

「ありがとう、二人とも。協力者にも通達あらかじめ通達を飛ばしてあるから、すぐ篭浦区に向かってもらえるか? 現地に到着したら、すぐ準備に取り掛かってくれたまえ」

 毅然とした態度を見せつける二人へ、室長は改めて指令を言い渡すことにした。
 これ以上の被害を食い止めるため、篭浦区で起こった異変の現場へ向かって欲しいと琴香と藍夢に頼み込む。
 二人が現地ですぐに活動できるよう、諸処の手続きもあらかじめ済ませてあると告げた上で、何としても無事に使命を果たして欲しいと、はっきりとした口調のまま言い放つ……

      *      *      *      *      *      *

「ねぇ見て、お姉ちゃん。もう新しい制服を着てみちゃった?」

 室長の指令を受けた翌日、二人は篭浦区で生活する準備へと取り掛かる。
 現地にいる協力者へと挨拶を交わした後、二人で一緒に公園を歩き回りながら、藍夢は何気なく琴香へと話しかける……護衛対象である女生徒に近づくため、ミッション系で有名な聖カッヴィア女学院へと潜入する手筈を整えた後、新しい制服へ袖を通していたのだ。
 同じ女学院で新任教師として過ごすことになった琴香とともに周囲を散策する間も、新品の制服姿を周囲へと見せびらかしながら、つい声を弾ませずにいられない。

「もう、藍夢ってば。これから任務をこなさないといけないのに、いくら何でも浮かれ過ぎじゃない?」

 あまりに嬉しそうな藍夢の表情を見つめたまま、琴香は思わず頭を捻ってしまう。
 大切な任務を果たすために篭浦区を訪れたはずなのに、まるで観光でもしているような妹の素振りがつい気になってたまらない。

「えへへ……だって、他の子みたいに学校で過ごせるなんて初めてなんだもん。ずっと施設暮らしだったし、みんなと一緒に教室でお勉強するのってどんな感じなのかな?」

 琴香の注意を受けても、藍夢はなかなかはしゃぐのを止められそうになかった。
 たとえ任務のためだと分かっていても、同年代の少女達と同じような学園生活を送れるのが嬉しくてたまらない。
 ほんの僅かな時間でも『ニンフ』として課せられた使命から解き放たれて、普通の女の子らしく振る舞えると思うだけで胸が躍って、なかなか興奮が収められそうにないのだ。

「確かに、こんな機会でもなかったら普通の子と同じように学校に通う経験も出来なかったかもしれないわね……でも藍夢、大切な任務のためにここに来ているってことだけは忘れないようにね?」

 嬉しそうな笑みを浮かべている藍夢へと、琴香はさらに言葉を語りかける。
 すでに成人を迎えている自分と違い、年頃の女の子らしい学園生活を心の底から待ち望んでいる胸の内を思い知らされた後、たとえ浮かれている様子が気になっても、いたずらに藍夢の素振りを咎められそうになかったのだ。

「もう、お姉ちゃんだって。そんな堅苦しいことなんて言わないでよぉ……もしかして、もう先生に成り切っちゃってるの?」

 琴香の言葉に耳を傾けながら、藍夢はそっけない返事を返す。
 姉の言い分をありありと気づかされた後も、ほんの些細なひとときだけでも満喫したかったのだ。
 ずっと憧れていた学園都市・篭浦区に、たとえ任務のためとは言え女学生として過ごせるのが何よりも嬉しくてたまらない。

「……きゃぁ!? 誰か、助けてぇっ!」
「やだ、どうしてこんなところに……こんな気持ち悪いものが生えてきちゃってるの!?」
グニュルグニュルグニュル……

 藍夢が琴香とともに会話を弾ませていた矢先に、不意に遠くから悲鳴が飛び込んでくる。
 とっさに声が聞こえた方を振り向くと、木の幹を思わせるような太さの触手がいきなり地面から生え伸びていたかと思えば、たまたま傍を歩いていた女学生へと襲い掛かっていたのだ……胴体を絡め取られるうちにあっけなく掴まったかと思えば、次々と地面から遠ざけられる。
 正体不明の代物に襲われた動揺のせいか、彼女達は感情のままに声を張り上げる。

「お姉ちゃん! きっとあいつが女の子達をさらってた犯人なんだよね?」
「こんな生物、今まで見たこともなかったけど……報告にあったとおりね。藍夢、すぐに片づけましょう?」

 突拍子もなく繰り広げられた状況に、琴香と藍夢はあっけなく視線を奪われる。
 まだ篭浦区に辿り着いて間もないのに、まさか事件の現場に遭遇するなど思いもしなかったのだ。
 身を捩らせながら悲鳴を洩らす女学生を救い出すため、二人はすぐに身構える。

「ニンフ・ローゼライト、着身完了!」
「ニンフ・アズライト、着身完了!」

 目の前に出現した触手を退治するため、藍夢と琴香はすぐに戦闘の準備に取り掛かる。
 腕に装着した金属製のバングルを作動させて、それぞれ『ニンフ』へと変身を遂げていたのだ。
 鮮やかなピンクのレオタード衣装と同色のグローブやストッキング、白いトップス、ピンクのタイトスカートとブーツを身に着けた後、小豆色の長い髪がショッキングピンクに変化するとともに、琴香は『ニンフ・ローゼライト』へと瞬時に変身する。
 藍夢も眩い青のレオタード衣装やグローブとストッキング、白いトップスとホットパンツ、ブーツを装着した瞬間、肩の辺りで切り揃えた紺色の髪がライトブルーに変化して『ニンフ・アズライト』へと変わり果てていた。

「アズライト、あの子達を触手から切り離した隙に……」
「あの子達を触手から遠ざければ良いんだよね。それじゃローゼライト、もう出発しちゃうから、すぐに触手をやっつけて?」

 変身をやり遂げた後、琴香と藍夢は互いをコードネームで呼び合いながら、不気味に蠢く触手へと立ち向かう。
 発光するリング状の武器――ソーサーをしっかりと握り締めたまま、触手に囚われている女学生をどんな手順で助け出そうかと合図を取り交わす。
 触手に捉えられた彼女達を一刻も早く救い出すため、触手の動作をじっくりと見据える必要があるのだ。

「お願いね、アズライト……てぃっ!」
シュルシュルシュルッ……シュバッ!

 藍夢が地面を踏み込んだのと同時に、琴香は武器を放っていた。
 触手の根本へしっかりと狙いを定めた後、手首の捻りを利かせてソーサーを投げると、急回転を起こしながら飛んでいき、胴体部分が一気に切り裂かれる。
 手元に戻ってくるソーサーを待ち受ける間も、触手との距離を詰めている藍夢が無事に女学生を救い出せるかを気にせずにいられない。

「もう大丈夫だよ。残りもすぐにやっつけちゃうから、安全な場所まで離れててね?」
ギュッ。

 今にも倒れようとする触手から、藍夢はすぐに女学生を助け出す。
 どうやら根本とともに神経の通っている部分が切断されたせいか、腰の辺りに絡みついていた触手がいとも簡単に解けていたのだ。
 地面に衝突する寸前で彼女を受け止めた後、しっかりと抱き抱えたまま安全な場所まで距離を離して、そっと地面へ下ろしながら言葉を投げ掛ける。

「きゃんっ!? あ、ありがとうございます……」

 その場に佇む間も、女学生は思わず言葉を詰まらせてしまう。
 いつもどおりに帰り道を歩いていた矢先に正体不明の触手に襲われたかと思えば、派手な衣装に身を包んでいる二人組の女性に助け出されていたのだ。
 自分達を助け出したばかりなのに、光る武器を携えたまま果敢に触手へと立ち向かう彼女達の後ろ姿につい視線を吸い寄せられずにいられない。

「ローゼライト、掴まってた子達はちゃんと避難させておいたからもう平気。残ってる触手達も一気にやっつけちゃおうよ?」

 女学生を助け出した後、藍夢は触手との戦闘へと加わっていた。
 人質の救出を無事にやり遂げたので、すぐに琴香の傍へと身を寄せて、触手が弱っている間に一網打尽にしてしまおうと口にする。

「ありがとう、アズライト。手際が早くて助かるわ。それじゃ一気に決めちゃいましょう……えいっ!」
ビュンッ……ズバズバズバッ!

 藍夢の合図に合わせて、琴香はソーサーを同時に放り投げていた。
 ソーラーが唸りを上げながら飛んでいった後、触手の表面にぶつかると、高速回転を繰り返しながら次々と根本を切り刻む。
 真っ二つに切り裂かれた触手は、まるで悲鳴でも上げているように激しく蠢きながら徐々に形を崩していく。

ブヂュルブヂュルブヂュル……
「ふぅっ……ローゼライト、何とか退治できて良かったね?」

 地面へと倒れ込みながら枯れ果てる触手の様子を、藍夢は琴香とともに見届けていた。
 ちゃんと触手を駆除できたのか、しっかりと確かめなければいけないのだ。
 根元の部分がうねりながら地面に潜り込んだ後、切断された根元も壊死を引き起こして、屍骸だけを地面に取り残していた。
 物静かになった周囲の状況を振り返りながら、つい胸を撫で下ろさずにいられない。

「こんなに縮んじゃって、もう動かないみたいだし。ちゃんと駆除できたみたいね……あなた達、どこか怪我はない?」

 触手退治をやり遂げた後、琴香は救い出したばかりの女学生へと言葉を投げ掛ける。
 藍夢が非難させていたとは言え、触手に掴まっている間に被害を受けてないかと身を案じていたのだ。
 いきなり事件に巻き込まれた彼女達が驚いていないか、つい気にせずにいられない。

「ほ、本当に助かりました。あんな気味悪いものに襲われてたら、一体どんな目に遭っていたことか……」
「そ、そう言えば……あなた達は一体、何者なんですか?」

 近づいてきた二人へと返事を返す間も、女学生はつい言葉を詰まらせずにいられない。
 立て続けに引き起こされた状況の数々を、どう飲み込め良いかも分かりそうになかったのだ。
 特殊な武器を振るいながら触手と戦っていた彼女達が何者なのか気になるあまり、恐る恐る本人達へと尋ね出す。

「私達は異変調査団『ティル・ナ・ノーグ』の者よ。篭浦区の異変を調べるために、最近やってきたばかりなの」
「もし帰るのが不安なら、私達が一緒についていってあげよっか?」

 女学生から不意に投げ掛けられた質問を受けて、琴香と藍夢はすぐに質問を返す。
 篭浦区の事件を解決するために、異変調査団『ティル・ナ・ノーグ』から派遣されてきた者だと口にする……自分達の身元を明かすことで、少しでも彼女達の不安を拭うつもりでいたのだ。
 事件に出くわしたせいか、未だに動揺しているようだと気づいて、互いに顔を見合わせている二人が落ち着くまで、帰り道まで一緒に付き合おうかと誘い出す。

「だ、大丈夫です。寮もすぐ傍なので……」
「今日は寄り道しない方が良いみたいね。すぐ寮まで戻っちゃおうよ……」

 二人へとお礼を返した後、女学生はそっと言葉を交わす。
 傍にある建物を指差しながら、自分達が住んでいる寮も近いので平気だと告げた後、そそくさと現場から立ち去っていたのだ。

「あんな近くに寮があるんだ……この様子なら、あの子達の心配をしなくても良さそうね?」
「うん。私も当分あそこに住むことになってるんだ……でも私達も来たばかりなのに、あんなに早く触手に出くわすなんて思わなかったよね?」
シュルンッ……

 女学生の背中へと視線を向けたまま、琴香と藍夢は変身を解除していた。
 二の腕に装着していたバングルを作動させるだけで、身に着けていたコスチュームが収納されるとともに、先ほど着ていた制服や普段着へと瞬時に切り替わる。
 寮への門をくぐる彼女達の背中を見守る間も、訪れて間もなく遭遇した触手の存在を意識せずにいられない……自分達ですら驚いているのに、彼女達が戸惑っても当然のはずだと痛感させられていたのだ。

「それじゃ寮の見回りは藍夢に任せるわね?」
「うん。お姉ちゃんも宿舎に行くんでしょ。明日から、先生のお仕事を頑張ってね?」

 女学生を触手の魔の手から救い出した後、琴香と藍夢は別々の場所へと向かい出す。
 これから新任教師として務めることになっていた琴香は用意された教員用宿舎へ、転入生の藍夢は寮へ戻らなければいけなかった。
 離ればなれになるのを惜しみながら、互いに教師や女生徒へと扮して、引き続き篭浦区で引き起こされた異変を調査するつもりでいたのだ……

      *      *      *      *      *      *

「……触手との戦闘記録はこれで以上です。この後はニンフ・ローゼライト、ニンフ・アズライトの両名とも、それぞれの住居に向かった模様です」

 現場から段々と遠ざかる琴香と藍夢の姿が、地下神殿に備えつけられたモニターへと表示される。
 数分前に繰り広げられた触手との戦闘記録を、艶々としたラバースーツに全身を包み込んでいる怪しい集団が複雑そうな面持ちを浮かべたままモニターを観察していたのだ。
 学園から帰ろうとしていた女生徒が触手に襲い掛かる様子から、二人が『ニンフ』へと変身して、特殊な兵器を振り回しながら次々と退治する瞬間をじっくりと見据えたまま、当分は視線を離せそうになかった。

「報告ご苦労。それにしても、もう『ティル・ナ・ノーグ』の連中が嗅ぎつけてくるとは……なかなか厄介な存在だな。こうも簡単に触手が敗れてしまっては、計画が台無しじゃないか?」
「大切な触手を退治されてしまったのは少々手痛いですが……彼女達の身のこなし、なかなか興味深いとは思いませんか? まさか『ニンフ』の方から、わざわざ被験者になるためにやってくるなんて思いませんでしたよ……」
「確かに『ニンフ』の適合者が相手なら、どんな実験にも耐えられるかもしれませんね。我々の計画に十分利用できそうなので、何としても捕獲したいところですね……」

 すべての映像が終わった後、集まっていた戦闘員は思い思いに感想を述べていた。
 秘かに押し進めていた計画を、寄りにも代追っ手異変調査団『ティル・ナ・ノーグ』に阻まれたのを嘆く一方、思いも寄らない意見が次々と飛び交ってくる。
 様々な調査をこなすため、特殊な体質を抱いている『ニンフ』への興味を抱くあまり、彼女達を捉えて実験に使おうとまで語り出すのだ。
 本来なら敵である彼女達の肉体をどんな研究材料に使ってしまおうか、考えるだけで興奮せずにいられない。

「ちなみに、こちらが彼女達の素性です。ニンフ・ローゼライトの方は雨塚 琴香と名乗っておりまして、これから聖カッヴィア女学院の新任教師として着任するようです。ニンフ・アズライトの方は雨塚 藍夢と言う名前で、同じく聖カッヴィア女学院の生徒として転入するようです」

 琴香と藍夢が触手と戦う様子をじっくりと観察していた矢先、別のものが追加のデータを持ち込んできた。
 入手したばかりの書類を見せびらかしながら、彼女達の素性をありありと語り出す……どうやら琴香が新任教師として、藍夢が転入生として学園に潜入するようだと報告する間も、思わず声を弾ませてしまう。
 思いがけない拍子に飛び込んできた機会に、つい興味をそそられずにいられない。

「どうやら本格的に、我々のことを調査するつもりでいるらしいな……それにしても学園の中に入り込んでくるなんて、どうやら本格的に我々の存在を調べるつもりでいるらしいな?」
「姉妹で揃って来るなんて、ますます興味深い……まさに『飛んで火に入る夏の虫』と言ったところでしょうかね?」
「例え『ティル・ナ・ノーグ』の回し者だとしても、たかが小娘二人じゃないか。大切な同胞を失った分、存分に『ニンフ』の姉妹を可愛がってやるとしよう……」

 射抜くような眼差しで彼女達の素性や戦闘能力を分析しながら、戦闘員はおかしな相談ごとを始める。
 大切な計画を邪魔するため、わざわざ篭浦区まで乗り込んできた二人を逆に弄ぶつもりでいたのだ。
 事件を嗅ぎつけてやってきた『ティル・ナ・ノーグ』の回し者を、どんな方法で手中に収めようかと口にするだけで、言い表しようのない加虐欲が次々と湧き上がってくる。
 彼らが牙を剥くことで、明るいはずだった二人の学園生活はみるみるうちに暗い影へと飲み込まれていくのだ……

姉妹ヒロイン魔改造
目次
姉妹ヒロイン魔改造
第2話