本作品内の出来事は架空世界での事象であり、現実世界には何ら関係がありません。本作品は、犯罪・暴力の場面を含んでいますが、著者は、これらを助長する意図はなく、現実世界におけるあらゆる犯罪・暴力に反対します。

###その男
　その男は人生に飽きていた。莫大な規模の不動産と金融資産を親から相続し、生活に困る心配はなかった。家賃収入と株の配当金などが毎月口座に自動的に振り込まれる。税金を差し引いても資産は増えていく一方だった。
　世間体のためにいくつか仕事もしたが、どれも長続きはしなかった。ただ、何もしないでいると、一日が長く感じられ、それも苦痛だった。
　車やゴルフやクルーザーなど、金のかかるような趣味は一通りやったが、飽きっぽい性格のその男は、どれも長続きはしなかった。最後に残った趣味が、新宿の売り専バーに出掛けて若い男を買うことだった。
　気に入ったボーイがいれば、あちこち旅行にも連れて行った。ボーイと一緒に景色を見たり、美味しい物を食べたり、性行為をしたり……。
　それなりに楽しんだが、所詮は疑似恋愛。ボーイの表情を見れば、金のためと割り切って付き合っていることがよくわかる。情事を終えて帰宅すると、スッキリしたというより虚しさだけが残った。
　かなりの金額を使っていたから、その界隈では有名だった。名誉なことではない。陰では馬鹿にする者も多かった。その男も、自分が馬鹿にされていることに薄々気付いてはいた。所詮はＡＴＭのおじさんなのだ。

　そんな男の退屈な日常が、ある日を境に変わった。
　男の家の近所に『丸源』という個人経営の居酒屋がある。男は、居酒屋丸源の常連だった。
「いらっしゃいませ！」
　元気な若者の声がした。新しいバイトの男子だ。胸に「瑞樹（みずき）」という名札を付けている。眩しいほどに美しい青年。子供のようなあどけなさもある。大人びた凛々しさも感じさせる。少年から大人に変わる時期に特有の何とも言えない色気を纏っている。尻は張りがあり、細身ではあるが適度な筋肉がついていることが服の上からでもわかる。男は、瑞樹の全身を舐め回すように見て口元を緩めた。
「この店の大事な常連様だぞ」
　店主がその男を紹介したので、瑞樹は丁寧に挨拶をする。
「新しく入りましたバイトの瑞樹です！　どうぞよろしくお願いします！」

　男はいつも同じカウンター席に座る。その横で、瑞樹が気さくに話しかける。瑞樹の声も可愛かった。瑞樹が料理を運び、ビールのお酌までしてくれることもある。男は、それだけで幸福な気分になった。瑞樹が働く日は、男も欠かさず店に足を運んだ。
　瑞樹はすぐに店の看板になった。
「おーい！　瑞樹君。注文！」
「瑞樹ちゃん！　おかわりお願い！」
「瑞樹！　おしぼり持ってきて！」
　店のあちこちから瑞樹に声がかかる。瑞樹は愛想よく店内を走り回る。紺色に『丸源』の文字が白抜きされたＴシャツに汗が滲む。瑞樹の汗を不快と思う者はなかった。

　瑞樹が入店して数週間も経つと、店は、瑞樹を目当てにする客で毎晩満席になった。瑞樹が働く姿を隠し撮りした客が「イケメンバイト君発見！」などとSNSに無断で情報を流したため、遠方から丸源に足を運ぶ客も増えた。汗をかきながら走り回る瑞樹を眺めながら、客たちは酒を楽しむ。そうなると瑞樹がその男の相手をする暇もなくなる。その男以外の客に料理を運び、からかわれて笑ったりしている瑞樹を見て、男は次第に腹を立てるようになった。
　ついに一言も瑞樹と話ができなかった日、男は、店の外で瑞樹がバイトを終えて出てくるのを待ち伏せた。瑞樹がどんな所に住んでいるのか知りたくなったのだ。瑞樹が店から出ると、男は、気づかれないように瑞樹を尾行した。
　男は驚いた。瑞樹が住んでいるのは、スカイメゾン新町。男が所有する不動産の一つだった。男は、早速、不動産管理会社から賃借人の情報を入手した。真壁瑞樹、１８歳。実家は北陸。某公立大学の医学部の学生。大方の情報は、丸源で既に瑞樹から聞いていたものだった。
　後日の朝、男は、スカイメゾン新町の前で瑞樹が出てくるのを待ち、偶然を装って瑞樹の前に姿を現した。
「あ！　いつもお世話になってます！」

　瑞樹が元気に声をかけた。光沢がある白生地のジャージと黒のズボン。見るからに安物のトラックウェアだが、瑞樹が着こなすとそれなりにお洒落に見える。いつも見ている丸源のＴシャツ姿とは違う瑞樹に会えて、男は嬉しかった。男は、驚いたふりをして、そのマンションが自分の持ち物であることを瑞樹に伝えた。瑞樹は驚いた。その日から、瑞樹は、居酒屋丸源で男のことを「大家さん」と呼ぶようになった。大家は、瑞樹との距離が少し近づいた気がして嬉しくなった。

　大家は、瑞樹についてもっと知りたくなり、興信所に金を積んで、多くの情報を調べさせた。瑞樹の父親は病気で亡くなっていた。看護師の母親と妹が暮らす北陸の実家は、裕福ではないようだった。瑞樹は、優秀な成績と、家庭の経済状況とにより、学費の一部が免除され、奨学金も受け取っている。それでも、都会で一人暮らしをするには、アルバイトで生活費を稼ぐ必要があるのだろう。
　興信所は、瑞樹が卒業した小中高の文集や卒業アルバムまで揃えた。瑞樹は小学生の頃はサッカー選手に憧れていたようだ。子供らしい作文の横に下手くそなサッカーボールの絵が描かれていた。中学と高校はサッカー部だったようだ。その時代から、瑞樹の美貌は同級生たちから抜きん出ていた。瑞樹の子供時代の作文や写真を見て、大家の瑞樹に対する愛着はさらに強くなった。そこで、大家は、ある計画を思いついた。

###引っ越し
　瑞樹が住んでいるスカイメゾン新町の２０３号室は、そのマンションで一番狭く、日当たりが悪く、家賃が安い部屋だった。大家は、２階の水道設備が老朽化して大がかりなリフォームが必要になったからと嘘を言って、同じ物件の８階８０１号室に引越してくれないかと瑞樹に相談した。
　８０１号室は、２０３号室の倍以上の広さがある。そこに２０３号室の家賃の半額で瑞樹に貸し出すという話だ。

「えー。それは申し訳なさすぎですよ！　家賃半額はあり得ませんって！」
　瑞樹は戸惑った。大家としては、１部屋分の家賃などタダにしてもいいくらいだった。瑞樹は、かなり遠慮する。しかし、他のマンションに引越すには金がかかるし、同じマンションの中なら引越しも楽だ。部屋が広くなって家賃が安くなるのだから、瑞樹が断る理由はなかった。
　大家が瑞樹を強引に８０１号室に引越させたのには当然理由がある。大家は、事前に８０１号室に特別なリフォームを施していた。
　リフォーム業者は、当初、そのリフォームを嫌がった。しかし、大家が電卓を叩いて、リフォームの予算を提示すると、業者は、あっさり引き受けた。世の中は結局、金で動く。
　大家は８０１号室のあちこちに隠しカメラと盗聴器を仕掛けた。生き物の体温に反応して撮影を開始するカメラと、音声に反応して録音を開始する盗聴器。カメラの映像と盗聴器の音声は、記録にも残る。リアルタイムで確認もできる。すべての情報は、大家のパソコンに送られてくる。そこに瑞樹を住ませたのだ。大家は、丸源に行かなくても、自宅にいながら、毎日瑞樹に会えるようになった。
　ベッド、リビング、バスルーム、トイレ……あらゆる場所に高精度カメラが巧妙に仕込まれている。ウォシュレットのノズルにもカメラが取り付けてあるので、大家は、瑞樹の排泄すら観察できた。

　瑞樹は、大家に観察されているとも知らず、大家に見られながら二日に一回程度のペースで自慰をした。全裸でベッドに横たわり、左手で握ったスマホを見ながら、右手で自身をしごく。若者らしい勢いで射精するので、精液が顔まで飛ぶこともあった。射精が終わると、瑞樹は、胸や腹に飛び散った精液をティッシュで拭き取り、そのままバスルームに向かう。瑞樹は自慰のあとは必ずシャワーを浴びる。そんな綺麗好きな瑞樹も大家は可愛いと思った。
　バスルームでは、瑞樹は、タオルを使わず、両手でボディソープを泡立てて、手を使って体を洗う。瑞樹は、椅子を使わず、立ったまま体を洗う。まずは首筋、肩から脇、胸から腹。体が柔らかいのだろう。背中まで十分手が回る。お尻の割れ目なども丁寧に洗う。
　お尻を洗い終えると、瑞樹は太ももから足先を洗う。瑞樹は、片足立ちになってもバランスを崩すことなく、器用に足先を洗う。そのバランス感覚と柔軟性も瑞樹の魅力だ。
　瑞樹の裸体は、大家の期待を超える美しさだった。無駄な贅肉などはなく、上半身も下半身も適度な筋肉がついている。均整の取れた体に乗る小さめの頭。スラリと伸びるしなやかな手足。その造形には文句のつけようがなかった。
　モニター越しでも、肌の瑞々しさが伝わってくる。ボディーソープの泡にまみれた瑞樹の体を抱きしめたらどんなに気持ちいだろう。そんな想像をしながら、大家は何度も自分を汚した。

　盗聴マイクの感度も最高だった。瑞樹が牛乳を飲むときの喉の音まで聞き取ることができた。朝食から排泄、朝のシャワーと歯磨き。大家は、まるで瑞樹と一緒に住んでいるように錯覚し、それを楽しんだ。
　大家は、そんな観察をしばらく続け、瑞樹の生活パターンを把握した。瑞樹が８０１号室で話す電話の声も聞こえるから、瑞樹が帰省や小旅行で外泊する日も知れる。
　瑞樹がマンションに帰らない日は、大家が８０１号室に入る。瑞樹がいつも使っているトイレ、シャワー、ソファー。大家は全てに興奮する。清涼飲料水のオマケのプラスチックのフィギュアが勉強机に並べられている。机の上に置かれた医学の教科書を開くと、下手くそな字であちこに書き込みがしてある。瑞樹の全てが愛おしい。
　大家は、瑞樹の歯ブラシを舐めたり、箸をアナルに入れたりして遊ぶ。そして、瑞樹が部屋着にしているジャージを鼻にあて、瑞樹のベッドを何度も汚した。瑞樹の飲みかけの牛乳パックに射精したこともある。ゴミ箱の中のティッシュや、洗濯前の下着を見つけ、持ち帰ったこともある。
　瑞樹が帰宅し、室内に違和感を感じているような様子を遠隔から観察するのも大家の楽しみの一つだった。瑞樹が首を傾げて、大家が汚したシーツの匂いを嗅いだときは、モニターの前で勃起した。瑞樹があの牛乳を飲んだときは、射精しそうなほど感じた。
　瑞樹への愛情は深まるばかりだった。モニター越しではなく、実物の裸を見たい。下着に残る体臭ではなく、本物の匂いを嗅ぎたい。間接キスではなく、本物の唇を重ねたい。そして、瑞樹の美しい肉体を体液で汚したい。大家は毎日瑞樹のことばかり考えるようになった。
　そんなある日、大家にとって許し難いことが起こった。８０１号室に、瑞樹が女を連れ込んだのである。

「ホントに、この部屋がそんな家賃なの！？」
「うん。大家さんがすごくいい人でさ」
「おかしいよ。瑞樹、狙われてるんじゃないの？」
「狙われてるって？　男の人だよ大家さんは」
「男からもモテそうだよ。瑞樹は。お尻を狙われてるんじゃないのって話」
「はは、まさか」
「でも、その家賃はあり得ないって。絶対変だよ。その大家、なんか気持ち悪い」

続きは本編で
