ガバッ!
「…はぁ…はぁ…」
「お目覚めですか、信一郎?」
「…また、この夢か…」
「例のふたり、とっくに起きて待っていますよ。
信一郎もシャワーを浴びたらすぐにプレイルームに向かってください。
…それとも、寝覚めにイッパツなさいますか?」
全裸の女は、そう言いながら
自分の陰唇をつまんで膣口を開いてみせた。
「いや、いい。
そんな気分じゃない」
「そうですか…それでは、私は先に行って
調教の準備をしておきますね」
「ああ、よろしく頼む」
俺の名前は友丸信一郎。
仕事は…いまは奴隷調教師だ。
今日から俺は、森の奥深くにある
周囲を絶壁に囲まれたテーブル型の台地上に建てられた
この屋敷で、ふたりの少女を調教することになった。
個人的にそんな趣味があるわけではないが、すべては
五年前に行方知れずになった妹の手がかりを追うために…
八年前、俺の妹は父親の勝手な都合で
その人生を大きく狂わされてしまった。
当時、俺たちの父親は
地方の田舎町で小さな建設会社を経営していた。
そのころ時代は高度成長期まっ只中で、
父親の会社には、公共工事の仕事が
次々と舞い込んでいたようだ。
妹が物心つく前に母は病気で亡くなっていたが、
家には常時三人のお手伝いさんがいて
幼少期の俺たち兄妹は
何不自由のない幸福な生活を送っていた。
しかし、そんな家族の幸せは
景気の悪化と共にもろくも崩れ去ることとなる。
高度成長時代の終わりと共に、
それまでは雪崩を打ったように舞い込んでいた
公共事業の仕事がパッタリと来なくなり、
父の会社は見る見る弱体化していった。
そして八年前、事業に行き詰まり
経営者として完全に追い込まれてしまった父は、
人間として、とてつもなく愚かな行動に出た。
会社の運転資金を作るため、俺の妹の聡子を…
自分の実の娘を奴隷商人に売り払ってしまったのだ。
だが結局、父はその時の罪悪感から
酒とギャンブルに溺れるようになってしまい破産。
その後、肝臓を患うようになって
最期は病院で静かに息を引き取っていった。
晩年の父はアパート暮らしでスッカラカンの無一文ではあったが、
一応、ひとり残される俺のことをすこしは心配してくれていたようで
俺を受取人とした僅かな額の死亡保険に入ってくれていた。
聡子がいなくなってからは、些細なことでイライラして
俺に手を上げることもあったあの粗暴な父が、
まだ家族を心配する気持ちを持っていてくれたなんて…
そう考える度、俺はなんだかやるせない気持ちになるのだった。
俺は、そのときに受け取った金を元手に
株取引をはじめるようになる。
最初のうちは、これで儲けてやろうとかそんな意識はさらさらなく
ただ寂しさを紛らわすためにはじめたものだったのだが、
もともと才能があったようで、五年も経つ頃には
資産は元の千倍にまで膨らみ上がっていた。
しかし、どれだけ財産が増えようとも
家族をすべて失った俺の心が満たされることはなかった。
そんな俺に、転機は突然訪れた。
ある日、妹のことを知っているという謎の人物から
携帯にメールが入ったのだ。
その謎の人物というのがさっきの女性、ルシアである。
その名が本名かどうかはまでは知らないが…。
ルシアの情報によると、聡子は父に売られた翌日から
ある資産家のもとで玩具奴隷として飼われていたらしい。
そして、聡子が飼われていた場所というのがこの屋敷なのだという。
俺も最初はルシアの話を疑っていたのだが、
八年前に別れたばかりの頃の幼い聡子が
この屋敷を舞台に惨い虐待を受けているビデオを見せつけられ、
彼女の話を信じざるを得なくなったのだった。
それは、聡子が気を失うまで水に沈められ、火で炙られ、
鞭で打たれ、針を突き刺され……その様子を
何人もの男たちが大笑いしながら眺めているという壮絶な内容だった。
ルシアの話では、五年前、当時この屋敷の主であった資産家が
彼の友人知人を招いて聡子拷問パーティーを開催したその日の夜、
聡子は忽然と姿を消してしまったのだという。
その日、激しい拷問を受けて全身傷だらけになっていた聡子は
いつもの地下牢ではなく、医務室で夜を迎えていた。
そして翌朝、メイドが包帯を取替えにやってきた時には
すでに聡子の姿は消えてしまっていたらしい。
当日、屋敷の周辺や湖の底に至るまで徹底的に捜索されたが、
聡子の姿はどこにも見当たらなかった。
屋敷がテーブルマウンテン上に建てられている立地条件から
午後には周囲の崖下にまで捜索範囲が広げられたが、
血痕はおろか、人の通った形跡すら発見されなかった。
こうして、聡子は神隠しにあってしまったのだという。
だが、果たして
神隠しなど本当に起こり得るのだろうか?
そんな結末などどうしても受け入れられなかった俺は、
現在はルシアが所有者だというこの屋敷を彼女の言い値で買い取り
聡子が消えたこの場所で、当時の聡子と同じ年頃の少女奴隷を飼い、
彼女たちが極限にまで追い込まれた状態で
いったいどんな行動を取るのか、壮大な実験を試みることにした。
バタン…
「待たせたな」
拷問部屋…通称・プレイルームの脇にある控え室に入ると、
奴隷少女たちが、すべてを諦めきったような
なんとも例えようのない表情で俺の顔を見つめていた。
「…お前ら、とりあえず自己紹介をしろ」
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