体験版 第5話
「あ、あぐうぅっ……」
ギュッ……
家庭科の授業が繰り広げられる中、潔乃はすぐに落ち着きを失ってしまう。
両手でお腹を押さえ込んだまま、少しずつ背筋を折り曲げていたのだ。
身体の内側から押し寄せてくる衝動に、つい困惑せずにいられない。
当分は席から立ち上がれそうにないのに、とんでもない窮地に立たされてしまったのだ。
グルグルグルッ、ゾクゾクゾクッ。
(どうしよう……まだ放課後にもなってないのに、どうしてウンチしたくなってきちゃうの!?)
いきなり忍び寄ってきた便意に、潔乃はあっけなく気を取られてしまう。
学校で過ごしているうちに、下腹部の欲求に突然苛まれてしまうなど思いもしなかった。
おかしな方向に腸内が揺さぶられるたびに、あまりに苦しくてたまらない。
延々と思い悩むうちに、どうやら便秘をこじらせていたのが原因だと思い知らされる……
「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ……んんっ!」
ブルブルブルッ……
突然の便意に襲われる中、潔乃は懸命に我慢を続けていた。
下腹部にお腹を添えている間も、しっかりと張り詰めている表面の様子を意識せずにいられない。
まさかクラスメート達のいる前で、みっともない失態など冒せそうになかった。
いつまで持ち堪えられるかも分からない中、時計の針ばかりに気持ちが吸い寄せられていく。
(……そう言えば最近、学校で全然ウンチを出さなかったっけ。どうして朝の時に、ちゃんと出てくれなかったのよ……!?)
ひたむきに我慢を続けながら、潔乃は腹痛の原因を考え込んでいた。
必死に頭を巡らせるうちに、とんでもない事実が浮かび上がってくる……ここ最近一度も女子トイレに行かなかったせいか、どうやら便秘を引き起こしてしまったらしい。
段々と重苦しくなってくる下腹部の様子に、つい思い悩まずにいられない。
授業に意識を向けるどころか、容赦なく湧き上がってくる便意の波を堪えるだけで精一杯だったのだ……
「ね、ねぇ。森山さん? 一体どうしちゃったの……?」
キーンコーンカーンコーン……
潔乃のおかしな様子に気づいて、詩織はそっと心配を寄せていく。
何気なく教室を見渡していた矢先、段々と縮み上がっていく彼女の様子が目に飛び込んできたのだ。
周りに気づかれないように声を掛けようとした途端、あっけなく言葉を遮られてしまう。
授業の時間が終わると同時に、スピーカーからチャイムの音が鳴り響いてきたのだ。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
ヨロヨロヨロッ……
休み時間になると同時に、潔乃は慌てて席から立ち上がる。
便意を持ち堪えられるうちに、一刻も早く用を足すつもりでいたのだ。
バケツの置いてある場所へ向かう間も、たどたどしい足取りを取らずにいられない。
脚を踏み出すたびに、張り詰めた腸内が幾度となく揺れ動いてくるのだ。
ギュルギュルギュルッ、ヒクヒクヒクッ。
(どうしよう……いくら決まりごとだって言っても、本当にみんなのいる前で……ウンチまで出さなきゃいけないの!?)
張り詰めたお腹を抱えたまま歩き続けるうちに、潔乃は何とかバケツの前まで辿り着くことが出来た。
すぐにでも用を足したい反面、どうしても準備をためらわずにいられない。
これから教室の中で繰り広げようとしていた行為の凄まじさを、今になって思い知らされていた。
その場に立ち尽くしたまま周囲を振り向くうちに、段々と落ち着きを失ってしまうのだ……
「あれ、森山のやつ。いつもみたいにオシッコしないのか?」
「昨日もオレ達がいる前でパンツを脱いで、バケツにたっぷりオシッコしちゃってたよな……もしかして、生理ってやつなんじゃない?」
「そう言えば、女子の生理ってまだ一度も見たことなかったよな……どんな感じなのか、森山に見せてもらおうぜ?」
潔乃の不振な行動に気づいて、男子達が続々と集まってくる。
普段なら自分達の目も気にせず用を足しているはずなのに、何故か今日に限っては少しも服を脱ごうとしないのだ。
おかしな様子をじっと観察しながら、もしかしたら別の事情でも抱えているのかとまで勘繰ってくる始末だった。
「や、やだっ! 男子達ってば、お願いだからそんなに近づいてこないでよ……くうぅっ!?」
モゾモゾモゾッ……
続々と群がってくる男子達の様子に、潔乃はすっかり困り果ててしまう。
ただでさえ恥ずかしくてたまらない中、おかしな噂まで口々に立てられていたのだ。
とっさに彼らへ文句をぶつけている間も、つい戸惑わずにいられない。
いきなり図星を突かれてしまい、言い返す言葉が少しも思いつきそうになかったのだ。
「もしかしたら森山、オシッコじゃなくて……お尻の方でも我慢しちゃってるんじゃないのか?」
「そう言えば、授業中もずっとお腹を押さえたまま苦しがっていたよな……まさか!?」
「いくら何でも、みんなのいる教室で本当にウンチしちゃうつもりなのか……?」
ひるんでいる様子も構わず、男子達はさらに言葉を続ける。
明らかにおかしな潔乃の素振りを窺っているうちに、とんでもない事実に気づき出す。
もしかしたら便意を我慢しているかもしれないと、わざわざ本人がいる前で口走ってくる始末だった。
「そ、それは……あうぅっ!?」
ヒクヒクヒクッ……
男子達が口にした一言によって、潔乃はさらに弱り果ててしまう。
決して誰にも打ち明けられそうになかった下腹部の状態などを、まさか彼らに見抜かれてしまうなど考えもしなかった。
慌てて返事を誤魔化そうとする間も、言葉を詰まらせずにいられない。
どんなに認めたくなくても、便意に苦しめられている事実だけは覆しようがなかったのだ。
「ちょっと、男子達ってば。どうして森山さんを苛めるような真似なんてしてきちゃうの!」
「本当に男子達って、デリカシーってものが欠けてるんだから!」
「森山さん、大丈夫? もし出来そうにないなら、ちょっとだけトイレを使っちゃおうよ……?」
困り果てている潔乃の様子を見兼ねて、女子達が続々と男子達に詰め寄ってくる。
潔乃の弱みにつけ込んで辱めようとする彼らの振る舞いなど、あまりに見過ごせそうになかった。
もし下手に騒がれても大変なので、傍に居合わせた詩織もそっと潔乃を庇いながら女子トイレに向かうよう薦めていく。
ガラガラガラッ。
「ちょっと待った。森山、まさかトイレに行くつもりじゃないだろうな? まだ防災機関の真っ最中なんだ。勝手な行動は絶対に許さないからな?」
詩織に誘われるままトイレに向かっていた潔乃の行く手を、いきなり誰かが阻んでくる。
授業のために教室へやって来た担任が、女子達の行動に平然と割り込んできたのだ。
たとえ詩織が薦めてきたとしても、規則を破るような真似など決して見過ごせないとまで言い張ってくる。
「やだ、どうして先生が邪魔してくるんですか? このままじゃ森山さんが可哀想じゃないですか……!」
思い掛けない担任の発言に、詩織は呆気に取られてしまう。
潔乃が苦しんでいるのを分かっているはずなのに、トイレに行く許しを決して与えようとしないのだ。
あまりに理不尽な言い分など、耳を疑わずにいられなかった。
とっさに言い返す間も、未だに身震いを続けている潔乃の様子が気懸かりでたまらない。
「何をおっしゃられますか、高桐先生。このままだと他の生徒達にも示しがつかないでしょう……森山、あと少しで休み時間も終わってしまうんだ。もし我慢できそうにないなら、さっさと準備しないか?」
詩織の反論も構わず、担任はさらに主張を続ける。
このまま言い争っていても授業も始められそうにないので、もし便意を我慢しているなら、すぐにでも排便の準備に取り掛かるよう言い放つ。
たとえ本人が嫌がっても、まさか規則を破るような行為など到底認められそうになかったのだ。
「わ、分かりました。すぐ済ませますので……くうぅっ!」
ブルブルブルッ……
担任に詰め寄られるまま、潔乃は恐る恐る返事を返す。
未だに気が引けずにいられない中、用を足す準備に取り掛かるつもりでいたのだ。
恐る恐るバケツの方へ歩み寄る間も、ついうろたえずにいられない。
騒ぎが続くうちに、教室中の注目が一手に自分の元へ集まってくるのだ。
(バケツで用を足すようにって、みんなにずっと注意し続けちゃったんだし……どんなに恥ずかしくても、ちゃんと決まりを守らなくっちゃ!)
目の前にあるバケツをじっと見つめたまま、潔乃はある事実を噛み締める。
保健委員としての立場を果たすために、女子達を相手に散々注意をぶつけていたのだ……どれだけ他人の目が気になっても、学校の規律は何としても守り通さなければいけなかった。
複雑な思いに苛まれている間も、着々と押し迫ってくる便意があまりに辛くてたまらない。
すぐにでも準備に取り掛かりたい反面、周囲からの視線をありありと意識させられていたのだ……
「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ……んんっ!」
プチプチッ、ズルズルズルッ。
なかなか気持ちの整理がつけられないまま、潔乃は用を足す準備へと取り掛かる。
震える手元を堪えながらホックに手を掛けて、一気にスカートを下ろしていく。
穿いていたパンツも太股まで下ろす間も、手元を震わせずにいられない。
男子達もいる教室の中で下半身をさらけ出す状況など、未だに恥ずかしくてたまらなかったのだ。
「おい、森山のやつ……本当にこのままウンチしちゃうつもりなのかな?」
「先生にも注意されたばかりなんだ。今さら女子トイレなんて行けるわけないだろう……」
「森山のお腹に、どれだけウンチが溜まっちゃってるんだろうな……?」
潔乃の物々しい様子を、男子達はじっくりと見つめていく。
どうやら担任に言われたとおりに、本当にこのままバケツを使って排便をするつもりらしいのだ……今まで一度も垣間見たこともない瞬間に、つい胸を躍らせずにいられない。
下半身を丸出しにしたままバケツを跨ぐ潔乃の姿を目で追ったまま、当分は視線を遠ざけられそうになかった。
「や、やだっ! お願いだからそんなに見ないで……!?」
ワナワナワナッ……
続々と下半身に向けられる男子達の視線に、潔乃はあっけなく怖じ気づいてしまう。
ただでさえ人前で排便を繰り広げるだけでも大変なのに、みっともない姿をわざわざ男子達が覗き込もうとしてきたのだ。
思い思いに身を乗り出してくる彼らの様子に、つい縮み上がらずにいられない。
とっさに文句をぶつけている間も、さらけ出した部分をどうしても取り繕えそうになかった。
「森山、早くしないと休み時間が終わっちゃうぞ! お腹に溜まってるもの、さっさと出してしまうんだ!」
困り果てている潔乃の様子も構わず、担任は平然と注意をぶつける。
あと少しで授業も始まってしまうので、すぐにでも排便を済ませるよう言い放つ。
排便の瞬間を人目に晒す程度で手間取っている潔乃の姿など、傍から見ているだけで苛立たずにいられない。
「わ、分かりましたぁ……んんっ!」
ゾクゾクゾクッ……ミリリッ、ミチミチミチィッ!
担任に急かされるまま、潔乃はとんでもない姿をさらけ出してしまう。
バケツにお尻を突き出したまま息んだ途端、ひとりでに尻穴が緩んでくる……ずっと腸内に留まっていた、堅い固形便が続々と飛び出してくる。
下半身から続々と聞こえてくる、弾けるような排泄音を恥じらわずにいられない。
どうしても規律に逆らえそうにないばかりに、あまりに致命的な瞬間を人目にさらけ出してしまったのだ。
モリュッ、モリュリュッ、ムリュムリュムリュッ……
(どうしよう……ついにウンチがお尻から出てきちゃった! 男子達も先生も近くにいるのに、どうしてお尻が言うことを聞かなくなっちゃってるの……!?)
下半身から続々と押し出される排泄物の様子に、潔乃はすぐに意識を奪われてしまう。
ほんの少し踏ん張っただけなのに、すぐ傍まで押し寄せていた内容物が肛門を押しのけてくる……今にもはち切れそうな勢いに、つい焦らずにいられない。
お尻の周辺に熱気が伝わってきて、一気に全身が火照ってくる。
決して人目に晒せないような姿を、寄りにも寄って教室の中で繰り広げてしまったのだ。
「や、やだぁ……はうぅんっ! それ以上、広がらないでぇ……ひぐうぅんっ!?」
ミリミリミリィッ……ブツブツッ、ボトボトボトォッ!
激しい恥じらいに苛まれる間も、潔乃は決して排便を止められそうになかった。
緩んだ尻穴を少しも引き締められないまま、お腹に溜まっていた排泄物を次々と押し出してしまう。
バケツの辺りから響いてくる物音に、つい戸惑わずにいられない。
未だに背後を振り向けない中、どれだけ醜い醜態をクラスメート達にさらけ出しているのか、嫌と言うほど思い知らされていたのだ。
ドチャドチャドチャッ、ムワッ……
「うっはぁ……森山のお尻から、どんどんウンチが出てきちゃってる!」
「こんなに太いウンチ、良く森山のお腹に入ってたもんだよなぁ……」
「うぅっ……! 何てひどい臭いなんだ。こんなもの嗅いでたら、鼻がおかしくなっちゃいそうだよ……!」
悲鳴を洩らしている潔乃をよそに、男子達は夢中になって排便の様子を覗き込む。
内側まで捲れそうなほど肛門が押し広がったかと思えば、腸内から続々と茶色い固形便が飛び出してきて、みるみるうちにバケツの底へと溜まっていく。
興味本位に身を乗り出した矢先、つい顔を背けずにいられない。
鼻を曲げるような異臭が不意に漂ってきて、どんなに顔を逸らしてもしつこく纏わりついてくるのだ。
「やだぁ、森山さんってば……あんなに沢山ウンチなんて出しちゃってる!」
「いくら決まりだって言っても……こんな恥ずかしいことしちゃって、どうして男子達の前で平気でいられるの!?」
「どうしよう……このままじゃ森山さんのウンチの臭いが、教室の中に染みついちゃう!」
男子達だけでなく女子達も、潔乃が排便する様子に度肝を抜かれていた。
便意に任せて、おぞましい代物を尻穴からひり出す様子を目の当たりにさせられて、さすがに驚かずにいられない。
とっさに視線を逸らした後も、鼻を曲げるような臭いが容赦なく襲い掛かってくる。
ついには潔乃の元から慌てて遠ざかって、離れた場所から次々と悲鳴をぶつけてくる始末だった。
「や、やだっ! こんなみっともない格好、お願いだからこれ以上見ないでぇ……あぐっ、ぐふぅんっ!?」
ブリュブリュブリュッ、ニチニチニチィッ!
周囲から続々と向けられる反応に、潔乃は段々と弱り果ててしまう。
決して人目に晒せないような代物などを顔見知りの相手に見せてしまった事実を、自分へと浴びせられる言葉や視線によって否応なく思い知らされる。
申し訳ない気持ちに苛まれる間も、つい呻かずにいられない。
教室の中が騒がしくなる中、少しも排便を止められそうになかったのだ。
モリュッ、モリュリュッ、ボトボトボトォッ!
(どうしよう……こんなに沢山ウンチを出しちゃってるはずなのに、まだお腹がおとなしくなってくれないなんて。どうして私、こんな恥ずかしい思いをしなきゃいけないの……!?)
延々と排便を繰り返すたびに、潔乃は胸の奥底を激しく揺さぶられていた。
どんなに目を瞑っても、あまりに耳障りな排泄音や耐え難い悪臭が容赦なく襲い掛かってくる。
周囲から非難をぶつけられる間も、決してこの場から逃げられそうになかった。
未だに便意が収まらないせいか、尻穴が蠢くのに合わせて排泄物が続々と飛び出してくるのだ……
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……あうぅっ!?」
ワナワナワナッ……
ひたすら息み続けるうちに、潔乃はついに排便をやり遂げることが出来た。
ずっと抱え込んでいた便意が静まった後も、ついうろたえずにいられない。
下腹部の欲求に苛まれるまま、どれだけみっともない醜態をさらけ出してしまったかを否応なく痛感させられていたのだ。
ひとりでに乱れた呼吸を取り戻す余裕すら、当分は抱けそうになかった。
ホクホクホクッ、ムワッ……
(どうしよう、さっき出したウンチでこんなにバケツが埋まっちゃってる……こんな恥ずかしい格好なんて見せちゃって、このままじゃみんなに嫌われちゃうかもしれないのに!?)
下半身から押し寄せてくる湯気の様子に、潔乃はすぐに意識を奪われる。
恐る恐る背後を振り返った途端、とんでもない代物が視界に飛び込んできた……バケツの中に積み上がっている茶褐色の物体など、どう見ても先ほどひり出した排泄物以外に考えられそうになかった。
クラスメート達も見ている中、とんでもない代物をひり出してしまった事実を悔やまずにいられない。
いくら役目を果たすためだとしても、あまりに致命的な瞬間をクラスメート達の前に晒してしまったのだ……
「も、森山さん。大丈夫……?」
俯いたまま縮み上がっている潔乃を、詩織はそっと慰める。
丸出しにした部分を小刻みに震わせている様子など、傍で見ているだけで気懸かりでたまらない。
落ち着きを失っているようなので、少しでも落ち着きを取り戻してもらうつもりでいたのだ。
キーンコーンカーンコーン……
「おや、もう休み時間が終わってしまったのか。それじゃ早速席についてもらえるかな……それでは高桐先生も、そろそろ職員室にお戻りください?」
潔乃の傍に寄り添おうとしていた詩織をよそに、教室中に雑音が響き渡ってくる。
どうやら休み時間も終わってしまったらしく、授業を告げるチャイムが聞こえてきたのだ。
バケツの周りに集まっていた生徒達に注意しながら、詩織にも忠告を突きつける。
これから授業を繰り広げるつもりなので、すぐに潔乃の元から離れるよう言い放つ。
「わ、分かりました……」
フラフラフラッ……
担任に言われるまま、詩織は仕方なく潔乃の元から遠ざかる。
ドアの外に脚を向ける間も、縮み上がっている潔乃の姿が気になってたまらない。
耐え難い後ろめたさに苛まれる中、そそくさと教室から出て行くしかなかった。
廊下に立ち尽くしている間も、教室の様子にすっかり気を取られてしまうのだ。
「あ、あうぅっ……んんっ!」
モワッ……
授業のチャイムが鳴り響いた後も、潔乃はなかなかバケツの傍から離れられそうになかった。
やっとの思いで用を足し終えたので、これから後始末に取り掛からなければいけないのだ……お尻の汚れを拭っている間も、つい手元を震わせずにいられない。
ショーツとスカートを穿き戻して下半身を取り繕った後も、別のことに気を取られてしまう。
これ以上クラスメート達に迷惑を掛けないうちに、悪臭が漂ってくるバケツの中身をすぐ処分しなければいけないのだ。
「森山もいい加減、席についてもらえないか。バケツの中身が気になるのは分かるが、後片づけは次の休み時間まで後回しだからな?」
なかなか席に引き返そうとしない潔乃を、担任はすぐに注意をぶつける。
いたずらに授業を妨げるわけにもいかないので、ホームルームになるまで後片づけを待つよう言い放つ。
すでに生徒達も椅子に腰掛けていたので、潔乃を無理にでもバケツの前から引き剥がすつもりでいたのだ。
「せ、先生……くうぅっ!」
ヒクヒクヒクッ……
担任に詰め寄られるまま、潔乃は恐る恐る返事を返す。
自分の席に向かっている間も、背筋をこわばらせずにいられない。
クラスメート達から続々と向けられる視線を通して、どれだけ惨めな立場に陥ってしまったのかをありありと痛感させられる。
なかなか落ち着きを取り戻せそうにない中、形だけでも授業の準備に取り掛かるしかなかった。
ホクホクホクッ……
(こんな汚いもの、すぐ片付けるつもりだったのに……もしかして授業が終わるまで、さっき出しちゃったウンチをずっと見られなきゃいけないの!?)
授業が繰り広げられる間も、潔乃は胸が締めつけられるような感覚に苛まれてしまう。
教室中に漂ってくる、鼻を曲げるような異臭の存在を否応なく気づかされる……片隅に置かれているバケツに蓄えられた、自らの排泄物が原因だった。
とっさに呼吸を止めたまま、つい思い悩まずにいられない。
排便に手間取ったせいで、自分だけでなくクラスメート達にも不愉快な思いをさせている事実を否応なく思い知らされていたのだ……
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