「高梨・・・くん・・・」
なぜか先生は、重い足取りで帰ってくるなり僕を見つめて涙を浮かべた。

「あのね・・・先生ね・・・探したんだけど」
なみだ目の先生を見ていると僕も気付く。
「ごめんなさい。どこかでイヤリング・・・落としてしまったみたい」
安物だったけど、紀子先生はすごく大事に思ってくれていたようなんだ。
全財産が入った財布を落としたような悲壮感で僕に謝罪する。

「もう一度、境内の裏側を探してみるからっ」
そう言い残して来た道を戻ってしまう。
高価なものじゃないから拾得物として届けられたりしないだろうし
自力で見つけなきゃいけないだろうけど、小さいから大変だよ。
僕も先生の後を追って境内の裏側へと向かう。

だけどそこは、街灯も屋台の明かりも届かない場所で木々も茂っている。
奥に仮設トイレが並んでいるけれど人気もなくて
先生一人で探させるわけにいかない。
僕は先生が見ている道の反対側を探すことにする。


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