(01/02)
 ありすは無口で物静かな少女だった。

 サイズの小さい制服でもゆとりがある華奢な身体つき、未だクラスメイトに友人も出来ないほど内気な性格で、男子生徒とは一度も口を利いた事さえ無かった。
 もちろんキスをした事も、男子と手をつないだ経験さえない。
 恋愛感情というものさえよくわからない。
 ませたクラスメイトの何人かは既に誰かと交際しデートしているようだが、ありすにとっては別世界の出来事のように縁のない出来事に様に思えた。

 制服はありすの未熟な身体にようやく馴染んできたが、ありす自身は学校に馴染めないままだった。
 ありすの両親は共働きで不在の事が多く、自宅でも学校でも一人きりでいる事が常だったので、孤独や寂しさを感じる事は無かった。

(02/02)
 夏が近付き1学期も後半に差し掛かった頃。

 見知らぬ宛先からのメールが届いた。
 差出人は「white_rabbit」。
 まるで心当たりのない名前だった。

 ありすは誰かの悪戯だろうと思いつつ、そのメールを見た。

 添付ファイルの画像には、ありすの姿が映っていた。

 その画像を見て、ありすは青ざめた。  たぶん風呂上がりの時であろう、時一糸まとわぬ姿で部屋でくつろぐありすの姿は、もちろん他の誰かが目にする筈のない姿だった。

(どうして、こんな写真が……!)

 メールの内容を読んで、ありすは更に青ざめた。

件名:「白ウサギより、ありすちゃんへ」

学校の旧校舎のの男子便所で全裸になって、オナニーをしなさい。
イクまでオナニーをやめてはいけません。
添付写真を学校の男子全員にメールされたくなければ、私の命令に従いなさい。
嘘と思うなら、明日の朝、誰よりも早く学校に行けばわかります。

 (いったい誰? どうしてこんなエッチな事をさせようとするの?)

 しかしこんな事をするような人が誰なのか、まるで思い当たらない。
 イジメられてもいないし、友達もいない。
 学校でも目立たないありすはイジメの対象にもなっていなかったし、無口なありすには親しい友人もいなかった。
 もちろん、こんな事を命令される心当たりはなかった。

 盗撮されたのかと部屋を見渡したが、隠しカメラのようなものは見つけられなかった。

 ありすは青ざめた。
 もし本当にこんな写真が男子全員にメールされたら、ありすはもう学校には行けなくなるだろう。

 イタズラやイジメで済まされる事ではない。
 「脅迫」というのが一番正確だろう。
 勿論、ありすに脅迫されるような心当たりは無かった。

 しかし全裸姿の画像を添付されていては、内気なありすは親や教師に相談するという事も出来なかった。帰りが遅く仕事で疲れている両親にこんなメールの相談は出来ないし、教師に裸の画像を見せるわけにもいかない。

 (いったい、どうすればいいの?)