「はあ・・・はあ・・・ノ・・・リコ・・・」
「お姉・・・様・・・」
 今にも途切れそうなか細い息を漏らしながら少女達は互いの名を呼び合った。
 敵軍に囚われてもう幾日が経ったのか、ノリコにもカズミにも分からなかった。どんな悲鳴も漏れない地下室に監禁され天井から縄で吊られ、丸裸にされて、打ちのめされ、そして昼夜を問わず休むことも許されず何度も陵辱を受けた。
 衰弱しきった少女達はもはや悲鳴さえ上げられずに弱りきった互いの身を思ってかすれた声をかけ合うのみだった。
「ち・・・つまらねぇ。最初の頃の威勢のよさはどこにいったんだ?ああ?」
 背後からカズミを犯す男が片手で豊かな乳房を弄びながらカズミの髪を掴み上げ耳元で罵った。
「・・・・・・」
 カズミは目を閉じ、屈辱と罵倒にただ、耐えた。
 反発や抵抗はこの獣のような男達をただ喜ばせるだけだ。男達の卑劣な暴虐を恐れているようでプライドが傷つけられたが加虐に耐えなければならないのは自分だけではない。カズミを姉と慕うノリコも同じ目にあわされるのだ。無抵抗と従順に徹するしかなかった。
「けっ!人形かよっ!」
「よお、じゃあこいつで暖めてやりゃあちょっとは元気になるんじゃねえか?」
 別の男がどこから持ってきたのかキャンプファイヤーで使うような松明を持ち上げて、サディスティックに染まった嫌らしい笑みを浮かべながら言った。
「・・・っ!」
 ノリコの息を飲む声がかすかに聞こえた。
 ノリコも男達が何を考えているのか察したらしい。縄で縛られて身動きの取れない自分達を炎であぶって嬲り者にするつもりだ。悶え苦しみ悲鳴をあげてのた打ち回る様を見物して楽しもうと言うのだ。
「おっ・・・おやめなさいっ!」
 とっさに声を振り絞って叫んだ。目をいからしてにらみつける。
 男達はカズミの必死の様子に嫌らしい笑みを貼り付けた顔を向けた。
「ヒヒヒ・・・まだまだいい顔ができるじゃねえeDゥ」
「・・・そんなことをして、何が楽しいんですのっ?」
 悔しげに低い声を漏らす。相手を心底軽蔑しきっているのは本当だが、言葉の意図はただの挑発に過ぎなかった。下衆な男達の趣味嗜好などに興味はないが、嬲るなら元気があるほうを選ぶに違いない。ノリコをこれ以上傷つけたくはなかった。そのためなら、声が続く限り悲鳴をあげて男達を楽しませてやるつもりだった。
「・・・このケダモノッ・・・!!あんた達なんか人間じゃないわよっ!!」
「・・・っ!」
 怒りに震える声で叫ぶ声。カズミの声ではない。カズミは息を飲んで振り返った。
 背中合わせに天井から吊るされているノリコが傷だらけの裸身を震わせながら叫んでいた。
「やりたきゃやりなさいよ・・・っ!死んでも悲鳴なんかあげないんだからっ!!」
 ノリコにはカズミの意図が分かったのだろう。そして同じことを考えていた。カズミを男達の無惨な餌食にさせまいと恐怖を飲み込み懸命に反抗心を露にしているに違いない。
「ノリコッ!やめなさいっ!」
 あれだけ弱り果て傷だらけになってもなおその細い体で自分をかばおうとする愛しい妹の姿にカズミの胸は熱くなったが、それだけに絶対に男達の餌食にはさせたくない。思わず必死の声でノリコを叱咤していた。
「キヒヒヒ・・・どっちもまだ楽しめそうだなぁ」
「違うわっ!その子のはただの虚勢よっ!追い詰められてわめいてるだけなの!お願いです・・・!どんな責めも私が受けますから・・・!その子にはもう酷いことはしないでっ!」
 搾り出す元気があると知られればノリコももう逃れられない。カズミはプライドを捨てて必死に懇願していた。
「うるせえっ!」
 泣きそうな顔で必死にすがるカズミの背中を長い棒切れが打ち据えた。カズミはうめき声を上げて崩れ落ち、両手を縛った縄にぶら下がるように力なく垂れ下がった。激痛にかすむ意識の中でノリコが悲鳴をあげるような声で自分を呼ぶ声が聞こえた。
「・・・っ!?な、何!?」
 不意に足首を掴まれ、持ち上げられた。
 細い足首に新たなロープを括りつけられた。その短いロープの反対側はすぐ側にいるノリコの足に括りつけられている。
 カズミの背中にノリコの背中が触れた。その小さな背中は恐怖に震えていた。
「何をするつもりなの!?やめてっ!」
 たまりかねて叫んだ瞬間、二人の少女の体は腕を縛るロープに引き上げられ持ち上げられた。荒いロープに長時間縛られてできた擦り傷にロープが食い込み血がにじんむ。激痛に二人はうめき声を上げて中に浮かされた体をよじって悶え苦しんだ。
「ヒャハハハハハッ!いい様だな!」
 傷ついてもなお美しい二つの裸身が吊り上げられ、苦しげに蠢く姿に男達は興奮した声を上げた。
「ぐっ・・・うっ・・・・・・あっ!?」
 ボウッと音を立てて松明が炎を上げて燃え始めた。燃料の焼ける匂いが狭い地下室に立ち込め、恐怖の色に染まった重い空気が肺に流れ込んでくるようだった。オレンジの光を放つ高熱の塊がゆっくりと製肉工場の肉塊の様に吊るされた少女達に迫る。足元から迫る炎に少女達は思わず身を縮め、逃れようと足を持ち上げた。








続く・・・










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