●第一章 スィート・バレンタイン☆



 

ブィーン、と掃除機が快調に部屋のほこりを吸い取っていく。

開け放った二階の窓から二月のさわやかな風が吹き込んでくる。もちろん空は快晴。

一番寒い時期とはいえ、こうして部屋の空気を入れ換えながら掃除をしていると、

心もきれいになるような気がするから不思議だ。

彼女の名前は秋津志保〔あきつ・しほ〕。

細いふちの横長フレームの眼鏡。

頭にバンダナを巻き、カットソーのシャツとゆるい室内用のパンツを穿いている。

そんなラフな格好をしていると、今年で35になるというのに、まるで大学生のような若々しさが

あった。

もっともシャツを押し上げる胸のふくらみやパンツに包まれた丸いお尻のボリュームは、とても

学生の体型だとは言えない。熟れきった女の肉体そのものだ。

とはいえ、熟女にありがちな崩れた感じはどこにもない。あくまで健康的な色気をふりまいていた。

八畳一間の室内にはベッドと勉強机、カラーボックスが二台。

全体的にパステルカラーの、落ち着いてはいるがどこか華やいだ雰囲気の部屋。

「…よしっ、と」

掃除機のスィッチを切り、両手を組んで、うーんと伸びをする。

そして、その姿勢のまま、

「…あら?」

何気なく床へ落とした視線の先に、気になるものがあった。

ベッドの下から何かが覗いている。

垂れたシーツの影になってはいるが、端っこが見え隠れしていた。

引っ張り出してみると、

「まあ」

表紙に豊満な肉体の美女が堂々とポーズしている。こちらを挑発するように胸を反らせ、いやが

うえにも媚態を強調していた。

「あの子ったら…」

ぱらぱらと裸の美女があられもない肢体をさらけ出すページをめくりながら、志保はクスリと

笑ったが、すぐにその笑みは複雑なカーブを描いて歪んだ。

―――困ったわね。

そばのゴミ箱を見ると、中に大量のティッシュが捨ててある。なんに使ったのかは考えるまでもない。

年頃の子供が性に興味を持つのは当然のことだ。

セックスがなければ子供は生まれないし、愛情の発露としての性行為を否定するわけにはいかない。

だから、それ自体がいけないわけではなく、正しい知識と良識をきちんと学んでくれれば、

親としてもこの手の雑誌を講読するのに反対はしない。

ただ、それが、女の子でなければ。

というより、ふつうの人間…であれば。

そこまで考えた時、裏表紙がめくれ、そこに挟んでいた紙切れがはらり…と落ちた。

(あら?)

なにかしら…と何気なく手に取った志保は、「あっ」と小さな叫び声を上げたまま固まってしまった。

それは、志保の写真だった。

タンクトップの彼女が青い山を背景に微笑んでいる。

いつか娘の沙椰華と一緒に温泉旅行へ行った時のスナップ。自分でも写りがいいと密かに自負してい

た思い出の一枚。

どうりでアルバムにないと思ったら、こんな所にあったのか。

写真の中の彼女の胸は、タンクトップの薄い生地を押し上げ、豊かに盛り上がっている。上の裾から

覗く肉の谷間が、そそるようにバストの大きさを強調していた。

よく見ると乳首の部分がかすかに浮き出ている。そういえば、この時はブラジャーをつけ忘れて

いたのを、今になって思い出した。

なんでもないと言ってしまえばそれまでのこと。だけど写真の出所が出所なだけに、意味が違っている。

(まさかあの子…)

頬が熱くなるのを覚えながら、雑誌をめくってみる。

すると、また一枚の写真が現れた。今度は鏡台に向かった半裸の志保を後ろから撮った物だ。

浴衣姿と和風の室内からすると、これも旅行先のものだろう。一種の盗撮だ。

気づかれないようにフラッシュなしで撮ったのか、画面がずいぶん暗いし、ピントもややぼけている。

撮影者の緊張ぶりがわかるような素人写真だった。

それでも上半身をさらした彼女の後姿は十分なまめかしい香りを放っている。

志保はしばらく所在無げに雑誌の表紙をなでていたが、ふいに興味を失ったように、写真を元のように挟んで、

さっとベッドの下へ戻してしまった。

「さ、仕事々々」

自分をうながし、そそくさと掃除機を持って階段を降りてゆく。

これから広告用のイラストと、頼まれていた絵本の挿絵を描かなければならない。彼女はフリーの

イラストレーターとして自宅で仕事をしていた。

なんにせよ、仕事だけはしっかりやらなければ。

母ひとり子ひとりのいわゆる母子家庭の身としては、頼りになるのは自分だけなのだから。

こんな事でいちいち動揺なんかしていられない。

一階の仕事部屋へこもると、お気に入りの紅茶セットでまずは一服。

仕事へ入る前の儀式みたいなもの。

旧いイギリス製のティーポットとカップ。

これでおいしいお茶を飲まないと、なんだか身が入らないのだ。

電気ポットのお湯が沸くのを待ちながら、スケッチブックを開く。

けれど何も描く気にならず、シャープペンを所在無げに振りながら、窓の外を眺めていた。

(そうか…もあの子も大人だものね)

そんなことをぼんやり思う。

腹立たしい気はしなかった。

困惑する気持ちもないではないが、それ以上に、

(あの子もかわいそうね)

そう思ってしまう。

なぜなら、彼女の娘は『ふつう』ではなかったから。

両性具有…ふたなり。

女性器と男性器の両方を持つ人間。

仮に娘がふつうの女の子で、女性に興味を持っていたとしても、それはそれで納得がいく。

あまり一般的ではないとはいえ、理解の範疇に入るだろう。

けれども、この場合は、どう考えたらいいのか。

電気ポットのお湯が沸いた。

立ち上がった志保はティーカップを取ろうとして、

がしゃん。

「あっ」

(お気に入りだったのに)

どこか他人事のように感じながら、床に飛び散った白い破片を見つめていた。


秋津沙椰華〔あきつ・さやか〕

すこしくせのあるショートヘアーがよく似合う女子高生。

顔立ちはやさしく、笑うと小さなえくぼが出る。

親の自分が言うのもなんだが、美少女だと思う。

背格好は自分よりもわずかに低い160センチ弱。このところ伸びが著しいから、追い抜かれるのももう間もなく。

スラリとした体型と、カモシカのようにきれいな足が自慢だ。

性格はどちらかというとおとなしい方で、窓際で本を読むのがお似合いな女の子。かといって運動がだめという

わけでもなく、それどころか並みの高校生を凌ぐ身体能力を備えている。とはいえ、体育はほとんど見学なので、

それを披露する機会はなかったが…。

沙椰華を生んだのは、志保が学生の頃。

バイト先の広告代理店の若い重役が相手だった。

今考えると特別好きだったとかそういうものではなく、ただ付き合いやすい性格の持ち主だったのだろう。

いずれにせよ若気の至りというか、気がついたらすでに避妊の時期は過ぎていて、いわゆる「できちゃった結婚」

にまで話は発展しかかった。

志保が沙椰華を生むまでは。

「実は…ですね」

病院の医師は赤ん坊が成長すると、さも気の毒そうに事実を告げた。

「おたくのお子さん、ちょっと変わってましてね」

「は?」

無邪気な笑みを浮かべてすやすや眠っている沙椰華を抱っこしながら、志保は医師が淡々と述べる事柄を

口を開けて聞いていた。

―――ふたなり? 両性具有? なんのこと??

彼女は赤ん坊がきわめてまれなケースであること、女性器はあるが男性器に似た器官もあること、そのどちらも

生殖能力を有していないことを、どこか遠くで聞いていた。

足元ががらがら崩れるってこのことか。

自分の生んだ子供が『まとも』じゃないって、…どういうこと?

混乱した彼女を立ち直らせたのは、皮肉にも恋人の冷たい態度だった。

赤ん坊の状態を聞いたとたん、彼はまるで掌を返すがごとく、二人から距離を置くようになったのだ。

「それは、ぼくの責任じゃないから」

悪いのはすべて志保、と言わんばかり。

いや、それ以前に『責任』うんぬんを口にする無神経さ。

恋人をいたわる感情などどこにもなく、ただ己を守るために精一杯の姿勢に、

―――こんな人だったのか。

スーッと醒めてゆくとともに、

(この子を守れるのは、わたししかいない)

にわかに母親としての自覚が芽生えてきた。

救いだったのは、両親が理解を示してくれたこと。

父も母も孫を「かわいい、かわいい」と言い、志保が赤ん坊の『病状』を告げても、

「そりゃおまえ、そうなったのも何かの縁ってやつだよ。きっとこの子はおまえの宝物になるんだから、

大事に育てなさい」

思わず泣いてしまった志保に、優しい言葉を掛けてくれた。

沙椰華は実家で育てられ、その間志保は得意の画力で身を立てるべく、大学を中退してデザイン事務所へ

飛び入りし、それからめきめきと力をつけてフリーにまでなった。

やっと親の手をわずらわせず、自宅で仕事をしながら娘の面倒が見れる。さあ、これから…という時に

なって、両親は観光旅行の帰り道、高速道路の事故でバスの転倒の巻き添えを喰ってあっさりあの世へ

行ってしまった。

ショックで放心状態の志保を救ってくれたのは、ほかならぬ沙椰華だった。

「あたしね、これからね、ママを守ってあげる」

かいがいしく食事の支度をしたり、洗濯を手伝ってくれる姿を見ていると、徐々に志保の中から

光が芽生えてきた。

―――そうよ、この子がいるんだもの。

親と自分が大事に育ててきたひとり娘。

彼女の将来を導くことが、残された自分の役目なのだから。

     *


沙耶華の『勃起』を性欲処理したのは、この間のこと。
いつもより起きるのが遅いので呼びに行こうかと思っていると、二階から目をこすりながら沙椰華が降りてきた。

「ままぁ…」

今にも泣きそうな顔。

「わたし、おかしくなっちゃった」

「えっ」

けげんな顔をする志保に、沙椰華がおずおずとパジャマのパンツを下ろす。

(まあ………)

白いショーツを何かが押し上げている。一見すると、それは三角形のテントを思わせた。

「ここがね、なんだか腫れるの」

無意識に手でふくらみを擦っている。けれど、瞳には恐怖の表情が張り付いていた。

(無理もないわ)

それは、本来あるべきものではないのだから。

一瞬、志保は沙椰華が哀れになったが、できるだけ平然とした顔をして言った。

「痛いの?」

「ううん、痛くはないけど…なんだか…あ、熱い、っていうか…」

心なし頬を赤くして震えている。

―――いけない。

ここでこの子に罪悪感を持たせては。

ふだんからさり気なく彼女の体がふつうの人間とは違う事を教えてきてはいた。でも、それで変なコンプレックスを

抱かれたら大変だ。

生身の体の一部分が変わっているからといって、人間としての価値まで劣っているように思われてはたまらない。

今の志保にできることは、できるだけやさしく接してあげることだった。

膝立ちになりながら、

「…ちょっと見ていいかな?」

「えっ…」

沙椰華の頬がなお赤くなる。それを見た志保は思わず(かわいい…)と口の中でつぶやいた。

「それとも恥ずかしい? ダメ?」

「ダメ、じゃないけど…」

「ママだけになら見せてもいいでしょ? さやかちゃんの体…」

「う…うん。いいよ。ママになら…」

素直にうなずく娘へにっこり微笑みかけると、ショーツの端へ手を掛ける。「あっ…」と目をつむる沙椰華を

怖がらせないよう、少しずつ脱がしていった。

(うわ………)

志保は息を呑んだ。

目の前に肉棒がにょきっ、と突き出された。

隆々と勃った肉の剛直。それはまさに、男性器そのものだ。

沙椰華の恥毛はとても薄く、ほとんど産毛にしか見えない。なので、女性器のすぐ上から『それ』が生えているのが

よく分かった。

志保の付き合った男性はほんの2,3人ほどだが、沙椰華の肉棒が一般的なペニスのそれと違っているらしいのは

なんとなくわかる。

肌色とほとんど変わらない表面。つやつやした肌理には血管があまり浮き出ず、陰嚢がぶら下がっていないためか、

男性特有の脂ぎった感じがない。なので、その太さにもかかわらず、どこかかわいらしい感じさえした。

(それにしても、大きいわ)

両手で掴めそうだ。
志保は無意識にごくりと唾を呑んでいた。

―――なに考えてるの。

首をひとつ振ると、

「触っていい?」

「えっ…」

沙椰華が目を開ける。

「でっ、でも、そこっ…」

(おしっこが出るんでしょう?)

「汚い」と言いかけて口をつぐんだ娘が愛しくて、

「大丈夫。痛いことしないから」

(ちがう、ちがうの)沙椰華がふるふると首を振る。

言いたい事はわかるが、志保に止める気はない。

「ほら…どう?」

さわっ…

「ひゃっ…」

少女がぴくり、と肩をすくめる。

ティッシュペーパーを乗せたほどしかない、軽い触り方だったが、『触られた』という事実が彼女を怯えさせた。

「ほら…痛くないでしょう?」

さわ…さわ…

そっと、あくまでもそっと掌を滑らせていく。

「ん……く…」

少女は顔を真っ赤にして身を捩っていたが、それでも母親がやさしく微笑むので、黙って身を委ねていた。

志保は、ある決意をしていた。

(この子に教えてあげよう)

性のなんたるかを。

どこまで…とは言えないが、罪悪感なしに性の悦びを教えられるのは、今の彼女を置いて他にない気がした。

「ねえ、さやかちゃん」

「ん…なに、ママ」

「教えてあげよっか」

「えっ?」

「こんな風になったら、どんなふうにしたらいいのか、教えてあげるね」

そして、きゅっ…と肉棒を握る。

「あ、んっ」

再び少女がぴくり、とする。

「いい? こうして、手で握って…こういうふうに…」

「…あ、…ああ」

しゅっ、しゅっ…

ゆっくりと手が剛直をしごいてゆく。

(うわ…太い)

見た時の実感そのままに、握ると硬い感触がある。それはまさに剛直と呼ぶにふさわしい性器だった。

へそに当たりそうなくらい勢いよく反った肉棒を擦っていると、志保の方もだんだん変な気分になってくる。

掌の下から、熱い温度と脈動が伝わる。どく、どく…と鼓動を打つそれは、他のペニスにはない力強さがあった。

「ああ…あ、ああ……ん」

初めての経験に、沙椰華の口から声が漏れる。それは愉悦というより、とまどいが途中で淫靡に変化した

ような幼さがあった。

志保の頬が次第に紅潮してくる。

「ほら…どう……いい?…」

「あ、ん…わかん……ないっ…んっ」

いまや遠慮なくしごかれる肉棒がたまらない刺激を少女に与え、腰をくねらせた。と同時にその奥から

熱い何かがふくれあがってくる。

「あっ、ママっ、なにか、なんか変っ、」

それを聞きながら、志保は手の動きをいっそう早めた。

「いいのよ…いいの…だいじょうぶ…」

うわ言のように繰り返す。

「あっ…な、なにか、…なにか、くるっ、…お、おしっこ…で、る…」

「いいの…そのまま出して…それは、おしっこじゃないの」

「えっ…で、でも……ああ、ダメ…っ!」

これほど擦っているというのに、沙椰華の肉棒の先端は皮を被ったままだった。きゅっ、と口を閉じたまま、

頑なに射精を拒んでいる。

その様子が何だかシャクにさわり、気がついたら志保は舌で先端をぺろりと舐め上げていた。

「ひゃあっ!」

驚いた沙椰華が目を見開く。

それと同時に、皮がびっくりしたようにペロリと剥ける。

「―――ぅあああっ」

痛みなのか快感なのか、小さな顎を仰け反らせて少女があえいだ。

「ほらっ、出しなさいっ、さやかちゃんっ」

火が点くのではと思うほど小刻みに手が動く。

それにつられて、少女の腰がリズミカルに踊った。生まれて初めて、彼女は性の快楽に同調することを

覚えつつあった。

「うあっ、うぁっ、ぅあああっ、でるっ、でるっ、で……………っ!!」

びゅ、びゅびゅ――っ!

「きゃっ」

顔面を熱いもので叩かれ、志保は思わず仰け反った。

白い塊が放物線を描き、志保の顔といわずエプロンといわず、次々に白い汚点を撒き散らしていく。

びゅくっ!どくっ!どくっん!

(マンガみたい)

そう思うほど大量の精液が幼い肉棒から吐き出され、すごい勢いで射精された。

どうみても成人男性の倍以上はある。

「うあ…はあっ、はあっ、はあ…っ」

肩で息をしながら沙椰華は焦点の合わない目で宙を見据えていた。

「ああ………はあ……っ」

一方の志保も、あまりの出来事に呆然としていた。

(こんな…こんなになんて……)

予想していたより遥かに淫靡な光景に、下半身が自然と熱くなる。

それでも母としての役割をかろうじて思い出し、

「…わかった? オチンチンが勃った時は、こんな風に擦るといいのよ」

「オチ…ぁぁ…わかったぁ…」

母親から初めて卑猥な言葉を聞かされ、恥ずかしさにとまどいながらも、殊勝にうなずく。

「あっ、ごめんね、ママ…こんなに…汚しちゃって」

「ううん、いいのよ。ちょっとびっくりしたけど…ね」

自分の体を嫌悪させてはならない。そう考えた志保は、顔についた白い塊を指ですくうと、口の中へ

入れてみせた。

「あっ…!」

娘の方が驚いて目を丸くする。

「んっ…」

こくり、と呑んだ志保は志保で、(甘い…?)その喉ごしに驚いていた。

正確には甘いとはいえなかったけれど、他の男性で経験した精液のあの臭みというか苦味が

感じられない。ただ、とろりとした粘り気のある独特の味わいは精液には間違いなかったけれど。

―――不思議な娘〔こ〕。

自分で生んでおきながら言うのもなんだが、沙椰華は一種の奇跡なのかもしれない。

「今度から出そうになったら、ティッシュで先っぽをくるむか、お風呂場でするのよ?」

「うん…はい」

「あ、でも、ティッシュで処理すると、オチンチンの先っぽの裏に紙のカスが残るから、いつも

きれいに洗っておいてね」

「ママったら…」

(そんなところまで知ってるの?)羞恥と好奇心の入り混じった視線が痛い。

「さ、朝ご飯にしましょ」

なるたけ平気を装いながら、志保は精液で汚れたエプロンを脱いだ。


     *


ぴんぽーん、と玄関から呼び鈴が鳴る。

ぼんやりと物思いにふけっていた志保は、娘の初オナニーの回想を断ち切られ、現実に引き戻された。

「あ、はーい」

生返事をしながら、赤くなった頬をぺしぺしと軽く叩く。

(あー、危ないあぶない)

今朝方変なもの(といっても自分の写真なのだけれど)を見たせいで、ついつい忘れたい?過去を

思い出してしまった。

あれから沙椰華は自分で処理しているみたいだし、こちらも特に話題にはしなかったけれど。

それにしても、興味の対象が母である自分にまで及んでいるなんて…

「仕事してるー?」

玄関口へ辿り着く前に、女性がひとり、ずかずかと上がりこんできた。

「邪魔するよー」

「すでにしてるでしょ」

憎まれ口を叩いても相手はニヤニヤしている。ちょっとエラの張った顔立ちをボブカットの脇で隠し、

大きな唇に明るい色のルージュを佩いていた。ピシッと決まったスーツ姿とは対照的な、大雑把な笑みだ。

「やー、ここへ来るついでにさ、藤谷のケーキ買ってきちゃった。お茶沸いてるよね?」

さも決まったことのように言うから小憎らしい。またそれが当たってるから、もっと小憎らしい。

志保は腕を組んでわざとらしく、ふー、とため息をついた。

「うちはあんたの休憩所じゃあないんだけど」

「堅い事言いなさんな。あんたとあたしの仲じゃない」

この馴れ馴れしい女は神立佐和子〔かんだつ・さわこ〕。志保担当の編集者だ。とあるデザイン事務所の

エージェントとして、あちこちのデザイナーやらイラストレーターに仕事を持ち掛けるのが仕事。いわば志保の

マネージャーだが、態度のことごとくが全然それらしくないので、ある意味一番仕事のしやすい相手でも

ある。もっとも、私生活にまで入り込まれることもあるので、なんとも言えないのだが…

「なによ」

「え?」

ふいに聞かれたので、志保は目をしばたたいた。

「なにって、何が?」

「聞いてるのはあたし」

「わたし、何も言ってないけど」

「目が言ってる」

きっぱりと佐和子が断言する。

そう言われるとそんな気がしてくるから不思議だ。

「…ちょっとね」

「そう」

佐和子はそれだけ言うと、居間のガラスのテーブルに買ってきたケーキの箱を広げた。箱はそのまま

皿としても使えるように工夫されている。佐和子は袋を破ってプラスチックのフォークを取り出しながら、

「お茶」

「…おおせのままに」

ふたりして紅茶を飲んでシフォンケーキに舌鼓を打っていると、志保の気持ちが次第にほぐれてきた。

時々(と言うかいつも)、佐和子は志保の自宅を一休みのための場所として使っている。とはいえ、

こうして話し相手がちょくちょく遊びに来るというのは、正直ありがたい面もあった。

「佐和子の子って小学生だったけ」

たしか息子と娘がひとりずついたはず。

「そうだけど」

「子供がね、思春期に入ったら…ほら、ええと、セックスに興味が出てくるでしょ?」

「出るね、それは」

「そういう時どうするの」

「別に。なにも」

「何もしないの?」

佐和子の放任主義は知っているけれど、さすがに性とかデリケートな問題には気を使っていると

思ったのだが。

「聞かれればそれなりに答えるけど。まー、ガキは放っておいても勝手に知るしさ」

「病気とか妊娠とか、どうするの」

「まだ小学生だよ、うち」

「これからは?」

「だから、」

とフォークを振り回し、

「それなり。自分のケツも拭けないような奴を助ける義理はないし。それはいつも言ってあるから。

手助けするしないは、それからの話ね」

「…はあ」

(うちとは違いすぎる)

あまりにも豪快な教育論をぶちまけられ、参考になるどころの話ではなかった。

「でさ、どうしたのよ、あんたんとこ」

「…娘がね」

ちょっと圧倒されたせいか、自然に口からこぼれ出る。

「興味が出てきて」

「もう高校生でしょ? 当り前の話をするんじゃないよ」

ぺしぺし、とこちらの膝を叩く。あんたは近所の世話焼きばあちゃんか。

「…だけど、女の人の裸に興味あるの、あの子」

「それで困ってるって?」

「…………」

沙椰華がふたなりだということは極秘であるが、佐和子にだけは話していた。あけっぴろげで快活な

佐和子だが、大事な秘密に関してはひどく口が堅いのを知っていたから。

「なんにも困る話じゃないじゃない」

「困るわよ。あの子、わたしの写真を持ってるんだもの」

「へえ」

初めて佐和子が目を丸くする。

「そりゃあ、あんたはグラマーで美人だものね」

(いや、あんた…)

論点がずれている。

「違うでしょ。わたしがどうとかじゃなくって、娘の問題なのよ」

佐和子は紅茶の残りをずずーっと啜ると、大仰にため息をついた。

「自覚がないのも困りもんだねぇ」

「でしょ?」

「違うの。あんたのこと」

「へ?」

怪訝な顔をする。

と、いきなり佐和子の手が胸に伸びてきた。

むにゅっ、とシャツの上から遠慮なく掴まれる。

「!ちょ、ちょっと…!」

「娘さんに懸想したんじゃない?」

『懸想』と古い言い方をされて、ドキリとする。

「な、何を言って…」

「あんたの表情。ぼんやりしてて、宙に視線が浮いてるわよ」

胸を触りながら、佐和子はニヤリと笑った。

「写真を見つけて、本当はうれしかったんでしょ?」

「ちっ、ちがう…違うわ…あっ」

乳首のあたりをつままれて、思わずあえぎ声が漏れた。その時になって、ようやく志保は

佐和子がしようとしていることを理解した。

「ちょ、さわこ…っ。何のまね…」

「溜まってるんじゃない? 出してあげようか」

「ああっ、だって、これ…っ」

思い掛けない巧みな指使いに、不本意にも肉体が反応する。

「そういえば、あんたと知り合ってからまだ一度も恋人の話とか聞かないけど、そういう

ことだったの?」

「あん、ちが…う」

首筋を舌で舐められて、背筋にゾクゾクと戦慄が走った。

佐和子の手がシャツのボタンへ掛かり、次々と外していく。その手際のよさからすると、

女を相手にするのも二度や三度の経験ではないらしい。

「こうすると気持ちいいでしょ」

「あんっ、待ってっ、しごと…のはなし…っ」

「どうせ一発抜かないと話なんて進まないわよ。その様子じゃね」

ブラジャーの上から揉まれると、声が抑えられなくなる。

志保はあきらめたようにソファに体を預け、佐和子の送る愛撫をおとなしく受け止めた。

「…はあぁ、あんたの肌ってきれい。一度こうしてみたかった」

たしかに志保の体は豊満で、締まるところは締まっているが、胸などはたっぷりと量感が

あり、さわりごたえ十分だった。

おへそのすぐ上をチュッ…と吸われる。

「んああっ」

「相手してあげなさいな」

「え、…ええ?」

「スキンシップのつもりで。あんたのこと好きなんでしょ。妊娠もないし、いいじゃない」

「なんてこと言……あああっ」

ブラジャーを奪われ乳首を吸われると、もはや抵抗はできなかった。もっとも、相手が

佐和子だからの話だ。なんのかんの言って、親身になってくれるのは彼女だから。

それより、今言われた「娘とセックスしろ」という言葉が耳を打つ。

それを聞いた志保は興奮が一気に高まるのを感じた。

「感じちゃってるの?…ちょっと妬けるわね」

そう言うと、本格的に志保を攻め立てる。

パンティの中に指を入れ、性器を直接触られると、志保の口からあられもない悲鳴が

上がった。

二本の指を膣に挿入され、男のようにしごかれる。同時に親指でクリトリスを刺激され

ると、久方ぶりの愛撫に自分でも信じられないくらい燃え上がった。

結局、二度、三度とイカされ、最後には潮まで吹く始末。

「はああ、いいわあ、あんたの体。娘さんが欲しがるのも無理ないね」

たっぷりと堪能した佐和子は、絶頂で身動きできない志保の体を撫でながら、

「もうちょっとさ、素直になんなさいよ。そうだ、良い物あげるから」

「い…いもの…?」

「えっ、と…ああ、あった」

佐和子がバッグから取り出したのは、なんとディルドーだった。黒光りするそれは

実物そっくりで、カリの部分がデフォルメされている。

「これとねー、はい、ベルト。これをバイブに繋ぐと、あんたもチンポが生やせるわけ」

「…なんでそんなもの持ってるの」

「まあ、仕事が忙しいと溜まることもあるし。その辺は男とおんなじだね。それで、

時々トイレとかでこっそり使ってるわけ」

これに限らず、彼女は時々大人のおもちゃやそれ関連のDVDを『差し入れ』してくる。

「あんたはこんなのに絶対手を出さないでしょ。興味はあるけど」と友人の気持ちを見透かした

ように持ってくるのだった。

「はあ…用意がいいこと」

少々呆れていると、佐和子は立ち上がってスーツを直し、そのまま家を出ようとする。

「あれ。ちょっと待って、仕事の話は」

「明日あした。こんなんじゃ、しばらくは身が入らないでしょ。じゃ、お茶ごちそうさまー」

(誰のせいよ)

と抗議する間もなく、颯爽と行ってしまった。

台風が通り過ぎたような気分で、志保は裸のままソファに寝そべった。

「…こんなものまであるなんてね」

クスッ、と笑うと、ため息をつく。

―――相手してあげなさい。

(そんなこと言われても)

霞のかかった頭で考えていると、また、じわっ…と割れ目のあたりが濡れてくるのがわかった。


     *


「ママっ、ただいまっ」

声を弾ませて沙椰華が帰ってきた。

「え、ええ…お帰りなさい」

心なし上ずった声で志保が出迎える。

―――顔、引きつってないかしら。

今朝方起こった出来事で、今日は一日中混乱のしどおしだ。

娘の部屋で思い掛けない秘密を知ってしまったかと思えば、いきなり親友に抱かれるし。

抜けば大丈夫だとか言っていたけれど、かえって悶々とする破目になるとは。

今も体のどこかかが微かに疼いている。

まさか、そんなことを娘に悟られるわけにはいかない。

「あのね、あのっ…」

頬を紅潮されながらそこまで言って、沙椰華が黙る。

後ろ手に腕を組んで、もじもじしていた。

その仕草がいかにも年頃の少女らしいので、志保は知らずに微笑んでいた。

「ん?……どうしたの」

やさしくうながすと、

「これっ…」

茶色の包み紙を差し出す。

「?」

「あ、あの、今日実習があって、チョコレート作ったの…も、貰って」

「まあ…」

―――そういえば今日は。

(バレンタインデー)

すっかり縁遠くなっていたので忘れていたが、そうだった。

娘の真摯なまなざしを受けていると、志保は頬が熱くなるのを感じた。

(何も知らなければ)親愛の情として、このチョコレートを受け取っただろう。

けれども、今朝、沙椰華の気持ちを知ってしまった後では…

不安そうな彼女の瞳を見つめていると、ふいにあたたかなものが胸いっぱいに広がった。

「…ありがとう」

志保は居間のテーブルに包みを置くと、リボンをゆっくりほどいた。そして、

包み紙のセロテープを、紙が破れないようにそっとはがしてゆく。

その丁寧な仕草に何かを感じたのだろう、沙椰華はそばのソファに座って、

志保が中身を取り出すまでおとなしく見守っていた。

中から出てきたのは、きれいな形の板チョコだった。『ママ大好き』と白いクリームで文字が書かれている。

志保の目頭が、じわっ…と熱くなる。

「さやかちゃん」

「ん?」

「ママのこと好き?」

「うん」

にっこりと笑う。

その翳りのない笑み。

「あのね、ママね…」

端を折って欠片を口に運ぶ。甘い味が口中へ広がって、志保を痺れさせた。

「今日、おもしろいもの見つけたの。さやかちゃんの部屋で」

「えっ……」

少女の顔に影がよぎる。そして、みるみるうちに蒼白になった。

「ねえ、さやかちゃん」

「う、うん…」

「女の人に、興味ある?」

「えっ」

かちん、と沙椰華が強張る。膝を揃えて、その上で両手をぎゅっと握った。

志保はチョコを味わいながら、彼女へ向き直った。

志保が床の上に座っているから、自然と沙椰華を見上げる位置になる。

「いいのよ、それはそれで。不思議はないものね…でもね、ママはどうかな…?」

「どう、って…」

「さやかちゃんは、ママに、興味ある?」

ゆっくりと、よく聞こえるように、言う。

「………」

沙椰華はうつむいたまま黙ってしまった。肩が心なし震えている。

「ママには、興味あるのかな」

「…ごめんなさい」

少女が顔を手で覆った。

「ごめんなさい…ごめんなさい」

消え入るような小さな声。

それを聞いているのかいないのか、志保の手がゆっくりと伸びていく。

娘のスカートの下へ。

「ママね、ちょっと、うれしいの」

ぴくん、と沙椰華が震える。

母の手がスカートの中へ入った。

そして、ショーツの端に手を掛け、少しずつ引き抜いてゆく。

いつかのように。

「だって、ママ…」

スカートを捲ると、肉棒が現れた。

(すごい…!)

三年前のそれよりも、さらに育っている。もはや両手では収まりきらないだろう。

太さも並みではない。

にもかかわらず、最初の(かわいい)と思った印象は少しも薄れていなかった。

皮の部分はいまやすっかり剥けて、キノコを思わせる亀頭が顔を覗かせている。

本体よりいくぶん赤いそれは、先端の割れ目からすでに透明な潤滑油を洩らして

いた。

そっと手で握ると、少女の体がぶるっ、と震える。

幼くて、淫靡な肢体。

そして、なにより、自分に対して勃起しているという事実。

それは、女にとって最高の証だった。

志保の下半身が知らずに熱くなり、とろりと割れ目を濡らす。

「だってママ、さやかちゃんが大好きなんだもの」

「えっ……?」

叱られるとばかり思っていたのに、意外な言葉を聞かされて、沙椰華は顔から手を除けていた。

しかし、それから見た光景は、あまりにも衝撃的だった。

「んぶっ…」

なんと、志保が舌で肉棒を舐め上げたのだ。

じゅるっ…

「んああああっ」

いきなりの刺激に、沙椰華が顎を仰け反らせる。

じゅるっ、じゅぶっ、じゅちゅ…っ

「あはぁっ、ママっ、やめてぇ…っ」

「どうして?…ちゅっ…さやかちゃんは、こうされるのが、きらい?…ちゅぶっ」

「んああっ、だって、だ…ってえぇ、ままにっ、そんな…こ…とっ」

「じゅる…いいのよ…ちゅぶ、ちゅぅ…いいの…んちゅ…だからっ」

ずちゅうぅぅ…!

音を立てながら裏筋を舐められると、

「んあああぁぁぅあっ」

言葉にならない声で悶えてしまう。

そして亀頭の周りを舌で廻られ、カリの部分を重点的に攻められると、

「ぁうあぁああぁぅあううぅあぅぁぇんぁっ」

もはや思考すらできなかった。

母の淫靡な攻めに少女は足を開きっぱなしにして、ひたすら耐えるしかない。

沙椰華の手が無意識に志保の髪をなでた。

「はぁっ、さやかっ、さやか…ちゃんっ」

攻める間に、志保の口から甘い言葉が洩れる。それが沙椰華の耳に届くと、

あまりにも素敵な刺激となって翻弄した。

(ああっ、ママがっ、ママがっ、わたしのっ、わたしをっ、…!)

「ああぁあ、すきぃいいいっ」

カポッと口腔で先端を咥えられ、亀頭全体を口に含まれると、沙椰華が絶叫した。

「まますきっ、まますきっ、まますきぃいいいっ」

「んふっ、んぶっ、んちゅぶぅっ、」

志保は志保で、夢中になって娘の勃起をしゃぶっていた。

(こ、こんなにぃ…)

学生時代男と付き合っていた頃、フェラチオを強要されたことがある。

その時はただ苦しくて、言われるままに動いていた記憶があった。精液も臭くて

苦く、とても口に含めるような代物ではない。それで男の性器を愛撫するのが

すっかり嫌になっていたのだが。

ちょぶっ! ちゅぱっ! ぐちゅっ!

今は快楽を与えるために、あらんかぎりの奉仕をしている。それも、実の娘へ。

彼女の剛直を口に含むと、ぎちぎちとくちびるの端が裂けそうなほど圧迫される。

喉まで押し込むと、息をするのもやっとな状態。本当に窒息するんじゃないかと

思うほど苦しい。

なのに、それが奇妙な快感となって志保の全身を痺れるほど感じさせていた。

首を振って肉棒を出し入れすると、よだれを垂らしながら娘がよがる。

「あああぁあままぁああんんんんっっっっ」

腰を浮かせ、もっと、もっと飲み込んでっ、と体が要求する。それに答えて志保が剛直を

根元まで飲み込むと、

「!おっ……お、おおっ…!」

宙を睨むように体を強張らせ、背中を仰け反らせた。

「んぶっ、ぶぶっ、んぶちゅ、んふっ、んっ、んっ、んんふぅんっ、」

唾液と亀頭の先走り液が入り混じり、くちびるからあふれて顎を伝った。

いまや志保は全身汗まみれで娘の肉棒を頬張っていた。

(おいひい、おいひいっ……さやかちゃんのっ、おいひい…!)

感動に打ち震えながら、口内で舌を這わす。

飲み込んだ屹立が太すぎて、ろくに動かせないのだが、それでも少しでも快感を与えようと、

自然に貪ってしまうのだ。

「ひはぁっ、ままあっ、でっ、でるのっ、でちゃおうのおぉぉっ、」

絶頂を感じとって、沙椰華が叫ぶ。

それを聞いた志保は、口への挿入をいっそう早めた。

「んじゅっ、んんふっ、んぶっ、じゅるっ、はぁ…ん、んっ、んっ、んっ、んんぅ、んんぅうっ、」

「あっ、あっ、あっ、もうダメ、もうだめっ、もううだめえええっっっ」

熱いマグマがぐわっ!と少女の肉棒の根元で広がり、それから、

びゅ、びゅぅ―――――――――っ!!!びゅっ、びゅぐぅうううっ!!!

「んはあああああああああああああああああああぁぁぁあぁぁぁっ」

獣じみた絶叫を上げると、おびただしい精液を志保の口内にぶちまけた。

「!?んごっ、んんんんんんんんんっ、んごぉおお〜〜〜、んっ…」

(お、溺れちゃう……っ!)

想像を上回る量に、一瞬、白濁液が喉を逆流しそうになる。それを意志の力で抑え、

志保はゴクゴクと喉を鳴らして娘の精液を飲み下した。

―――全部飲みたい。

自然に、そう思う。

そして、肉棒を咥えたまま、

びゅくんんっ!!!

志保のヴァギナが勝手に収縮し、絶頂を迎えていた。

(ほぐっ!?あ、あああああ…)

上と下からの二重攻撃に、意識がどこかへ飛んでいく。それが戻ってきたのは、大量の

精液を飲み干し、ようやく肉棒からくちびるを離した後だった。

「…げふっ……ん、ぐっ…」

胃にたっぷりと注がれた液体が、えもいわれぬ満足感を与えてくれる。

一方の沙椰華は、

「…はあぁ、…はぁっ、…はああ、」

いままで感じた事のない悦楽の余韻に浸っていた。

ちゅっ…と志保が名残のキスを亀頭にすると、ぴくん、と沙椰華の意識が戻った。

「ああ…ママぁ」

伸びてくる両手。

こちらも両手を伸ばし、顔を近づける。

ためらいもなくキス。

最初はくちびるを合わせるだけだったけれど、すぐに熱いディープキスへ移行する。

舌が少女の中を犯し、舌と舌が絡み合って、精液と唾液の入り混じった音が口から響いた。

沙椰華にとっては、あまりにも濃厚なファーストキスだ。

「さやかちゃん…好きよ」

「ママ、好き…愛してる」

ふたりは酔ったように言葉を交わしながら、何度も何度も陶酔のキスを交し合っていた。

「気持ちよかった?」

志保の問いに、沙椰華が顔を覆う。恥ずかしくていられないのだ。

その初々しい動作が、志保を歓ばせた。

「…とっても」

ようやく手を離して、答える。

ソファの上で娘を抱き寄せながら、志保は少女の髪をなでていた。

「これからはね、ママがしてあげるから」

「えっ」

「さやかちゃんが苦しかったら、ママが口でしてあげる」

「ほんとう?…でも」

悦びに顔を輝かせるが、すぐに沈んだ表情になる。

「ママに、そんな…そんないけないこと」

「もうっ、」

志保は沙椰華の肩を掴むと、軽く睨んだ。

「ママにさせて、って言ってるのに。わかってないわね」

「え…え?」

わけが分からずにキョトンとしていると、

「だってね、…ママも、気持ちよかったから」

「あ…」

「もう…こんなこと、ママに言わせないで」

「うん。ごめんなさい」

クスクスと笑う二人。

「さ、そろそろお夕飯の支度しなくちゃ。手伝ってくれるでしょ?」

「もちろん!」

勢いよく立ち上がる。

「あ、パンツ忘れたままでいいの?」

「えっ…!」

その時ようやく下半身が剥き出しのままなのに気づいた沙椰華は、

「いやっ」

顔を真っ赤にして床に落ちているショーツをひったくった。そして、

「あ、新しいのにする!」

笑う母から逃れるように居間を飛び出したのだった。