1 自分で躰を慰めて!
「それじゃあ、ここにサイン頂けますか」
小包を届けに来た宅急便の若い配達員が、差し出した荷物の上に乗せた伝票に、笑顔でサインを求めている。
「あっ、はい」
時間指定で届けられた小包を受け取ると青葉薫(あおばかおる)は頬が紅潮するのを感じた。
そんな表情に気付いた宅急便の兄ちゃんは、小包と薫を見比べニヤリといやらしい笑みを浮かべた。「PCパーツ在中」と書かれている伝票になにか感じるモノがあったらしい。
その不自然な視線に気付いた薫は、慌ててサインをして伝票を差し出す。
「こっ、これでいいですか」
「ありがとうございました。またよろしくお願いします」
軽く会釈をした宅急便の兄ちゃんは、扉を閉めながらもう一度薫の顔を見ると意味深な笑みを浮かべて立ち去った。
薫は閉められた扉を見つめながら、あの笑顔に首をひねっていた。
「なんで笑ってたんだろ? もしかして、中身がなんだかばれちゃったのかな」
手にしている小包の中身は、宅急便の兄ちゃんの予想通り「PCパーツ」などではなく、ネット通販で買ったアダルトグッズが入っているのだった。ネット上でアダルトグッズを販売する業者が、偽装のため「PCパーツ在中」と書いて送ってくれることを知っている人も多いので、気がついたのだろう。
実際にアダルトグッズを買っているのだから仕方がないが、宅配業者が勝手な想像をしてあんないやらしい笑みを残していくなど考えて見れば失礼な話しである。本来であれば記載通り「PCパーツ」と思って配達するのがスジだ。確かに、今の薫は可愛らしい女の子になっている。機械に疎く、パーツを買ってコンピュータを拡張できるようになど見えないので、宅急便の兄ちゃんもアダルトグッズと想像したのだろう。もしかすると「そうだったらいいなぁ」と思っていただけのかも知れない。こんな可愛い子が「アダルトグッズを購入した」と想像しただけで、男は興奮してしまうだろう。
「ホントにばれちゃったのかな……」
気付かれたかも知れないと思った途端、恥ずかしさが込み上げてきた。頬が熱くなるのを抑えられず思わず小包で顔を隠してしまう。その姿はどこから見ても可愛らしい女の子で、誰が元男だと想像できるだろうか。
「もう……こんなの買っちゃったのも、みんなエルがいけないんだから」
小包から顔を上げると可愛らしくふくれながらそう呟いた。
とんでもない責任転換のしかただが、薫は必死でそう思いこもうとしていた。
エルが天界に逃げ帰ってから2週間が過ぎようとしている。その間、姿を見せるどころか、連絡の一つもよこさない。あれだけ自分勝手なことを言いまくって逃げ帰ったのだから、顔を合わせづらいと考えるのが普通だが、エルに限ってそんなことあるわけがない。薫のことなど忘れ、天界でのんびりしている可能性の方が高い。
このように散々ヒドイ目に遭っている薫であったが、どうしてもエルを怨む気にはなれなかった。それよりも「早く戻ってきて欲しい」と言う気持ちの方が遙かに大きく、寂しくて心が潰れてしまいそうだった。
寂しさなど男だった時には一度も味わったことがない。むしろ男の時は、SEXをする時以外いてくれない方がいいと考えていた程だ。今まで、こんなに人(?)を好きになったことがないので、このモヤモヤした気持ちに戸惑ってしまっている。
しかし、寂しいのは「エルが大好き」で「純粋に会いたい」と言う気持ちだけではないところが元男の薫らしい。快楽を知ってしまった躰が、エルを求めてしまっているのが、寂しさの原因になっている。
その欲望を晴らすため毎日オナニーをくり返しているのだが、どうしてもそれだけでは治まらない。男の時よりも快楽が強くなっているので、回数が増えてしまうのも仕方がないが、この精力は異常ではないかと薫自身思い始めている。確かに男の時も一日に数回精を放っていたのも事実だ。しかし、それはあくまでも一日の後半、夜に限られていた。それが今では昼夜を問わず、授業中でも突然快楽を味わいたくなる衝動が襲ってくるのだからたまらない。
なんとか欲望を理性で抑えつけ暴挙に走ることはなかったが、その反動からか家に帰ると直ぐ股間に手が伸びてしまう毎日が続いている。しかも、秘裂を刺し貫かれる快楽を知ってしまった躰は、指を挿入したところで欲望を満たせなくなっていた。
それでも一週間ほどは、なんとか指で我慢できないが我慢してきた。しかし、10日を過ぎると自分でも信じられない考えが沸き上がり驚かされることになる。なんと「晴希に抱いて貰おうか」と言う恐ろしい考えが頭をよぎったのだ。
とても女好きだった薫の考えだとは思えない。いくら躰が女になっていると言っても17年間男で生きてきたのだ。それなのに、なんと恐ろしい考えが浮かんでくるのか、薫自身信じられなかった。
しかし、欲望が膨らんでしまうと「知らない男に抱かれるより、晴希に抱かれるほうがいいのでは」と言う考えにたどり着くこともしばしばだった。
とんでもない愚かな考えを「自分が男である」と言い聞かし、なんとか難を逃れてきたが、このままでいたら晴希の誘いに応えてしまいそうになる自分が恐ろしかった。今の薫には、絶対に断れるという自信などこれっぽっちもない。
それを抑えるという大義名分もあるのだが、実際は我慢の限界を越え、とうとうネットでバイブを購入してしまったのだ。
男の時でさえ、オナニーをするのにアダルトグッズを買おうと思ったことなど一度もない。バイブに関しては面白いから使ってみたいと考えたこともあったが、なんのこだわりか「この身一つで女を喜ばせられなくてどうする!」と変なプライドがあったため、使ったことはない。それが、女になってアダルトグッズに手を出すとは思ってもみなかった。
そんな自分に少し戸惑いながらも、躰の疼きを薫にはどうすることもできなかった。太い男根で刺し貫かれたい。しかし、男には抱かれたくない。冷静に考えればエル以外に抱かれることなど考えられないのだが、このままではおかしくなって他の男に身を任せてしまう。それを避ける答えが「バイブを購入する」ということだったのだ。
薫は自室に戻ると乱暴にテープを剥がして箱を開ける。
箱の中には、パッキン代わりに新聞紙が詰められており、中心に透明ケースに入れられたコケシタイプのバイブが入っていた。
ケースを取り、封印してある透明テープを爪で切り裂き、胸を高鳴らせながらバイブを取り出す。
「冷たい。それに大きすぎたかも……こんなの入るのかな? ううん。入るんだよね。エルの方が大きかったもん」
こうして見るとエルの男根より二回りくらい小さい気がする。それでも薫は興奮に打ち震えていた。久しぶりに刺し抜かれる快楽を味わえるのだ。はやる気持ちを抑えられないらしい。
薫は興奮しながらバイブを床に立たせた。薫の買ったバイブには底に吸盤が付いておりフローリングの床にぴったりと張り付いた。このタイプのバイブでは自分で動かなくてはならないが、さすがに電動バイブは怖くて買えなかったようだ。
「はあはあはあ」
床から生えているバイブを見ているだけで、もう我慢できないほど躰が熱くなり、息がどんどん荒くなっていく。
「はあはあはあ……こうやって見ているだけで興奮しちゃうよ……ああぁぁ……エル……エルのが床から生えてるよ……エル……エルゥゥ……」
バイブを見ながらデニムのミニスカートを捲り、パンティーの上から秘裂を撫でるように愛撫する。指を這わせる度にパンティーのシミが広がり、秘裂の形をクッキリと浮かび上がらせた。
制服以外では決してスカートなど履くことはなかったのだが、配達時間を18〜20時に指定したのがまずかった。女になってからは色々大変で、いつもは早く帰って来られなかったのだが、今日に限ってクラスメイトに追いかけられることもなく、真っ直ぐ家に帰って来ることができてしまった。バイブが届くことを内心楽しみにしていたので、早く帰ってきてしまったのかも知れないが、当然家に到着すればバイブのことを考えてしまい、股間に手が伸びてしまう。だからと言って裸でオナニーをしながら待っているわけにも行かない。スカートなら直ぐに出て行くことも可能なので制服以外履くことのなかったスカートを履いてバイブが届くのをオナニーをしながら待っていたのだった。
そのことが幸いしたのか災いだったのか、薫は服を着たままオナニーを開始ししている。
四つん這いになりバイブに顔を近づけ先端を一舐めする。さすがに少しゴムの匂いがしたが興奮した薫にはあまり気にならない。続いてキスをしてから口に含む。その間も指は愛撫を続け、パンティーに染み込むことのできなくなった愛液が太股をゆっくり流れ落ちていった。
「うん……うぐぅ……はう……」
──エルのを……ボク、エルのを銜えてるの……はああぁぁ……気持ちいい……
エルに愛撫していることを想像しながらオナニーを続ける。今までも、エルを想いながらしていたのだが、アイテムが加わるだけで想像力が掻き立てられ、いつもよりも気持ちがいい。薫はこうしているだけで軽く絶頂を迎えていた。
「うぐぅぅぅ……はああぁぁぁ……イッちゃた。もうイッちゃたよ」
いつもより絶頂が訪れるのが早い。さすがアイテムがあると感じ方まで変わるらしい。だが、これくらいで溜まりに溜まった欲望が晴れるわけがない。目の前に勃っているバイブを挿入しなくては満たされるわけがないのだ。まぁ、エルがいないのだからバイブを使ってオナニーしたところで満たされるわけはないが、多少なりとも「SEXをしたい」と言う欲望だけは解消できるだろう。
薫は膝立ちになるとパンティーも脱がずにバイブを跨ぐ。
「はあはあはあ……もうダメだよエル、ボク我慢できないの……入れてもいいでしょ……ねぇ、エル入れてもいいよね」
もう完全にエルとSEXをしているような気持ちになっている。興奮でぼやけた瞳には想像したエルの姿が映っていることだろう。薫はそんな想像の世界でも小さな幸せを感じているのだった。
そして、パンティーを横にずらすとそのまま腰を下ろしていき、バイブの先端に秘裂を添える。
「あうっ……先っぽが当たっただけで気持ちいいよ……でも、もっと気持ちよくなりたいの。だから、ね」
薫の腰がゆっくりと沈んでいく。ローションなど買っていなかったが先端が触れただけで、溢れ出た愛液がバイブを程良く濡らしているので、なんの抵抗なく挿入された。
「はあああぁぁぁぁぁ……これ、この感じなの……凄い広がってる。ボクの中に太いのが入ってくるのぉ」
ゆっくりと挿入しただけで、全身に快楽が走り抜けていった。今までのオナニーとは違う。やはり、こうして挿入されなくては本当の女の快楽は味わえない。そして、ぺったりと腰を床に落とした薫は自らの躰を抱いて震えるのだった。
「あうぅぅぅ……入れてるだけで気持ちいい。もう、イッちゃてるよぉ……これじゃ動けないの、動いたら直ぐイッちゃう」
挿入しただけで絶頂を迎えている。もう、動かなくても指だけでするオナニーよりも気持ちがいい。しかし、薫の躰は、自らの意志に関係なく、さらなる快楽を求めゆっくりと腰を動かし始めた。
「あうっ……ダメッ……今動いたら……ホラッ……イッちゃうよ……あっあっ……イクッ……イクゥゥ……」
自分でしているのに意味のわからない言葉を発しながら立て続けに絶頂を迎える。それでも、快楽を覚えた薫の躰は止まることはなく動き続けた。
「はああぁぁぁ……ダメッ……止まらないよ。腰が止まらないの……エル……ボクおかしくなっちゃう。こんなにしたらおかしくなっちゃうよ」
エルのモノではないが、久し振りに秘裂に受け入れたバイブのおかげで、今までのオナニーでは味わえなかった快楽に浸ることができている。購入する時は「こんな物を買っちゃっていいのかな?」と散々悩んだのだが、いざクリックしてしまうとバイブが届く日が待ち遠しくて仕方がなかった。そして、今こうして薫の中に収まっているのだからたまらない。
「あうっ……イクッ……またイクゥゥゥゥゥゥゥ……あああぁぁ……ダメだよ。こんなんじゃ足りないの……ボクどんどんエッチになっていく……はあぁぁ……こうすると気持ちいい……ううん……違うか……ボクは元々エッチだったんだもん……女になったからって、エッチでなくなるわけないんだよ……だからバイブまで買っちゃったんだもん……ボクは凄くエッチなんだから……もっといっぱいイかなくちゃ満足できないの……だからもっといっぱいしちゃうんだから……」
いやらしい言葉を並べるといけないことをしているようで凄く気持ちが良かった。自らを羞恥して興奮するとは変態的であるが、薫は顔を真っ赤にして喜びの喘ぎ声をあげ続けた。
床には溢れ出した愛液が絶頂を迎えるたびに広がり、蛍光灯の光でキラキラと美しく輝いている。
既に何度も絶頂を迎えているが、薫は一向に止める気配を見せず、ますます激しさを増していった。
そんな薫の姿を、僅かに開かれたカーテンの隙間から見つめる瞳があった。
その瞳は、薫の部屋から十数メートルも離れた電信柱の上から注がれている。本当にこれほど離れた場所から薫の姿をとらえていると言うのだろうか? そもそも、何故電信柱の上に……
その鋭い瞳は、確実に薫の気持ちよさそうに喘いでいる顔を捕らえていた。
これは人間業なのだろうか? いや、人間ならばカーテンの隙間から薫の姿を見ることなどできやしない。そもそも、電信柱の上にバランスも崩さず立っていられるはずがないのだ。
風になびく黒いマントも気にもせず、電信柱に立つ陰はジッと薫を見つめていた。
「なかなか面白い精〈プラーナ〉を持っている女の子だな。いや、こんな〈プラーナ〉など人間にはありえない。しかし、我々と同じ種族でもなさそうだが」
電信柱に立つ陰が、誰に話すでもなく呟いた。その声は以外と若く少年のようだ。
その時、風が駆け抜け。月を覆っていた雲が晴れると月明かりが少年の顔を照らし出した。
綺麗な銀髪を風になびかせ、瞳は青く顔立ちも整った美少年がそこにいた。しかし、少年の雰囲気はどこか冷たさを感じさせる。それは、その透き通るような白い肌が、そう感じさせているのかも知れない。
「もう少し調べてから手を出した方が良さそうだな。この感じは人工的に作られた〈プラーナ〉のような気がする。まぁ、慌てることもないし、誰が絡んでいるかを調べてからでも遅くないだろう」
そう言って、少年は電信柱を蹴ると天高く飛び立ち、満月と重なると翼のようにマントを羽ばたかせ暗い夜空へ消えていった。
そして、少年が飛び去ったのと同じ頃、一際大きな喘ぎ声が部屋の中に響き渡ったかと思うと薫はベッドに倒れ込み、そのまま意識を失ってしまうのだった。
* * *
「うっ……うう〜ん……エル……はあぁぁ……そんなにしたら……」
床に座ったままベッドにもたれかかるようにして眠っている薫の唇から、小さな寝言が漏れ出ている。その幸せそうな顔から察するに、夢の中でもエルに抱かれているのだろう。本当に、一日中エッチなことばかり考えている薫であった。
しかし、この状況を見れば当然かも知れない。オナニー真っ最中に意識を失い、そのまま寝てしまったのだから、当然秘裂にはバイブが突き刺さっている。断続的に注ぎ込まれる快楽が薫に淫らな夢を見せているのだろう。
「……あうっ……もうダメッ……そんなに強くしたらまたイッちゃうよ……」
薫の腰は小刻みに揺れ絶頂へ向かおうとしていた。これで本当に寝ているのか疑いたくなってくるが、起きていればもっと動きが大きくなるのでこれでも寝ているらしい。
そして、夢精のように薫は絶頂を迎えた。
「あぁぁぁ……イクッ……」
絶頂を迎えた途端、薫は目を見開き上体を起こした。躰には快楽の波動が駆け抜け小刻みに震えている。
「あっ……あっ……」
衝撃的な目覚めに、薫の顔は快楽に歪むと言うよりも驚きの色に染まっていた。
「イッちゃった……ボク……夢を見ただけなのに……」
あまりの出来事に恥ずかしすぎたのか、薫は顔を真っ赤に染めるとベッドに飛び込むように顔を隠した。
「あうっ……」
バイブが挿入されていることに気付いていなかった薫は、勢い余って腰まで動いてしまい、思いがけない快楽に再び驚くことになる。
「はああぁぁ……ダメェェ〜……はあはあ……まだ入ってたんだ……あうっ……入れたまま寝ちゃうなんて……だから夢見てただけでイッちゃったのかな……」
オナニーをしたまま寝てしまったことをやっと思い出し、今度はなるべく腰が動かないようにしてベッドにもたれかかる。夢で絶頂を迎えてしまったこともそうだが、バイブを挿入したまま寝てしまったことの方が恥ずかしいのか動くことができない。
そのまま数分間ジッとして少し落ち着きを取り戻した薫は、顔を上げるとベッド脇に置かれている目覚まし時計に目をやった。
「まだ5時半なんだ」
いつも起きている時間より2時間近く早い。しかし、こんな目覚め方をしてしまったのでもう一度寝ることもできないだろう。それよりも、今も刺さっているバイブをなんとかしなければ眠れるわけがない。
「こんなの入れてたら躰が火照っちゃってダメッ。目も覚めちゃうし、とにかく抜かないと……」
そう思っているのだが、少し腰を動かしただけで快楽が襲ってくる。まさか朝一からオナニーをするのはやりすぎなので、なんとかしたいと思うのだが躰がなかなか言うことを聞いてくれない。
「はあああぁぁぁ……抜かなくちゃいけないのにぃ〜……」
抜こうとするととてつもない快楽が襲ってきて、腰砕けなり元に戻ってしまう。それを何度か繰り返していると止められないほどの衝動が沸き上がってきた。
「はあはあはあ……ダメッ……もうダメなの……一度だけ……一度だけしたら止めるから……」
こんな快楽を味わってしまったら、止められるわけがない。恥ずかしいがここは素直に一度絶頂を迎えた方がいいと考えたのか、快楽を味わうように腰をくねらせると薫は直ぐに絶頂へと登り詰めていくのだった。
「ダメだ……ボクってなんていやらしいんだろう……」
男の時には感じなかった自責の念が薫に襲いかかってくる。
結局あれから何度もオナニーを繰り返してしまい。目覚まし時計の音でやっと止めることができた。
本当は、まだまだ続けたかったのだが、まさか学校を休むわけにはいかないので、この火照りを取るために今はシャワーを浴びている真っ最中だ。
目覚まし時計を止め、自らの分泌液で汚れた床を拭いてシャワーを浴びてしまっているので、今日は朝食を抜いて行かなくてはいけない。最近はちゃんと朝食を取るようにしていたし、お弁当を作っていたのでなんだか調子が狂ってしまう。
「オナニーは止められないと思うけど……気を失うまでするのはよそう。また、入れたまま寝るのなんて恥ずかしすぎるし、朝時間がなくなっちゃうもん……うん。そうしよう。絶対に朝はオナニーなんてしないんだから」
なにもそんなに気張って決心することでもないのだが、薫は拳を握って「よしっ!」と気合いを入れた。
「そうだ、バイブもちゃんと手入れしておかないと。確かぬるま湯で洗って陰干しするんだっけ」
使ったことのない割に、ちゃんと手入れのやり方まで知っているとはたいしたものだ。本当ならこれで消毒液でも塗っておくと雑菌が繁殖しないで完璧なのだが、一緒に消毒液を買っておかなかったので仕方がない。
ぬるめのシャワーでバイブにこびり付いた愛液を洗い流し、乾いたタオルで水分を叩くようにして吸い取る。その手際の良さ、本当に使ったことがないのか疑ってしまう。
「はあぁ……こんなの持ってるとまた変な気分になっちゃう。でも、頭乾かして行かないと間に合わなくなっちゃうよ」
そう言って、躰をバスタオルで拭くとパンティーだけを履いて自室へと戻った。
裸のまま髪の毛を乾か終わると洗ったばかりのワイシャツを取り出し制服を着る。未だ、ブラジャーを着けるのが恥ずかしいのかノーブラだ。そして、オーバーニーソックスを引き出しから取り出したところで薫の手が止まった。
「…………どうしよう……」
なにを考えているのだろうか、薫はオーバーニーソックスを手に取ったまま動かなくなってしまった。
そのまま数秒間考え、手にしているオーバーニーソックスと別に用意していたパンティーを巾着袋に入れ鞄にしまう。そして、新たに取り出したハイソックスを履いて鞄を持つと家を出るのだった。
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