Voracious Anecdote
(これは、酷いわね……)
現場を一瞥し、羽連真理は眉をしかめた。
長きに渡り欲望の影との戦いを続けてきた彼女にとって、このような惨状との遭遇は日常茶飯事だ。だが、いかに歴戦の光翼天使と言えど、その淫惨さは慣れるものではない。
暗く、陰鬱な廃墟だった。元は何らかの建造物でもあったのだろうが、今はその形跡は僅かに残るだけ。むき出しの地面には足の踏み場もなく種々の雑草が蔓延り、金切りにも似た蟲のざわめきが耳に煩い。空気はじっとりと湿り、禍々しい瘴気が身体に纏わりつくようだ。
常人ならば、決して足を踏み入れようとは思うまい。そんな異様な雰囲気さえ漂わせている一角だった。
そしてその中には、運悪くこの空間の主に見初められた犠牲者達が、見るも無残な亡骸を晒していた。
穴と言う穴を犯しつくされ、粘膜を引きずり出されたまま放置されている少女。大量の精液を上下の口から注ぎ込まれ、腹腔の裂けた女性。五体バラバラに引き裂かれ、もはや人間だった形跡さえ見出せないほどの肉塊までが諸所に存在している。その残虐極まる手口は、人の手によるものではありえない。
「なんと惨たらしい……さぞ苦しかった事でしょう……」
目を背けたくなるような屍に、シスターは静かに話しかけた。そしてその場に膝を折り、小さく十字を切って祈りを捧げる。
「わたくしには何もできませんが……せめて、祈らせてください。あなた方の、死後の安らぎを……」
しばし目を瞑り、小さく祈る修道女。影の魔窟に、一瞬、清浄な風が吹いた。言葉は少なくとも、聖女の祈りはそれほど深く、そして真摯なものなのだ。
ヴェールがたなびき、夜の闇の中、シスターの美貌が明らかになる。
清艶な女性だった。年の頃は二十代半ばだろうか、麗らかな中にも、しっとりと落ち着いた大人の包容力を感じさせる。切れ長の瞳はいかにも知的な印象で、深く澄み渡った瞳の輝きが気高い人柄を思わせた。
だがその高潔さは、決して近寄りがたさを感じさせるものではない。祈りを捧げる表情は真摯であると同時にとても親身で、すべてを包み込むような母性愛に満ち満ちている。見るものの心を安らげる優しさと包容力に満ちた、まさに聖母と形容するのに相応しい美貌だ。そんな聖性の中で、肉感的な紅唇や左目下の泣き黒子が、艶ややかに女性としての魅力を放っている。シスターヴェールから覗くウェーブのかかった亜麻色の長髪が、端正な麗貌にひどく似合っていた。
母性たっぷりの美貌と同様に、身体つきもまた大人びたものだった。
いや、ある意味ではそれは、人々を導く聖職者として相応しいものではないかもしれない。なぜならば、肉感たっぷりに熟れきった真理のボディはあまりにもグラマラスで、男を惑わせずにはいられない極上の色香を罪深く匂わせているからだ。
すらりと長い四肢に、細くくびれたウェスト。流麗な長身は女性として理想のスタイルを描きつつ、女の部分にはこれでもかと言うほどに豊満な媚肉を実らせている。乳房やヒップと言った性的なアピールポイントも、これまた女性として理想――いや、同姓でさえ羨むほど豊艶に過ぎるのだ。
豊かで柔らかで弾けんばかりに瑞々しく、今にもむしゃぶりつきたくなるほどに蠱惑的――たわわに熟れきった媚肉の量感は、禁欲的な修道服でもまるで隠し切れていない。躍動感たっぷりに肉をつけた太ももに、そこから続く熟れに熟れたグラマラスな豊熟尻。水蜜桃を思わせるヒップラインは法衣の上からでもくっきりと目を引き、祈りの最中であっても凄艶な色香を漂わせている。
だがそれ以上に目を引くのは、やはり両の胸で熟しきった二つの果実――今にも零れ落ちんばかりの肉量を誇りながらも、同時に麗しい張りで流麗なバストラインを両立させている、Fカップオーバーの美巨乳だ。グラマラスなボディの中でも一際肉感的な熟果は修道服の中にまるで収まりきらず、紺色の生地越しにくっきりとラインが浮かんでしまっている。熟れきった乳肉は僅かな所作にも応じてぷるるんと媚肉をたゆませ、衣服の下からでも極上の質感と柔らかさを感じさせた。それほど柔媚でありながらも聖女の巨乳は僅かにも形を崩れしておらず、つんと突き出したカップラインは目を見張るほどに凛々しい。すべてを優しく包む込む包容力と、純真な気高さをそのまま形にしたかのような、そんな極上の美巨乳だった。
「……AMEN」
小さな祈りを終え、その場から立ち上がるシスター。亜麻色の髪が静かに揺れ、Fカップオーバーの巨乳がたゆんと弾む。たわわに実った乳房の間で、銀のロザリオが厳かに輝いていた。
(……こんなにも残虐な手口で、これだけ多く犠牲者を出しながら、今までわたしたちに気付かれずにいたなんて……)
被害者達を悼みながら、その一方で、真理は冷静に状況を分析していた。
羽連真理は慈悲深いシスターだ。普段は小さな孤児院の主として神の愛を説き、日々迷える子羊を導き続けている。救いを求める者には包み込むような愛で分け隔てなく接し、澄み切った真心と無限の慈愛で優しく癒す。その真摯な姿勢は、まさしく聖母そのものだ。
だが、それは真理の表の顔に過ぎない。優しく温もりに満ちた聖母には、誰も知らないもう一つの顔がある。
光翼天使マリエル――人知れずエクリプスを狩り人々の幸福を守る、正義の変身ヒロイン。その圧倒的な強さから歴代の光翼天使の中でも最強と詠われ、数多のエクリプスにその名と共に恐れられる紅蓮の断罪者。それこそが、真理のもう一つの姿だ。
そんな彼女が今日ここに足を運んだのは、シスターとして死者への祈りを捧げるためではない。この地に巣くうエクリプスを滅ぼすため、己の命を賭けた正義の聖戦のために、真理は光翼天使としてこの闇に降り立ったのだ。悲哀に憂える瞳の奥には、この元凶に対する正義の怒りが、静かに燃えていた。
(残忍さと狡猾さを持ち合わせた古参のエクリプスか……危険な相手ね)
エクリプスとは、欲望に呑まれた人間の成れの果て。そんな魔人どもの行動原理は、単純にして明快だ。即ち、永遠に満ちる事なき無限なる欲望の充足。ただそれだけが、エクリプスの目的なのだ。
影の怪物は自らの欲望をぶつけるに相応しい獲物を見つけるや、自らの領域である影の世界に引きずり込み、終わる事なき陵辱を続けるのだ。己の欲望を満たすため、他者の幸福を食い散らす――欲望を抑える事をしないその本質は、野獣よりもさらに衝動的とも言える。
だが影魔は、そんなケダモノじみた獣性と共に、人間であった時の判断力や知性をも兼ね備えている。これほど多くの犠牲者を出しながら、今まで光翼天使に知られる事なく凶行を続けてきた相手――影の中に身を潜める隠遁能力と共に、侮りがたい狡知を感じさせる相手だ。
(ここは、そんなエクリプスの領域……気を引き締めなければ)
胸のロザリオに手をやり、真理は静かに息を整えた。優しげな美貌から憂いは消え、両の眼には怖いぐらいに鋭い光が宿る。剣呑とさえ呼べる厳格な雰囲気は、今までとはまるで別人のようだ。
これまで数多の勝利を収めてきた歴戦の勇士は、だからこそ誰よりも深く理解している。この憐れな犠牲者達の屍は、未来の自分の姿なのかもしれないのだ、と。
エクリプスとの戦いは過酷を極める。最強の光翼天使と言えど、約束された勝利などありえないのだ。そしてひとたび敗北すれば、その先に待つのは彼女達と同じような淫惨な末路――真理のような美しい女性にとって、それは死よりも辛い淫獄の連続となるだろう。
だが――いや、だからこそ。
「一刻も早く倒さなければ……これ以上の犠牲が出る前に!」
真理は、決して逃げない。
真理は誰よりも強く、そして優しい天使だ。恐るべきエクリプスからも、過酷な光翼天使の運命からも、決して逃げる事はない。
これ以上の犠牲者を出さないために、人々の幸せを守るために――運命のシスターは、恐るべき敵が待つ魔窟の奥へ自ら進んでいく。
だが周囲に注意を張り巡らせるも、標的の気配はまるで感じられなかった。
(縄張りを変えた? もしくは狩りに出かけているのか、それとも……)
隙なく周囲を伺いながら、思索を巡らす戦闘聖女。油断ない眼光は、その先に一つの異変を捕らえていた。
(……あれは?)
先ほどから散見される、無残な亡骸の群。そこにもまた、一人の少女が打ち捨てられていた。だがこれまでと一つ違うのは、
「う、あ……ああぁ……」
(! あの女性……まだ、息があるわ!)
年の頃は十代後半と言ったところか。乱暴に衣服を引き裂かれ、高潮した肌は白濁にまみれている。赤く腫れ上がった乳房や蝶番の外れたままの秘所などから、彼女が筆舌に尽くしがたい陵辱を受けたのは明白だ。だが、死よりも辛いほどに苛烈な陵辱の傷跡を刻まれながらも、少女には確かにまだ息があった。喘鳴にもにた吐息が漏れるたび、弱弱しく肢体が痙攣しているのがわかる。
「大丈夫ですか!?」
生存者の姿を確認するや、真理は駆け出していた。すぐさま犠牲者の傍らへ駆け寄り、そっと優しく抱き起こす。
「う、あ……あ? あ、貴女は……」
「無理して話さなくても結構ですわ。心配なさらないで……もう、大丈夫ですからね……」
怯える少女に、修道女はつとめて優しく、宥めるように語りかけた。自分もその場に腰を下ろすと、大きな胸いっぱいに受け止めるようにして少女を抱きしめ、髪が触れるぐらい近くまで顔を近づけて優しく微笑みかけてあげる。
「あ、あ……あぁ……」
「大丈夫……怖かったでしょう、苦しかったでしょう。でも、もう、大丈夫ですわ……」
精液にまみれた髪を優しく梳き、耳元で優しく囁く。言葉など要らない。包容力たっぷりな聖母の暖かさが、少女の不安を少しずつ拭っていく。
それと同時に、真理は冷静に状況を分析していた。
(……酷い状況だわ。命は助けられるけど、その為には……)
エクリプスの欲望は、常人の身で受け止められるものではない。その毒牙にかかったこの少女は、心身ともに多大な損傷を負っていた。今こうして意識があるのも奇跡と言っていいほどで、すぐにでも治療せねば命の保証はない。
だが消えかけた彼女の命の灯火を繋ぎとめるには、もはや普通の治療では困難だ。ならば、光翼天使としての奇跡の力を使うしかない。だがそれは、影魔と戦うために温存していた力を、予定外に消費してしまうという事に他ならない。
(油断ならない相手だというのに……苦しい戦いになるわね。でも!)
慈愛の聖母は、犠牲者を救う事に一瞬の躊躇いもなかった。
真理は光翼天使の力の源であるロザリオを外すと、震える少女の指にそっと握らせた。そして内に秘められた聖なる力を解放し、少女の治療のためにその力を流し込んでいく。
「あ……あぁ。暖かい……」
「ふぅっ……ど、どうかしら? これで少しは、楽になればよろしいのですけれど……」
ロザリオから天使の力が流れ込み、蒼白だった少女の顔色は血色を取り戻していく。反対に、真理の額には僅かに汗が滲んでいた。僅かに息が乱れ、たわわな巨乳が苦しげに揺れる。
(っ……想像以上に力を使うことになったわね。でも、これでこの女性も大丈夫でしょう……)
なんとか一命を取り留めたことを確認すると、真理は自分の疲労を感じさせまいと、汗ばんだ美貌に満面の笑みを浮かべた。
光翼天使の使命は、エクリプスを倒す事ではない。人々の幸せを守る――それこそが、天使が真に目指すべき目標。
代償は小さくない。だが心地よい疲労の中、聖母は確かな満足感を覚えていた。
(……こんな気持ち、少し前までは知らなかったわ……)
そんな自分の行為を、厳格な戦士としての自分が冷たい視線で評価する。
かつての自分なら、このような選択はしなかったはずだ。無論、被害者は可能な限り助ける。だが、まずはエクリプス討伐を優先し、戦闘前に力を磨耗することはなかっただろう。
一人を助けた結果敗北すれば、さらに多くの人間の幸せが失われる事になる。それは影の狩人としては、愚かな選択に他ならない。
だが、今の真理にとって、この選択に後悔はなかった。
(悠美……。これも、あなたのおかげね。あなたが教えてくれた大切な事……ありがとう、悠美)
真理の心の中に、小さな愛娘の、はにかんだ健気な笑顔が浮かぶ。
羽連悠美――心から愛する、誰よりも大切な愛娘。孤独だった自分に、幸せを届けてくれた小さな天使。戦いしかない乾ききった日々に、悠美は幸せと言う名の潤いをくれた。
虚ろな神の愛を説いていた自分に、悠美は、人を愛する事の大切さを教えてくれた。
孤高の戦士から、一人の母親になり――真理は変わったのだ。
(ふふ……わたしも、甘くなったものね。でも……)
今は、それでいいと思う。
人々の幸せを守る。それこそ、天使が為すべき事なのだ。娘が自分を救ってくれたように、自分も、一人でも多くの人を救いたい。
それが彼女の――光翼天使マリエルではなく、羽連真理としての、戦う理由だった。
「あ……ありがとうございます。助けていただいて……で、でも。こ、ここは一体!? それに、わたし……ば、バケモノが!」
思索に耽っている間に、犠牲者の体力も随分と回復していた。それでも、刻まれた恐怖の記憶までは癒せない。少女は半ば混乱したまま周囲に目をやり、小刻みに身体を震わせていた。
「心配なさらなくて結構ですわ。まだお辛いでしょう、このままゆっくりと休んでいてください。後の事は、すべてわたくしにお任せになって…」
簡単に納得してはもらえないだろう。もっと時間をかけて、心身ともにゆっくりとケアしてあげたいところだが、さすがにこれ以上は状況が許してくれない。これ以上は、すべてが無事に終わってからだ。
「さ、そのロザリオはお返し頂きますわね……」
「え……で、でも……あの……」
怯える少女は、縋るように、ぎゅっと両手でロザリオを握りしめていた。暖かな力を放つそれに縋りついていたい気持ちもわかるが、しかし銀の十字架は光翼天使としての力を発揮するために必要不可欠なアイテムだ。渡すわけにはいかない。
「ごめんなさい。でも、それはわたくしにとってとても大事なものですの。ですから……お願いしますわ」
真理は静かに微笑みながら、少女に預けていた大事な十字架を引き取ろうとする。だが、
「……い、いえ。それは……クククク、出来ない相談ねぇ!」
突如。少女の形相が一変した。
これまで怯えていた表情は悪鬼のごとく歪み、濡れた唇には獲物を見つけた捕食者の笑みが浮かぶ。
「!? あ、あなた……まさか!?」
しまった――と思ったときには、すでに遅かった。女性の影が、まるで別個の生き物のように蠢き出す。毒泉のように沸き立つ影は捻りくねり捩りあわされ、無数の触手となって修道女の身体に絡みついた。
「っく!? こ、これは……!」
疲労と油断もあり、一瞬の出来事に真理は対応し切れなかった。植物の蔓のように変形した影が、素早く両手両足に絡みつく。あっという間に四肢を縛り上げられ、聖女は一瞬にして自由を奪われてしまっていた。これが何を意味するのか――真理には、すぐにわかった。
「貴女……エクリプス……!?」
「ホホホホホ、その通り!!」
少女だったものの姿が、見る間に変じていく。か細い四肢は無数の蔦草が絡まりあった触手塊へと変じ、ざわざわと蠢いて修道女の身体に幾重にも絡み付いてく。
「く、あああ!」
エクリプスの蔦触手は、細身に反して恐ろしくパワフルだった。ブーツに絡みついた蔓はスカートの内側にまでに潜り込み、むっちりと肉感的な太ももをギチギチと締め上げる。柔肉が軋むほどの圧搾に、たまらず苦悶を零す巨乳聖女。束縛を解こうと手を伸ばすも、それよりも早く他の触手が両手首に絡みつき、凄まじい力で後ろ手に拘束される。一瞬にして、真理は屈辱的な完全拘束姿に戒められてしまった。
「くぅ……こ、この……う、くぅぅう〜!」
必死に束縛に抗い身じろぐも、変身前の人間の力で抵抗できる相手ではない。逆に肉に食い込むほどにきつく四肢を締め上げられてお仕置きされ、苦痛の喘ぎを搾り取られてしまう。苦悶の汗を滲ませるシスターの前で、先ほど命を救われた少女はその新の姿を現していく。
「ふふふ、動けないでしょう? あなたはわたしの罠にかかった憐れな虫けら……後はもう、食べられるしかないのよぅ!」
小柄な肢体は醜悪に肥大化し、肉で出来た壷のような形状に変じていく。唇は百八十度以上に大きく裂け、バカリと蓋のように展開した。人間さえ丸呑みにしてしまえそうな巨大な口蓋の内側からは、肺腑が腐りそうなほどに甘ったるい蜜の香りが漂っている。
可憐だった少女とはまるで別人――巨大なウツボカズラが触手の四肢を生やしたかのような、奇怪極まるおぞましい姿だ。
「わたしはネペンテスエクリプス。困っている人を見捨てて置けないのは、正義の味方のお約束なんでしょうけど……こうも簡単に引っかかるとは思ってもいなかったわ!」
(っく……わたしとした事が、油断したわ……!)
ネペンテスエクリプス――ウツボカズラと人間とが混じりあったかのような異形を誇る女性影魔。恐らくは食虫植物同様に、擬態と隠遁に特化した能力を備えているのだろう。こうして正体を見せるまで、歴戦の勇士にも、まるで影魔の気配を感じさせなかったほどだ。
そして異能同様、この影魔の性質もまた食虫植物と酷似していた。
「わたし、動くのなんて面倒だしぃ、運動なんて大嫌いなの。だからここでずぅっと動かずに、ひたすら餌がかかるのを待つ……それがわたしのスタイルなのよぅ。そしたらぁ、今日はとびきりの食材が向こうから飛び込んできたってわけよオホホホホ!」
肥満した身体を揺らし、巨大な顎を開閉させて下品に笑う。外見同様に醜悪で、怠惰で、そして貪欲なエクリプスだった。
「話には聞いてるわぁ羽連真理……いえ、光翼天使マリエルとお呼びした方がいいかしらぁ? わたし達エクリプスを狩って回る、恐ろしい天敵……でも」
開いた口蓋の内部から、大量の粘液を滴らせた肉舌が伸びる。四肢を拘束する硬質な蔦とは別種の肉触手が、大人びた聖母の美貌をぬるり、とひと舐めした。
「う……くぅ」
甘ったるく粘っこい、水飴じみた白濁粘がべっとりと頬に擦り付けられる。まるで涎まみれの舌に顔面を舐められたかのような嫌悪感に、真理は小さくみじろいだ。
「んふふ……いいわぁ。その美貌、その肉体、そしてその力……貴女たち光翼天使はわたし達の天敵、けれど同時に最高の獲物でもあるの。最強の光翼天使さまをこんな簡単にモノに出来るなんて、わたしついてるわぁ!」
「あ……あらあら、それはどうかしらね? そこまで知っているなら……わかっているでしょう、わたしの力も!」
欲望を剥き出す植物影魔に対し、真理は少しも怯えを見せなかった。四肢を戒められながらも、刺すような視線で威圧する。並みの影魔なら、それだけで萎縮してしまうほどの凄みだ。だが、
「ふふ、強がってみせても無駄よオバサン。アンタこれさえなければ変身できないんでしょ? だったら……ほぅら!」
ネペンテスエクリプスは、あくまで冷静だった。大きく顎を開くと、真理から奪ったままのロザリオをパクリと飲み込んでしまう。
「な!? あなた、なんて事を……!」
「おぇ……聖なる力がつまってて最低の味。でもまぁ、これでアンタはもうこのロザリオに手出しできない。つまり変身も出来なければ大した力も使えない、ただの無力な人間に過ぎないってわけよ」
(く! 悔しいけど、確かにこいつの言うとおりだわ……!)
表情にこそ出さないものの、内心、真理は焦燥を禁じえなかった。このエクリプスは手ごわい――奸智に長け判断力に優れ、なおかつ光翼天使についても熟知している。
いかな光翼天使と言えど、変身しなければエクリプスに対抗する術はない。さらには先ほどの治療でかなりの力を消耗し、変身アイテムまで奪われてしまった今や、もはや戦うどころか触手の拘束から抜け出すための力さえ残されていないのだ。
こうなってしまえば、もはや囚われの蝶と同じ。このまま、エクリプスの歪んだ欲望をただひたすらにぶつけられるのみ――
(いいえ……まだよ! まだ諦めるには早い……逆転のチャンスは、いつか必ず来るわ!)
だが、真理は決して勝機を捨てていなかった。軽く唇を噛み、強気を振り絞ってよわい考えを振り払う。
ネペンテスエクリプスの光翼天使に対する知識には舌を巻くが、それならば自分とて負けてはいない。長きに渡り影魔を狩り続けてきた聖戦士は、こんな窮地など何度も経験してきている。
そして、それでも彼女はここにいる。最強の光翼天使として、今もエクリプスに恐れられ続けている。それは即ち、これまでどんな苦境をも跳ね除け、最後には勝利してきたことの証左に他ならない。
(そうよ……わたしは負けない。エクリプスの責めに耐え続ければ……快楽に屈しなければ、必ず勝機は訪れるわ!)
深く息を吸い、反抗のために強気を振り絞る修道女。
強大な欲望はエクリプスの力の源だが、同時に最大の弱点でもある。欲望の影は、自らの欲求に決して抗えない。どれほど周到な影魔とて、いずれ欲に溺れ隙を見せるはずなのだ。
だが――
「いい表情。まだ諦めていないのね。でも、変身前の非力な人間の身体でエクリプスの責めにどこまで耐えられるのか……くふふふ、見物よねぇ!」
「くっ……う、うぅう……!」
真理は――いや、これまで何度もエクリプスに責め犯され、たっぷりと開発された真理の媚肉は、痛いほどに理解している。
欲望の化身の責めがいかに苛烈で、そして快美なものなのか。
おぞましい触手愛撫がもたらす人外の快楽、妖異に変異した肉体による異形の責め、理性を蕩かせる媚薬の毒効に、獲物を完全に屈服させてなお注がれ続ける無尽蔵の子種汁――エクリプスの陵虐は、想像を絶するほどに激しく、そして甘美なものなのだ。
最強の光翼天使とてやはり女。熟れきった肉体を異形の触手にこってりと可愛がられ、地獄めいた快楽にこれまで何度も何度も狂わされてきた。変身した後でさえ耐え難かった肉悦めに、力を失ったただの人間のまま耐えられるものなのか――考えただけで背筋が粟立ち、マゾヒスティックな予感に牝芯がじゅんと蕩けてしまう。
(……ダ、ダメよ! 弱気になってはいけない……耐えるのよ。どんな責めでも……わたしは、絶対に耐えてみせる!)
弱気になりそうな思考を、真理は髪を揺らして振り払った。だがそんな強がりなどお構いなしに、エクリプスの責めは開始される。
にゅる……ぐちゅ、にゅるるる。四肢を縛る草本とはまるで別種の、腐肉じみてヌルついた触手が影から伸びる。大量の粘液を滴らせた肉蛇が、法衣の上から両乳房にグルグルと巻きついてきた。大量の粘液を生地に染みこませながら、柔らかな乳鞠を幾重にも包囲し、ぎゅう、ぎゅううと揉みこんでいく。
「うふうふ。妬ましいぐらいに立派なおっぱいよね。まずはここから……たっぷりと、虐めてあげるわぁ」
(う……や、やっぱり。胸なのね……胸から、責めてくるのね……!)
ごくりと生唾を飲み込み、これから来る虐悦に備える真理。きつく唇を噛み締め柳眉を震わせる、その表情は悲壮なまでに気丈だった。
だがそんな強情とは裏腹、柔らかな乳肉は触手の締め上げにまるで逆らう事をしてくれなかった。分け隔てない母性愛に満ち満ちた柔鞠は、おぞましい触手の責めさえも嬉しそうに受け入れてしまう。誇らしげに突き出されていた乳峰は触手の食い込みにあっけなく屈し、揉み込みに応じて柔媚に形を崩してしまっていた。
触れただけで崩れるほどの柔らかさにも関らず、聖母の巨乳は下郎には屈しない芯の強さをも兼ね備えていた。形を崩しても、すぐに同じだけの弾力で押し返して生意気な尖りを取り戻す。だが、そんな形だけの抵抗は、陵辱者をいっそう楽しませてしまうだけ、ぬめる触手は何度も何度も巨乳を圧搾し、瑞々しい感触を飽く事無く貪っていた。
「すごい柔らかさねぇ。それに張りも十分で……こんな素敵なおっぱい、男どもが放っておかないでしょう? 今までも、たっぷりと可愛がってもらってきたんでしょ? こんなに大きくなるまで揉まれちゃって、虐められるのがクセになってるんじゃない?」
「くぅ……や、やめなさい。そんな事、ないわ……ふぁあ、んん!」
質感を確かめるように巨乳を弄びながら、いやらしく詰問するエクリプス。すぐさま否定する真理だったが、しかしそんな気丈さとは裏腹に肉体は正直すぎた。執拗な乳もみのたび、乳芯はどんどん熱くなり、甘い乳悦が抑えられない。窮屈な聖衣の中では、大きめの乳首が早くも切なげに勃起してしまっていた。
(か、感じる……。悔しいけど……ああ。おっぱい、か、感じてしまっているわ……)
湧き上がる乳悦に、抗おうとしても抗いきれない。荒く息を零し、触手愛撫に感じ入る聖職者。身悶える度、柔らかな巨乳がぶるんぶるんと敏感そうに揺れる。
「ふふ、嘘ばっかり。あなたのおっぱい、こんなに熱くなってるわ……わたしの触手にも、すごく敏感に反応してるじゃないのぉ」
「くっ、う、嘘よ。そ、そんな事……ふああぁ、あまあぁん!」
にゅる、むにゅる。根元にゆっくりととぐろを巻かれ、乳房全体を持ち上げるようにしながらぶるぶると揺さぶられる。同時に何本もの細紐で、衣服越しにつつーっと乳肌をなぞられた。尖った先端で焦らすように乳首の先っちょを弄くられれば、ゾクゾクと切ない稲妻に打ちのめされる。
(く……う、うぅ。だめ……こ、こんな……こんな責め方なんて……)
感じてしまう――そう、エクリプスの言葉は真実だった。
正義の変身ヒロインが無敵だなんて、現実ではありあえない。これまでの長い戦いの中、光翼天使は幾度となく窮地に陥ってきた。
そのたびにエクリプスたちが目をつけるのは、やはりもっとも魅力的な媚肉――たわわに熟しきった両巨乳だ。もともと豊満だった真理の巨乳は数え切れないほどの魔手に弄ばれ、たっぷりと開発されてしまっている。被辱の悦びをイヤというほど叩き込まれてきた淫乳は、大人びた包容力を感じさせる外見とは裏腹に、情けなくなるぐらいに敏感なのだ。今もこうして必死で耐えてこそいるが、その実――
「はうぅう……っく、ふ、うぅ! くはぁ……ん、んん!」
抑えられない嬌声、抗いきれない快感。Fカップを越える巨乳のどこにも、触手に犯された経験のない箇所など存在しない。生意気な外見とは裏腹、真理の巨乳は、もう、虐められるのがクセになってしまっているほどの淫肉塊なのだ。
そんな淫乱すぎる弱点を、こんなにもしつこく、何度も何度も可愛がられたら――
(くぅ……き、気持ちいい。だめよ……根元から、そんないやらしく揉むなんて……ああぁ、ち、乳首までコスっては……だめぇ!)
どうしても乳悦を意識してしまう――いや、こうして意識を集中させなければ、一瞬で理性を持っていかれてしまう。乳の奥が蕩けそうなほどに熱くなり、いやらしい疼きが一秒ごとに大きくなる。
「はぁ、はぁ、はぁあ……くぅう、い、い……うぅん!」
四肢を縛られた状態で、悩ましく胸を揺らし喘ぐ巨乳シスター。
「ほぉら、気持ちいいでしょ? 両方一緒にモミモミしてあげるわねぇ……ふふ。今度は少し強くひねるわよぉ、どぉ?」
「はぁ、はぁ、はぁ……いっ、ひいぃぃっ!」
ぎゅ、にちぃぃぃ! 乳房全体にとぐろを巻いた触手に、乳肉が軋むほどのの勢いで絞り上げられた。これまでの探るような愛撫から一変、痛みを伴うほどの圧搾に、たまらず真理は情けない悲鳴をあげてしまう。
「つ、痛うぅ! はぁあ、き、きつ……くうぅうぅ!」
ただでさえ弱い上に、今は変身さえしていない生身の状態。そんな状態でエクリプスの怪力に締め上げられ、さしもの強気な戦士も苦悶の声を抑えられない。苦しげに瞬く瞳からは、涙さえ滲んでいた。
「ごめんごめん。今は変身前だもんねぇ、あんまり強くしすぎると壊れちゃうわよね……ほら、お詫びに優しく可愛がってあげるわぁ」
怯えるように震える乳房を、今度は優しく、労わるようなタッチで愛撫された。ほんの僅か、触れるかどうかの力加減で優しく何度も乳肌を往復され、純然たる快感だけが際立たされる。
「はあぁ……や、あ、あぁ。こんな……や、優しすぎ……ふあぁ、ん、ふ……うぅ」
痛くされた後で酷く敏感になってしまっているおっぱいに対し、甘く心地よい優しいお触り。単純極まる飴と鞭だが、滑稽なほど快楽に弱い聖母のおっぱいにとっては覿面だった。包容力タップリの巨乳は逆に子供のように触手に甘え、快楽に身を委ね蕩けてしまっている。
「あらあら、すごい感度。本人は生意気なのに、随分甘えん坊なおっぱいねぇ。それじゃ……もっと感じやすくされたら、どうかなぁ?」」
ぬる……とろ、トローッ。触手の端々から、ぬめる粘液が分泌された。砂糖を煮詰めたシロップのように甘く濃厚な香りが、鼻腔を擽る。とろみがかった甘蜜が、優しい愛撫で衣服の中へ刷り込まれていく。
「あふぁ……や、あぁ。な、何これ……はあぁ。うあぁ、あ、甘い……くふ、うぅ」
ぬる、ぬる、ぬるっ。ローションじみたトロみと、シロップのような甘い香りが、聖女の官能を甘く擽る。だがその甘美な香りは、食虫植物が獲物を欺くために放つ花蜜と同様、ひどく危険なものだった。衣装を染みて肌に染み込まされた、その瞬間――
「ひっ……う、あ、ああ!? ふああぁ、あ、熱い……いぃ!」
乳肌が急速に熱を増し、じゅんじゅんと疼きだす。まるで、おっぱいが内側から溶けてしまいそうなほどだ。耐えられない切なさに、真理は金髪を振り乱し悶絶した。
「ふふふ、どぉかしら? わたしの分泌液は、どんな獲物も抗えない毒の蜜。変身もしていないんだもの……すごく効いちゃうでしょぉ?」
(くっ……し、しまった。これは、エクリプスの媚薬……!)
いやらしく囁かれ、真理は薬効の正体に気付いた。
性感を蕩かせる催淫媚薬は、多くのエクリプスが備える特殊能力だ。女性である以上、その効果から逃れる事はさしもの光翼天使でも不可能に近い。コスチュームの上から塗られただけでも女体はいっそう感度を増し、僅かの責めにも敏感に反応してしまうようになってしまう。
しかもさらに悪い事に、今の真理は変身もしていなければ聖衣による防御さえないのだ。無力な人間の肉体――いや、あるいはそれ以上に脆く感じやすい豊満ボディに、たっぷりと塗りこまれていく悪魔の媚薬。その効果たるや――
「はあぁ……あ、ああぁぁ! ひああぁ……あ、あっああぁ!」
(あぁ……あ、熱い! だめ……こ、これはダメ。こんな……き、効きすぎる……!)
身体が芯から熱くなり、どっと大量の汗が噴出する。呼気は荒くなり、一息零す度に豊満な巨乳が激しく脈を打つ。気丈な美貌はほんのりと赤く染まり、強気な瞳は切なく潤み始めていた。
(くぅっ……だ、だめよ! 耐えなければ……へ、平常心を保つのよ。そうすれば、こ、こんな……)
ぎゅっと唇を噛み締め、必死で抗う巨乳シスター。だがいくら高潔な精神であっても、肉体を直接蝕む媚毒の効果までは抑えきれない。ズクン、ズクンと切なく疼く乳房を、再び優しく触手で撫でられる。
たった、それだけで――
「はあぁ……きゃあ、あふぁああ――!」
強く揉まれた訳でも、搾られたわけでもない。わずかに乳房を摩られた、それだけだ。そして、たったそれだけでも真理は声を抑えられなかった。ビクンと背筋が仰け反り、粘液まみれのおっぱいが激しく揺れる。
(うあぁ……す、すごい! なんて効果なの……わたしの胸、す、すごく敏感になってしまっている……!)
そんな過敏すぎる反応に戸惑っているのは、他の誰でもない真理自身だった。自分の肉体が感じやすいものだという事は自覚している。
Fカップオーバーの乳房は感度もまた人並み以上で、戦いの最中でも事あることに意識してしまい邪魔にしか感じない。高潔な聖女にとってコンプレックスでもある豊満巨乳は、普段よりずっと貪婪になっていた。普段から持て余し気味の性感は数倍以上も過敏になり、僅かの責めにも泣きたくなるぐらい感じてしまう。僅かに触手に撫でられただけでも、甘い痺れがずっと取れずに残り続ける。
そんな弱すぎる急所を、エクリプスの触手は執拗に責め続ける。
だが、ここに来て女影魔のやり口は陰湿だった。いきなり強くは虐めてこず、まずはひたすら優しく可愛がってくるのだ。ぬめる触手が乳房に絡みつき、むにゅり、むにゅりと優しく揉みこんでくる。
「ふあぁ……あ、やぁ。こ、こんな……ああぁ。敏感なのにぃ……わたしのおっぱい、び、敏感になりすぎてるのに……どうして、こ、こんなに優しく……くぅうう!」
痛みなど僅かにも感じさせない、快楽だけを際立たせる優しい愛撫。あまりの心地よさに乳房が芯からから蕩けそうになってしまうも、しかし優しい愛撫だけでは充足させてはもらえない。気持ちよすぎるのに物足りない、切ない、あまりにも切なすぎるもどかしい愛撫。地獄とも天国ともつかない快楽責めに、真理は瞳を潤ませ惑乱した。
「うふふ、どうしてって……優しくして欲しがってたから優しくしてあげてるんでしょ? それともなに? 正義の変身ヒロイン様は、痛くされたほうが好みなマゾなのかしら?」
「はぁ……そ、そんな。そ、そんなはずないでしょう……で、でも……ああぁおっぱいだめぇ、そ、そんなに優しくしないで……ぇ!」
ねっとりといやらしい詰問に、肉体と同時に精神までもを辱められる。いやいやと首を振り、甘い息を吐いて身悶える真理。そんな間にも触手の動きは休むことはなく、むにゅむにゅと根元からおっぱいを揉みこまれて追い詰められる。
「はあぁ、や、ああぁ! お、おっぱいばっか……ひうぅう。し、しつこい……や、優しいの、感じすぎる……うぅぅ〜!」
これなら委託されたほうがマシだ。気持ちよすぎて、あまりに心地よすぎて逆に耐えられない。もどかしい乳悦にどうしようもなく惑乱し、真理は大きく髪を振り乱して喘ぎ乱れた。いつのまにかカクカクと腰が振られ、溢れ出した愛蜜が太ももにまで滴っている。乳首はビンビンに充血しきり、汗まみれの修道服に淫らな陰影を浮かび上がらせてしまっていた。乳輪の窪みまで浮かばせて震える勃起の様は、もっと触って欲しい、もっと撫でて欲しい、とおねだりしているようだ。
「あらあらぁ、こんなに乳首をシコらせて……持ち主とは違って本当に素直ねぇ。いいわよ、お望みどおりシテあげるわね乳首ちゃん♪」
淫らな反応を隠し切れない急所を、女影魔は目ざとく狙い打つ。一際細身のミミズのような触手が伸び、衣服の上から乳輪を押し込むようにして乳豆を縊りだした。紺色の生地を押し上げるぐらいに硬くなってしまっている先端に、細い肉紐が幾重にも絡み付いていく。
(う……あ、ああ。乳首……く、来る……!)
恐怖とも期待とも付かない、マゾヒスティックな予感が胸を貫く。次なる影魔の責めを予感し、真理はゴクリ、と生唾を飲み込んだ。
Fカップオーバーの塾果はどこもかしこも泣きたくなるぐらい敏感だが、中でもやはり性感帯である乳首は一際脆い。いまも衣服の裏生地と擦れあうだけでも、切なく感じてしまっているほどなのだ。小指の先ほどの大きさにまで勃起してしまっているはしたない弱点へ、しゅるしゅると細紐が絡み付いていく。そして――シコ、シコシコシコ!
「はあぁ……うぁ、あ、ああああ!」
根元から先っちょまでをシゴくようにして、巻きついた触手に何度も何度も擦ふぃあげられた。瞬間、駆け巡るミルク色の稲妻に、真理は喉を仰け反らせ悶絶する。
「くひぃ……ひ、い、いぃい! 乳首……ん、おぉぉお!」
ただでさえ感じやすい場所なのに、これまでで一番の集中攻撃を浴びせられてはたまらない。両乳首を同時に何度も何度もシゴきたてられ、その度意識が飛びそうなほどの快感がかけめぐる。おっぱい全体を揉み潰される漫然とした心地よさとは違う、性感帯をピンポイントに虐められる辛いほどの快感に、真理は知らずの内に舌まで突き出してよがり狂っていた。
「あははは、だらしない顔! 乳首がそんなにいいんだ……だったらこれはどうかしら? ほぉら、こちょこちょこちょ〜」
弱みを隠しきれないシスターを、ここぞとばかりに猛追する陵辱者。先端をこより状にねじらせた細身の触手が、乳首のさきっちょに押し当てられた。衣服の上からでもわかる乳線のくぼみを刺すようにしながら、ドリルのように回転して乳首のさきっちょをこそぎ、抉られる。
「ひあ、あ、あああ! だめっ、そ、それだめ……んおぉぉ! ち、乳首シコシコしながら……さきっちょ抉らないで、乳首、乳首ばっかそんなに虐めないでぇぇ〜!」
亜麻色の髪を振り乱し、涙ながらに哀願する淫乱聖女。敵であるエクリプスに許しを乞うなど光翼天使のプライドが許さないが、変身さえできない今の真理にはそんな余裕など残されていなかった。
(くぅっ……か、感じる! こいつ……う、上手すぎるわ……!)
雄の欲望をただぶつけるだけの単純な陵辱とはまるで違う。同姓だからこそわかる弱点を執拗に狙った、飴と鞭を使い分けてのねちっこい責め。女影魔の熟練した手管に、さしもの聖母ももうメロメロだ。
「ふふ、そうねえ。乳首ばっかりじゃわたしも満足できないわぁ。だから今度は……こっちからも虐めてあげるわねぇ」
にゅるにゅると、新たな触手が真理の足元へ伸びる。胸を嬲っている肉ミミズとは、外見も質感もまるで違う軟体触手。滑らかな粘膜を白く照りかがやせた、なんとも艶かしい肉蟲だ。細くしなやかな女性の指先を思わせるそれが、繊細な動きで真理の両足に絡みつき、ヌメった皮膚を擦りつけながら太ももに這い上がっていく。
「うぁ……ひゃうう……ぅう」
乳責め触手の腐肉じみた感触とも、蔦草に拘束される痛みともまるで違う。潤んだ柔肌のような触感は、おぞましいとも心地よいとも言えない。ただ一つ言えるのは、媚薬愛撫で蕩けきった身体にとっては、どんな責めも甘く逆らいがたいと言う事だ。女性同士で太ももを絡み合わせるような妖しい快感に、真理は小さく腰を振るって身悶えた。
(うぁ……な、何よこの触手。スベスベして、す、すごくやらしいわ……。こ、こんなのに、ぬるぬるって擦られたら……)
ゾクゾクと駆け巡る、妖しい快美感。感じやすすぎる乳首を痛いぐらい虐められた後だから、余計に心地よさが際立ってしまう。ぬめる肉蟲に肌を犯されても、嫌悪しか感じないはずなのに――
「くぅ……ふ、あ……い、い……」
「ふふ、どうしたの? 素直に言えばいいじゃない……気持ちいいんでしょ? ふふ、気持ちいいって言いなさいよ」
「うぅ……そ、そんな。いや……き、気持ちよくなんてないわ。こんな、こんな気持ち悪い触手……はあぁ、ん、や……あぁ」
にゅる、しゅる、にゅるにゅるにゅる……。強情を張る聖母を篭絡させようと、軟体触手はあくまで優しく、労わるようにして太ももを可愛がってきた。くすぐったさと背徳感の混じった、女同士で交わりあう背徳の快感に、さしもの聖母も甘えるような声を抑えられない。
「ふふふ、強情ねえ。でも、わたしは気持ちいいわよ。こうしてあなたのカラダとわたしの触手を擦り合わせるの……はぁ。張りのいいお肌、瑞々しい太もも、それに素敵なおっぱい……最高よ、ずっとこうして味わっていたいぐらい」
いやらしく笑い、触手を動かし続けるエクリプス。言葉通りに魔女の責めはひどく執拗で、止む気配をまるで見せない。
(く、うぅうぅ。ずっと、ずっと動いてる……なんてねちっこいの? こいつの責め……い、いやらしすぎるわ……あぁ)
これまで数多のエクリプスの責めを味わってきた聖母だが、ここまで執拗なものは未経験だ。
殆どのエクリプスは性衝動や支配欲に動かされ、雄の欲望を充足させるために女性を嬲り犯す。だが、この女影魔はまるで違う。とにかくねちっこく執拗に、同姓だからこそわかる女の泣き所をひたすら念入りに、もっとも感じやすいやり方で可愛がってくるのだ。
(あぁっ……だ、だめ。気持ちいい……こんな気持ちいいのを続けられたら……わ、わたしだって、耐えられない……!)
小刻みに頤を揺すり、快美な女色責めに感じ入る巨乳シスター。
暴力的なレイプだったら、まだ耐えられる。真理は強い女性だ。死すら覚悟しているのだ、どんな苦痛にも、その高潔な精神は屈する事はない。
だが同時に、真理は女なのだ。それもどうしようもないほどにいやらしい肉体に恵まれた、開発されきった淫らな女だ。熟れに熟れた豊満ボディは、女としての欲求をどうしようもなく持て余している。痛みではなく快楽で、それも同姓だからこその粘着質な責めでねっちりと可愛がられ、普段は意識して感じないようにしている肉の悦びをどうしようもなく喚起させられてしまう。
「くうぅ……ふ、う、うう! ああぁ……い、い……んん!}
「ふふ、気持ちいいでしょ? ふふ、おっぱいももっと責めてあげる。ほらぁ、我慢しないで……もっと声出して喘いでいいのよぉ?」
「うあぁ……お、おっぱい……くぅ! いやぁ、き、気持ちよくなんてないわ……はああぁぁ乳首、乳首キツくしごかないでぇ!」
シコ、シコシコシコ! 鋭敏な肉豆をきつく虐められ、屈服の声を搾り取られる淫乱シスター。その直後にはやさしい愛撫で甘悦を注ぎ込まれ、かと思えばまたしても激しい搾乳で痛くされて――快楽に慣れるだけの余裕など、まったく与えてもらえない。
「はあぁ、ぬ、ぬるぬるしないで……あああぁ。い、いい……ふああぁ。ああ……ふぁ、あ……あああ〜!」
もう、声を抑えることができない。涎まみれの唇から甘い嬌声を零し、真理は悩ましく身悶えた。気丈だった美貌はあさましく蕩け、鋭い瞳は涙に潤んで震えている。ショーツはすでにぐっしょりと濡れそぼり、溢れ出した愛蜜が太ももをぬるぬると濡らしている。
(くぅ……だ、だめ。だめよ……な、流されては。一度でも流されたら……た、耐えられなくなってしまうわ……!)
ゾクゾクと駆け巡る快美感、どうしようもなく逆らいがたい背徳の悦び。真理はそれを否定すべく、きつく唇を噛み締めた。血が滲むほどの痛みになんとか意識を集中させ、快楽から目を背けようとする。
「んんんん……っく、ふ、ぅ! んん……くぅうう〜!」
御しがたい肉悦に翻弄されながらも、必死で抗う苦境の聖母。快楽に流されながらも抵抗を続ける苦悦の表情は、健気であるがゆえに見るものの刺虐心をいっそう刺激してしまう。
「あらあらぁ、そんなに必死になって堪えなくてもいいのに。こんな身体してるクセに案外初心なのねぇ……いいわぁ。あなた最高よぉ余計に泣かせたくなっちゃう……くふ、ふふふ!」
禁欲的なシスターとは対照的に、欲望の化身であるエクリプスはまったく自由奔放だ。女影魔は気高い聖女を自らの手で屈服させようと、更に淫靡な責めを追加した。
ぬるぬると太ももを擦り責めている軟体触手と同質の、しかしそれよりも何倍も太い肉塊が、影の中から突出する。丁度、女性の足と同じぐらいの太さと長さを持った太肉が、獲物の両足の間に無理矢理押し入っていった。当然、その奥にあるのは――
「う……あ、ああ!? や……そ、そこは……!」
ビクンと、真理は小さく身を震わせた。
幸か不幸か、これまでの経験のせいでこれからの予測がついてしまい、期待感にじゅんっと股間が疼いてしまう。
(うぁ……せ、責められる。だめ……お、おっぱいだけじゃなくて、アソコまで責められてしまったら……わたし、も、もう……!)