―レッスン中―
「……ほら、挨拶はどうしたの?」
「わ、分かりましたっ! よろしくお願いします……!」
レッスンが始まる直前、講師がいきなり叱責をぶつけてくる。
どうやら、なかなか挨拶をしない様子が気に入らなかったらしい。
いきなり怒られて驚いているのか、姫はやけくそ気味に頭を下げ始める。
礼儀に厳しいのを分かっているはずなのに、まともに挨拶も出来ないなんて何と学習能力のないことだろう……
「何度も練習したはずじゃない! ほら、もっとしっかり脚を上げなさい!」
「そ、そんなこと言われたって。これ以上脚を持ち上げたら、本当に裂けちゃいそう……!?」
ピクピクピクッ……
講師が指揮を執る形で、着々とレッスンが繰り広げられていく。
合図に合わせてアラベスクのポーズを取っている間も、すぐに注意をぶつけてくる。
不格好な姿勢をじっくりと睨みつけながら、ちゃんと開脚するよう言い放つ。
さすがに姫も苦しくてたまらないのか、文句をこぼす始末だった。
まるで大根のように太い脚を持ち上げるのに苦戦している様子など、傍で見ているだけで滑稽でたまらない。
(もしかしたら、呪文を使ってみるのに好都合かもしれない……!)
不様な姫の姿を見つめているうちに、ある考えが脳裏をよぎってくる。
レッスンに夢中になっているようなので、今のうちに姫に悪戯を仕掛けてみても面白いかもしれない。
朝も用足しを我慢していて、すでに身体の準備も整っている。
こんなにつま先を震わせてしまって、幸いにも無理な体勢を続けるのに精一杯なようなので、懲らしめるには絶好の機会だろう……