第2話 女への教育。
何度かエロ本で見たことがあるような『朝起きたら性転換していた』という結果を望んでいた。
しかし現実にそうは上手く行かない。薄々分かっていたことだ。
ガラガラと檻の前に病人を運ぶ担架(救急車につんである車輪付きの奴だ)を警棒が押してきて、俺に看守長が声をかける。
「囚人番号:3―057番。今から手術室に貴様を連行する」
そう言うが早いか、警棒が俺にめがけて銃口を向けた。警棒の持っている獲物はピストル。恐らくは警察が使用しているニューナンブと同系統だろう。俺はひっ くり返って必死で銃口から逸れようともがいた。その姿は恐らく芋虫のように哀れで情けないものであったに違いない。
されど、許されるはずもなく。
「ア○ルに当てたら、お昼ごちそうしてくださいね。看守長❤」
「……いいだろう」
「やったーっ!」
発砲の音が聞こえたのは、俺の陰嚢に何かが突き刺さった瞬間の痛みが走った後だった。意識が混濁していく中で、担架に乗せられて両手両足を拘束。
「ア○ルではないな」
「えーっ!
ああ、ホントだ。
キン○マに当たったのかぁ。残念。
でも片方、麻酔銃のタマで潰れてますよ」
「……」
「どうせ切除するんだし、ちょうど良いんじゃないですか?コイツにとっては人生最後の金玉潰しですしね❤」
「…そうだな」
その後も2人はおしゃべりをしていたのだろう。俺が内容を聞き取れたのはそこまでだ。どうしようもなく怖かった。このまま死ぬかもしれないという不安がか ぶさって、どうしようもなく身体が震えた。もう何も出来ないくらいに怯えていた。
生まれてこの方、身体は丈夫な方なので手術も入院もしたことがない。それなのに、いきなり性転換手術だ。怖くてどうしようもない。
目隠しをされ、耳にパッドを嵌められ、何も感知できない状態でどこかに運び込まれ、俺は手術を受けた……らしい。
情報を感知できないようシャットアウトされ、そのまま手術をされたようだ。何時間眠っていたのだろうか?あるいは何日間か眠っていたのかもしれない。
最初に感じたのは頭痛だった。ズキズキと頭が痛む。目を開けるとそこは、元々俺がいた汚い独房だった。
次に感じたのは乾きだ。とにかく何かを飲みたい。なんでもいいから水分が摂りたくて仕方がない。ベッドから這い出てあたりを見回しても水道らしきものは何 もなかった。
「水?」
「あ…」
警棒がこっちを見て、笑っている。例によって看守長も一緒だ。警棒の片手には、ボル○ックが握られている。俺はそれから目を離すことが出来なかった。
「…来い」
「くくく。びっくりするよ」
俺は水飲みたさに鉄格子に近づき、彼女たちの次の指示を待った。警棒がなにかガサガサと人の大きさはあろうかというボードを出している。
「見ろ」
看守長が俺に鉄格子を挟んで見せてくれたそれは、姿見の鏡だった。そこには間違いなく、俺が映っている…はずだった。
だがそこにいたのは俺ではなく、裸の女性。背も俺よりも2回りは低い。いやガタイが小さいだけで、背は変わらないのかも知れない。
しかしどちらにせよ、華奢な女性だった。
腕も足も細い。何よりも細くなっているのが腰だ。くびれている。こんな腰で立っていられのかと不安に思うほどの頼りなさだ。
そして目を引くのが胸だ。自分で自分の胸を手に収める事ができない程に、大きく膨れ上がっている。
「あ…、あ…ああ」
「これが新しいお前だ。囚人番号:3―057番。
今日から女として生きていく術をここで学んでもらう。
期間は一ヶ月となっているが、覚えが悪いと延長もありうる。
よくよく学べ。以上だ」
「ま、待って………」
「待って?」
警棒の言葉に俺は慌てて口を塞ぐ。
「ま、待ってください」
「何だ。囚人番号:3―057番」
「あの……水を…」
「駄目だ」
看守長はそれだけ言うと、行ってしまった。追うように警棒が歩き出す。しかし警棒は俺にヒントをくれた。それは悪魔のヒントだったが……。
「トイレは水洗式だよ」
それはつまり、便器に溜まっている水でも飲んだらどうかという悪魔の提案だった。警棒がいなくなったのを見て、俺は洋式の便器にしがみついて中を覗いた。
見たこともない汚れが便器にこびりついている。色は黄色いが似たものを探せと言われれば、イボのようにも見える。
黄色いイボが連なって、便器にびっしりとこびりついているのだ。
(これを…飲めと?)
「畜生がっ!」と思いっきり叫びたかった。しかし、声が出ないほどに喉が渇いている。
しかしすぐに気がついた。水を流せば新しい水が便器に流れ込む。それならこの汚れた水を飲まなくて済む。俺は、慌ててレバーを引き、水を流した。その水は 透明で飲んでも問題無さそうに見える。
手ですくった一杯は、美味しくはない。薬品臭い水だった。先ほどの警棒が飲んでいたボル○ックが羨ましくて仕方がない。
しかしとにかくは乾きが収まるまで、飲むことが出来た。が、どうにも嫌な予感がして顔を上げると、そこにはペンキで直接、壁に文字が書かれていた。
『トイレは一日1回まで』
試しに一度レバーを引くも、もう水は流れない。俺は看守長の言葉を思い出していた。
『食事、排泄、風呂、教育。すべてこちらの指示通り・時間通りに行ってもらう。』
たしかに言われた。間違いなく言われた。しかし、悔しくても辛くてもここでは規則が全て。とにかく、外に出るまで辛抱だと自分を鼓舞して、立ち上がり何気 なく鉄格子を眺める。
そこにはまだ、姿見の鏡が置きっぱなしになっていた。あの距離だと手は届くまい。されどそこに映る自分は間違いなく見えた。
これが新しい自分。
顔 は……可愛いのが少しばかりむず痒い。こんな顔の女が街を歩いていたら、振り返って見てしまうだろう。ボーイッシュに見えるのは髪型のせいだろうか。髪だ けは男の時のそれと変わらない。ただ骨格にどうにも心許なさが残る。こんな体では男に抑えつけられたら、抵抗など絶対に無理だ。力に頼るには、少し華奢過 ぎる。
「アンタ、新人かい?」
「え?」
鉄格子の向こうから声がした。
話しかけてきたのは恐らく隣の独房の人間だ。口調は男のものとも品のないオバサンのものとも取れる話し方だが、声は間違いなく若く、声だけで美人と分かる 声だった。
「あ…はい。菅谷雅人です」
「あ、名前はいいよ。ここではナンバーが貰えてるだろ。あれで名乗らないと『懲罰』だぜ」
「ちょ…懲罰?」
「ああ。俺もまだ受けたことはないけど、かなりキツイらしい」
「そ、そうですか。あの囚人番号:3―057番です」
「そうか。こっちは3―055だ」
「よろしく」
「ああ。で?アンタは何をやったんだ?」
「え、えっと…痴漢です」
「ははっ。そりゃ重罪だ」
「そうですか」
「ああ。俺はセクハラ。冤罪だがな」
「俺もですっ!」
「しっ!あまり騒ぐな。うるさくすると看守がくるぞ。アンタもケツを犯されたろ?」
言えなかった。自分は犯してすらもらえず、フェラだけで我慢汁を撒き散らし、人生最後の男としてのSEXを終えたことを。
「なんだ?犯されなかったのか。そりゃあ、これから看守の格好の餌食だな」
「………」
「朝は4時起き。ま、ぶっちゃけ何時に起きてもいいんだが、6時までに化粧やら身支度やらすませて看守に認めてもらえないと、禁固期間を延長されるぜ」
「け、化粧?」
「ああ、アンタ。ここのこと何も知らないんだな。いいぜ、教えてやる。その代わり……」
「その代わり?」
「メシもらったら、一品オカズをこっちによこしてくれ。女の体になるためにダイエットをさせられてるんだが、腹が減って死にそうなんだ。頼むよ」
「分かりました」
「アンタ、聞き分けがいいな。ありがてぇ。
こ こでの看守は教育係も兼ねていてな。あいつらに認めてもらわないと、次のステップに上がれない。次のステップに上がれると少しづつ自由度が増して行くん だ。ナンバーの少ない奴は、大概が上のステップにいる。あいつらは化粧道具から、身に付けるものまで支給されている。アンタ、今裸だろ?」
「……はい」
「いや、いいんだ。隠さなくて。
正直に言うと、俺もだ。
最下層は服さえも与えられない。
それどころか便所もろくにさせてもらえない」
「………」
「そ れがここでの俺達だ。とにかく看守に認めてもらって、上に上がらないと何時まで経ってもここにいることになる。世間じゃ、シャバに出るまで1ヶ月程度って 言われているけど、そこから見えるかい?この通路の端。一番奥はここの主の独房でな。もう丸3年。衣服も着ずに過ごしているらしい。ありゃあ、早死する ぜ」
「3年も……」
「ああ。だからとにかく看守に認められるよう努力しろ」
「わ、わかりました」
「おい。忘れるなよ。オカズ一品。こっちによこすんだぞ」
「え、ええ。ありがとうございました」
おれと55号さん(おれは隣人をそう呼ぶことにした。囚人番号が3―055番だからだ)の会話が終わってすぐに、独居房の通路の奥(先程は気が付かなかっ たが、恐らくはそこも鉄格子が付いているんだろう)で重々しい鋼鉄の扉が開く音がしてすぐに、鍵をかけ直す音がした。
「よーしっ!小娘共っ!オマ○コの時間だっ!全員、ドアの格子の間から両手・両足をだせっ!」
警棒が大声を張り上げると、隣の55号さんが手と足を格子から出しているのが見えた。
俺はそれに従ってドアの格子から両手両足を出す。そこだけは横15センチ、縦10センチほどの格子のない窓が上下に2つあって、手首から先、足首から先が 出せるのだ。そこに警棒と看守長が次々と手錠、足枷を嵌めていく。
「あーらっ!最後は新人の057番じゃない。
初めてのオマンマン楽しみねぇ?」
女が口角をあげると俺の心模様は二通りにきっぱり別れる。この女をもっと笑わせてやろうと思うか、黙らせたいと思うか。
警棒に対しては、後者だった。しこたま警棒で叩かれているからだろう。
きょうの警棒の獲物は電気スタンガンだった。それも今までネットでみたような玩具じゃない。音も光も抜群にその威力を物語っている強力なやつだ。
「よ、宜しくお願いします」
「あら?返事をすることだけは覚えたのね」
「…はい。すみませんでした」
「うふふふ❤もう参ちゃったの?心配だなぁ。これかがら大変なのに」
「………」
看守長は俺の手首に手錠を。警棒は俺の足に足枷を嵌めて、独房の格子扉を開けてくれた。廊下に出て周囲を見ると、うら若く華奢で、胸の大きな女性ばかりが 一列に並んで自らの膝に手をつき、廊下側にお尻を突き出している。
「囚人番号:3―057番。貴様も同じようにしろ。頭は下げて、ケツと同じ高さでキープ。分かるな?」
「は、はいっ!」
自分でも何をされるのかよく理解できた。これは女性化の為の訓練。つまり女性器をイジってもらい、イジリ方を覚えさせられる訓練だ。
「看守長。お願いします」
「ああ」
俺が女囚人たちの列に並んで同じポーズを取ると、看守長は俺の股間から弄り始める。いきなりマ○コに来るかと思っていたが、まずはア○ルにゴム手袋の感覚 が襲ってきた。
「はうっ!」
予想以上の刺激の強さに声を上げて、すぐに『しまったっ!』と思ったが、何のお咎めもない。そのまま、ア○ル周辺を揉みほぐされている。目だけでこっそり 横を見ると、囚人は皆、一様に目を伏せていた。そして警棒さえもおれが声を上げたことを、指摘したりしないでいる。
「声は上げても、構わん」
看 守長はそれだけ言うと、俺の肛門から女性器に向かって手をずらしていく。大陰唇の表面を撫でて、上から下に。撫でられるまで気が付かなかったが俺の女性器 には毛が無いらしい。看守長の手が滑りとむず痒さを俺の皮膚に残して、指がもろに肌の表面を撫でていく。看守長の手袋が濡れているのか、自分の身体が濡れ ているのかわからないほどに全身から汗が吹き出していて。そして、俺の皮で包まれていた女性器の中に看守長の指が割って入ってきた。
妻のマ○ コをめくった時のあの感覚がフラッシュバックして、自分が看守長にどう見られているのか容易に想像できる。妻のマ○コを初めて舐めた時に舌で感じたマ○コ の肉が、大陰唇の肉が押し広げられたまま、中の小陰唇部分など無いかのように無理やり力任せにめくり上げられ、膣の中に看守長の指が無理やり侵入してきた のだ。
「くぅっ!」
痛む。痛くて、嫌になるくらいに。
その時自分の胸がたゆみ、揺れ、顎に当たった。
たぷんと音がなったような気さえした。
それが嫌だった。どうしようもなく。
まるで自分の胸、身体が誰かそうされることを望んでいるかのような反応を示したことが嫌でたまらなかった。
だからというわけではないのだろうけど、元々マゾ気質があった俺にはそれが無性に甘い誘惑に思えた。理性では止められない強制的に自らを『誰かに犯される 快感を望む』という快楽に堕ちるのが。
だから揺れたくなくて膝に、手に、腹筋に力をいれる。
無駄だった。
もしもまだ身体が男なら耐え切れただろう。
今は違う。
俺は女になった。
だから身体に力が入らなかった。
揺れることに耐えられなかった。
看守長は恐らく、俺がこうなることを知っていて俺の膣の中に指を出し入れしているのだろう。いわゆるピストン運動というやつだ。
その動きは決して早くない。ゆったりとさえしていると言っていい程だ。しかし、それを考慮に入れても俺は、揺れていた。揺さぶられていた。
胸がたゆんたゆんと揺れ、乳首が空気に擦れる度に自分が犯されているのだと実感せずにはいられない。
「ふむ。感度良好だな」
「元々、そういう願望があったんじゃないですかぁ?」
「……かも知れん」
俺の反応を見て、看守たちがなんの遠慮もなく自分勝手な感想を並べているのを、俺は夢見心地な気持ちで聞き流していた。普段なら怒りを感じるはずの言葉 も、看守長が次の行動に移っていて、その艶めかしさに飲まれてしまっていたからだ。
看守が次に触ってくれた場所。それはクリト○スの皮。これは感覚として間違いなく男だったころの皮を向く感覚そのままだった。あの頃よりも幾分か皮が厚く なって、剥かれにくくなっているような気もするが、触られている感触はあのころのまま。
剥かれた後、皮の中のクリト○スの突起の一番上を指で撫でてもらった感覚が、俺の知っている『亀頭を他人に、それも優しく撫でられた感覚』と同じだった。
その一連の感覚に俺は酔ってしまった。飲まれてしまった。陶酔していた。
自然と息が熱くなる。
そのことを認めたくなくて、俺は下唇を噛んだ。
眉間には変な風に力が入っている。
それでも口の合間から抜け出る空気が、……熱い。
この日の最後、最も複雑で、男だった頃は感じたことのない快感にまみれた。
それはクリト○ス愛撫と、膣の中へのピストンの同時責めだった。
頭が快感を処理しきれない。
もしもその2つへの刺激がシンクロして、同じ動きをしていれば混乱などしなかっただろう。しかしそれらは全く別のリズム。全く別の動き。全く別の快感を俺 に与えた。
数秒前に生まれて初めて得た膣への挿入感に、亀頭を優しく撫でられている快感。その2つが同時に来る。
俺は……自分のクリト○スが勃起していることに気がついていた。恐らくは看守長も気がついているだろう。膣が触られてすぐの頃よりもさらに濡れている。こ れも看守長は知っているのだろう。

恥ずかしかった。
でも一つだけ、看守長も知らないはずの秘密がある。
俺の乳首が……勃っていることだ。
これだけは知られたくない。
なんとなしに、決意にも似た思いがあった。
これ以上、恥を重ねたくなかっただけなのかもしれない。
しかし………。
「ぷっ。コイツ乳首が勃ってきてる(笑)」
警棒の情け容赦のない一言に俺は、目を強くつぶった。
それしか出来なかった。
それしか反抗する術を持っていなかった。
そうすることで現実に耐えられるよう努力するしかなかった。
「ふむ。まぁ良いことだ。次の段階を考えるべきだな」
「あははは。良かったね。囚人番号:3―057番。
褒めてもらえたんだよ?
御礼はどうしたの?」
「あ、あぅ……」
「なぁに?聞こえな~い」
「あ、あの……もう少しで……その……逝けると……それでその……」
「駄目だ」
「え?」
看守長はそれだけ言うと、俺の股間から手を離し、俺のケツを手で一発払うように叩いた。そして悪魔の宣告を俺にする。
「囚人番号:3―057番。貴様は次のステージだ。豊胸手術に回す。肉体の負担を軽減化するため、今日から一週間は、貞操帯を付けてもらうからそのつもり でいろ」
「そんな………」
「あはははは。残念だったね❤」
警棒が笑う中、俺の股間には革製の頑丈な作りの貞操帯のベルトが巻かれた。これではオナニーどころか、用を足すこともままならない。
「その……トイレは……?」
「安心しろ。排泄の時間は取ってやる」
それは……手術までの一週間。
毎日、黒髪の美しい女性看守たちに排泄を見られるということを意味している。
そのくらいは俺でもこの時点で十分に理解できた。
絶望する俺を他所に、看守たちは次々と囚人の股間をまさぐって、『教育』を施していった。
第3話 本当の意味で女になった男。
豊胸手術までの一週間。
俺は『女』を徹底的に叩きこまれた。
特 に難しいのは、肌の手入れだ。肌の色艶の維持は明らかに他のメイクと違って難易度が高かった。男から女に変わったという肉体的な問題もあるのかもしれな い。とにかく肌が荒れやすく、簡単に吹き出物が出来る。それだけで俺は、2人の看守に尻を突き出して泣くまで叩かれ続け、謝罪の言葉を叫び続け、反省を強 要された。
スパンキングパドルというものを知っているだろうか?
ケツを叩くためだけに存在する板だ。握りは自転車のグリップを2 つ縦に合わせたくらいの大きさで、ケツを叩く部分が羽子板のように平たくなっている。ケツを叩く部分の大きさは縦75センチ、横15センチくらいだろう。 叩く部分には幾つか穴が開いており、ケツを叩く時に空気抵抗を受けないように出来ている。この穴が余計に痛みを感じさせて、俺はいつも苦々しく思ってい た。
中には木で出来ているものもあるようだが、看守が握っていたのは合成樹脂で出来たものだった。木製はどうだか知らないが、合成樹脂は最悪だった。いつもケ ツを叩かれると、合成樹脂が汗やケツの体温に反応するかのように張り付く。これが結構な屈辱感を与えるのだ。
子供の頃、母親にケツを叩かれていた感覚はこの感覚なのだろう。張り付くような手の平に近い感覚だが、もしもあれが手の平なら体格差は10倍以上あるであ ろう強い痛みを与える道具。
それがスパンキングパドルというものだ。
俺はアレがたまらなく嫌いだった。
しかし、看守たちがそんな俺の心模様を見逃すはずもなく、俺は事あるごとにケツを叩かれて泣いていた。泣きながら謝罪の言葉を2人の女性に投げかけて、許 しを請うことしか許されなかった。
大変だったのは肌の手入れだけじゃない。
1日1回のトイレタイムに必ず2人の女性が俺が股間をいじらぬよう後ろ手に手錠をかけてから便器に座らせるので、俺自身が股間を拭けないという問題だっ た。
それはつまり看守たちのどちらか一方が、用を足したばかりのア○ルやマ○コを拭き取るという事だ。
思っ ていた以上にこの行為が恥ずかしいと、最初の1回で心の底から理解できた。汚物まみれのア○ルを他人に拭われると、まるで自分が何も出来ない、世にも情け ない生物に堕ちたような気分になる。赤ん坊のように甘えられれば、狂人として生きていられたかもしれないが、実際はそうじゃない。ただひたすら耐えるしか 出来ないのだ。ア○ルの時も恥ずかしいが、マ○コの時も酷い。
ア○ルよりも構造が複雑なので、余計にタチが悪いのだ。尿道を的確に拭いてもらわないと、貞操帯の中で湿って翌日確実にカブれる。カブれたら当然ケツ叩き だ。だから尿道を拭いてもらいやすいように、腰を上手く浮かせなければならない。
大概は警棒が俺の股間を拭く役を担っていた。そして、警棒はその度に俺に「汚いものをひねり出すなっ!」と罵声を浴びせ、いつものあの余裕たっぷりの態度 ではない、キレる女の顔を俺に見せていた。
ケツ叩きはもっぱら看守長の仕事だったが、難癖つけて警棒もよく参加してきた。多分、憂さ晴らしをしたかったからだろう。
だが、お陰で俺は一週間でどんどん2人の看守に対して、従順になっていった。逆らう気概など持とうとさえしなくなった。
これを成長と呼んで良いかは疑問符が残るが………。
それでも俺は多少の心得を覚えていった。
女性器のメンテナンスや、肌の手入れ。化粧。それに言葉遣いだ。
看守たちの教育方針なのか、ここ全体の方針なのかは分からないが、とにかく俺は慎ましくて自己主張せず、恭順な女でいるように躾けられた。その最たるもの が、言葉遣いだった。
あえて思ったことを口にさせられ、言葉の中に男らしさが残らぬよう徹底された。少しでも男の臭いが感じられるようなアクセントや、言葉の選び方をすると 即、ケツ叩き。
散々ケツ叩きが嫌で一生懸命に『女』であろうと努力したことを述べたが、実はオナニーできなかったことも懸命だった理由にあったと内心思っている。
本当は、初めて看守長にいじられたあの日、逝かせてもらえないなら夜中に一人でオナニーしようと思っていたからだ。しかしその画策は見事に外れ、貞操帯あ りきの生活にされてしまった。すると不思議なもので妙に物事に一生懸命でいられた。妙に集中できた。
もしかしたら貞操帯はそういう効果もあるのかもしれない。ヤリマン、ビッチが女同士でも馬鹿にされるのはそういうことが理由なのかもしれない。
豊胸手術の朝、俺は前回同様に看守に拳銃で麻酔銃を打たれ、またも意識を取り戻す前にすべてを済まされた。
そして意識を取り戻した時、独房にはカチューシャとエプロンがあった。
真っ白の生地に、ゴテゴテのフリル。
カチューシャの方はあつらえたようにサイズが合っているが、エプロンの方は小さすぎる。正直こんなものを腰に巻いても、エプロンとしての機能は果たさない と断言できるサイズだ。
そして何よりも悲しくなるのが、こんなものがあるのに他に何も服がないということだ。これならいっそ裸の方がマトモだと思える。
「ダメよ。着なさい」
俺の仕草で心を読んだのだろう。警棒が檻の外からニヤニヤしながら俺にそう言ってくる。今日は、正装らしい。きちんとジャケットに帽子を着用している。
「でも、………これ」
「着ろって言ったでしょ?」
「……はい」
俺は仕方なくエプロンを腰に巻き、カチューシャを頭に乗せた。
「看守長がお越しになる。お客様を連れてね」
「?」
(こんな独房に客?)
そう聞こうとした時に、通路の奥の鉄格子が開く重くてにぶい音がした。その音と同時に警棒と入れ替わりで看守長が俺の独房の前に立つ。連れてきたのは意外 な人間だった。
人数は2人。片方はスーツの跳ね髪。背は俺よりも高い。忘れようにも忘れられない顔。俺の弁護士だった。
「この野郎っ…!」
「覚えていてくれました?何よりです」
「黙れ。囚人番号:3―057番番号」
鉄格子の向こう側で、看守長が俺を睨む。それでも俺は、胸のむかつきを抑えられずに声を荒げようとした。だが、看守長の横に見慣れたはずの女がいることに 気がついて、すぐに弁護士などどうでも良くなってしまった。
「ま……まさか……」
「ひさしぶりね。アナタ」
背が低く、おれがかつて贈った赤いワンピースに上品な白いカーディガン。清純さと上品さをたたえる黒髪。その女は……妻だった。裁判中俺に不利になるよう なことばかり証言したあの妻だった。
変な話だが、俺は裁判のこともあって妻のことを恨んでいた。それなのに、顔を見た途端愛情が胸にこみ上げてきて、あっというまに俺を埋め尽くす。
「あ……ああ……」
俺だって男だ。プライドがある。
こんな体になった以上、妻には会わずに離婚してしまうつもりだった。幸い俺たちには子供がいない。出来ればもう会いたくなど無かった。俺は彼女を今でも愛 しているが、俺が彼女に愛されるに価しない。そう思って、会いたくなかった。彼女の顔を見たくなかった。
「元気?」
妻は前よりも綺麗になっていた。
明らかに女としての魅力が上がっている。俺が収監されている間にだれか他に男でも出来たのだろうか。
そう思うとどうしようもなく惨めな気持ちに思えてくる。
裸エプロンにメイドカチューシャ。鉄格子の中の汚れた空間に女の体。これが今の俺の持つ全てだ。こんなところでもがいていることしかできない俺と違って、 妻はそれだけ充実した生活を送っていたのだろう。
「挨拶はどうした?教えただろう?」
看守長は俺の気持ちなど一切無視して、いつもどおり俺に教育を始めた。それはつまりこの2人に俺が教育されている現場を見てもらえということだ。
「……でも……人がいますし……」
「ぷっ」
妻 が俺を笑う。顔を赤らめてまるで初心な女のように恥じらう俺を見て。妻が手を口元にやって漏れ笑いを隠す仕草も、弁護士の糞野郎が腕組みして檻の外から笑 う表情も、まるで俺を小娘として値踏みし、自信過剰になっていると小娘の蔑むようなその瞳も、すべてが恥ずかしくて堪らない。
「出来ないか?」
「でっ……出来ます!」
俺は1週間かけて徹底的に叩きこまれた挨拶を始めるしか無かった。エプロンを端を握っていた手に力が入って、身体が固く感じる。それでも俺は、頭を下げる しか無かった。
「きょ、今日も………囚人番号:3―057番が世に出た時の為に、『女』の教育をお願いします。囚人番号:3―057番は、きょ、…恭順で、尽くす女にな ることを誓います」
「良し」
看 守長がそう返事をすると檻の外から、まばらで少しも心のこもらない拍手がした。頭を90度に下げているので、誰が拍手しているのかは分からないが恐らくは 妻と弁護士の2人だろう。その拍手の中、独房のドアを開ける音がする。そしてカギをかけ直す音。俺が頭を下げたままでいると、看守長の手が俺の頭を撫でて いる。
俺は頭をあげることを許可されていない。そのままの体勢を維持し続けていると、カツカツと足音を立てて、看守長が俺の後ろに回っていく。
「きゃぁっ」
妻の黄色い歓声が聞こえた。その声と同時に俺の後ろで看守長がいつぞやと同じようにスカートをまくりあげているのが俺の足越しに見えた。
(まさか……ここで?)
妻が見ている。憎っくき弁護士が見ている。その前で、俺は犯されるのか?そう思ったら、なぜか体が浮遊感に包まれた。うまく力が入らない。決して宙に浮い ているわけではないのに。
力がはいらない。これが絶望というやつなのだろうか。
「案ずるな。キツめには手術していないはずだ」
(何を?)
そう聞こうとした時、俺は『手術でキツくされていないモノ』のが何か理解できた。
性器だ。
おれの女性器がきつめ小さめに手術されていないということだ。
看守長のペニバンの先、亀頭部分がが俺のマ○コにあたり、中を探るようにほじくり始める。それはまるで亀頭に意志があって、俺の膣を探しているように思え た。
痛みが迫る。『痛いぞ』という予感が頭に走る。
そう実感した時にはすでに、それは俺の膣を正確に見つけ、ゆったりとねじ込まれていった。
「ま、待って…」
「愛撫か?」
俺は自分が言おうとしたことをズバリ看守長に言われて、顔が一瞬でカッと赤くなった。
(その通りです。どうか優しく揉みほぐしてから、挿入してください。どうか痛くしないで)
看守長の言葉に、頭の中でそう答えてしまった。
「大それた考えを持つな」
「あぐっ!」
俺の考えを真っ向から否定して看守長は俺の中、膣の中までグイグイとペニバンを押し込んでくる。押し込んでくるだけじゃない。押し込みながら時折、震える ような振動を与えたり、少し戻したりして俺をもどかしくさせる。
それが俺を欲情させる為だと、分かっていても、妻と弁護士の前で欲情させるためだと分かっていても、それでも欲してしまう。
逝きたいと願ってしまう。
それが悔しい。悔しくて、切なくなる。
「顔を上げろ」
「ふぁ……ふぁい」
舌にまで力が入らなくなり、呂律の回らなくなった俺に看守長がペニバンで強く腰を打ち付ける。
「ふぁっ!」
「返事が遅い」
「しゅ……しゅみましぇん…はぁっ!」
俺が答えきる前に、看守長がガンガン突き始める。俺は膣の肉が擦れて足が震える。性感が強すぎて、立っていられない。前に倒れ込みそうになった瞬間、看守 長が俺の腕を掴んで、倒れかけた俺の上半身を無理やり引き上げた。
「もう片方の手も出せ」
「待ってっ!待ってっ!」
待って欲しいという俺の意見を一切無視して、看守長が俺の手を取り上げる。おれは完全に看守長に上半身を釣り上げられる状態になった。それはつまり俺の豊 胸したばかりの胸を2人の客に晒すという事でもあった。
「……あ」
大きすぎる俺には不釣り合いな乳を晒したまさにその瞬間、妻と目があってしまった。
妻は俺の想像とは違い、笑っていた。にこにこと微笑んで、俺を見つめていた。それは楽しそうでもあり、嬉しそうでもあり、そして良い女にはこんなにも笑顔 が似合うんだなと思える、無邪気な笑顔だった。
俺は急に冷静になって、ずっと心の中で否定していたこの場所の異常性を認めざるを得なくなってしまった。
し かしそれでも、看守長はお構いなしに俺を突いてくる。俺の中の膣が愛液と摩擦に悦んでいるのが自分でも分かった。妻は俺が内股になりたがって身悶えした り、声を上げそうになると手を叩いて喜ぶ。それが何を起因としているのか検討もつかない。しかし、分かっていることがあった。
彼女は俺が陵辱されて、楽しんでいること。
それだけは間違いなく、認めなければならない事実。

「ねぇ、見て見てっ!おっぱい大きい❤」
俺の胸を2人の客が見て、微笑む。
「あぁ。見ているよ。いいんじゃないか?キミと対照的で」
「もうっ!」
「…あっ!あっ!あっ!」
どうしても看守長が突くと、俺の乳が揺れてしまう。それだけでも恥ずかしいのに俺の乳首は空気の冷たさに触れて、勃ってしまった。
「どうした?」
「こ…こんなの………あっ……」
『こんなことは教わっていません』
そう言おうとした時、おれは自分が声をきちんと出せないことに気がついた。教わっていなくてもできてしまったのだ。
女としてのSEXを。
それに気がついてしまった以上、もう戻れなかった。
檻の外から妻が見ていようが、憎い弁護士が見ていようが関係無かった。只々、看守長のペニバンで満たされていて、このままでいたかった。このままの快楽を 生きたかった。
気がついたら俺は……。
股間から液を垂らして、泣いていた。
そして何故かは分からないが、謝罪の言葉を口にしていた。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
口ではそう言いながらも、看守長のペニバンを離さないよう内股で、泣いていたのだ。
多分……おれは自分が女でいることを、謝罪していたのだろう。
男で居続けられなかったことを妻に、自分に謝罪していたのだろう。
看守長が俺の手を離し、俺の股間から無理やりペニバンを抜いて、樹脂で出来た肉棒を指でなぞった。
「逝ったようです」
「あは。貴方。顔がぽわ~んってなってるわよ」
「……う」
妻 の言うとおり俺は顔が緩んでいた。それどころか全身に軽い痙攣さえ起きている。このまま眠ったら死んでしまうのではないかと思うくらい自分が不安になる。 誰かに今すぐ抱きしめて欲しかった。寂しいと実感できた。男の頃のように射精という終点が無いので、延々と射精する直前の感覚が残っている。もう少しで射 精できそうなのに。
「終わりだ。囚人番号:3―057番。抱いてもらった後の所作は覚えているな?」
「あ……はい……」
看守長は俺の前に回って、尻餅ついて床の女の子座りする俺の前に立った。そして俺の目の前にそそり立つペニバンを突きつける。
「し……失礼します」
俺はそれを口に含んだ。舐めるとか吸うとかじゃなく、ただ口に入れただけ。そうでないとAV女優のように演技臭くなってしまい、看守たちの言う恭順な女に はなれないと躾けられているからだ。
「吸え。吸って清潔にしろ」
「…ふぁい。わふぁふぃふぁふふぁ(わかりました)」
「くすくす。やだぁ」
「いいじゃないか。男は好きだぞ。ああいうの」
「え~。本当?なんかなぁ」
俺 は2人の客のヒソヒソ声に耳を傾けながらも、音を立てず、そーっとペニバンの付着物を吸って飲んだ。正直、ここでは女の身体。細い身体を作るために、メシ が極端に制限されていて、食えるものならなんでも口にしたくてたまらなかったという事情もある。(ここに来た初日に55号さんにオカズ一品渡した時は本当 に参った。)
だが、それ以上になぜか飲むのが当たり前のような気がしてならなかった。
そうでもしなければ気持ち悪いというか、当たり前のことが当たり前に出来なかったような気になって、居心地が悪く感じるだろう。
「フェラ、止めっ!」
「ぷっ」
「ははっ(笑)」
俺を看守長が制止すると、その命令の仕方が可笑しかったのか2人の客が笑った。それが妙に俺にとっては屈辱だった。看守長を馬鹿にされたような気がした。 それと同時に俺にとって看守たちの命令が馬鹿げていて笑えるというような扱いを受けた気さえした。
否。
実際に馬鹿げていて笑えると彼女たちは感じたのだろう。
「本日の教育は終了。囚人番号:3―057番。本日は早めに休むように。以上っ!」
「はい。看守長。本日は……」
俺はそこまで言いかけて慌てて教わったことを思い出した。
『土下座』
できるだけ恭しく見えるように指を揃えて、頭を床に付けてからもう一度口を開く。
「本日はご指導ありがとうございました。女性になって日が浅い囚人番号:3―057番はしっかり恭順な女になることを誓います」
「うむ」
檻の外からもう一度拍手が聞こえた。
今度の拍手は、少しだけ先程よりも心がこもっていたような気がする。
体験版は如何だったでしょうか?
HTML版のみ、2話と3話を収録させて頂きました。
発売は2012年12月末を予定しています。
どうぞご期待ください。
TSリボルバー