「…それでは、先生。エリス様のこと、くれぐれもよろしくお願いいたします」
「はい…わかりました。お任せください」
「では、私はこれで失礼します。エリス様、今回は前の学校のようなことがございま…」
「わかった、わかったから…もう! いいからさっさと帰りなさい、カイリ」
「…それでは」
「……」
「……」
「…ふぅ、やっと帰ったわね。ごめんなさいね、先生。彼女しつこくて…」

 彼女の名前は、橘かい里【たちばなかいり】。わたしの家…西宮寺家のメイドをしている24歳の独身女だ。うちで働き始めて今年で6年目になる。彼女がうちに来たばかりの頃には他にも何人かメイドがいたのが、今では彼女一人になってしまっている。その理由については…まあ、またの機会に。

「…ん…せい……先生!
…!
「先生、聞こえてます?」
「あっ…、ご…ごめんなさい! ちょっとボーっとしちゃってて…」
「…先生、いやらしい。わたしのおっぱいばっかり見て…女のクセに」
「…ごめんなさい」

 まあ、この女教師があたしのおっぱいに思わず目を奪われてしまうしてしまうのも無理はない。なぜなら、ここは学園の職員室という場でありながら、今わたしは全裸姿でいるからだ。そして、そのわたしのおっぱいがとてつもなく巨大だからだ。

「……」
「…フフッ」

  わたしが学園内でこんな格好でいられるのは、もちろん学園側の運営サイドから許可を取った上でのことだ。前の学校の理事長は頭の固い奴で、わたしが校内を全裸で歩くことを最後まで了承しようとしなかった。まあ、許可されようとされまいと、わたしはわたしの好きなように勝手に全裸で歩き回っていたのだが。
 それに比べ、この学園の上層部は話のわかる連中ばかりで助かった。ちょっと札束を積めばすぐに例外を認めてくれる、わたしの好きなタイプの人間たちだ。

「それじゃ、先生。そろそろ教室へ案内してください。そろそろホームルームの時間が始まっちゃいますよ?」
「…そうね。行きましょうか」











ざわ…ざわ……ざわ…ざわ……

「はい! みんな静かにして」
「…フフッ」

 今日、このクラスに転校生がやって来るということはみんな聞かされていたようだが、それが全裸の爆乳少女だとはどうやら聞かされていなかったようだ。ほとんどの男子たちは生唾を飲み、目を見開いて前のめりになりながらわたしの巨大なおっぱいを凝視しているが、おそらく童貞であろう何人かの男子たちは股間を押さえ顔を真っ赤にしてうつむきながら、上目遣いでチラチラとわたしに視線を向けていた。そして女子たちは嫉妬と羨望の眼差しでわたしのおっぱいを睨みつけていた。
 わたしのこの姿を目の当たりにして、教室のざわつきは収拾がつかなくなっていた。

「は〜い! みんな、静かにして…! 静かにしなさい! 今から転校生を紹介します…静かに!

ざわ…ざわ…

「…はい、それでは紹介します。転校生の西宮寺エリス【さいぐうじえりす】さんです」
「フフッ…よろしく、みなさん」

ざわ…ざわ…

「は〜い、注目! 静かにして。みんな、西宮寺さんの格好のことで不思議だなってところがあると思うんだけど、彼女がこんな格好をしているのにはちゃんと理由があります。みんな、いま実際に西宮寺さんのことを見てもらってわかったと思うんだけど、実は彼女、胸が大きすぎるせいでうちの学校の制服が入らなかったんです。それどころか、市販のどの服も下着も入らなくて、やむを得ず今までずっとこの格好で暮らしてきたんだそうです」

ざわ…ざわ…

「先生、質問!」
「なんですか、吉田さん?」
「上半身がハダカの理由はわかったんですけど、なんで下半身までハダカなんですか? 西宮寺さんの下半身ってそんなに太ってないと思うんですけど」
「っていうか、アレむしろ痩せてるよね〜?」
「だよなぁ? 見ろよ、あのくびれ…」

ざわ…ざわ…

「はいはい! みんな静かにして! 確かに、西宮寺さんの下半身はとっても健康的だけど…あ、ごめんなさい。西宮寺さん…あなたの上半身が健康的じゃないなんて言ったつもりは…」
「フフッ…いえ、気にしていません。どうぞ続けてください」
「うん…ありがとう。それで、西宮寺さんの下半身はとっても…えっと……スリムなんだけど、上半身はその…人並み外れているわけで…だから胸が邪魔して下半身の着脱衣にも一苦労らしいの。でも、急を要する時…たとえば用をたす時とかってすぐに準備ができないと困るでしょ? だから、西宮寺さんは下半身にも何も着用しないで生活しているんだそうです」

ざわ…ざわ…

「だから、西宮寺さんの格好のことで彼女を悪く言う人がいたら、先生が許しません。わかりましたね?」

ざわ…ざわ…

「さ…それじゃ、西宮寺さん。自己紹介して頂戴」
「はい」














「ああ、先生…勝手に教卓に登っちゃってごめんなさい? 胸が重すぎて立ったままだと辛いんです…だから座って喋りたかったんですけど、床の上に座ったらみんなの顔が見えなくなるから、ここに…」
「わかっています。学園長先生を通じて、理事長から許可を得ていることは伺っています。でも、教卓に登るなんてやっぱり誉められた行為じゃないから、なるべく早く済ませて頂戴ね…」
「フフッ、わかっています。それじゃ、みなさん。何か質問はありますか?」

がや…がや…

「はい! じゃあ、俺」
「どうぞ」
「西宮寺さんって、彼氏はいるんですか?」
「フフッ…、最初の質問からそれですか? そうですね…今はいません。昔はいたこともあるんだけど、わたしってこんな格好で生活しなきゃいけないカラダでしょ? どこに行くにも目立つから、一緒に出かける度に彼氏に迷惑ばかりかけちゃって…だからもうかなり長い間、彼氏はいません」
「はい! じゃあ次、あたし! えっと…西宮寺さんって、いつからおっぱいがそんなにおっきくなっちゃったの?」
「う〜ん…、小さい頃からまわりの同年代の子たちよりは大きかったんだけど…普通に生活するのも大変なほど大きくなったのは3年くらい前からかな? 最初の頃は服を着たら息苦しい、どこに行くにも目立っちゃうしで凄く悩んだ時期もあったんだけど、でも今はこうやってまわりの人達から理解と協力をもらって、楽しく暮らすことが出来ています」
「じゃあ、あたしも質問! 西宮寺さんの家ってどんな家なんですか? 家族の人もみんな胸とか大きいの?」
「わたしの家は、そうね…この国の一般的な家庭よりはちょっとだけ裕福な家ではあると思います。父は貿易商をしていて、身体つきとかは…まあ、普通かな。ただかなり高齢なので、父兄参観日なんかで他のみんなの若いお父様たちを見たりすると、ちょっと羨ましくなっちゃいます。ちなみに兄弟とかはいません。ひとりっ子です。あと、母は…もういません」
「あ…ごめんなさい。変なこと聞いちゃって…」
「ううん、いいの。あっ…それと、みんな? わたしのことはエリスって呼んでください。西園寺さんって呼ばれるの、なんだかくすぐったいから」
「うん、わかった。エリスちゃん」
「エリスちゃん。これからよろしくな!」
「フフッ…みんな、ありがとう。あ…なんか、みんなにとっても優しく接してもらえたから、緊張が解けて……わたし、なんだか…もよおしてきちゃった……」


プッ…プスッ……プス〜ッ……


「…なあ、おい? なんか…変な臭いがしねえか?」
「ああ。なんだろ…屁みたいな、糞みたいな臭いが…」
「あっ…みんな、ごめんなさい…」
「…?」
「どうしたの、エリスちゃん?」
「この匂い、わたしのオナラの匂いなの…うんこ座りしてたから、なんだかもよおしてきちゃって…」
大変! だれか、女子の人…西宮寺さんを急いでおトイレに案内してあげて!」
「せ…、先生……もう無理…わたし、もう……我慢できない…」


プスッ…プスッ…


「ち、ちょっと…西宮寺さん……!
…出る…っ…!



ボボンッ! ボボンッ! ボムン!
ボムムムムムムムムムムムムムム

ボボムボムボムッ!





「…わたし、おしりの栓が人一倍弱いの…だからこれからも、つい漏らしちゃうことがあるかもしれませんけど…あまり気にしないでもらえると嬉しいです」


ギャー!!
ヴァアァアァァ…!!!
おっ…おげぇぇぇぇ…!


 わたしが脱糞した途端、その匂いで教室中が大パニックに陥った。男子も女子も担任教師も、そのほとんどが一斉に席を立ち、窓を開けて廊下に飛び出していった。しかし、わたしはそんなことには構わず自己紹介を続けた。

「…ちなみにおしりの栓と同様、乳首の栓もとっても緩いので……」

 …しかし、中には座ったままわたしの様子を見ながら勃起した自分のペニスを掴んでオナニーを始める男子や、ニヤニヤとうすら笑いを浮かべながらわたしの近くににじり寄ってくる男子もいた。

「……」
「…なぁ? てめぇ、絶対俺らのこと誘ってんだろ」
「乳の栓が緩くて、どうしたんだよ…続けろよ?」
「……」
「いいから続けろよ。他の連中には自己紹介できて、俺らにはできねぇって言うのかよ…差別すんなよ!?」
「えっと…わたしの特技は、このおっぱいいっぱいに溜まったミルクをいつでも出せることです」
「よし…じゃあ俺らが見ててやるから、出してみろよ」
「……」
「…どうした? はやくやれよ」
「それじゃあ…」





モミッ……ムニュ…ムニュッ…


あっ…あ…ぁ…あぁ………





あはっ…あはぁ……ハァ…ハァ……こ、これが……わたしの特技です…」
「……」
「ハァ…ハァ……どうでした?」
「…ヘヘッ…へっへっ……やっぱりこいつ、俺らのこと誘ってやがる…そうだよな? お前ら」
「あぁ…間違いねぇ」
「……」
「よし…先公も出てったことだし、こいつヤっちまおうぜ?」
「おぉっ!」
「おい、田中も来いよ? オナニーなんかより生だぜ、ナマ! お前どうせ童貞なんだろ? いいから来いって!」
「え…? ぼ、僕はいいよ…!」
「いいから、来いよ!」
「西宮寺もいい加減降りてこいよ。ほらっ…!」
「ぇ…あぁ…っ……!」

 その時、急に男子の一人がわたしの腕を引っ張った。そのはずみで足を滑らせ体勢を崩してしまったわたしは、頭から教卓の下へと落下した。


ガツン…!

「お、おい…こいつ、頭から落ちやがった…!」
「ちょ…やばいんじゃねえか……スゲー音したぞ…」
「…あぅ……ん……うぅ…ん…っ…………」

 そしてわたしは、そのまま気を失ってしまった。











「…ぅ…ん……」
「あら…? やっと気がついた」
「……」
「気分はどう?」
「…ここは?」
「保健室よ。あなた、教卓から落っこちて頭を打っちゃったのよ。憶えてないの?」
「あぁ、そういえば…そうだったかも……そう…だったわね」
「……」
「それで、あなたは?」
「…あたし? あたしはあなたのクラスメイトで、クラス委員長の高畑佑子【たかはたゆうこ】。これからよろしくね、西宮寺さん」
「こちらこそ、よろしく。あぁ、わたしのことはエリスでいいわよ? 高畑さん」
「じゃあ、あたしも。佑子でいいわ」
「うん、わかった。それじゃ、佑子…ちゃん?」
「…なに?」
「佑子ちゃんがわたしの看病してくれたの?」
「…まあね」
「そう。ありがとう、助かったわ……痛っ!」

 わたしは姿勢を起こそうと、首をすこしだけ浮かせた瞬間、後頭部のあたりに激痛が走った。

「…保健の先生は心配要らないって言ってたけど、頭を結構強く打っちゃってるみたいだから、もうすこし横になってたほうがいいわよ」
「うん…そうね」
「でも…、身体のほうは無事じゃないみたいだけどね」
「ぇ…?」
「あたしが黙ってても、あとでわかることだから言うけど、あなた…気を失っている間に男子たちに輪姦されてたみたいよ? まあ、そんな挑発的な格好してるんだから、そういう目に遭うのは自業自得なんだけどね」
「そぅ……」
「…っていうあたしも、経験あるんだけどね」
「なんの…?」
「…レイプよ。レイプされた経験」
「……」
「むかし…塾の帰りにね、通りすがりの中年の男に襲われたの。まだ小さかったあたしはロクに抵抗することもできずに、力ずくで押さえ込まれて、そのまま…」
「……」
「その日のあたしは、当時同じ塾に通っていた片思い中の男の子の気を引こうと思って、透けブラがくっきり見えるくらい薄手生地のブラウスを着て行ったの…それであんなことに。あたしを犯した男、普段は真面目な性格だったみたいだけど、人通りの少ない夜の路地裏であたしの格好を見て、つい変な気持ちになっちゃったんだって」
「……」
「それ以来あたしは変な服を着るのをやめたわ。そして、なるべく色気を出さないようにするためにメガネをかけることにしたの…あ、視力はいいんだけどね」
「何が言いたいの…?」
「つまり、レイプされたくないならそれなりの格好をしなさいってこと。あなたのその格好、どうぞ犯してくださいって言ってるようなものでしょ?」
「…ずいぶんハッキリ言うのね。佑子ちゃん、あなた…友達いないでしょ?」
「……」
「どう?」
「…当たり。そういうあなたも、ずいぶんハッキリ言う人ね」
「……」
「……」
「でも、そういう人って嫌いじゃないわ」
「……」
「…ね、わたしたち友達にならない? わたしも今日のことでしばらく友達とか出来そうにないし…これから毎日ひとりぼっちでランチ食べるのも寂しいしね…、どう?」
「……」
「……」
「…フフッ、いいわ。あなた、変わった人ね」

 こうして、わたしと佑子ちゃんは出会ったのだった。



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