傲慢女上司、服従せよ。 体験版

第1話

「そ、そんな恥ずかしいこと……いくら何でも出来るわけないでしょ!?」
ヒクヒクヒクッ……

 あまりにとんでもない笹本の言い分を、私は夢中になって跳ね除ける。
 いくら尿意に苦しめられていても、まさか職場で用を足すような真似など出来るわけがなかった。
 もし浄水器のペットボトルにオシッコなどを放り込んでしまえば、何故固まっている液体を誰かに不審がられてしまうかも分からない。
 必死の思いで言い返した後も椅子に座ったまま、少しも腰を持ち上げられそうになかったのだ。

「おや、本当にいいんですか? 課長がずっとオシッコを我慢してて大変そうだなって思ったから、用を足す方法を教えてあげたって言うのに……このままじゃお昼休みが終わっちゃいますよ?」

 私の気持ちを少しも構わず、笹本は少しも悪びれず言葉を続ける。
 席を立てないのを良いことに、無理にでも職場で排尿させるつもりらしいのだ。
 ついには言い争いを続けるうちに、他の社員達が戻ってきてしまうと急かしてくる始末だった。
 目の前に立ちはだかったまま丸出しの下半身を睨みつけてくる、彼のいやらしい目つきがあまりに恨めしくてたまらない。

「そ、そんなこと言われたって……大体、あなたが服を返してくれれば済む話じゃない……はうぅっ!?」
カクカクカクッ、チョロチョロチョロッ。



 必死の思いで笹本に言い返そうとした途端、私はとんでもない事態を招いてしまう。
 間近にいる彼から向けられる視線を避けようと腰を引いた拍子に、股間がひとりでに緩んでしまったのだ。
 いきなり溢れ出してくる、生温かい液体の感触につい焦らずにいられない。
 気づいたら股間の周辺が、段々と濡れていく始末だった。 

「い、嫌ぁっ……! お願いだから止まってってば……あくうぅっ!?」
ジトトトトトッ、ジュワジュワジュワッ。

 思わぬ拍子に引き起こした失禁を、私はなかなか思うように止められそうになかった。
 ずっと無理な我慢を続けていたせいか、緩んだ部分をどうしても引き締められそうにないのだ。
 はしたないせせらぎが湧き上がるうちに、腰掛けている椅子の表面が着々とオシッコで浸っていく。
 気づいたらお尻や太股の辺りまで、はしたない液体が忍び寄ってきてたまらない。

「あ、あぁ……ど、どうして止まってくれないのよぉ!?」
ピチャピチャピチャッ、グシュグシュグシュッ……

 延々とオシッコを垂れ流してからしばらくして、私はやっとの思いで尿意を静めることが出来た。
 ずっと苦しめられていた感覚が消え失せた代わりに、とんでもない惨事が下半身に作り上げてしまった……気づいたら椅子がオシッコまみれになっていて、腰をくねらせるたびにはしたない滴が零れ落ちてくる。
 ものの見事に尿意に打ち負かされてしまった事実など、あまりに悔やまずにいられない。
 まさか笹本に迫られるまま、自分の席を台無しにしてしまうなど考えられない事態だった。

「まったく、ここまで課長のお股が緩いなんて思いませんでしたよ。ここまで世話の焼ける人だったなんて、本当に思いもしなかったんですから……?」

 困り果てている私の様子も構わず、徐々に足音が近づいてくる。
 粗相をしでかす様子を眺めていた笹本が、いきなり私の元に近づいてきたのだ。
 文句をこぼしながら段々と距離を詰めてくる、彼の気配がひしひしと伝わってくる。

「や、やだっ! 今度は一体、私をどんな目に遭わせるつもりなの……きゃんっ!?」
ポタポタッ、ピチャチャッ。

 部下の思わぬ行動に、私はあっけなくひるんでしまう。
 いきなり肩を掴まれて、強引に席から立たされていたのだ。
 姿勢を変えた拍子にはしたない液体が零れ落ちてきて、あまりに不愉快でたまらない。

クシュクシュクシュッ、プシュッ、プシュッ。
「課長、ちょっとだけおとなしくしててくださいね……ふふっ。それにしてもこんなに沢山オシッコが染みちゃって、さすがに片づけ切れないかもしれないな?」

 戸惑っている私を後目に、笹本は意外な行動を取っていた。
 傍にあったタオルを手に取ると、椅子の上を浸していたオシッコを拭っていく。
 床に零れた液体も拭い去ると、仕上げに消臭スプレーを吹き掛ける。
 後始末を続けている間も、鼻を突くような異臭を彼に嗅がれてしまっていると思うだけで恥ずかしくてたまらない。

「ふぅっ……たっぷり食事も摂ったことだし、午後も頑張るか?」
「今日の日替わり定食は当たりでしたね?」

 笹本の手によって後始末をやり終えたと同時に、社員達が次々と職場に戻ってくる。
 粗相の後始末に明け暮れるうちに、気づいたらお昼休みが過ぎてしまっていた。
 きっと彼らも、数分前に私が粗相をしでかしてしまったなど露ほども思わないだろう。

「課長、そろそろオレ達も食事に行きましょう……」
スルスルッ。

 社員達の様子を窺っているうちに、笹本がさりげなく話し掛けてくる。
 私のコートを手渡してきて、一緒にお昼休みを摂ろうと誘い出してきたのだ。
 彼に言われるままコートに袖を通している間も、つい手元をこわばらせずにいられない。

フラフラフラッ……
(まだ、椅子もこんなに濡れちゃってるのに……本当にこのまま、食事にも向かわなきゃいけないの……!?)

 笹本に連れられるまま職場を飛び出している間も、私は自分の席を振り返らずにいられなかった。
 他人の手を借りて後始末を済ませたと言っても、まだ椅子の所々にはしたない痕跡が残されていたのだ……暗い染みが浮かび上がっている椅子の表面から、鼻を突くような独特の臭いが自然と立ち昇ってくる。
 自ら垂れ流してしまったオシッコのニオイなどを消臭スプレー程度でちゃんと誤魔化せるのか、あまりに気懸かりでたまらない。
 未だに気が引けずにいられない中、不審な素振りを誰にも疑われないうちにこの場から抜け出すしかなかったのだ……