<ゲームサウンドの作り方 〜 サウンドノベル 〜 ピアノ曲>

■サンプルMIDI・MP3

Novel piano.mid

Novel piano.mp3


■王道のコード進行

何気ない日常シーン等で汎用的に使えるピアノ曲のBGMを作ります.
キーは、Cメジャーキーですが、Amから開始する進行になってます.
理論的には、「C→Am→F→G7」という王道的なコード進行が基本で、
スタートのコードを「Am」にズラしたものになります.(逆循環コードと呼ばれます)
このように、マイナーコードから開始してメジャーコードで終わると心地良い収束感があります


右側は、セブンスコードにした状態です.
セブンスコードにすると、コードの明暗が曖昧になり、爽やかで大人っぽい印象になります
好みの問題ですので、好きなカタチを使うと良いと思います.


■アルペジオ

コードを分散して鳴らすことを、アルペジオと呼びます.
大抵は伴奏パターンとしてアルペジオを使いますが、
アルペジオそのものに特徴を持たせて、曲の個性を出すこともできます.



左側は、16分音符で作ったアルペジオです.
ただ単に、コードトーンをバラして鳴らしています.

右側は、少し変化を加えていて、コードトーン以外の音も入っています.
このように、コードトーンの1つ上・1つ下の音をアルペジオのパターンに加えると、
個性的なパターンが作れます.
また、FM7のパターンは、Am7と同じですが、このように、コードが変わっても、
なるべく音をそろえることで、心地良さが増します
(FM7の部分のコードネームは、厳密には、FM7(9)になっています)

アルペジオでは、「ペダル」データの入力を行って下さい.
MIDIのコントロールチェンジNo.64の値が64以上で「ON」ですので、「127」にすると良いでしょう.

さらに、アルペジオのパターンをイジってみます.
アルペジオだけで曲を作るくらいの気持ちで良いと思います
下の譜例の「P」は「ペダルオン」で、「*」は「ペダルオフ」です.




試しに、パターン全体を1オクターブ上げてみます.
イントロにちょうど良い感じになります.
これをイントロとして2回繰り返し、その後、1オクターブ下げてもとの高さに戻し、メロディを加えていきます.



■Aメロのメロディ

アルペジオは16分音符が多く細かいので、メロディは長めの音符を多用します.
メロディもコードトーンを主体に作りますが、やはりコードトーンの1つ上・1つ下の音を加えると良いでしょう.
なるべく、アルペジオと同じ音を同じタイミングで鳴らすのは避けます
スレーズの最後のメロディは「ド・ミ・ソ」のどれかにするのが無難です.


このメロディとアルペジオを繰り返して、Aメロとします.
まったく同じでも良いのですが、何か変化がないと物足りなく感じるので、
アルペジオに音を足してみます.



低音に音を足してみました.連弾でないと演奏不可能とも思えますが(笑)
このように、最初のフレーズでは手加減した伴奏パターンにしておいて、繰り返し後に
音数を増やすと効果的
です.
なお、伴奏のピアノは、トラックを2つ使って、高音と低音で分けておくと、
後で音量バランスを取り易くなります.
メロディ部分と合わせて、計3トラック使っていることになります.
(サンプルMIDIでは、17小節目から分けて入力しています)


Bメロのコード進行

後半部分を作っていきます.後半も王道的なコード進行を使います.



Cメジャーキーで表すと、「CM7→FM7→G7→Am」ですが、
これを、そのまま音を1つ下げて(全音下げて)「B♭M7→E♭M7→F7→Gm7」にしています.
B♭メジャーキーに転調していることになります.
このように、もとのキーから少し音を下げた転調を行うと、落ち着いた感じになります
逆に、音を上げた転調は、盛り上がる感じや高揚感が出ます.

メロディですが、色々とテクニックを使っていきます.
まず、Cメジャーキーから突然B♭メジャーキーに転調しているので、スムーズに聴かせるために
後半のメロディの最初の音を「ド」にします.(コードは、厳密には「B♭M7(9)」になります.)
こうすることで、前半からの音のつながりが保てます.




コードにそって、メロディと伴奏を作るワケですが、上記のように、低音以外はまったく同じ音を繰り返しています.
コードが変わっても特定の音を鳴らし続けることを「ペダルポイント」と呼びますが、それを応用したものです.
ロックのリフのように、短いメロディを繰り返すものです.
同じパターンを繰り返すことで、ミニマルミュージックのような、すり込み効果があります.

Bメロの後半ですが、メロディに動きがない分、コード進行に変化を加えていきます.



コード進行は、「E♭m7→B♭→C7→F7」というものを使っています.
(Cメジャーキーで表すと、Fm7→C→D7→G7になります)
理論的には、「E♭m7」は、サブドミナントマイナーと呼ばれるコードで、切ない雰囲気を作ります.
「C7」は、次の「F7」に対するドミナントコードで、ドッペルドミナントと呼ばれます.



さらに、Bメロの後に「終止保留」と呼ばれるコード進行と、「sus4」コードを入れて、
もったいつけて終わるような感じにしています.
コード進行は「G♭M7→A♭→B♭sus4→B♭」をです.
(Cメジャーキーで表すと、A♭M7→B♭→Csus4→Cになります)


伴奏パターンでは、かなり高音域を使っています.
このように、メロディの音域を挟み込むように伴奏を入れると盛り上がります.



仕上げ

作曲ソフトの機能にもよりますが、音符の発音タイミングを微妙にズラしたり、
ベロシティ(音の発音時の強さ)に変化を加えてリアリティのある演奏に
します.
こういったデータをランダムで設定できるなら、利用すると良いでしょう.
ズラしすぎると、単に下手な演奏になるので注意です.

また、音楽的に物足りない感じがしたら、後半にスローストリングスを軽く加えてみても良いでしょう.
リバーブを深めにして、ボリュームやベロシティは控え目にします.
このような補助的なストリングスでは、2声(2音)のみにするのが無難です.
つい、音を多く入れてしまいがちですが、あくまでメインはピアノです.
一番最後の小節も、ピアノだけのほうが良いでしょう.
また、パンポット(音の位置)を左右に分けます.



曲のキーは、Cメジャーキーで開始していますが、作曲後に、曲全体のキーを変えると印象も変わってきます.
イメージに合う高さになるまで、色々試してみて下さい.
より可愛らしい感じにしたいなら高く、落ち着いた感じしたいなら低くすると良いでしょう.
サンプルでは、半音上げています.


最後に

ピアノ曲は、ちょっとしたBGMに使えるので便利です.
ここでは、サウンドノベルや恋愛SLGなどの、平和な通常時のBGMのようなイメージで作りましたが、
ドラムやベースを入れたり、テンポアップしたりなどで、もっと躍動的にすることもできます.
作った後で、いくらでもアレンジできるので、ピアノで簡単な曲を作ることに慣れておくと便利です.