キハ185系

 四国のキハ58系を置き換え、同時に急行列車を特急に格上げして、JR四国の経営基盤の安定化を図るために導入された気動車です。1986(昭和61)年11月1日のダイヤ改正で営業運転を開始し、JR化後も14両が追加されました。

 トイレ付きのキハ185形0番台、トイレなしのキハ185形1000番台、普通室とグリーン室を合わせ持つキロハ186形が用意され、キハ185形には運転室が付いています。
 冷房用の電力は、キハ185形が走行用のエンジンから、キロハ186形が専用の小型発電機から得るようになっています。機械類の構成が一般形気動車に近いものにされたので、最短2両編成から、1両単位で柔軟に編成を組めるようになっています。
 車体はメンテナンスの手間を省くためにステンレス製とされ、同時に軽量化も図られています。普通列車にも使われることを想定して、出入口が従来の特急用気動車より1箇所増やされ、2箇所になっています。
 エンジンは新型直噴式機関で250馬力・1900回転のDMF13HSで、 キハ185形は2基、キロハ186形は1基搭載しています。導入当時、四国の路線は幹線でも最高95km/hに抑えられていたので、最高速度は将来のスピードアップを考慮して110km/hに設定されています。

 JR化後、キハ185系はJR四国の看板列車の一つとして活躍し、繁忙期には岡山〜松山間の特急『しおかぜ』で最大9両編成を組み、瀬戸大橋を渡りました。しかし、1990年以降、急速に整備が進んだ高速道路に対する対抗策が求められ、振り子式でより高性能、快適な後継気動車(キハ2000系)への取り替えが進められた結果、仕事にあぶれてしまう仲間が出るようになりました。
 そのため、急行『由布』『火の山』の車輌取り替えを検討していたJR九州に20両が買い取られることになり、1992(平成4)年に機関車に牽かれて小倉工場へ運ばれていきました。

 四国に残った車輌は、座席モケットや座席そのものを交換してサービスアップを図った他、一部の車輌は普通列車に使うために、座席のリクライニング機能の封印、灰皿の撤去、背もたれ背面のテーブルの撤去が行われました。キロハ186形はジョイフルトレイン『アイアンド四国U』用のキロ186形に改造されたり、プレイルームを備えた『ゆうゆうアンパンマンカー』に改造されるなどして、オリジナルの車輌は1両のみになりました。
 一方、九州でも、座席の交換などを行って、より良いサービスを提供できるようにされました。九州では車体の塗装を、JR九州のコーポレートカラーの赤を基調にしたデザインに変えています。九州のキロハ186形は、グリーン室が普通室に格下げされて、普通車のキハ186形として使用。エンジンもキハ185形と同様に2基になり、冷房用の電源もキハ185形と同様に走行用のエンジンから得るように改造されました。

 現在は、特急列車としては、JR九州で『九州横断特急』『くまがわ』『ゆふ』に、JR四国で『うずしお』の一部、『剣山』『むろと』に使われています。普通列車としては、牟岐線、予讃線(松山〜宇和島間)、内子線で使われています。また、キハ185形20と26が、トロッコ車輌(キクハ32形500番台)の牽引用に使われています。


↑キハ185形の1994年当時の姿。徳島にて撮影。


↑特急『剣山』。阿波池田にて2001年3月27日撮影。


↑キハ185 3110を先頭にした普通列車。下宇和駅にて2008年1月4日撮影。
普通列車への転用車は3000番台に区分されました。


↑普通列車仕様車の車内。座席カバーが布製からビニール製のものに変更されています。
座席のリクライニング機能が封印され、背面のテーブルは撤去済み。


↑JR九州のキハ185系。大分にて2003年7月26日撮影。
特急『あそ』は九州横断特急に統合されて消滅しています。