いつものように乗った帰りの電車の中
ただ、今日はたまたま遅くなったために
若干車内は空いている
だが
椅子に座れるほどではない
つかれた足に鞭を打って
最寄の駅までの数十分吊革につかまり
電車にゆられる
電車の中にはサラリーマンや親子づれ
学校帰りの学生など
様々な人が乗っている
俺の隣で同じように
吊革につかまり立っているのは
少女といってさしつかえのない学生
部活の帰りなのか若干つかれているように見える
別に何をするわけでもないのだが
制服からわずかに覗く
細い首筋やハイソックスを履いた足に
俺は若干興奮した
まあ、こんなことはよくある光景だ
脳内のフィルムに焼き付けて終わり
しかし
今日に限っていえばそれで終わらなかった

目的の駅に到着する電車
減速が始まる
俺は電車が止まりきる前に出口の方に向かう
停止直前のガタンとなる揺れ
いつもの俺ならこれぐらいなんともなかったのだが
今日は特別足が疲れていたのだろうか
よろけて転びそうになってしまった
あわてて手を伸ばそうとした俺だったが
あろうことか
先ほどまで隣に立っていた少女に
抱きつくような形で覆い被さってしまった
しかもあわてて伸ばした手は
ちょうど彼女の胸の部分へ
……終わった
俺の人生は終わった
これから一生、ロリコン痴漢人間としての
レッテルを張られ生きていかなければいけないのだ
恐る恐る顔を上げる俺
しかし予想していた悲鳴が上がる気配はない
少女はただ
羞恥に顔を震わせ立っていた
反応がないのをいいことに
俺は逃げるように電車を降りた
誰も追っては来なかった…

それから数日
俺は警察から連絡が来るのではないかと
おびえながら過ごしていた
だが、一週間経ってもその気配はなかった
その頃には俺は
安堵をおぼえるのと同時に
偶然とはいえ少女の肉体に触れられたことに
喜びさえ感じていた
そして…
少女に痴漢をしても
俺が今まで思っていたより
案外捕まらないのではと
こうも考え始めていた…

ならば
それならば
もう一度
少女の体を味わいたい

そんな黒い欲望が
だんだんと俺の中で膨らんでゆく

そして俺は
この駅にやってきた……



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