この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。登場人物は、法律により成人と定められた年齢に達しています。
加害者の醜悪さを強調するため、作品内で暴力的、犯罪的行為が描かれますが、本作品には、これらの醜悪な行為を助長又は賛美する意図は断じてありません。作者は現実世界におけるあらゆる暴力・犯罪に反対します。

###部室
　卒業式の前日、俺は、ケントを柔道部の部室に呼び出した。ケントが部室に入ると、俺は内側から鍵をかけた。そう、この部室は密室になる。ケントと俺の二人だけの世界になるのだ。
　ハンガーラックには、幾つもの黄ばんだ柔道着がぶら下がっている。俺は、ケントの顔……汗臭い部室に不釣り合いなこの美少年の顔を眺めながら、たまらなく寂しい気分になった。
「いよいよ、今日で最後だな」
　俺は自ら下着を脱いで木製のベンチに腰掛ける。
「はい……ご主人様」
　ケントは、俺の前に跪いた。ケントがウェットティッシュで俺の汚れた股間を丁寧に拭く。冷たい清涼感を感じながら、俺自身は既に硬くなっていた。
「最後のご奉仕だ。頑張れよ」
　俺は、ケントを見下ろしながら、ケントの頭をトントンと軽く叩いた。
「はい……ご主人様」
　ケントは、ウェットティッシュを床に置き、最後のご奉仕を開始した。
　俺の脳内は、たちまち幸福物質で満たされ、俺は恍惚の吐息を漏らした。これが最後か……。終わらせるにはあまりにも惜しい悦楽である。しかし、この中毒性のある遊びにいつまでも溺れているわけにはいかない。早くケントを解放してやらなくては。男と男の約束なのだから……。


###学園のアイドル
　俺がケントに一目惚れしたのは、俺が二年生に進級した春だった。俺は、柔道着姿で鉄下駄をガラガラと引きずりながら、石井と二人で校内をぶらついていた。俺も他人のことをとやかく言える顔ではないが、石井は酷い顔をしている。まるで袋叩きにされたフランケンシュタインのような顔だ。その迫力がある悪人面は、とても学生には見えない。体重１００ｋｇ超級の巨漢の石井。柔道でこの俺とまともに組み合える男は、こいつしかいない。
　皆が石井を恐れているのは、その悪人面と腕力だけが理由ではない。石井の家は、数百年も前からこの街を仕切る石井一家の本家なのである。石井の父親である石井の親分と言えば、この街で知らぬものはないだろう。石井の父親と石井は、祖父と孫ほどに年が離れていた。親分が三番目の妻に産ませた最後の子らしい。石井は、父親を恐れてはいるが、父親以外からは随分と甘やかされて育ったようで、超が付くほどの我儘でもあった。石井は、そんな親父の威を借りて、まさに本校の主のように振る舞っていた。
　だから、俺たちの鉄下駄の足音を聞いて道を譲らない生徒などいない……と思っていたが、目の前の女子生徒たちは、俺たちの下駄音を気にも留めず、体育館の中を覗き込んでギャーギャーと喚いている。
「何だよあの騒ぎは」
　俺が石井に尋ねると石井が下駄を止めた。
「オマエ知らないのかよ。ケント様のファンたちだろ」
「誰だよ、ケント様って。有名なんか？」
「有名も何も、俺たち二年の女子まで大騒ぎだぜ」
「へえ。くだらねえな」
　俺は興味のないフリをしたが、内心では興味津々である。石井に俺の興味を悟られないように注意しながら、俺は情報を探った。
「で、そんなにイケてるんか？　その……ケントとかいう野郎は？」
「ああ、あれは別次元だな」
「別次元？」
「まあ、美形っていうのか、美少年っていうのか、その最上級みたいな奴だな」
「ふーん」
　普段は滅多に人を褒めない石井が、そんな絶賛をするのも意外だった。とぼけた返事をしながらも、俺の鼓動は早くなっていた。俺は、男……しかも美形の男子に並々ならぬ興味があった。もちろん、俺は、そのことを誰にも打ち明けていない。俺のような、老け顔の熊のような男が美少年好きなんて、とてもじゃないけどカミングアウトできない。そんなことを知られたら、俺の築き上げた校内での『威厳』が崩れてしまう。
「ヒヒ。興味なさそうだな。でも、一回拝んでみな。可愛いぜー。そこら辺の女より、よっぽどだな」
「そうなんか」
「ああ、アイツなら、チンコがぶら下がっていても抱けるな。いや、こちらから、一晩お相手を頼みたいくらいだな。ヒヒ」
　性悪の石井がそんなことを言うとは意外だった。この石井をそんな気分にさせるなんて、一体、どれほどの『タマ』なんだろう？

　女子たちから「キャーッ」という悲鳴のような歓声が上がった。バスケ部の連中が体育館の入り口近くに集合したようだ。小柄な女子たちより首一つ抜き出ている俺たちは、簡単に体育館の中を覗くことができた。
「ほれ、あの……、こちらを向いてる……背番号が……」
　石井の説明を聞くまでもない。バスケ部の新入りたちの中からケントを見つけ出すのは簡単だった。その他大勢の中で、一人の美少年だけにスポットライトが当たっているように見えた。くっきりした端麗な眉と、愁いを帯びた大きな瞳。すっきり通った鼻筋。柔らかそうな艶のある唇。透き通るような肌。ケントの出待ちをしているどの女子生徒より、ケントは綺麗だった。
「なるほどな」
　俺はそっけなく答えてケントから視線を逸らせた。俺にとってはタイプのど真ん中なのである。性欲を持て余していた俺は、柔道着の中で股間が熱くなっていることに気付いた。このままケントを眺めていたら、柔道着の膨らみが石井にバレてしまう。だから、ケントから視線を逸らせたのだ。
「な、かわいい顔してるだろ？　おっと、後ろを向いたぜ。見ろよ、ケツもかわいいじゃねーか。じっくり『味見』してみたいな。ヒヒ」
　ケントの尻は適度な筋肉が張り出し、ピンと上を向いていた。石井が余計なことを言うものだから、俺の股間は更に反応する。俺は、上着の裾を下に引き下げて、必死に股間の膨らみを隠した。
　石井がそんな冗談を堂々と言えるのは、逆に石井がノンケだからだろう。もちろん、石井がケントを抱いてみたいというのは本気だろう。ノンケの石井をもそんな気分にさせる。ケントには、それほどの魅力があるということだ。

　その日から、俺は一年後輩のケントに夢中になった。学年が違うケントに毎日会えるわけではないが、俺は、何とかケントに遭遇しようと、一年生の校舎をうろうろしたり、体育館の横をやたらと通ったりして毎日を過ごした。
　幸運なことに、俺の地元の後輩がケントと同じクラスだった。その後輩は、ケントと同じバスケ部にも所属している。クラスも部活もケントと同じなんて……俺はその後輩を羨んだ。後輩の名は戸田照彦。サルのような顔つきで、狡賢い性格から、地元ではサル彦と呼ばれていた。嘘つきで、陰湿で、執念深くて……地元での評判は最悪だったが、俺たち先輩の言うことは何でも聞く。とにかく強い奴に媚びて、弱い奴を虐める典型的な下衆野郎だから、俺たち先輩にとっては、使いやすい駒だった。
　俺は、サル彦に用事があるフリをして、一年生の教室に出向く。そこでケントの面影を探すわけだ。
「先輩！　わざわざお越しにならなくても、呼びつけてください！　このサル彦がどこでも飛んでいきますよー」
　醜く笑うサル彦にどうでもいい用事を言いつけながら、俺は、教室で他の生徒たちとふざけ合っているケントの眩しいほどの笑顔をチラチラと盗むように見る。そして、ケントの色々な表情を脳裏に焼き付けるのだ。この点については、体育館の横で騒いでいたあの女子たちが羨ましい。あいつらは、キャッキャと騒ぎながらケントの写真を撮り、写真を互いに交換したりなどしているのだろう。俺だってそんなファンクラブに入りたかった。
　しかし、この柔道部の熊野郎がキャッキャと美少年の写真を撮るわけにもいかない。だから、こうして、色々なケントの表情を脳裏に焼き付けて……持ち帰るのだ。俺は、散らかった自宅の部屋で、毎晩のように、脳裏に焼き付いたケントの姿を思い返しながら自分を慰めるようになっていた。

（続きは本編で）
