エピソード7―饗宴の夜



 珍しく困った顔で、ラヴニカは夜の森を散歩していました。

 しばらく前、雲の多かった空にちょっとした「いたずら」を、本当に何の気

もなしにしてしまった事を、今になって少し悔やんでいます。

 別に、誰も困ったりしない「いたずら」だと思ったのですが、近頃このあた

りの森の様子が少しおかしいようです。

 その「いたずら」は、虫や動物、草木などの生き物が、ちょっとだけ妖精と

同じように、複雑な気持ちを感じたり、それを行動に表すことが出来るように

なる、そんな雨を降らせるものでした。

 それでどうしようという気は無く、ちょっとした好奇心でしてしまってので

すが・・昨日、親友のコーカシカが、恥ずかしそうにして話してくれたことは、

たぶん、絶対に、その「いたずら」のせいで起きたことだと思えました。

 でも、もっと皆がびっくりするようなことや、コーカシカに怒られるような

こともしてしまう時があるので、こんな「いたずら」は大したことでは無いか

もしれません。ラヴニカはそう思うことにしました。

 その時、ラヴニカの右の手首に何かが触れました。

「?」辺りは真っ暗闇で、何も分かりません。

 しゅるっ

「・・なに!?」今度は左の手首に何かが巻き付いてきました。

 見ると、それはこの辺にはいないはずの植物のつるで、しかも素早く動き、

さらに植物とは思えない力で、ラヴニカの手にどんどん巻き付いてきます。

「どうして・・!?」

 突然の事に戸惑うラヴニカに、さらに別のつるが素早く近付き、ワンピース

の腰をとめていたリボンをするすると解いてしまいます。

「ええっ・・・・」

 同時に両の足首にもつるが巻き付き、殆ど身動きが取れなくなってしまいま

す。

 何本ものつるがラヴニカの服を器用に脱がし始めた時、彼女はこれも「いた

ずら」のせいで起きていることだと気付きました。

 わたしも、コーカシカと同じように・・・・そう思うと不安な反面、コーカシカ

の照れているような表情を思い出し、少し好奇心も沸いて来ます。このつるの

群れにどんなことをされるのか・・・・。

 うじゅ・・うじゅ・・・・

「・・・・? 何の音かしら。

 草のつる・・じゃないよね・・・・あっ」

 一瞬不安がよぎりましたが、つるの一本がパンツに掛かったのに気付いて、

それどころではなくなってしまいます。

「それは・・・・恥ずかしいから・・」

 期待せずに話しかけてみましたが、やっぱり植物はそれを無視して、下着を

下ろしに掛かります。

 その瞬間、ふわり、というラヴニカの股間の甘い匂いが、自身の鼻に広がり

彼女は恥ずかしさで顔を赤らめてしまいました。

 う・・じゅっ・・・・うじゅうじゅ・・

「えっ」

 その音はすぐそばまで来ていました。

 音のする上の方を見上げたラヴニカは、動けないのに思わず後ずさりをしよ

うとして、バランスを崩しそうになります。

 茶色っぽいぬめぬめの、見たことの無い巨大な生き物の先端が木の枝から垂

れ下がって、うごめいていたのです。

「・・・・」声も出せないラヴニカに、頭上から怪物の先端の、口のような部分が

近付いてきます。

 ラヴニカは次の瞬間、そこが口ではない事を悟りました。なぜなら、そこか

ら別の小さな生き物―オレンジ色のナメクジに似たものが、産み出されて来た

からです。

 ぽとり、と一匹目が粘液の糸を引いて、怪物の体内から地面に産み落とされ

ます。地面に落ちたナメクジはぬるぬるとラヴニカに這いよって来ます・・。

 ラヴニカは怪物に、まるで見とれているように釘付けになっていて、それに

気付きません。もっとも気付いたとしても、草のつるがすでに胴体に巻き付き

しかも手首と脚を縛り上げていて、その場に座る事すら出来ない状態ではどう

にもなりません。

 すぐに怪物から二匹目が産み落ち、三匹目ももう顔を出しています。





 ぽと・・ぽと・・・・

 次々と産まれるナメクジ・・しかし五、六匹産まれたところで、どうやらそれ

は、少なくとも一旦は終わったようでした。

 ようやく地面に目をやると、なんともう初めのナメクジが靴に這い登り、他

のナメクジたちも思ったよりも素早い動きでラヴニカの身体へと這い集まって

来ます。

「やだ、やだよ・・・・」伝わらないと分かっていながらも、ラヴニカは思わず声

に出してしまいます。

 ナメクジが嫌だというよりも、縛り付けられたまま、好き放題にされるのが

何だかとっても嫌だったのです。

 ついにナメクジが脚に到達し、ラヴニカのやわらくて暖かい肌と、同じくら

いやわらかく、でも冷たく濡れたその腹部が初めて触れ合いました。

「う・・ふっ・・」小さく声を漏らすラヴニカ。「変な感じ・・。・・う、くすぐった

 ・・い」

 ぞく・・

 二匹目が反対の脚に辿り着き、ラヴニカは可愛らしく鳥肌を立てます。

 這い登ってくるナメクジに、本能的に脚をきつく閉じようとして・・ラヴニカ

ははっとしました。コーカシカに聞いた蛇の話・・それと似たような状況に激し

い戸惑いを感じたのでしょう。

 開いたまま固定された脚を何とか閉じようともがきますが、つるの力は強く

どうにもなりません。

 一番初めに産まれた、中指ほどの長さのナメクジが、太ももから脚の付け根

の大切な部分に向かいます・・。

「そんな所に来ちゃだめよ・・」努めて優しく言葉を掛けます。

 この時ラヴニカは、ただ恥ずかしいし、汚れやすい場所だから、という事で

そう言っていました。

 知っているわけでも、本能やコーカシカの話から想像した訳でもなかったの

です。実際にそこをナメクジに這われたら、どんな事になってしまうのか・・

 ぬる・・ぬるぬる・・ラヴニカの言葉を無視して、恥丘を上ったナメクジはあっ

という間にそこを通り過ぎ、そのまま割れ目に頭を挿し入れます。

「だめ・・そこの中はだめよ・・」

 しかしナメクジはそのまま、割れ目を押し開きながら、それに沿ってぬめぬ

めと這い進み始め・・・・

「えあっ・・・・あっ・・あ・・これ・・・・何なの・・? 変な・・気持ち・・・・」

 にゅりゅんっ・・ナメクジが、割れ目の中で強く体をよじります。

「・・はうっ! ・・・・・・あ・・」

 思わず変な声を出してしまい、ラヴニカは顔を真っ赤にします。

 それでもすぐ、ラヴニカの息遣いに荒さが目立ち始めました。

 にゅる・・ぬる・・暖かい割れ目を後ろに向かって這い進み、頭がそこを抜けて

肛門に触れそうになった時、ナメクジはその向きをくるりと変えました。

「・・・・」

 にゅるにゅる・・・・割れ目から体を抜いたと思ったら、再び、今度は後ろから

割れ目に頭を潜り込ませてきます。

「は・・あ・・・・」熱いため息を付くラヴニカ。

 ぬるぬる・・にゅる・・・・

 ナメクジはさっきよりもいくぶん早く、割れ目を這い進んでいき、今まで、

おそらく全く知らなかったであろう甘い感覚を、妖精の少女にもたらします。

 ラヴニカの眼差しは、いつしかとろんと潤み、身体を切なそうにもじもじと

させていました。

 どういうわけか、その一匹と膝のところで動かない一匹以外は、皆靴にたか

って、身体まで這い登ってきてはいません。しかし、もう快感に意識を占領さ

れ掛けているラヴニカにはそれを気にするどころではなく、あげるうめきはま

すます甘く、また頬だけでなく、膣口の周りや乳首の周り、肩や膝まで興奮に

赤く染めて、口からよだれの筋を垂らして喘いでいます。

 ぬるぬる・・るっ・・にゅる・・・・にゅるる・・・・

 前方に抜けたナメクジが、また方向を変えて再び割れ目にもぐりこんできま

す。

「あ・・あああ・・・・

 ナメクジの腹部がやわらかで敏感な部分に濃密に絡みつき、ラヴニカはうっ

とりと声を漏らし、さらに少しずつ昂ぶりを見せ始めます。

 ひく、ひく、と膣口が切なげに痙攣し始め、それを感じ取ったのか、ナメク

ジが今までよりずっと素早く割れ目を行ったり来たり這うようにしたため、途

端に昂ぶりが加速していき、ラヴニカはびくっびくっ、と震えます。

「んは・・・・は・・はっ・・はっ・・・・」鼻に掛かったその声は、突き詰めるように少

しずつ間隔を狭め、突然・・「んくっ・・いやぁ、何か来るっ!!」

 にゅちゅ・・にゅちゅっ、ぬちゅ・・

 ナメクジは這うのを止め、割れ目の深い部分で身体をのたうたせます。

「いやああ、怖い・・・・怖いよ・・・・!!

 は・・恥ずかしさが・・おま○こに・・込み上げ・・

 ああっ、とっ・・止まらない、止まらないっ・・・・はあっあっああっあっ・・!!

 いやっ・・いやあぁぁああぁぁぁあぁぁあん!!

 いやあぁぁぁあん、いやん、いやんっ・・・・

 いやいやいやあぁぁぁあぁぁ〜〜〜〜〜んっ!!!!」

 何度も何度も甘ったるい悲鳴をあげるラヴニカ。咥え込んだままのナメクジ

の身体を愛撫するように、割れ目が激しくぱくぱくと痙攣します。

「は、はずかしっ・・い・・・・よう〜〜〜〜っ!!!」

 コーカシカにも聞かせた事の無いような甘えた声で、ラヴニカはおそらく無

意識に叫び続けます。

 いつもはけっこう冷静なラヴニカでしたが、初めて・・そう、立ったまま、身

動きも取れないような状況で、しかもたった一匹のナメクジに局部を這われて

もたらされた、初めての壮絶な性の快楽に、ラヴニカはもう何も考える事も出

来ず、今まであまり見せなかった、コーカシカと同じかそれ以上の、心の中の

甘えん坊の部分をさらけ出し、赤ん坊が母親におねだりするような口調で、何

度も何度も切ない悲鳴をあげて、動かない身体をそれでも限界まで身もだえさ

せます。

「・・・・ひうっ・・うっ・・・・・・ふっ・・ふっ・・」

 ようやく波が収まってきたのかラヴニカは苦しそうに息を整えました。しか

し頭はまだ桃源郷にいるのか、怪物を見つめる眼差しはうつろです。

「・・・・? えっ・・」

 ラヴニカは自分の脚に目をやり、それを見て息を呑みました。

 彼女を現実に引き戻したのは、ももに感じ、脚を這い登ってくるたいくつか

の冷たい違和感でした。―






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