STAGE 1
「こんな場所で道草食ってる場合じゃないわよね……とりあえず、先を急がなくっちゃ!」
宙に浮いている食べ物に目を疑うまま、瑠美子はそっと遠ざかる。
もしかしたら罠かもしれないと考えて、下手に触らないことにしたのだ。
再び道のりを進んでいる間も、つい頭を捻らずにいられない。
どうして草原の真ん中に分厚いステーキやフルーツの盛り合わせなどが置かれているのか、どんなに考えても理由を掴めそうになかったのだ。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……てやぁ!」
ザシュッ
「ひうぅんっ!?」
草原を歩き回っているうちに、瑠美子は徐々に動きが鈍ってしまう。
慣れない冒険のせいか、段々と身体が疲れ始めてきたのだ。
次々と飛び掛かってくるスライムを迎え撃つ間も、つい息を切らさずにいられない。
何とかスライムの群れを切り払った後も呼吸が整うまで、なかなか思うように脚を踏み出せそうになかったのだ。
ヌヂュルヌヂュルヌヂュルッ……
「あと少しなのに……どうしてこんな時に邪魔してくるのよ!?」
街のある方向に向かっていた矢先、瑠美子はあっけなく脚を止めてしまう。
大量の触手がいきなり地面から生えてきて、行く手を阻んできたのだ。
不気味に蠢く様子に、つい戸惑わずにいられない。
ただでさえ体力が消耗し切っているのに、新たな敵に出くわしてしまうなど思いもしなかったのだ。
『どうやら、誰かが来るのを待ち伏せしていたみたいじゃな。そいつを倒さない限り、どうやら街には行かせてもらえないようじゃから、すぐに倒してしまわんとな?』
その場に立ち尽くしたままひるんでいる瑠美子に、いきなり天の声が話し掛けてくる。
どうやら街に入るためには、群がっている触手を何としても退治しなければいけないようなのだ。
「そ、そんなこと言われたって。少しはこっちの身にもなってよ……!」
チャキッ。
天の声に返事を返す間も、瑠美子は思わず弱音を洩らしてしまう。
すぐにでも街に辿り着いて休憩を取るつもりでいたのに、寸前の所で阻まれるなど思いもしなかった。
とっさに身構えた後も、脚を踏み出すのをためらわずにいられない。
どんな攻撃を仕掛けてくるつもりなのか、相手の出方をしっかりと観察するつもりでいたのだ。
シュルシュルシュルッ、ギチチッ!
「そ、そんな! どうしてこんな近くに……!?」
触手の様子を窺っていた矢先、瑠美子はあっけなく窮地に追いやられてしまう。
いきなり地面が盛り上がってきて、触手が続々と生え伸びてきたのだ。
思いも寄らない拍子に脚を取られて、ついうろたえずにいられない。
どんなに脚を引っ張っても足首に絡んでくる触手がしつこく絡んできて、少しも追い払えそうになかったのだ。
「い、嫌ぁっ!」
ズリュズリュズリュッ……!
少しも触手から抜け出せないうちに、瑠美子は身動きを封じられてしまった。
両脚だけでなく両腕まで押さえ込んできて、ものの見事に吊り上げられていたのだ。
段々と離れていく地面を見下ろしながら、さらに落ち着きを失ってしまう。
不安定な体勢にさせられて少しも踏ん張れないうちに、触手が束になってどんどん近づいてくるのだ。
ギシギシギシィッ、グリュリュッ!
「お、おぐぅっ……かはぁっ!?」
触手を振り解けないまま、瑠美子はとんでもない状態へと追い込まれる。
ただでさえまともな身動きが取れないのに、さらに触手が群がってきてあっけなく全身を飲み込まれてしまったのだ。
手足だけでなく胴体や首筋にしっかりと食い込みながら、全身をきつく縛り上げられるたびに辛くてたまらない。
まともに呼吸するのも苦しくなってきて、段々と意識が遠のいてしまうのだ……