神々がいまだ力を及ぼし続けている異世界『アンフィビウム』。
 アンフィビウムには様々な人間種族が棲んでいる。
 その中の一種族、『天羽』 あもう は非常に優れた魔法の素質を備えており、強大な王国を打ち建てて、他の多くの者達を支配している。
 天羽達は、自らを「神々に愛された種族」「天空から舞い降りた民」などと称するが、その優雅で高貴な響きとは裏腹に、永い年月の間にその支配体制は腐敗しきって、民衆を苦しめていた。
 天羽に忠誠を誓う者達は取り立てられて官僚や貴族とされる一方、獣人のような魔法能力の低い者達は社会の底辺に貶められている。
 民衆への徴税は厳しく、反政府的な言動や活動は弾圧されて、ユートピアとはほど遠い世界である。
 奴隷や下層市民の反乱は珍しくもなく、政府は国内の不満を逸らすために周辺異民族の国々に侵略戦争を仕掛ける、そんな末期的な政治が常態化している。
 また、「神々に憎悪された種族」を名乗る『咒寇』 じゅこう 達によるテロ活動も、散発的ながら被害が大きい。
 にもかかわらず、その強力な魔法の力ゆえに、天羽による世界の支配は揺るがぬように見えた。


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