![]() 「お疲れ、美里」 「あ…御主人様……」 「ずいぶん酷くやられたな」 「はぃ……」 「おっ、と…大丈夫か?」 「…すみません。右ひざ下のあたり…骨が折れちゃってるみたいで…まっすぐ歩けなくて…」 「あぁ…本当だな。この腫れ方は酷い…とりあえず、俺におぶされ。牢まで送ろう」 「ありがとう…ございます…」 この人は、あたしたち蓄肉ブタ組の御主人様。ここ養奴場であたしたちに優しく接してくれる唯ひとりの人だ。名前は知らない。 この養奴場と呼ばれる地下施設では、蓄肉と呼ばれる何人もの女の子たちが飼われていて、あたしもその中の一人だ。養奴場の構内には蓄肉を収容するための牢屋がいくつもある。それらの牢にはそれぞれサル組、イモムシ組、ダニ組など個別の名称が付けられていて、あたしたち蓄肉はそれらの牢のいずれかに所属させられることになる。そして、あたしはそのうちブタ牢に配属された。このブタ組には、あたしを含めて三人の蓄肉が所属している。 「さあ、着いたぞ」 「すみません、御主人様…こんな薄汚い蓄肉のあたしなんかに…」 「気にするな。お前たち三匹の管理、飼育が俺の仕事だからな」 「……」 「どれ、他の二匹の様子も気になるからな。ちょっと中に入らせてもらうぞ」 「…はい」 ![]() 「あっ、御主人様!」 「よう。舞子、相変わらず元気だな」 「うん!」 「それに、カヤも…」 「…はい」 このふたりが、あたしと同じブタ組のカヤさんと舞子ちゃん。向かって左側に座っているおっぱいの大きな子が舞子ちゃん。いつも元気な、この牢のムードメーカーだ。そして、四肢を切断されて四つんばいの格好をしている髪の長い彼女がカヤさん。実はカヤさんと御主人様はここに来る以前からの知り合いらしいのだが、ふたりとも昔の話はしようとしない。 「それにしても、美里ちゃん…ずいぶん酷くやられちゃったわね。大丈夫?」 「あ…うん、平気です。ショーの後で、係の人にちゃんと消毒してもらったし…」 「だが、骨が折れているんだ。明日の朝いちばんで、医務室に行ってきちんと手当てをしてもらおう」 「はい、御主人様…」 あたしたち蓄肉は、全員がこの養奴場のオーナーに飼われている存在だ。あたしたちはそのオーナーの指示があり次第、養奴場のすぐ側にある虐辱倶楽部と呼ばれる見世物小屋で毎夜開催されている拷問ショーの舞台に立たなければならない。今もあたしはその舞台で棘の鞭打ち五十発の拷問を受けてきたばかりだ。そして、そこであたしは右足骨折の重傷を負ったのだった。 だが、基本的にあたしたちがその舞台であまり無茶な拷問を受けさせられるということはない。オーナーとしても、大事な商品であるあたしたち蓄肉が二度と舞台に立てなくなるような身体になることは、この施設の経営上不利益だと考えているからだ。しかし、特定の得意客が多額の特別料金を支払って、あたしたち蓄肉に特別な拷問を与えたいと申し出た場合には話は別だ。その際には、あたしたちの身体や命は舞台上で塵屑同然の扱いを受けることになる。カヤさんの四肢も、そんな特別拷問の舞台で失われたのだそうだ。あたしがこの施設に入れられるよりも、ずっと昔の話らしい。 「あっ…ねぇねぇ、美里。おなか空いてない?」 「ぇっ? うん…そういえば、少し…減ったかな?」 「じゃあ、アタシがゴハン出したげる」 「…ぅ…うん。ありがと…」 「御主人様、見ててくださいね!」 「ああ」 舞子ちゃんはそう言うと、座ったままの姿勢でお尻の穴に軽く力を込めた。 「ふんっ…!」 ブッ…ブブッ…ブブブブッ…… ![]() 「さあ。アタシの出したてホカホカの新鮮なうんこ。いっぱい食べてね、美里!」 「ぁ…うん……」 「たった今、わたしのごはんを出してくれたばかりなのに、まだそんなに…舞子ちゃん、さすがね」 「えへへ、そっかな〜? ね、ね! カヤさん。味の方はどう?」 「うん。苦味も程好くて、しっとりとしていて舌触りも良くて…すごく美味しいわ」 「本当!? 嬉しい〜! さ、さ! 冷めないうちに、美里ちゃんも食べてみて!」 「ぇ…と……ぁ…ぅん……ぁ、あとで…ね……」 この施設に来てまだ日の浅いあたしは、食糞にだけはいまだに抵抗を感じている。あたしたち蓄肉には、週に二食だけ雑穀や生肉など栄養価の高いものが与えられる。だが、それ以外の日には本当にまったく食料を与えられないので、自分や他の蓄肉が出したうんこを食べて空腹を紛らわすしかない。しかし、まだどうしても人糞特有の臭味に抵抗を持っているあたしは、もう本当にどうしようもないくらいにおなかが空いた時以外、できるだけうんこを口にしたくないと思っているのだった。 「…美里ちゃん。無理なダイエットは身体に悪いわよ?」 「そうそう。好き嫌いしないでちゃんとうんこ食べないと、カラダ壊しちゃうよ? だから…ね? ほら…」 「あ……あとで…! あとで…ね……」 「……」 つい最近までごく普通の家庭で、ごく普通の学生として、ごく普通の生活を送っていたあたしがここでの生活に慣れるまでには、もう少し時間がかかりそうだ。 |