【今年最初の厄払い】





…どん、…どん、…どん…鈍い太鼓の音がする。


石畳には靴音に混じって、ふだん聞き慣れない下駄のカラコロいう音。


煙の匂い、辺りかまわぬ子供の歓声、たこやきのソースや焼きイカの香ばしい薫り…


ふだんは閑散とした神社の境内も、正月ともなれば大勢の人でごったがえす。


そんな色々な匂いと音のごった煮が渦巻く中、


「あちゃー、やっちゃった」



ひときわ素っ頓狂な声が響いた。


何事かと振り向いた人々、その声の主が女学生といってもいい少女で、おみくじを見ながら眉をし

かめているとわかると、苦笑しながら通り過ぎる。


そんな周りの空気も意に介さず、


(引いちまったかよ)


おみくじには「凶」の文字が、でーんと有無を言わさず載っていた。


当の本人は悔しさにくちびるを噛みしめ、棒立ちのてい。


まさか本当にこんなのがあるなんて…


新年早々ついてないまくりだ。


が、おみくじを睨んでいた視線が下へさがると、頬がすこし緩んだ。


〔 【恋愛】 叶うでしょう 〕


 

―――ふふん♪


 

さっすが神さま、一番の願い事だけはわかるとみえる。


(まーなー、コレさえ本当なら、失せ物が出なくても商売が損でも、勉学が危うし全力を尽くせでも、

みぃんな許しちゃうんだけどさ)


…ふうっ、と今度はしおらしいため息を吐いてダウンジャケットの衿をかき寄せると、



「たーちゃん、たーちゃん」



雑踏の中から、かわいい声がする。一瞬アニメの美少女かと思うような。


多恵が振り向くと、コートや防寒ジャケットの黒っぽい壁の向こうに、にょきっと細い大根を思わせ

る手が振られていた。


こっちへ来るのかと思いきや、大根の手は人波にもまれ徐々に流されていく。


多恵はすかさず大波へ飛び込み、平泳ぎの要領で人を掻き分けていった。


いつものパターンだ。


「すんません、ちょっと、通りま〜す、ども、…」


腰の低い発言とはあべこべに、ぐいぐいと容赦なく腕を捻じ込んで強引にこじ開けていく。そうでも

しないと大根の君との距離が縮まらないから。


ぶいぶい言う周囲の不平をものともせず、


「さつきみ――っけ」


これ以上美白にしようがない小さな手をぎゅっと握ると、今度はかつおの一本釣り(釣った事ない

けど)よろしくこちらへ引き寄せた。


すぽん、と小柄な少女の体が抜けて、多恵の胸へ転がり込んでくる。


白地に桜の袖がひらりと舞った。


「勝手に離れるなって言ったでしょ」


「うん、ごめんなさい」


ちろっと出す舌はケーキに乗っていそうなピンク色。


思わず味見をしたくなる。


多恵は人ごみから皐月を守るように抱き締めた。


「それで、どうだった? 釣れた?」


「えへへー」


皐月がおみくじを両手で開いた。


「大が釣れました」


「うおー、あんた毎年。すっげー不公平」


実際、皐月は生まれてこのかた大吉のおみくじしか引いたことがない。


こういってはなんだけど、頭もそれ相応に年中小春日和なのだから、ある意味キャラクターを言い

当ててるといえなくもない。でもまあ、そこが好きなんだから。


(とはいってもなー。こう、進展がないというか、進展させようがないというか…)


多恵には『さつきラブ』マークが始終点灯しているのだけれど、一方の皐月はいまだに『親友』モー

ドを脱していない(まあそれが普通だよね)。


バレンタインにチョコを交換したり、お互いの誕生日にはカードとデコレーションケーキをプレゼント

したり、クリスマスには手編みのマフラーをあげたりと、それなりに愛を育んではきたつもりですが。


両者の間に存在する温度差はいかんともし難いものがありまして。


 

―――わたし、たーちゃんが親友で良かったっ。


 

…うん。


そうとも。


しょせん、あたしゃ『親友』なのさっ。


月に向かってワオーンと遠吠えしたくなる孤独な犬の心境でございます。


「たーちゃんはなにー? 末ちゃん?」


「……………」


黙って多恵がおみくじを差し出すと、「…まあっ!」思わず立ち止まる人がいるほど、皐月が声を

上げる。


「どうしよう、どうしましょう…ねえ、たーちゃん、どうしたらいい?」


いや本人に聞かれても。


しかし皐月はまるで自分のことのように青ざめた顔色でおろおろしていた。


「えっ、えっ、えっとぉ…こういうのって、枝に結べばいいのかな」


「ダメだろそんな事しちゃあ。今年から禁止しますって、張り紙貼ってあるじゃん」


「じゃ、じゃあ、えーと…ご、ご祈祷? 念仏? 法事? 木魚?」


「それ仏教」


「あっ…でも…そんな…」


「大騒ぎしなさんな。たかがおみくじでしょ?」


「だってだってだってぇ」


駄々っ子のようにぶるぶると首を振る。


「ち、ちょっと。ちょっとこっち」


涙ぐんできたので、あわてて脇の道へ連れ出す。


これじゃなんだか、あたしがイジメてるみたいじゃん。


ぐすっ、とぐずる目頭にハンカチを当ててやる。


(あーもー、ここまで親身になってくれるのに、なんで一線を越えられないんだよー)


あうー、と頭の中でのたうちまわっていると。


 

……キピ―――ン*Ω


 

いきなり百ワット電球が閃いた。


(新年早々罰当たりな気もするが…)


やってみないとわからない。いや冗談なんだから、まさか当たるわけないか。


「…えー、おほん」


わざとらしく咳払いをしつつ、


「実はさ…あたし、こういう時の厄払いの仕方って知ってんだよね」


こっそり耳打ちする。


「え? ホントに?」


「うん、まあ。で、その方法とゆーのが…」


またボソボソとささやくと、皐月の顔がみるみるうちに赤くなった。


「…そ、それ、ホントにホント…なの?」


「うん、ホントホント。真っ赤なホント」


眉毛を上下しながら、まじめな顔をしてみせる。


(いくらなんでも、ジョークだってわかるよね)


が。


トマトみたいな顔で皐月はもじもじしたあと、


「…じゃ、じゃあ……………………………………………どこで、…する?」


消え入りそうな声でつぶやいたもんだ。


「――えっ!?」


多恵は一瞬頭がまっ白になった。


「お祓い…する………んだよね……?」


上目遣いで親友に見られると、「いまのは冗談」と言うタイミングを完全に逃してしまった。


「え、うん……………と、じゃあ、ね…」


こちらもしどろもどろになりつつ、


「こ、こっち行こうか」


なし崩しに皐月をエスコート?しているのだった。


 

     *     *     *


 

境内の裏手のそのまた裏手には、江戸時代からあったんじゃないかと思われるくらい古びた石垣

の残骸が、林に囲まれて鎮座ましましていた。


裸になった枝の隙間から陽が差し込み、辺りは静まり返っている。


ここなら人目にも触れないし、声を聞かれることもない。


とはいえ、向こうから微かに聞こえる雑踏のざわめきが耳につき、いまにも見られそうな緊張感が

走った。


「えーと……そ、それじゃあ…」


向かい合った多恵はそう言ったきり、皐月の着物の袖をなんども撫でたまま黙ってしまった。


(どうすりゃいいんだよー)


張本人が言うのもなんだが、いざ現実になってみると、何もすることが思い浮かばない。


「厄…祓うの、女の人の体で…するんでしょ?」


しばらく沈黙の後、うながすように皐月が言う。


「そ、そうそう。そうなの。み、巫女さんとかホラ、神社でお勤めするじゃない? 昔から厄を祓うに

は、えーと、お、女の人とまぐわうことで禊をだねえ…」


「『まぐわう』?」


「あ…うん。つまりぃ、その。え、エッチっぽいこと…するんだけど…」


さすがに良心が咎めて、


「…やっぱ、イヤだよね?」


確認してしまう。


しかし皐月はちいさく首を振り、


「他の人ならヤだけど…たーちゃんなら…すこしくらい」


にっこりと微笑む。


 

―――あおーん。


 

多恵の煩悩が叫んだ。


(うわーっ、うわーっ、いいのか? いっちゃっていいの?)


幸せすぎて思考が廻らない。


「…えと、じゃあその……む、胸とか触って…いい?」


皐月のEカップはずっと前からの憧れだ。


こくん、と皐月が首を振る。


「キスとかもするの?」


「それも、あるけど…さつきはファースト、まだなんでしょ?」


「うん………」


「じゃあ、いい。そういうのは好きな人にとっときな」


ついでに唇も奪っちゃえ!と思わないでもないが、さすがにファーストキスは罪が重過ぎるような気

がする。


「そう……いいけど」


(そんな悲しそうな目、することないじゃん)


急に愛しい気持ちが溢れてきて、多恵は細い少女の体をぎゅっと抱き締めた。


自分の方が包まれているような、あたたかくて柔らかい感触。


(ああ…誰にも渡したくない)


「さつきはあたしんだー!」と大声で宣言したくなる。


それはさておいて。


(うーん。着物って、いまいちこう…)


せっかく触ってみたものの、振袖は何重にも皐月の胸をガードしていて、実感が薄い。


―――そーじゃなくて、もっとこう、モッチリとした柔肌をだな…


プール遊びとか体育の着替えとか、どさくさにまぎれてタッチした時の方が断然いいぞ。


多恵は仕方なく腕を廻して、もう一度皐月を抱き締めた。


と、「………ん」


皐月がわずかに反応する。


(お?)


もしかして、別の攻略ルートがあるのか?


「…あ………ふ」


廻した手で腰から背中全体、そして尻にとまんべんなくまさぐると、皐月からため息が少しずつ漏

れてきた。


「衿……開いていい?」


頃は良しと見計らい耳元でささやくと、黙ってこくりとうなずく。


心臓がバクバク鳴る。


あんまり響くので、頭痛がするほどに。


(じゃ、じゃあ、いきま〜す)


「んしょっ………あ、あれ?」


恐る々々衿に手を差し込むが、意外にきゅっと締まってて開かない。


これは帯から緩ませないとダメか。


「…どうしたの?」


気のせいか、やや不満そうに皐月が訊いた。


「う、うん。これ、開かないね」


「帯から緩ませないとだめかな?」


「えーと、これが着物でしょ、これが帯で、その下が…」


「あ、それ伊達締め。それと襦袢が二枚に…」


(だ―――っ、うっとうしい!)


日本人の伝統的衣装ながら、なんてめんどくさいんだ。


なにせ着付け教室なんて繁盛するほどだからなー、それだけフクザツなんだろう。場合が場合じゃ

なきゃ、とっととあきらめるところ。


とはいっても、この機会を逃せば次のチャンスなんてあるのかどうか。


ここは根性を入れて解かねばならないのである。


「帯、ほどく?」


「直せないんじゃない? 大丈夫?」


「手伝ってもらえれば…一応やり方教わったし…」


ここで悪代官よろしく「よいではないか、あっ、おやめくださいまし、ホレホレホレ、あれー、ぐるぐる

っ」と帯をコマ回しにしたっていいんだけど、いや実際着物ってややこしいから、とてもそれどころじ

ゃない。


えらく堅い結び目を解くと、今度はスラスララッと垂れてしまう。こうなると、もはや多恵が元に戻す

のは不可能だった。


衿を開くと、中の襦袢がさらに帯で締められている。


(えーい、もういいや)


考えるのが面倒くさくなり、乱暴に帯をほどくと、



…ふわん♡




いきなり衿が開いて中身が飛び出す。


「きゃんっ」


皐月が子犬のように鳴いた。


「…!あっ、あんた、ブラジャーしてないの?」


「え、き、着物の時は、こ、この方が楽なんだけど…ダメ?」


頬を赤くして聞き返す。


「いやあ…全然オッケーだけど」


思わずごくっ…と多恵が唾を飲み込む。


襦袢の下からのぞく丸みをおびた双丘は「いちご大福」を思わせた。


もちもちとした肌が冬の澄んだ大気にさらされ、白く光る。


「さ、さわるよ…いいね?…いいの?」


何度もしつこいくらい訊きながら、掌で乳房をつかんだ。


(やっ、やわらけ〜〜〜)


多恵は感動していた。


指先が肉に埋まり、すべすべと表面を滑る。


いたずらで軽くタッチしたのなんて、比べ物にならない。


むにむに…と不思議な弾力で押し返しながら、おおきな胸は変化自在に形を変えていた。


「寒くない?」


「う………ん」


皐月は眉根をぎゅっと寄せながら目をつむっていた。


触っているうちに、先端がすこしずつ硬さを増してくる。


(お? ち、ちくびかっ?)


指でつまむと、


「…………あんっ!」


少女がかわいい声で鳴く。


(うわ〜〜っ、もうダメーっ!)


いまにも鼻血が出るんじゃないかと思うほど興奮する。



―――いただきまあっす。



そんな間抜けなことを考えながら、


「はむっ」


「あ、きゅんっ!」


桃色のニップルを唇にはさまれ、顎をくっ、と逸らす。


ちゅっ、ちゅっ…と卑猥な音を立て、多恵は夢中で双乳をかわるがわる吸った。


「…は、んっ…は……あん…」


甘ったるいあえぎ声が絶え間なく響く。


皐月は石垣に体を預けたまま、ついばみ続ける多恵の頭をやさしく撫でた。


ちゅぅ〜〜〜っ、と一際強く吸い立てると、


「ん、んぅんんんっ…!」


背中を引きつらせ、軽く達する。


「…はあ、…はあ」


「さつき、気持ちいい?……嫌じゃない?」


同じくらい荒い息で多恵が問う。


「うんっ……うんっ」


皐月はなんども何度もうなずいた。


「ね、ねえっ……し、下も…いい? 下もっ」


多恵がうわずった声で訊くと、


「いいよ…たーちゃんがしたいなら…なんでも、して」


ぼんやりとした目で応じた。


「じゃあ、するよ? 触っちゃうよ…?」


そう言いながら、すでに指先は裾を割って下着をまさぐっていた。


花園にあたる部分は上から触ってもわかるほど湿っている。


「わ……すごい。濡れてる……」


(感じてくれてる…)


「恥ずかしい」


皐月が顔を手で覆った。


「そんなことない。かわいいよ、さつきは…」


「ほんとう…?」


「うん。…だって、あたしはさつきが好きだもの」


 

―――くちゅり。


 

人さし指がパンティーを掻き分けて、直接花弁に触れる。


軽くこすり上げると、ぴちゃぴちゃとくぐもった音が響いた。


ぬるぬるした液を花びらに塗りつけ、微かに開いた下のくちびるを優しくなぞる。


「…あっ、…あっ、たー、ちゃん、…わ、わたしもっ……!」


小鳥のように悲鳴を上げながら、切れぎれに皐月が言う。


多恵が手を離した。


「あっ……たーちゃん?」


「ごめん、さつき…やっぱりキスさせて?」


両手を皐月の頬にあてがい、くちびるを寄せる。


「ファースト…だけど。好きなの、ごめん、好きだから…っ。欲しいの」


「変なたーちゃん」


目尻をそっと拭い、


「謝らなくていいのに」


「さつき」


くちびるが重なる。


情熱のなせるまま、多恵は無我夢中でさつきのくちびるを、舌を、口腔を、むさぼった。


皐月も同じくらい熱を込め、多恵の舌を迎え入れる。


ふたりの腕が、互いを力強く抱き締める。


寒々とした林の中で、ここだけは別世界のように熱を帯びていた。


多恵の指がふたたび下半身に伸びた。


「―――んっ、んうぅんっ!」


口唇を吸われたまま、皐月がうめく。


にゅるりっ…と指が花弁を割って侵入し、秘密の穴を犯した。


(うわ…っ。熱い……っ!)


きゅうっ…と指を絞られ、逆にこちらの下半身がキュッと疼く。


「、んふぅ、ん、んんんっ…!」


上と下の口を同時に攻め立てられ、皐月が身悶えした。


「…はああっ、…さつき、イって、さつきっ……!」


自分でも何を言ってるのかわからないまま、少女を頂点へ導く。


そして…



「あっ!……ん、ん、ぅんんんんんっ、…!………んっ…」



びくん、びくんっ、と小刻みに皐月の体が痙攣し、やがてゆっくりと緊張から解放されていった。


「だ、大丈夫、さつき?…気持ち…よかった?」


「うん……、うんっ………」


すすり泣きながら、皐月は振り子時計のようにうなずいていた。


「…ごめん」


にわかに罪悪感に狩られ、多恵がこうべを垂れる。


「?……たーちゃん?」


「あの、やっぱ、ファーストは…ううん、いろいろ…まずかったよね」


気まずい顔でつぶやき、


「あ、あたしはうれしかったけど…さつきは、その……ぅうんっ!?」


いきなりくちびるを塞がれ、目を白黒させる。


「さ、さつき」


「たーちゃん。これで、お祓い、できた……?」


優しい目でにっこり笑う。


「え?…う、うん。たぶん…」


「うん。よかった」


なんて、あんまりかわいく笑うんで、思わずもう一回くちびるを奪ってしまった。


裏手の林は相変わらずのどかで、ふたりの事など、まるで気にも留めていないようだった。


 

     *     *     *


 

さて、その二日後。



「―――――えぶしっ!」


派手な音をかまして、多恵がくしゃみをする。


「ほらほら、たーちゃん」


皐月がくすくす笑いながら、ティッシュで鼻水を拭いた。


(う〜〜〜…納得いか――ん)


着物をはだけたのは皐月の方なのに。なんで風邪を引くのはあたしなんだ。


これも神罰とゆーのだろーか?


あれからふたりして、やっとこさ着付けを直し、それから仲良く映画館へ行ったりファミレスで食事し

たのに。


いや。そーか。


幸せ過ぎると、反動が来るってことなのかも。


「―――っくし! えしっ! ぶしっ!」


立て続けに咳をすると、


「うーん。熱はそんなにないのに…」


体温計を持って皐月が首を傾げる。


多恵の家族は彼女に看護婦の役割を押し付けたまま、親戚廻りに出掛けてしまっていた。


(つめてー奴らだね〜)


とはいえ、こうして皐月とふたりっきりなのだから、まんざらでもないのだが。


「…ねえ、たーちゃん」


「うん?」


「あのねえ、これって…また『お祓い』しなきゃいけないのかなぁ?」


頬に指先を当てて、かわいく首をかしげた。


ぶ――――っ!
と盛大に多恵が吹き出す。


「な、な、…なにを言って……」


「だってたーちゃん、今年は凶なんでしょ? 厄を祓わないとダメかなぁっ、って思って…」


無邪気に言うもんだから、


「……えいっ!」


「きゃあっ」


いきなり押し倒され、皐月が悲鳴を上げる。


「た、たーちゃんっ?」


「そうだよっ。もっといっぱい、いっぱいお祓いするのっ。…さつきと!」


「あ、んっ!」


くちびるを塞がれ、皐月がのたうつ。が、たちまち両手を多恵の背中に廻すと、夢中で応じた。


「…あふっ……たーちゃん…、すきっ……」


「…ちゅっ…あたしだって…」


 

まあ、そんなこんなでなし崩しに恋人になれたんだけど。


めでたしめでたし…の代償に、今度は本当に熱が出て、三日三晩うなされたとさ。


どっとはらい。





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