プロローグ



歌詠みの森‥‥

ぽわぽわした綿毛が薄暗がりでほのかに輝く、

優しくて静かな森です。


そこに住むたったひとりの妖精ミムジィは、

歌を歌うことが大好きでした。


もとからひとりだったわけではなく、

昔はもうひとりの妖精がいました。


でもその妖精は好奇心があまりに強くて、森を飛び出して旅に出てしまったのです。

きっと今も、旅を続けているのでしょう。


その寂しさを紛らわす、というわけではありませんが、

ミムジィはひと月に一度くらい、生き物たち‥蟲や草花や木々に歌を聴かせていました。


彼女はいつも、その時に思いついたメロディーを歌うのですが、

常に聴いたものに不思議な幸せを与える力があったのです。


その日の夜‥‥

気持ちいいことも、歌と同じくらい好きなミムジィは、

生き物たちが集まるまでのあいだ、

自分の身体をまさぐって遊んでいました。


「ああ‥‥ああ‥‥

股間を優しくさすりながら、ミムジィの気持ちはどんどん昂ぶっていきます。

しばらく夢中になって‥‥


‥ふと気が付くと、たくさんの生き物が彼女を見ていました。

ミムジィはオナニーを見られた恥ずかしさより嬉しさの方が大きくて、

股を撫でながら、でもゆったりとした息遣いで歌い始めます。


美しいメロディーは、今日はどこか官能的で‥‥


五分、十分と経つうち、

ミムジィの手は股間から離れていましたが、

性の快感はメロディーと共に身体を流れ続けます。


歌声が佳境に入ったときには、

ミムジィの瞳はとろとろにとろけ、涙とよだれを流していました。


そして、最後の音を口からつむいだ瞬間、

彼女の全身を、とてつもなく甘美なオーガズムが襲ったのです。


膝がかくかくと震え、パンツの中が熱くねっとり濡れたのを感じながら、

ミムジィは恍惚の中で、ゆっくりと歌を終えました。


辺りが静まり返り、へたへたと腰を抜かしてしまうミムジィ。

歌を聴き終えた蟲たちは次第にその場から散っていきます。


でも‥彼らの心には、ミムジィへの激しい想いが芽生えていました。

‥それは植物も同じでした。


それを知らないミムジィは、火照った身体に夜風を心地よく感じながら、

何十分ものあいだ、その場で息づいていました。




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