(01/05)
男子便所に入ってきたのは、どうやら部活の朝練を終えた男子生徒達のようだった。
数人いるようだが、個室に入ったありすには何人いるのかわからなかった。
男子生徒達はトイレの個室の中に全裸の女子がいるとも知らず、品の無い笑い声をあげて談笑していた。
その談笑が静かになってくると、なにやら荷物を弄る音が響き、何かの音がしてから息をひそめるように静かになった。
……そして何かの煙の臭い。
ありすは、薄汚れたトイレの墨に煙草の吸殻が落ちていた事を思い出した。
優等生とは言えない男子生徒達が、隠れて煙草を吸う場所としてこの男子便所を使っている事は明白だった。
(はやく……早く出て行って……!)
掲示板に張り出された全裸写真と同じ姿で男子便所に隠れているところが見つかれば、言い逃れする事も出来ない。
ましてや隠れて煙草を吸っているような男子達だ。何をされるかわからないし、何をされても抵抗できない。
ありすは息を殺して男子生徒達が去るのを待ったが、一向に出て行く気配は無い。
男子達は教師に見つかる事を恐れてか、あまり物音を立てなかった。
その静寂は、わずかな物音でも男子に気付かれてしまうように思えた。
袋から制服を取り出し着替える衣擦れの音さえ大きな音として響いてしまうだろう。
ありすは呼吸音さえ響かないようにして男子達が去るのを待った。
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