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序章 : [パーティー結成!]

〜 3人の問題児 〜


二人が囲むテーブルの上には紅茶とオレンジジュースとドーナッツ。

「それにしても、すいません。態々お紅茶やお菓子まで頂いてしまって」
「いやいや、こちらも不注意じゃった。それに話したいこともあったのでのぉ」

ここは[早い] [安い] [マズい]で有名なアカデミーの学生食堂。

昼は不味いレーションを求める生徒の戦場だが、今は午後3時を回った時分。
食堂にはサボっている生徒か、早くも卒業課題を達成して自らの英雄譚を下級生に語る優等生達がポツリポツリといる程度であった。

「それでお話というのは?」
出涸らし紅茶に上品に口をつけた後、流れるような金色を帯びた髪を真っ白い枝のような指で押さえながら、ミントがアルメリアに尋ねた。

彼女の名前は[ミント]
緑のドレスに身を包んだハーフエルフのご令嬢で、頼めばなんでもしてくれるという噂を持つ、僧侶科の生徒だ。
容姿端麗で兵科の成績はトップ。
物腰柔らかく、ついた二つ名が、頼めば叶えてくれる[聖母様]。

そんな断れない性分故に、アルメリアも下心から彼女を紅茶に誘ったのだった。

「うむ、おぬしが今ここにいるということは、既にPTに誘われて指定素材を集め終わったのか?」

早速テーブルに小さな体を乗り出して、アルメリアが本題を切り出した。

「はい。おかげさまで皆さん、指定素材を集め終わったみたいで良かったですわ」
「なんじゃ、既に集め終わっていたか、、、ん?、、、ならなんで上級学舎にいたのじゃ?もうPTを組む必要もあるまいて」

オレンジジュースをチュー!と細いストローで飲み干したアルメリアがミントに疑問を投げかけた。

「はい。皆さん、指定素材を集め終わったので、私の指定素材を集めてくれるPTを探しに」
「ん?、、、まさかおぬしのPT、ミントの素材を集めずに自分たちの素材だけ集めて帰って来たと言うのか!?」

「はい。私は皆さんのお役に立てれば良いですし、私の指定素材は火竜さんも含まれていましたので、他の皆さんがお怪我をされても・・・」
卒業課題の指定素材は公平なるくじ引きによって選ばれるのだが、いわゆるハズレも入っていた。
ハズレとは、とても見習いでは太刀打ちできない竜や、個体数の少ない幻獣などであった。
運も実力という訳なのだが、ミントの課題は運悪く前者の太刀打ちできない魔獣の類であった。

「阿呆か!そんなことでは、ミントも卒業できぬではないか!」
「ひぁっ!申し訳ありません!、、、でも困っているヒトたちが・・・」

「喝ッ!!」
「ひぁっ!」
椅子に立ち上がって一喝するアルメリアはさらに続ける。

「おぬし、何でも頼めばやってくれるというので[聖母様]と呼ばれているようじゃが、自分を救えんで何が聖母ぞ!」
「!!?」
椅子に咲く大きなリボンのドワーフの言葉にハッとして動きを止める聖母。

「自分が助かってもいないのを棚に上げて、他人を救おうなど笑止千万!ミント!わしと一緒に火竜を退治するのじゃ!」
「・・・」

「おい、ミントや、おーい!」
ぼーぅっと深緑の瞳を瞬きもさせずに紅茶を見つめていたミントは、うん!と大きく首を縦に振ると、
先程のアルメリア以上に瞳をキラキラさせて、アルメリアの手を取った。

「・・・そうですね!私間違っていました!自分も救えないのに、他人なんて救えませんよね!私のバカバカ!!」
ミントはポカポカと自分の頭に1のダメージを与えては、ヒール!ヒール!とセルフヒールを唱えて自分を救い始めた。

「ミント、落ち着くのじゃ、ミント!・・・とりあえずわしとPTを組んで貰ってもいいじゃろうか?もちろんおぬしの火竜素材も集めるぞ!」
「はい、もちろんです!えーと、眠り姫のアルメリアさん、宜しくお願いいたします。ね♪」

こうして2人はPTを組むことになった。

―――――――――――――――――――

「さぁミント!早速モンスターをケチョンケチョンにして卒業素材を手に入れてやるぞ!」

「あっ待ってくださいアルメリアさん!」

入学してから初めてPTができたヤル気十分のアルメリアをミントが制した。

「なんじゃミント、出鼻を挫きおって。。。」

「竜相手に二人ではやっぱり戦力に難があると思うんです」

彼女の忠告を聞いて、アルメリアは腕組みして自分が戦う姿を想像する。

「・・・・・・・うぅ〜黒こげじゃのぉ、二人だと、やっぱりつらいか」
さすがの彼女も戦士と僧侶の二人だけで火竜は心細いと納得する。

「しかし、今から竜に有効な兵科、、、魔法使いなどが余ってるとは思えんのじゃが・・・」
「え〜と、、、それなら、アルメリアさんの後ろでじーっとドーナツを狙っている方はどうでしょう?」
そう言って、アルメリアの上のほうを見つめるミント。

「うしろ?、、、ってひぁっ!!」

アルメリアが振り向くと、大きな肉の塊が二つ、目の前に現れた。

「とっとっと、、、うにゅっ!!」
驚いたアルメリアはバランスを崩して、今日2度目の床とのディープキス。

「・・・だいじょぶ?」
転げ落ちたアルメリアの後ろにいた大きな肉の持ち主は、ひょいっと、まるで猫の様に首ねっこを掴むように彼女を持ち上げて椅子へ下ろした。

「あいたたた、なんじゃ、突然驚かせよって!」
「まぁまぁ、アイリスちゃん、そんな所に立ってどうしたの?」
「なんじゃミント、このキツネを知っておるのか?」
「ええ、アルメリアさんは兵科が違うから知らないでしょうけれど、私の僧侶科と彼女の魔法使い科は一部の講義が一緒ですから面識が。ね、アイリスちゃん♪」
「・・・うん」
[アイリス]と呼ばれたキツネの尻尾と耳を持つ女性は、動物を撫でるように自分の尻尾を抱いて短く返事をした。

魔法使いの象徴とも言える、先の尖ったアングルハットを被り、その帽子に付いたチャックから、キツネのような耳がピーンと突き出ている。

身長はミントより一回り、小さなドワーフのアルメリアであれば二回りは大きく、柔らかそうな胸はそれに輪をかけて大きかった。
短いパレオ状のスカートと革のロングブーツの間から覗く太股は、大人の色香そのものだ。
それなのに表情・仕草は至って幼稚で、小さな子狐がそのまま大人に化けたような印象。
だが、それもそのはず。
アイリスはその耳と尻尾が示すように、正体はキツネ。
200年、日から隠れ、月の光を浴びてようやく力を得た出来立てホヤホヤのキツネの精霊だとミントは説明した。

「ほら、ミントちゃん、このドワーフはアルメリアちゃんっていうんだよ」
ミントがアルメリアを紹介すると、アイリスは視線だけをアルメリアに向けて口を小さく動かした。
「ボク、、、アイリス。アル、よろしく、、、、ドーナッツ食べていい?」

「あっ、お、う、うむっ、好きなだけ食べるがよい」
突然ドーナッツの話が出てきて対応に困ったアルメリアが、とりあえず了承した。
許可を得た大きなキツネのアイリスは、椅子に座ってドーナッツをお皿ごと手に取ると、ムシャムシャとおいしそうに目を細めて頬張り始めた。

「モグモグ、、、ぅーおいしぃけどくるしぃ〜、お水!お水ぅ!」

「あらあら、そんなに急いで食べると、のどにつっかえちゃいますよ」
案の定空気を求めて唸るアイリスの背中をトントンと叩くミントはまるで聖母というより保護者だった。

「これはまた変わったきゃつじゃのぉ」
アルメリアは自分のことを棚にあげて、珍しいものでも見るようにドーナッツで咽るアイリスをジーと見つめる。
そして落ち着いて見て、初めてアイリスの被っている帽子がアングルハットであることを再認識した。

「そういえば、アイリスは魔法使いだったな」
「(こくこく)」
口いっぱいにドーナッツを頬張りながら頷くアイリスにアルメリアの表情が明るくなった。

「お主、今PTは組んでいるか?」
「(ぶるぶる)」
今度は首と尻尾を横に振って返事をするアイリスを見て、両手のガントレットを打ちつけてアルメリアは喜んだ。

「アイリスちゃん、一緒に私たちと卒業試験の素材集めしない?」

「ボクやだ、、、」
その言葉に突然ビクッと体を震わせたアイリスは身を縮めて、否定のジェスチャーをする。

「なんで怖いんじゃ?」
「それじゃぁ卒業できないよ?」

「うぅ・・・」「うぅ・・・」
その言葉にアイリスと一緒に毎年留年のアルメリアの耳も痛む。

「だって、クモこわいもん・・・」

「クモ?」「クモ?」
今度は長耳二人が同時に聞き返す。

「(こくこく)」
ドーナッツを両手に持ちながら震える彼女はもごもごと呪文を唱えると、テーブルに一枚の紙切れがボンッと現れた。

「これは、、、アイリスちゃんの卒業課題の素材表ね。えっと、、、百年蜘蛛の卵、あちゃぁ、、、見事にハズレですね。。。」
「アイリス、安心せい、蜘蛛の時はわしらにまかせるがよい。じゃから一緒にPTを組まぬか?」
アルメリアはガントレットをアイリスに差し出して握手を求めた。

「じぃー」
アイリスは、恐る恐る手を伸ばすと、小手の先端を親指と人差指で汚いものでもつまむようにして握手の真似事をする。

「お主、、、本当に人間に成り立てなんじゃのぉ。・・・よし、旅路でみっしり扱いてやるから覚悟するのじゃぞアイリス!」

目をキラキラさせながらガントレットでがっちりとアイリスの手を握るアルメリア。
「はぅう〜、ミーたん、、、ミーたん」
両手を塞がれて、ドーナッツを食べられないアイリスは[ミーたん]とミントを呼んで助けを呼ぶが、
それを頑張ろうの目配せと勘違いしたミントは更にその手に自分の手を乗せてがっちりと二人の手を握り締めた。

「よし、早速明日の朝から素材集めに出発じゃ!えいえいおー!!」
「おーーーです!!」
「あうぅ〜〜〜ドーナッツ食べさせて〜」

 



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