第1話「先輩、カメラ係お願いしまーす♡」


午後四時。放課後のパソコン部。
西日が差し込む部室にはキーボードを叩く音だけが響いていた。
高校二年生の佐伯修一は今日も一人でパソコンに向かっていた。
少し伸びたぼさぼさの黒髪。黒縁眼鏡。猫背気味の姿勢。制服のネクタイも微妙に曲がっている。
修一にとってこの部室は誰にも邪魔されずゲームを楽しめる、数少ない居場所だった。
新入生が入ってくるまでは。
ガラッ。
「お疲れさまでーす！」
突然、明るい声が響いた。
振り返ると、入口に二人の女子生徒が立っていた。
一年生の結衣と早紀だ。
結衣は明るい茶髪をふわふわと巻いた、いかにも今どきの女の子。早紀は黒髪のポニーテールで、少し大人びた雰囲気を持っている。
二人とも校内では目立つ存在だった。
「あ、ああ。お疲れ」
修一は慌ててヘッドセットを外した。
「ねえ先輩、ちょっとお願いがあるんですけどぉ」
結衣がにこにこと近づいてくる。
「な、何？」
「うちらの動画、撮ってほしいんですよね」
「……動画？」
「そうそう。SNS用！」
早紀がスマートフォンを差し出した。
「先輩、どうせ暇ですよね？」
「えっ……いや、今ゲームを……」
「えーっ、ゲーム？」
結衣が画面を覗き込む。
「先輩っていつもこれやってますよね？　楽しいんですか？」
「ま、まあ……」
「ふーん」
結衣は興味なさそうに言った。
「先輩」
早紀が修一の顔を覗き込む。
「後輩のお願い、聞いてくれないんですか？」
「い、いや、そういうわけじゃ……」
「じゃ決まりですね」
結衣がスマートフォンを修一の手に押しつけた。
「はい、これ持って！」
「え、ちょ……」
「先輩、早く早く！」
「あの……僕、まだ試合中で……」
修一はゲーム画面を振り返った。
味方が戦闘を始めている。
しかし目の前には可愛い後輩が二人。
普段なら試合の途中で席を離れるなんて考えられない。
それなのに。
「わ、分かったよ」
「やったー！」
結衣と早紀は嬉しそうにハイタッチした。
二人は部室の窓際へ移動した。
「早紀、もっとこっち！」
「えー、結衣が寄ってよ」
「だって光、こっちのほうが盛れるんだもん」
二人は壁に背中をぴったりつけ、肩を寄せ合った。
一方修一は数メートル離れた場所でスマートフォンを両手に持っていた。
「こ、これくらいの距離でいい？」
「遠い遠い！」
結衣が笑う。
「いや、でも全身を入れるなら……」
修一は女子の動画など撮ったことがなかった。
どんな画角がいいのかどこに立てばいいのか、まるで分からない。
「先輩、ちょっと貸してください」
早紀が隣へやってきた。
「こうやって持ってここを押して……」
画面を指さしながら説明してくれる。
しかし、肩が触れそうなほど距離が近い。
ふわりと甘い匂いが鼻をかすめた。
修一は顔を赤くして、説明がほとんど頭に入ってこなかった。
普段、女子と話す機会などほとんどない。
まして、こんなに可愛い二人から話しかけられることなど、想像もしていなかった。
「先輩、聞いてます？」
「えっ、あ、うん！」
「じゃあ、やってみてください」
修一は言われたとおりにスマートフォンを構えた。
しかし、なかなか画角が定まらない。
「先輩、撮影下手すぎません？」
顔が熱くなって思考が回らない修一に、早紀が呆れたように言った。
「ご、ごめん……」
「なんで謝ってるんですか？　ウケる」
二人は顔を見合わせて笑った。
何が面白いのか、修一にはすぐには理解できなかった。
バイト先で先輩に注意されているような感じがして、思わず謝ってしまったのだ。
けれど、よく考えれば今は自分が手伝っている立場だし、ましてや自分のほうが先輩だ。
（なんで僕が謝ってるんだろ）
少しだけ引っかかった。
「じゃ、先輩。撮影スタート！」
「う、うん」
「あと変な声入れないでくださいね」
「……はい」
「返事だけはいいんだ」
早紀が小声でつぶやくと、結衣が吹き出した。
「ちょっと早紀、笑わせないでよ！」
「だってさぁ」
二人は修一などお構いなしに、スマートフォンのカメラに向かってポーズを取り始めた。
さっきまで修一に向けていた雑な態度とは一変。
「みんなやっほー♡　結衣でーす！」
「早紀でーす♡」
二人は満面の笑みでピースした。
修一は思わず見とれてしまった。
（すごいな）
さっきまで自分をからかっていた二人が、カメラの前ではまるで別人のようだった。
「はい、次は写真！」
撮影が終わると、結衣は当然のように指示を出した。
「先輩、しゃがんで撮ってください」
「え？」
「ちょっと低い位置からのほうが、全身のバランスよく写るんですよ」
「そ、そうなんだ……」
修一は言われるままに膝を床に付けた。
「もうちょい下」
「こ、こう？」
「そうそう！」
二人を見上げる形になった修一の視界に、ひらりとスカートの裾が揺れる。
（まずい）
反射的に目を逸らそうとしたが、遅かった。
白い太もものラインが、ほんの一瞬だけ目に入る。
心臓が跳ねた。
（見てない、見てない）
自分に言い聞かせるように、修一は必死に画面へと集中しようとした。
だが、視線はどうしても定まらない。
レンズ越しの二人は、普段の教室では絶対に見られない角度にいる。
結衣が体重を片足にかけるたび、スカートの布がわずかに引っ張られる。
早紀がポーズを変えるたび影の落ち方が変わって、脚のラインがくっきりと浮かび上がる。
（やばいやばいやばい）
修一は唇を噛んだ。
こんなことで意識してしまう自分が情けない。
でも、目を閉じるわけにもいかない。
カメラ係なのだから。
カシャッ。
修一は緊張しながらシャッターを押した。
普段女子の写真を撮ることなどない。
しかも相手は校内でも目立つ二人だ。
どこを見ればいいのか分からず、画面ばかり気にしてしまう。
カシャッ。
カシャッ。
何枚か撮ったところで、修一は自分の身体に異変を感じた。
（……っ）
膝立ちの姿勢で前屈みになっている。無防備な体勢だ。ズボンの前が、じわりと窮屈になっていくのが分かった。
（うそだろ、今……）
心臓が嫌な音を立てる。
カメラを構える腕がわずかに震えた。
画面の中の二人はまだポーズを取っている。気づいていない。まだ、気づいていない。
修一は慌てて腰の位置を変えた。
ほんの少し、後ろに引く。膝立ちのまま上体を起こす。スマートフォンを顔の高さまで上げて、自分の下半身を画面の影に隠す。
（落ち着け、落ち着け……）
冷たい汗が背中を伝った。
四月の夕方だというのに、脇の下がじっとりと湿っていく。
「先輩、どうですか？」
早紀がこちらを振り返った。
「あ、う、うん。いい感じだと思う」
声が裏返った。
（バレた？　バレてない？）
早紀は特に気にした様子もなく、結衣のほうへ向き直った。
修一は小さく息を吐いた。
（よかった……）
だが油断はできない。
今の姿勢を維持したまま撮影を続けなければならない。膝立ちで、上体を起こして腕を高く上げて。
腕がじんじんと痛み始める。
普段ゲームばかりしている身体には、この姿勢はこたえる。
「先輩、見せてくださーい」
結衣が手を伸ばしてきた。
（まずい）
修一は慌てて立ち上がろうとした。
だが、立ち上がる瞬間が一番危ない。
股間の状態が、スラックスのラインにはっきりと出てしまう。
（どうする……）
「先輩？」
「あ、えっと、その……」
修一はとっさに、膝立ちのまま前へ進んだ。
這うようにして結衣のところまで移動する。
「ちょっと、何やってるんですか」
早紀が呆れたように笑う。
「いや、足がしびれちゃって……」
「もう、ドジですねー」
結衣がスマートフォンを受け取った。
修一はその場でうずくまるように座り込んだ。
膝を抱えて、前を隠す。
（これなら……見えない、はず）
心臓がまだ激しく鳴っている。
額にうっすらと汗が浮かんでいた。
「見せてくださーい」
結衣と早紀が画面を覗き込む。
「え、微妙じゃない？」
「うん。なんか傾いてる」
「これは？」
「んーー……」
二人が画面から顔を上げ、修一を見つめる。
咎められているような沈黙に修一は落ち着かず視線を泳がせた。
「ご、ごめん……」
すると、早紀と結衣は吹き出して笑った。
「大丈夫ですよ。先輩、女の子の写真撮るのとか初めてですもんね」
早紀が慰めるように修一の肩を軽く叩いた。
その手のひらの温かさに修一はびくりと肩をすくめる。
（近い、近い……）
「ちょっと説明するんでそこ意識して撮ってください」
「……うん」
結衣の説明を真剣に聞く修一。
バイト先で仕事を教わっているような感覚が、ほんの少し引っかかる。
けれど、それ以上に、二人とこんな距離で話せていることが嬉しかった。
「って感じで、もう一回お願いしまーす」
修一は黙ってスマートフォンを受け取った。
「返事は？」
早紀が上目づかいで距離を詰める。
「は、はい！」
思わず大きな声で返事をした修一に二人はまた笑った。
「ふふっ、佐伯先輩って面白いね」
修一は、もう一度スマートフォンを構えた。
「じゃあ、いきます……」
「はい、スタート！」
二人のポーズは、さっきより明らかに整っていた。
修一は必死に画面を見た。
早紀に言われたことを頭の中で繰り返す。
「もう少し、下から」
「そうそう」
早紀が小さく頷いた。
その瞬間結衣がスカートの裾を軽く摘まんだ。
「これ、いい感じ？」
「え……」
先ほどよりも白い太ももがあらわになっていき、修一は息が止まる。
このまま布が上がっていくと……
白いパンツが一瞬見えて、修一は思わず息を飲んだ。
手に持ったスマートフォンを落としそうになって慌てて、地面に落としたスマホを拾う。
その際に下腹部の棒が不自然に圧がかかり痛みに思わず呻く
汗が、背中を伝う。冷たい。それなのに、顔は火が出るように熱い。
修一はとっさに膝を床についた。片膝を立て、もう片方の膝を床に落とす。野球の捕手のような、そんな中途半端な姿勢。
「先輩？」
結衣が不思議そうに声をかけた。
「なんで座り込んでるんですか？」
「あ、いや……足が、しびれて……」
声が震えた。
修一はスマートフォンを顔の前に構えたまま、決して下を見ないようにした。画面を見つめる。二人の姿を追う。それだけに集中する。
（気づいてない……よな？）
冷や汗が額を伝い、頬を伝い、顎から落ちる。
修一は片手でスマートフォンを持ち、もう片方の手でこっそりと制服の裾を引っ張った。裾を前に垂らして、股間のラインを隠す。ほんの数センチ。けれど、その数センチが今の修一には命綱だった。
「先輩、早く撮ってくださいよ」
「あ、うん」
修一は慌ててシャッターを押した。
カシャ。
カシャ。
顔は真っ赤、頭は真っ白。
手振れの画像ばかりになってしまって何度も取りなおす。
カシャッ。
カシャッ。
連続で何枚か撮ったところで結衣が手を振る。
「はい、おっけー！」
修一はほっと息をついた。
だが、まだ油断はできない。
立ち上がるわけにはいかない。この姿勢を維持したまま、どうにかしてこの場を乗り切らなければならない。
「見えちゃった？」
「あ！いや……大丈夫！」
「何が？」
「え？その……パンツ……」
「やだーバックの校舎が見えちゃったか確認したのに」
「どこ見てるんですかー」
「ご、ごめん」
「ふふっ、もう。見せてください」
結衣がスマートフォンを受け取った。
早紀も隣に寄り、画面を覗き込む。
修一はその場でうずくまるように座り込んだまま動けなかった。
膝を抱えて、前を隠す。
（早く……早く、収まってくれ……）
心の中で祈るように唱える。
だが、簡単にはいかない。
背中に感じる二人の視線。
時折聞こえる笑い声。
そのたびに、修一の心臓は跳ねた。
「うん！　いい感じじゃない？」
「お、今度はちゃんと撮れてる！」
早紀が笑顔で頷いた。
「先輩、ありがとうございました」
「あ、うん」
修一はようやく立ち上がった。
ゆっくりと。慎重に。
ズボンのシワをさりげなく手で伸ばすふりをして、前を隠す。
幸いなことに二人はスマートフォンの画面に夢中で、修一のほうを見ていなかった。
（よかった……）
修一はほっと息をついた。
（よかった）
たったそれだけのことなのに、二人に褒められたのが妙に嬉しかった。
やがて自分の席に戻りパソコンの画面を見た。
そこには大きく表示されていた。
「部隊全滅」
「あ」
修一はため息をついた。
けれど、不思議と嫌な気分ではなかった。
撮影が終わっても二人は帰ろうとしなかった。
「ねえ早紀、これ見て！」
「えー可愛い！」
「こっちの写真もよくない？」
二人は窓際に座り込み、スマートフォンで撮った写真や動画を見ながら雑談していた。
どうやら、この部室を気に入ったらしい。
修一はゲームを再開した。
しかし、どうにも集中できなかった。
背後から聞こえる二人の笑い声。
時折、修一のほうへ向けられる視線。
「先輩、まだゲームしてるの？」
「う、うん」
「ほんと好きですねー」
早紀が笑う。
「……まあね」
修一は画面に視線を戻した。
（……なんか落ち着かないな）
いつもなら静かな部室。
今日は二人の話し声でいっぱいだった。
ゲームの成績は散々だった。
それでも修一は二人に帰ってほしいとは思わなかった。
むしろ。
（明日も来るのかな）
そんなことを考えてしまっていた。
やがて、部室の時計が午後六時を指した。
修一はゲームの画面から顔を上げ小さく咳払いをした。
「……あの。そろそろ、鍵閉めないといけないんだけど」
結衣と早紀は窓際でスマートフォンを見ながら雑談していたがその声にゆっくりと振り返った。
「えー、もう？」
結衣が不服そうに口を尖らせる。
「規則だから。僕も残ってられないし」
修一はそう言いながらパソコンの電源を落とし始めた。
早紀が小さく肩をすくめる。
「仕方ないですね。じゃあ、今日はこれで」
二人は荷物をまとめ始めた。
修一はそれを横目で見ながら、部室の鍵を持って立ち上がる。
三人で部室を出たのはそれから数分後だった。


廊下はもうほとんど人の気配がなく、西日が長く伸びていた。
階段を下りながら結衣がふと思いついたように言った。
「ねえ、先輩」
「……何？」
「先輩って、私たちどっちが好きですか？」
修一は足を止めた。
「は？」
「結衣と早紀、どっちがタイプかなって」
早紀も横から興味深そうに覗き込んでくる。その拍子に彼女の肩が修一の二の腕に柔らかく触れた。
「私もちょっと気になる」
修一は視線を泳がせた。
「な……なんで僕の好みなんて……今日会ったばっかりだし。そんなの、すぐには分からないよ」
「えーでも見た目とか雰囲気とかあるじゃないですか」
結衣が顔を近づけてくる。距離が近い。髪の甘い匂いがふわりと鼻先をかすめた。
「どっちが好み、みたいな。感覚でいいから」
「そうそう。深く考えなくていいですよ」
早紀も同じように距離を詰めてきた。彼女は少し身をかがめるようにして、逸らす修一の視線を追いかけるように下から覗き込み視界を埋める。
二人の視線が、左右から修一を挟む。
修一は喉を鳴らした。
「あ……見た目と……雰囲気だけ……だったら」
単語ごとに息を吐くほど鼻息が荒くなる。
「うん」
「早紀さん……かな？」
一瞬、沈黙が落ちた。
「私？」
「……うん」
修一は視線を落としたまま答えた。
すると結衣が早紀の肩を軽く叩いた。
「えー！　早紀だって！」
「ふふっ。やったぁ」
早紀は楽しそうに笑った。そして一歩、修一に近づく。
肩と肩が触れ合うほどの距離で、彼女は少しだけ身を寄せた。
「じゃあこれから仲良くしてくださいね？」
「あ、うん」
「ふふっ、約束ですよ？」
早紀が小首をかしげる。その拍子に彼女の髪が修一の肩口を撫でた。ふわりと甘い香りが広がる。
修一は小さく頷いた。鼓動が少し速い。
結衣がわざと不満そうに口を尖らせる。
「えー、私もいるんですけどー？」
「あ、いや……結衣さんも、その……すごく可愛くて……素敵だと」
「あはっ　知ってるぅ」
結衣が笑いながら修一の腕に自分の腕を絡めてきた。柔らかな感触が二の腕に押し当てられる。
「先輩ほんと分かりやすいですね。顔赤いですよ？」
「っ……」
修一はますます顔を赤くした。結衣は悪戯っぽく笑って腕を離す。
名残惜しそうに腕は彼女を追ってしまった。
二人は楽しそうに笑いながら階段を下りていく。
修一は少し遅れて、その後を追った。
階段の踊り場で、早紀がふと振り返った。
「先輩、足元気をつけてくださいね」
そう言ってスカートの裾を軽く押さえる仕草をする。白い太ももが一瞬夕日の中に浮かんだ。
その仕草があまりに自然で、でもどこか修一を意識しているようで。
修一は「あ、うん」とだけ答えて視線を足元に落とした。
（意識しすぎだ、僕）
そう思うのにさっき見てしまった白いラインが頭から離れない。
修一は慌てて首を振った。
（ダメだ、ダメだ……）
校門を抜け、夕暮れの道を並んで歩き始めた。
結衣と早紀は今日撮った写真を見せ合いながら、楽しそうに話していた。
修一は少し後ろを歩いている。
会話に入りたい。
けれど、何を話せばいいのか分からない。
その時早紀が振り返った。
「ねえ、先輩」
「……何？」
「今日撮影ありがとうございました」
「あ、うん」
「明日も部室、行っていいですか？」
「……え？」
修一は思わず顔を上げた。
早紀がにっこり笑う。そして、一歩近づいて修一の耳元に顔を寄せた。
「だってあそこ静かでいいし。先輩もいるし」
囁くような声が耳朶をくすぐる。吐息が首筋にかかった。
「！」
修一の胸が大きく跳ねた。耳が熱い。早紀はもう一歩も離れない。
「ね？　いいですよね？」
「うん。別にいいよ」
声が上ずった。
「やったー」
早紀が笑顔で離れる。その瞬間、彼女の胸元が修一の腕に一瞬だけ触れた。柔らかい感触。修一は固まった。
結衣も笑顔で振り返った。
「じゃあ、明日もよろしくお願いしまーす！」
そう言って、結衣は修一の肩に手を置き顔を近づけてきた。
「先輩、明日は私ともいっぱい話してくださいね？　早紀ばっかりずるいですから」
耳元でそう囁いて、結衣はぱっと離れた。
「あ、うん」
修一は頷くことしかできなかった。
二人は再び楽しそうに話し始めた。
修一はその後ろ姿を見ながら、小さく笑った。
（明日も来るんだ）
今日一日何度もからかわれた。ゲームも途中で負けた。撮影も上手くできず何度も注意された。
それでも。
（悪くなかったな）
修一は少しだけ足取りを軽くした。
二人の後を追いながら明日の放課後が楽しみになっている自分に気づいた。


――第1話・終わり。