プロローグ


〜カツアゲと童貞狩り〜


不況が続いた日本は治安が急激に悪化し、政府の早急な対応が求められていた。 そんな中でも特に治安の乱れが酷い御株木町(おかぶきちょう)では凶悪事件が多発し、警察や自治 体ではとても手が回らない状況だった。

最悪の治安状況と言われるここ御株木町。その中でも危険とされる裏通りを前に 僕は頭を悩ませていた。
この不況を無事生き抜くためによりいっそうの勤勉さが求められる昨今、塾での 猛勉強は必須とされている。僕もその例に漏れることなく塾通いをしているわけ だけど、今日は居残りが長引いたため、帰りが遅くなっていた。
だから「どうしよう・・・ここを通ろうかな・・・」近道のため危険を冒そうか どうしようか迷っていた。早く帰ってゲーム機の電源を入れたい思いと、危ない 道に対する恐怖が僕の中で激しく葛藤する。悩み始めてもう5分も経ってしまった 。
こんな臆病で優柔不断な自分が嫌いになることがたまにある。そのくせ誰も居な いときにだけ勇気を出して一歩踏み出そうという決意を、出来もしないのに無駄 にしようとする。
「はぁ」
そんな後ろ向きなことを考えていたらため息が出てしまったが、だったら今日こ そは勇気を出してこの道を通ってみようかという思いも生まれた。それがいつも の一人相撲で終わらせないために、僕は・・・一歩を・・・踏み、踏み・・・踏 み・・・だ・・・した!
「・・・・・・・・・」
バクバクと鳴る鼓動を抑えながら、周りを見回してみる。でもその光景はさっき までと何も変わっていなかった。・・・当たり前だ。裏通りの入り口を一歩跨い だだけで世界が変わっていたら怖すぎる。それでも何も変化がなかったことに僕 は安心して、2歩目3歩目と足を進めることができた。
そこからは順調に、緊張も解れていき、スタスタと裏通りを抜けられ、
「おい、お前」
ると思ったのに、早くも雲行きが怪しくなっていた。どこからか誰かを呼ぶ声 がした気がしたけど、きっとそれは気のせいだ。それか、僕ではない別の誰かを呼 んでいるに決まってる。そう思うことにしてまた一歩足を進め、ようとしたの に上げた足が先へ進んでいなかった。後ろから肩を掴まれたせいで。
「おい、無視すんなよ。お前のことを呼んでんだよ」
「え?あ、ああはい、そうですよね、ですよね。僕もそう思ったのでいま止まろ うかと思っていました、はい」
オシッコちびりそうなのを必死で堪えて、肩を掴む手の主を振り向いた。ニヤニ ヤした顔の、いかにもお金を欲しがりそうな強面の方が4人もそこにいらっしゃ った。
「ほ〜、そりゃ話しの分かるやつだな」と僕の肩を掴むリーゼントの方が言った 。
「は、はははい、僕は話しのわかるやつです、はい」
お金を欲しがりそうな方は、話の分かる僕に向かって手を差し出してきた。え? この手は?お手でもしろってことだろうか?そう思って手を乗せようかと思った が、
「金出せ」
「金だ金」と後ろに控えていた小太りな方と、2メートルはあろうかという巨漢 の方が続けて言ったのを聞いて求められているのは芸ではなく僕の第一印象その ままにお金であることが分かった。
「え、えっと、それは・・・」
話しの分かるはずの僕はつい財布をポケットから出すのを渋ってしまった。だっ て、だって、明日発売の“ソケットモンスター”の新作を買うために銀行からお 金を下ろしたばかりだったから。だから僕は殴られた。「へぶぅっ」
「おいおい、話の分かるやつはどこにいったんだ?話しの分かるやつだったら俺 は大好きだから殴りゃしねえんだけどな。あれえ?おかしいな、それじゃあもう 一発殴るしかねえかなあ?」
僕を一発殴ったことでテンションの上がったリーゼントは連れに目配せをした。 蹲る僕はシャツの襟を掴まれ無理やり立たされた。そして振り上 げられる硬そうな拳を見て、「ソケモン」を諦めた。「だ、出します、これが僕 の財布ですっ」ポケットから財布を取り出し、相手に差し出した。
「お?悪いねえ〜、ま、安心しな、俺たちも鬼じゃねえ、一回渋った分もう一回 殴ってチャラにしてやるよ」
「え・・・はぶっ」
2発目はさらに強烈で僕は地面に倒れた。そんな僕を見てリーゼントの仲間たちが 笑っている。悔しい!そう思っても僕には立ち向かう勇気はない。お金を抜き取 られた財布が投げ返されて戻ってきたことがせめてもの救いだった。
お金を得た彼らはこのまま去っていく、と思ったのだが、「ああ、そうだ、面白 いこと考えぜ」何を思いついたのかリーゼントが僕の顔を見て、「お前、童貞か ?」なんて聞いてきた。
「な、ななな、何が!?」ずばり童貞だった僕は状況も忘れてたじろぎ、慌てふ ためいてしまった。これではそうだ、と答えているのとかわらない。
「じゃあ、金の変わりに筆おろしをしてやるよ」
ニヤつく男の顔を見て、僕の背中を冷や汗が垂れる。え?まさか・・・この人た ち・・・ゲイ?バイ?そんな、まさか!
「おい、メスブタ!」
「ひいぃぃ!」早くも僕はこいつらの性奴隷にされてしまったのかと思い悲鳴を 上げてしまったが、呼ばれたのは僕ではなく・・・。
「何さ?カツアゲなんてアタシが出るまくないだろ」
リーゼントの後ろに控えていた3人、細い男と太い男と大男のさらに後ろからその 声は聞こえた。大男に隠れて見えていなかったらしい女性・・・女性?の姿が見 えた。僕が疑問に思ったのも無理はないと思う。彼女の顔は・・・なんというか いろいろと酷かった。造形がじゃない、顔に施された細工がだ。耳と鼻と、口を 開けたときに覗いた舌にピアスが付けられていて、首から肩にかけて火傷のよう な跡があり、目は何処か狂気じみていて、何というか絶対に関わりたくない容貌 をしていた。僕に女性だと思わせたのは顔から少し視線を下ろしたところにある 、大迫力の巨乳のせいだった。
前に出てきたメスブタと呼ばれた女性の肩を抱いたリーゼントは、僕にとって衝 撃の内容を話した。
「いやあ、こいつが童貞だっていうからよ、金のついでにそいつも奪っちまおう かって話しになってな、どうだ?お前もたまには“盗み”をやってみろよ」説得 するように話してから「俺たちもショーのつもりで楽しめるしな」と最後に付け 足した。
彼女が視線を僕に移した。目と目が合って、その食い殺されそうな眼光に目をそ らす。ピアスに火傷に薬中の目、怖すぎる!しかし逸らした僕の目線を追うよう に、彼女は倒れている僕に近づいてきて、顎を持ち上げられ、ガン見された。ひ ぃぃぃ!い、嫌ですよね?僕みたいなひ弱そうな男とエッチするのなんて嫌です よね?そうですよね?そうだと言ってくださいお願いします!僕の初エッチはも っと可愛い子がいいです!いや高望みはしません、せめてもっと普通の子で! 怯える僕に反して、彼女は鼻で笑って、「分かった、美味そうだしあたしが貰う よ」といって僕を絶望させた。か、神様、いるなら嘘だと言ってください。こん な展開は冗談だと僕に微笑みかけてください!
だけど僕に微笑みかけたのは家畜と呼ばれる薬中女だけだった。もとい、周りに いる不良たちもまた僕に微笑みかけていた。

「さあ、まずは脱ごうぜ?こんな布っきれ着てたらセックスもできねえしよ」 仰向けにされ手足を押さえられた僕の上に跨りながら、彼女が言った。いや、出 来なくていいです、という心の叫びは恐怖で出てこなかった。
まるで見本を見せてやるとばかりに、上に乗った彼女は一枚しか来ていないタン クトップを自ら脱ぎ捨てた。中身の巨大な膨らみがこぼれ出てきて、僕の頭には エロ漫画の擬音でしか見たことのない、ボヨヨンという効果音が響いた。その胸 にも切傷があったこと、その傷が乳首にまで達していたこと、さらには両の乳首 に穴が開き、ピアスが付けられていること、驚くことや突っ込みどころはいくら でもあったはずなのに、親以外で初めて生で目にするおっぱいに、僕は見とれて いた。

〜

「はは、おっぱいがそんなに珍しいか?それとも、こんなもんが付いてて驚いた か?」

何処か自嘲的で一瞬見えた悲しげな顔が、僕に「そ、そんなんじゃない!」と叫 ばせていた。改めて考えてみれば僕は馬鹿だ。僕はいままさに逆レイプをされそ うになっているっていうのに・・・。
「だったら」彼女はすぐに元通りの悪女の顔に戻り、「触ってみるか?」と胸を 突き出すようにして僕の顔の上に持ってきた。
「あ・・・」思わず声を上げてしまった僕は、自分の意思とは関係なく、胸に手 を伸ばそうとしていた。だけどその腕は他の男たちに押さえられていて、手を伸ば すことはできなかった。
「手を放してやって」彼女はそう言ったが、男たちは納得せず、というか太った 男が一人猛烈に反対した。
「そんな前置きはいらねえから、さっさとやっちまえよ!」
一瞬彼女はそいつに噛み付きそうになったが、すぐに思いなおしたのか、そいつ の言うとおりに従った。つまり僕の初めてを本格的に奪うことにしたってわけだ・ ・・ってちょっと待ってよ!だからそれは嫌だって!
「おい、暴れんじゃねえ!」
4肢を抑える力を強められ、手足に痛みが走った。それだけで僕の抵抗心は 削がれた。それだけでは責め苦は終わらず、ズボンからペニスを取り出された僕 は、今度は羞恥に襲われる。
「ぶっはは、こいつお前の胸見ただけでフル勃起させてやがる」
「それでもこのサイズかよ?しけてやがる」
「うはは、こんな小せえの初めてみるよ」
口々にペニスを揶揄されて僕は視線を逸らした。男たちから視線を逸らした先に は彼女が・・・、

「はは、確かにちっちぇ」彼女もまた笑っていたが、自分の中に入れるという考 えは変わらないらしく、ズボンを脱いで位置を調整して僕の股間の上に跨り直し た。そのとき彼女の股間にもピアスが光ったのが見えたが、そんなものに驚いて いる余裕はなかった。

〜

「さあ、童貞狩りのメインイベントだ!」
リーゼントたちが囃し立てる中、彼女の腰は下まで下ろされ、僕のペニスは見 えなくなっていった。

「あ、ああぁ」堪えきれずに声を漏らしたのは、悲しくも彼女ではなく僕だった 。望まずして訪れた初めての貫通は、僕にたまらないほどの快感を感じさせた。 な、何これ?す、凄い、柔らかくて、濡れてて、温かくて、き、気持ちいい・・ ・。
「盗らせてもらったぜ、お前の童貞」
絡みつく蛇のように彼女の腰が動き出す。僕の上で踊るように、はたまた貪るよ うに、絶対的余裕の笑みをもって僕を持て遊んでいた。だけど僕は、悔しさを感 じる余裕も、抵抗する余裕もなくて、ただただ初めてのセックスの味に酔いしれ ていた。その中では男たちに嘲りも何も、耳には入ってこない。僕は蕩けそうな 意識で彼女の表情と、跳ねるおっぱいを見つめながら、果てた。なのにその瞬間 彼女は僕の上にはいなくて、リーゼントにペニスを掴まれて僕の顔に向けられ、 自らの顔に向かって精液を飛ばしていた。
「「ぎゃっはっはっはっはっはっはっはっは」」
男たちの爆笑が耳に響く。彼らは僕を存分にコケにして満足を得たのか、それ以 上暴力を振るうことなく去っていった。
「ドンマイ」聞こえた声に顔を向けると、そこにはまだ彼女が残っていた。彼女 の表情も、顔の飾りも何も変わってはいないはずなのに、今の僕には何か違って 見えた。何が違うのかは自分でもよくわからないけど・・・。
彼女は僕の顔に手を伸ばし、精液を少し掬うと、それを舐めた。
「んん、うん」口の中で味わっているのか、口をもごもごさせて「美味い」と言 った。
それが彼女なりの励ましだったのかどうかはわからない。だけど、美味い、と言 った彼女の顔は僕の脳裏に確かに焼きつけられた。・・・・・・あと、彼女の中 の感触と、大きな胸も頭から離れなかったのは言うまでもない。

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