プロローグ
〜伝説!女体神拳!〜
〜〜 昔々、男尊女卑がもっとも栄えた時代に、己の力を過信した男たちが、悪
の秘密結社を結成し世界征服を目論んだ。しかし男たちの悪しき野望はたった一
人の女の前に阻止された。
その女は自らの身体を武器とし、ときに激しく、ときに妖艶に舞わせ、悪党たち
をばったばったとなぎ倒していったという。
それを見た男は興奮と尊敬の念を抱いた、
「あんなにエロくて強い女は見たことがない!」
それを見た女は羞恥と羨望の念を抱いた、
「は、ははは破廉恥だわ!でも…格好いい」
そして時は経ち現代。
世は相も変わらず、悪しき願望をもつモノは多かった。悪の秘密結社は再び結成
されてしまったのだ。
しかしいつの世も、悪のみが栄えることは決してない。
そう!現代にも正義は現れる!
かつて伝説と謳われながら、歴史から消えたかに思われた伝説の拳法を操る少女
…彼女の名は…!! 〜〜
ガタンゴトン
さわさわ
ガタンゴトン
さわさわ
「でさ、あいつがそこでコけてさ」
「ぎゃっはっは、ダセー」
さわさわ
「昨日のドラマ見た?竜魔伝」
「見た見た、服山貞春チョーカッコイイよね」
さわさわ
「ほんと部長には参るよな」
「ほんとですねー、無茶振りにもほどがありますよ」
通勤ラッシュの電車の中、学生やサラリーマンの談笑や愚痴があちこちで交わさ
れている。
もみくちゃになりながらも、あからさまな不快感を見せないのは彼らがラッシュ
に慣れているからだろうか。毎日のように味わうごみごみした空間に、いちいち
鬱々となっていては日々を楽しく過ごせないのだろう。
けれどそんな空間において、あからさまな不快感と、あからさまな愉悦感を示す
表情の人物がいた。
前者は顔を伏せて身体をモジモジとさせ、何かに耐えるようにしている。
後者はその後ろで手をモゾモゾと蠢かせている。
前者は若い女性、後者はくたびれた背広の男。
何が行われているのかは想像に難くなかった。けれど通勤時のラッシュというも
のは本当にまともに身動きもとれないものだ。
誰もが、物取りや痴漢と疑われてはたまらないと思い、手を人から避けて、視線
さえも他人から反らす。実際の事件でも、当事者二人を覗いて、不埒な行為をは
っきり認識していたという目撃者はその場に一人いるかどうかだ。
なので顔を赤らめ目に涙を溜めた少女を救えるのは彼女自身の勇気だけなのだ。
さわさわ
「っ…!」
慣れた手つきでスカートの下に手を潜らせ、下着を撫でる手。遠慮のない触り方
に彼女はもう耐え難くなっていた。彼女自身今自分がどうしなければいけないの
かに気づき初めていた。
今までにも何度か触られて来たが、結局待っていても誰の助けもきはしなかった
。
それならば!と彼女は渾身の勇気を振り絞る決意をした。自分のお尻に手を伸ば
し、そこにある気持ちの悪い手を掴み、上に振り上げた。
「こ、この人、痴漢です!」
「え、ええ…あ、いや…」
急な抵抗に男は面食らっていた。過去の幾多の経験からすると彼女のようなタイ
プは絶対に抵抗できないと思っていただけに、驚きを隠せない。
か弱い女性の叫びに、今まで談笑に興じていたサラリーマンや学生たちが男に突
き刺すような視線を送っていた。
まずい…。逃げ場のない状況に男の背は汗でびっしょりだった。
プシャー!
気付けば電車は次の駅に到着していた、まだ都心に入っていないこの駅では、降
りる者はなく乗り込む者だけがまた大量に増える。そんな人混みめがけて、男は
突進した。中に押し込んでくる流れに向かって身体を割り込ませて、無理矢理に
進む。触り心地のいいお尻に未練はあるが、今はそれどころではない。一刻も早
くこの場から姿を消さなければならない。
男の頭には先日テレビで見た法律番組での、弁護士の言葉が響いていた。
『痴漢と間違われたらどうするか?…逃げてください、とにかく逃げる、それし
かありません』
多くの場合身の潔白を証明しようとしても、望みが叶わないことが多い。証明で
きたとしても、それには途方もない年月を費やすことを覚悟しなければならない
。
とまあ、これは無実の場合だ。男は確実に悪事を働いている。しかし、無実の者
が逃げて無実となるならば、それは事を働いた者にも適用されてしまう。用は捕
まらなければ、有罪も無罪もないのだ。
弁護士の言葉を都合のいいように解釈した男は、やっとのことで電車を降り、駅の出口に向かっていちもくさんに走った。
「はあ、はあ、はあ…ここまでくりゃ大丈夫だろ」壁に手を付き息を整える。
男は駅前ロータリーを過ぎて、繁華街の路地裏まで逃げおうせていた。
「結局は触ったもん勝ちってことだな、へへ、やっぱり教えは正しいんだ」
息を整えた男は、勝ち誇った笑みを浮かべた。そしてまた駅へと向かう。目的は
いつも同じ…。
「そうだな、次は大人しそうな眼鏡の子でも狙おうか…」
「待つアル」
「…ん?」
男の足は後方から聞こえた女の声に遮られた。
「誰だ、お前は」振り返り誰何する男。

けれどチャイナドレスを身に纏ったちょっと浮いた女、いや少女はそれには答え
ずに口を開いた。
「“変態団”団員、団員No.103、須貝政典、痴漢常習犯、成敗するアル!」
「な、何故“変態団”のことを知っている!?“変態団”はいずれ欲望によって
世界征服をする超凄い団体ではあるが、今はまだ会員集めをしている小規模団体
だと言うのに!」
余計な事まで口走りながら、男、須貝政典は驚愕を示す。
少女は得意げに鼻を鳴らした。
「ふふん、驚いたアルね、この名前を聞けばもっと驚くアルよ、…乳房マコ」
「ち、乳房?お、おっぱい?それにマ、マ○コだと!?」
「ち、違うアルよ!ち、ぶ、さ、アル。それにマコの間にンなんて入らないアル
!」

少女、乳房マン、いやマコは顔を赤らめながら訂正した。
「乳房マコ…ちぶさ……」
「そうアル、驚いたアルか?」
「…知らない、誰だそれは?」
ガクッと頭から転びそうになるマコ。
(おかしいアルよ、結構知れわたってると思ってたのにアル…)
何やらショックを隠せない様子のマコだが、すぐに立ち直り、これならばと言葉
を続けた。
「女体神拳の使い手…こう言えば分かるアルか」
須貝の目が先ほど以上に見開かれた。目の前の少女マコを凝視する。
「まさか…お前が…、偉大なる変態団の創始者たちの邪魔をしたという、あの忌
まわしき伝説の拳法を継ぐ使い手…」
「ふふん」大きな胸を張るマコ。「やっと気付いたみたいアルね、ワタシが何者
か」
「く…こうなれば私も“変態団”として相手をしなければならないようだな」言
いながら須貝は背広の内ポケットからマスクを取り出し、頭にかぶる。額には変
態の“変”の文字。さらに背光を脱ぎ捨てると、その下には黒の全身タイツ姿が
現れた。「こうなった私はもはや須貝ではない、一片の迷いもなく欲望を解放で
きる純然たる変態、変態団の戦闘員だ!」
360度、どこから見ても滑稽でしかなく、名乗らずとも変態と一目で分かる姿
になった須貝改め戦闘員は、勝ち誇った笑みを向けた。
「ワタシを女体神拳の使い手と知っても立ち向かってくるその覚悟、敵ながらな
かなかの変態パワーアル」マコもまた劣らぬ笑みで返す。「だけど、しょせんは
悪しき欲望に魂を売ったなれの果てにすぎないアル、ワタシの正義の力、見せて
あげるアル!」
マスクは被らないが、マコもチャイナドレスに手を掛け、ガバッと一気に取り払
った。鮮やかな衣が後方でヒラヒラと舞う。滅多に光の当たることのない路地裏
に、まるでマコの正義の力が呼び込んだかのように光が差し込んだ。
「むむっ!?」
ブフー!と戦闘員が鼻血を噴きながら顔を赤くした。決して急な日射しにのぼせ
たわけではない。
彼が目にしたのは、輝く日射しを浴びて、なおそれ以上に光り輝くように見えた
、全裸のマコの姿だった。まさに乳房(おっぱい)とマ○コ!
「我らに優とも劣らない全裸の変態…噂は本当だったのか」
戦闘員は仲間の言葉を思い出し、納得していた。たしかに朝7時台の繁華街で、
全裸で構えをとれる者など、変態団にもそうはいない。端からみた二人の相対す
る様は、変態VS超変態。超変態がどちらなのかなど愚問中の愚問だった。

されどマコは心一つ動じた様子はない。静かに構えをとった体勢から両手を左右
に広げる。
胸を見てくれと言わんばかりの体勢に、戦闘員はそれだけで狼狽えた。
マコは広げた手をゆっくりと下に下げていく。そして手のひらを上に、手を上に
上げていき、ギュム!と自らの豊かな胸を掴んだ。
「見せてあげるアル、女体神拳の妙技…」言って、掴んだ胸を上下に振りだす。
タユンタユン、ブルンブルン、胸が揺れる。さらに左右の動き、回転の動きが加
わり、風邪に擦れた乳首は勃起していることが確認できる。勃起のせいか、揺れ
のせいか胸が少し伸びたように見えてくる。するとどうだろう、武器を持たぬ、
それどころか全裸である少女の手に握られた胸が、まるでヌンチャクのように見
えて来るではないか。

マコは体勢を低く構え、
「悪しき変態団には成敗を、覚悟するアル!」
鼻血を流して見入っている戦闘員に飛びかかった。
「女体神拳が一の拳…」
※※※【パイチャク拳】※※※
(説明しよう!パイチャク拳とは、武器を持たない女体神拳の使い手が己の身体
を武器のようにあやつる拳法の一つである!この技は、大きなおっぱいを縦横無
尽に揺らし、まるでヌンチャクのように、敵にぶち当てる。)
※体験版はここまでになります※
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