崖っぷち囮捜査官



　真夏の朝の大宮駅のプラットホーム──三十五歳の独身美人──大澤峰子の表情には悲壮な決意が漂っていた。警視庁刑事部性犯罪対策特別捜査隊痴漢撲滅チームに配属されて、早三ヶ月。彼女はいまだに結果を出せていない。
　もともと彼女は総務部情報管理課の係長を務めていた。新人研修を終えてからは現場に出たことは一度もなく、ずっと事務畑であった。それが、
「大澤くんは美人だし、すごく色っぽい体をしてるから」
　という総務部長の勝手な判断により、バリバリの現場仕事である痴漢チームへの移動が決まった。
　三十五歳の彼女は、いきなり二十代の婦警ばかりのチームに入れられた。しかし何事にも前向きな性格の峰子である。新しい職場に入るからには、そこでしっかりと快適な人間関係を築く。そのために早速チームの先輩たちに対して、しっかりとマウントを取った。彼女たちは皆年下の巡査であり、峰子は警部補である。だからマウントを取ることは容易かった。配置されて一週間も経たないうちに、彼女は立派なお局様になった。それからずっと偉そうな態度を貫いている。警部であるリーダーに対してのみ丁寧に接し、その他の婦警たちには横柄な態度を取っていた。
　しかし仕事はまるで駄目である。それが悔しくて仕方がない。
　その仕事とは、痴漢の現行犯逮捕──電車で痴漢され、その者を現行犯で逮捕する、それだけのシンプルなものである。
　そして若い婦警たちは、
「いやね」
「最悪だわ」
「こんなのセクハラよ」
　などと文句を云いつつも、結構ノリノリで任務をこなし、毎日しっかり痴漢を捕まえていた。
　しかしなぜか峰子だけは全然駄目である。チームに入ってから三ヶ月間、彼女は彼女なりに頑張ってはいるが、未だ一人も捕まえていない。そのため最近はメンバーたちから舐められ始めていた。
　このままではお局様ポジションの維持も難しい。いくら警部補とはいえ、仕事が全然できないのではどうしようもない。結果を出せない人間が、いつまでも偉そうな態度は取れない。
　すでに婦警たちは陰でヒソヒソと峰子の悪口を言い始めていた。峰子のことを裏で、「豚ババア」と呼んでいる不届き者もいた。
　胸と臀部がふくよかなため、「豚ババア」などと陰口を叩かれる峰子であるが、彼女は決して太ってはいない。総務部長に「色っぽい体」と評されたバストは、トップ百センチのＨ。ウエストは六十二、ヒップは九十一。身長は百六十七センチで、体重は五十五キロ。
〝豚〟ではなく、肉感的美人である。そのウエストは見事にくびれ、すっと通った鼻すじ、目はクリッとして、黒髪ショートはサラサラで艶々、唇は薄めで、キュートな小顔である。特別な美人というほどではないが、なかなかの美貌である。三十五歳という年齢ではあるが、まだ充分に若々しい。二十歳くらいの男性からでも、おばさんではなく、お姉さん扱いされるだろう。
　このように峰子の容姿は魅力的であるにも関わらず、残念ながら現状は仕事が務まっていない。電車に乗っても痴漢されない。だから現行犯逮捕ができず、若い婦警たちから莫迦にされる。
「偉そうにしてるくせに、あの豚ババア、全然駄目じゃん」
　などと陰口を叩かれてしまう。それが地獄耳の峰子には聞こえてしまう。プライドの高い彼女は、それが悔しくて仕方がない。
　そんな負けず嫌いの峰子が、今回思い余ってとんでもない格好をした。そのマイクロミニのプリーツスカートは股下０センチ──あまりにも短かすぎる。そしてぴちぴちのチビＴ。十センチのハイヒール。
　そしてノーパンノーブラである。巨乳の先端が、ぽっちりと浮き出ていた。
　その、あまりにも卑猥すぎる格好は、どれほど峰子が精神的に追い詰められているかの現れである。こんな格好をしてまでも絶対に痴漢を逮捕したい。そんな彼女の執念である。ここまで卑猥な格好は、誰もできない。
　これで駄目なら仕方がない。能力の限界だ。総務部長に泣きついて事務仕事に戻してもらうしかない。そう諦めるしかないくらいの、限界ギリギリまで攻めた格好で、今回の囮に臨んでいた。
　気合は充分に入っている。しかしさすがに恥ずかしい。ぽっちりと浮き出た乳首。あまりにも短かすぎるスカート。普通に歩くだけで尻肉が見え隠れする。ショーツを穿いていないのだ。
　こんな格好を一般人がしたら、一発で公然わいせつ罪である。婦警だからこそ許される。駅員たちは、峰子が警察官であることを知っていた。
　可愛らしい顔と熟した豊満ボディの持ち主であるというのに、なぜ彼女は今まで痴漢されなかったのか？
　その理由は色々ある。やはりお局様タイプの気の強さ。そして長年情報管理課の係長を務めていた性格の堅っ苦しさ。痴漢チームに入ってからも、いつも色気のない紺のスカートスーツで、目つきも鋭く、周りを威圧するような雰囲気である。身長も百六十七センチと、女性としては高すぎる。
　それが今回、ガラリとイメチェンした。その姿は、ビッチよりもビッチ、痴女よりも痴女、そんな服装である。
　そんな痴女ビッチ美人が、飛びっきり感じの良い笑顔を浮かべていた。しかしよく見ると、その笑顔は引き攣っている。
　それでも、こんなに肌を露出した豊満ボディの痴女ビッチ美人が、ニコニコしながら立っている。
（うわっ、痴女だ）
　男たちは度肝を抜かされた。
　峰子はそんな卑猥すぎる格好で、電車の待機列に並んでいた。
　そして電車がやってきた。それに峰子は乗り込んだ。
　通勤ラッシュの電車内は超満員であった。
　その車内で乱暴な動きが起こっていた。複数人の男たちが、峰子のもとへと殺到したのである。一般の乗客を乱暴に押しのけて、峰子のもとに変な男たちが集まってきた。
（ひえっ……）
　気丈な峰子も、それには震え上がった。そして服装の威力というものを、まざまざと思い知る。今まで電車内の男たちから見向きもされなかった峰子が、変な男たちに取り囲まれていた。
　ドアが閉まり、電車が動き出す。
　すぐに変な感触が峰子の臀部に感じられた。それは鞄のようなものではない。峰子の背筋に寒気が走った。その生ぬるい感触は、男の掌のように思われた。指先の蠢きもしっかりと感じられた。
　痴漢である。
　現行犯逮捕のチャンスが、いきなりやってきた。
（こんなに早く？）
　まったく予想していなかった。どうせまた今回も空振りだろうと思っていた。
　しかしどうやら大当たりである。
　だが異常である。普通の痴漢なら、鞄や手の甲で、まずは小当たりを仕掛けてくるだろう。そして、痴漢できそうかどうか、まずは様子を見るだろう。
　それがいきなり掌とは──
　それは峰子にとって初めての感覚であった。美人だが根っからの真面目人間の峰子は、ずっと恋愛していない。高校時代に数ヶ月だけ付き合った彼氏はいたが、すぐに別れた。それが峰子の恋愛経験の全てである。それっきり恋愛とは無縁で、セックスの経験もない。
　そのウブな女体に、痴漢の無遠慮な掌はあまりにも刺激的すぎた。
　峰子の呼吸が荒くなる。後ろから耳元に聞かされる男の鼻息も暴風のようだ。



試し読みはここまでです！
この後、痴漢たちによる峰子への凌辱は加速度的に激しくなっていきます。
そして最後には──
続きはぜひ、本編でお楽しみください！