(01/05)
早退してベッドに潜り込んだありすは、旧校舎の男子便所での恥辱を忘れようとした。
保健室では微熱があると言われたが、自主早退した事の罪悪感も内向的なありすにとっては大きなものだった。
white_rabbitからのメールが来るのではという恐怖心もあった。
羞恥心も罪悪感も恐怖心も、普段のありすにとってはまるで縁の無かったものだ。
ありすはベッドの中で震える事しか出来なかった。
……しかしその日は何事も起きなかった。
共働きの両親は相変わらず遅い帰宅で、ありすと顔を合わせる事は無かった。
早退した事で学校から両親に連絡が行ったという事も無く、クラスメイトの誰かからメールが来るような事も無かった。
翌日、ありすは学校を休む事にした。
掲示板に裸の写真が張り出され、男子便所であのような事をして、もし誰かに気付かれていたらと想像すると、とても普通に学校に行く気分になれなかったのだ。
一人きりの部屋の中、静寂だけがありすの気分を落ち着かせた。
このまま何も起きないで済むのでは……と思い始めた矢先、玄関のチャイムが鳴った。
学校の誰かに知られ自宅まで来たのだろうか、先生が様子を身に来たのだろうか、それともなにか予想外の不幸が起きるのだろうか……と不安と恐怖で居留守を装おうと思ったが、「宅配便です」という声にありすは安堵した。
一応の用心をしつつ玄関を開け、荷物を受け取ってサインをした。
別段なにも問題なく、宅配業者は次の配達先に向かっていった。
しかし安堵したのも束の間、荷物のあて先がありす自身になっていた事に青ざめた。
宅配分の荷物は親宛だろうと思いこんでいたが、ありすに届けられた荷物だったのだ。差出人はネット販売サイトのものになっており、誰からの荷物なのかわからない。
しかし、差出人の正体は考えるまでも無かった。
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