(3)アルーカヤ王国

 アンフィビウムでも特に強大な国で、天羽の支配する魔法国家のひとつ。アルーカヤの人口構成は、天羽は全体の5%以下で、7割がたは地奴と地婢である。
 一年を通じて温暖で乾燥した気候であり、地理的には交通の便も良いことから貿易の拠点ともなっている。国家間の侵略行為や貴族の領地などもあって国土の範囲は曖昧だが、概ね現代のフランス程度の面積の支配領域を持つ。
 王都は千年以上の歴史を持っており、石造りの街並も数百年前の建物も多い。王宮はそれよりもさらに過去から存在していて、その下には神代の都市遺跡があり、入口が地下に隠されている。
 都市には闘技場を始め様々な娯楽施設が建設されているが、民衆の不満をそらす装置としては機能しておらず、もっぱら中層市民以上の階層のための退廃した楽しみの場と化している。
 放漫な財政と腐敗した体制を維持するために、周辺国への侵略を繰り返している。ほかの天羽の魔法国家との戦争もしばしば起きている。
 王宮は戦争や徴税で潤い、役人達は商人からの賄賂を、貴族達が荘園経営で利益を手にする一方、多くの下層民や奴隷達が搾取にあえいでおり、しばしば反乱が起きるものの天羽達の強力な魔法のせいで体制打倒には至らない。
 王国の周辺には同様の天羽国家が十数国ある。またそれ以外にも天羽の支配を受けていない国(主に地奴、地婢による)も多数存在する。他の天羽国家の人口構成や支配体制もアルーカヤとおおむね同様である。
 アルーカヤ王国を始めとする天羽国家は概ね以下の階層で構成されている。

王侯:
 天羽のみ。女王とそれに連なる血族。
 女王に近いものから遠いものまで数十名ほどおり、水面下で派閥を組んで熾烈な政治闘争を繰り返している。
貴族:
 本来は天羽、石巫のみだが、下級貴族くらいなら金で身分を買えなくもないため、賄賂で儲けた役人の石蛇貴族などもそこそこいる。
 都やその郊外に邸宅や城館を構える事が許される。上級貴族は地方に領地を持ち、徴税収入がある。
 魔法騎士などの高級軍人や元老院議員、高級官僚などの役職に就く。
市民:
 塩蛇やその他の魔法種族が主だが、商売で財を為した地奴などもそこそこいる。都では高級街区に住む。
 社会的には役人、軍人などの仕事が割り当てられる。
下層民:
 地奴、地婢、獣人など、魔法の使えない種族が最下層とされる。都ではスラムに押し込められており、様々な苦役や兵役に就かされる。
 法律では人間としての最低限の権利を認めることになっているが、実際には無視されてしまう場合が大半。
 才覚のある者は商売や技術職などでもう少しまともな待遇を得られる。地奴は数が多く、兵隊としての貢献や商売などで獣人よりやや上の立場にある。
 ※必ずしも下層民=奴隷ではない。天羽は下位種族との性愛を社会的なタブーとしているため、同族専門の天羽の性奴隷なども存在する。