その1



全身を包むのは痛み。

爆発と思われる衝撃波が無防備だった身体へ激しく当たり、何の抵抗も出来ずに吹き飛ばされた。

しかし、肉体的な痛みは外部からだけではなく、内部からも湧き上がる。

頭の中を始め、全身に走る神経や毛細血管の一本一本にまで、人格が変わりそうな程の痛みが駆け巡り、果ては魂さえも掻き回されているかの様な感覚に陥った。

まさに激痛と言う言葉を鼻で笑える程の痛みは、吹き飛ばされて浮き上がる身体の感覚から一瞬である事が辛うじて認識出来るが救いだ。

結果的に痛みを耐え切れず、いつの間にか気を失ってしまうが、地面に落ちた衝撃ですぐに意識が戻った。

背中や後頭部等に感じる草のチクチクとした刺激で、自分が生きている事と地面の確かな感触に安堵してしまう。

そして何か重要な事を忘れてしまった喪失感に捕らわれていると、すぐ傍から声を掛けられた。



「あの、大丈夫ですか?」

「えっ?」



目の前に居た人物は、驚く事にメイドさんである。

ボブカットに切り揃えられた綺麗な黒髪に、白いメイドカチューシャ。

黒を基調としたワンピースに白いエプロン。

そして何より、服の生地を突っ張らせている大きな胸。

顔に目を向ければ、そばかすの無い綺麗な肌に何処かで見た事のある童顔。

現実の世界の記憶は薄れても確実に断言出来る。

どう見ても『ゼロの使い魔』のシエスタです。

本当に――



「……あの、大丈夫……ですか?」

「えっ、あぁ、大丈夫」



声を掛けても返事が無い事に、もう一度声を掛けてくるシエスタ。

全身を包んだ筈の激痛は無く、後遺症どころか身体は前より軽い。



「君、危ないから離れなさい」

「あっ、し、失礼しました。ミスタ・コルベール!」



自分の身体に起こった変化に疑問を感じつつも起き上がっていると、シエスタの後ろから注意を促す声が聞こえてくる。

聞き覚えのある名前はどう考えても『ゼロの使い魔』の登場人物の物。

そして見えてくるのは、挿絵で見た事のある特徴的な姿。



「むっ……」



俺の姿を確認した途端に黙り込んだ。

特に大きな混乱もしていないコルベールは辺りを見回すも、眼に映るのは爆発前と変わらない光景しかない。

唯一つ違う点は召喚されたと思われる人物が、生垣で座り込んでいる事だけだった。



「ミスタ・コルベール! 私の使い魔は何処ですか!?」



後ろから見ても通常とは違った雰囲気を感じ取ったのか、かなり切羽詰った色を含んでいる声がコルベールの後ろから飛んでくる。

ピンクの髪をなびかせながら、現れた姿はどう見ても『ゼロの使い魔』のメインヒロインであるルイズ・フランソワーズ。

軽く息を切らせてコルベールに並び、同じ方向、つまり俺を見た瞬間に怪訝な表情となった



「……誰?」

「何だ? 何だ?」



生垣の前で固まったコルベールとルイズを不思議に思った生徒達が、野次馬根性を発揮して覗き込んでくる。

視線の先に居るのは、ハルケギニアの住人にとって見慣れない服を着た人物。

貴族はマントを付けていると認識を持っている生徒達には、自分達よりも地位が下の平民に見えた。



「ルイズ、『サモン・サーバント』で平民を呼び出してどうするの?」

「流石はゼロのルイズだ!」



いち早く現状を認識した一人の言葉を皮切りに、生徒達の間で笑いが広がる。



「どうせ、もしもの時の為に平民を隠しておいたんだろ?」

「ありえるよな」

「なっ、ちが――」

「それは違いますぞ」

「ミスタ・コルベール!?」



屈辱に塗れるルイズも謂れの無い疑いに反論しようと顔を上げた時、生徒の言葉を否定したのは意外にもコルベール。



「ミス・ヴァリエールは確かに、あの少年を『サモン・サーバント』で呼び出した。それは私が保証しよう」



昔はやり手の軍人であった為、爆発の中から吹き飛ばされて召喚された人物が生垣に飛んでいくのがシッカリと見えていた。

その上、大貴族の進級が掛かっている事もあり、必然と注意深く観察をしていたので見間違える筈も無い。

故にコルベールはルイズ自身が弁明しても信用されないと感じ、客観的事実を述べたのだ。



「で、でも、平民が呼び出されるなんて……」



太鼓判を押されても納得出来ないのが召喚した本人。

望んでいた様な使い魔では無い事に落胆し、一抹の望みを掛けてコルベールへ願い出る。



「ミスタ・コルベール、もう一度やらせて下さい!」

「それは出来ない」

「ど、どうしてですか!?」

「使い魔は召喚された。人間であっても変わらない」

「そんな……」

「さっ、儀式を続けなさい。ミス・ヴァリエール」

「………………はい」



コルベールは縋る視線を受けても、伝統を盾に再召喚を認めない。

どれだけ言っても要求を受けてくれない雰囲気を悟ったルイズは力無い足取りで、いつの間にか立っていた召喚してしまった人物に近寄った。

幾ら使い魔として召喚しても相手が人間であるのに加え、男である事で羞恥に顔を染める。



「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんな事されるなんて、普通は一生無いんだからね」



恥ずかしさを誤魔化しつつ言い訳を並べた後、契約の為の呪文を唱えた。



「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラ・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」



そして、目を瞑った状態で顔を近づけて来たと思ったらキスをされる。

その唇は柔らかく、プリプリとした弾力を感じた。

唇が接触するまで近付いた所為で、良い匂いも漂ってくる。

美少女のキスに内心、舞い上がりそうになった瞬間に頭の中で警告が鳴り響く。

言葉で知らされるのではなく、全身が泡立つ不快感が湧き上がってきたのだ。

選択の幅を広げる為に時間的な感覚が大幅に伸ばされた中、ジワジワと身体の中を何かが浸透していく感覚が襲ってくる。

いつの間にか持っていた知識として、それは洗脳の魔法と直感的に理解した。

当然の事ながら洗脳されては困るので、同じ様に何故か知っていた知識で対抗する。

身体の中を駆け巡る魔力的な何かが俺の意志を汲み取り、殆ど自動的に洗脳の魔法を打ち消した。

しかし、外見的には何も変わらず、身体に見かけだけのルーンが刻まれていく。



「むっ、熱っ……」

「すぐ終わるわよ。『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ」



熱いと呟いた事に、然程心配そうにしていない感じで言い放つルイズ。

かく言う俺も、そんなに転げ回る程に熱さを感じている訳でもない。

対策を打った所為で眼に見える物が出てくるまで時間は掛かったものの、問題なくルーンが浮かび上がってきた。

その場所は例によって左手の甲。

才人とは別人であっても、原作と同じ様にガンダールヴとして契約された様だ。



「ルーンを刻まれるのは痛みを伴うが、ここまで平然としているのは案外辺りかもしれないぞ?」

「でも、平民を使い魔にしたってどうしようもないですよ。ミスタ・コルベール」



殆ど痛みを感じていないで平然としていたら、コルベールに良さそうな評価を受けた。

使い魔を褒められ、契約も上手く言った事に心成しか安堵していたルイズは微妙な表情で呟く。



「ふむ、珍しいルーンだな」

「はぁ……、もっとこう、……マンティコアとかが良かったわ」

「さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」



コルベールの号令を機に、生徒達は教室へ戻っていく。

ついでとばかりに平民と契約した事を揶揄していき、ルイズも応戦して騒がしくなってしまった。

一通り言い争いが収まった後でも怒りは収まらず、今度は矛先が原因であるこっちへ向く。



「あんた、なんなのよ!」



苛立つ機嫌を隠そうともせずに睨んでくるも、俺には言う事があった。



「…………魔法を使いたいのか」

「っ!」



そう大きくない声で言ってみたが、ルイズは屈辱を滲ませながら視線を鋭くする。



「あんたには関係ないでしょ!!」



普段から失敗ばかりで、周りの人間を見返そうと意気込んだ使い魔の召喚も平民を呼び出すという失態。

更に自分よりも下と認識した存在から、同情した雰囲気で言われた事に当り散らすルイズ。

元から低い怒りの沸点は、今はより低くなっている様だ。



「魔法なら、使える様に出来るぞ」

「ふざけないで! 平民に何が出来るって言うのよ!」

「俺が触れば、お前は魔法を使える様になる」

「な、何を言ってるの!?」



どれだけ怒鳴られても表情一つ変えない努力をした俺に淡々と言われて、僅かに狼狽するルイズ。

今まで平民に罵声を浴びせると恐怖の視線を向けられていた事を思えば、何処か不気味に映った。

その上、自信満々に断言してきた為に、言っている事が本当なら縋りたいと心の奥底で思ってしまう。

貴族のプライドは当然あるのだが、それ以上に魔法を使えるかもしれないと言う魅惑に駆られそうになった。



「……ち、ちなみに何処を触れば魔法を使えるのか聞いてあげるわ!」



頼みたいけど頼めない雰囲気を出す表情になっているが、あくまで傲慢な貴族らしく、上からの物言いで聞いてくる。

原作のルイズを知っていると、プライドが大きく揺れている事が丸分かりだ。



「触るのは尻か股間、または胸と唇を含めた口内だ」

「そ、そんな所触らせる訳無いでしょ!!」

「……お前の魔法を使いたいという願いは、その程度で諦められる物なのか?」

「っ! そ、その程度って……」



あえて挑発する様に言った所為で息を呑んだルイズは、小さく反論をしていた。

魔法云々は『使い魔のルーン』に付属されていた洗脳の打ち消した時と同じ様に、いつの間にか知っていた知識から導きだした事だ。

それによれば、俺の身体からは<魔力素>という物が出ており、これを取り込んだ人間は思い通りに魔法が使えるらしい。

しかも俺が扱いに慣れれば『誰に』『何処から』取り込ませるかを完全に制御できる、と思われる。

実際に試すまでは何とも言えないが、使い魔の契約による洗脳の効果に抵抗できた事を考えると、信用するに値するだろう。

未だ平民の男に身体を触られる事を拒否するか、提案に乗るかを迷っているルイズの返答を促す。



「もし触って使えなかったら、奴隷にでも何にでもなってやるよ」

「…………その言葉、本当ね?」

「あぁ、男に二言は無い」

「…………分かったわ」



こちらから不利な譲歩をする事で、承諾を導き出した。

返事までにかなりの間があり、獲物を狩る鷹を思い出す視線で睨み付けられれば、失敗したらと考えるば恐怖しか浮かばない。

おそらく頭の中では、失敗した時の俺がボロ雑巾よりも酷い状態で転がっているだろう。

ここまで来たら、自分の頭の中にある知識を信じるだけだ。



「何処を触れば良いんだ」

「うぅ……、お尻で良いわよ」



キスをした時よりも羞恥に顔を染めながら、後ろを向いて尻を僅かに突き出してくる。

自信の無い胸は避け、唇は口に中へ指を入れられる事を嫌がり、股間は論外として残ったのがここだった様だ。

態々マントを横に退かして、短いスカートに包まれた小さな尻は震えている。



「じゃぁ、触るぞ」

「貴族の私にこんな恥ずかしい思いをさせて、もしも魔法が使えなかった時は覚悟しなさいよね!」

「はいはい」



肩越しに俺を威嚇する言葉を適当に返しつつ、スカートの中へ手を入れる。

しかし、それで慌てたのは当のルイズ。



「ちょっ、ちょっとスカートの上からでも良いでしょ!」

「直接触らないと意味が無いんだよ」

「うっ、くぅ……」



是が非でも魔法が使いたいルイズは、まさに苦汁を舐めた表情で手を受け入れて視線を前へ向けた。

スカートの中は余り蒸れておらず、羞恥で僅かに上った体温を感じるだけだ。

手がショーツに包まれた小さな尻に接触すると、ルイズの背中が大きく跳ねる。



「っ!」

「少しの間は我慢しろよ」

「分かってる、わよ!」



後ろから見える耳は赤く染まり、どれ程恥ずかしがっているかを明確に現していた。

見かけ通りの小さな尻は、我が物顔で動き回る掌に殆どすっぽりと納まる。

手触りの良い素材で作られているショーツを横へ避けてから、生の尻肉を掴む。

全体的に発達の乏しい身体をしていても、柔らかい感触を返してきた。

指に返す弾力は張りがあり、肌もスベスベで触り心地が良い。

スカートに隠れていても、軽く弾けばプルンと元に戻る事を空気の変化で感じ取れる。

流石に肛門まで指を這わせる事はしない。

最初は然程ルイズに興奮してはいなかったが、実際に触ってしまうと思ったよりも興奮してくるものだ。

美少女が羞恥に震え、自ら尻を突き出している姿と合わさった相乗効果で十分に性欲が湧き上がってきた。

手から送られてくる感触を思う存分楽しみつつも、ボロ雑巾以下にされない為にも魔力素を送り込まないといけない。

尻を揉む動きと同調しつつ、いつの間にか感じ取れる自分の身体の中に流れていた物を送り込んでいく。



「くっ……、うっ……」



確かに魔力素を送り込んでいるのだが、ルイズ自身は気が付いた様子も見せない。

恥ずかし過ぎて余裕が無い所為かも知れないが……。

そして、思う存分に指を這わした後、名残惜しくも手を抜いた。



「これで、魔法が使える様になっている筈だ」

「使えなかったら覚えてなさいよ!」

「使ってみろって」

「くっ!」



どんなに睨んでも怯まない俺に、赤くしたままの顔で悔しそうな表情を浮かべた。

それから正面を向き、半ばやけくそ気味に呪文を叫んだ。



「『レビテーション』」



帰路に付いていたコルベールがこちらを振り返る程に大きい声。

それと同時にルイズの身体は浮かび上がる。



「へぁ!?」



いつもの様に爆発の衝撃が来るかと思っていた所で浮遊感が襲い、小さな身体は結構なスピードで斜め前方へ飛んでいった。



「きゃ~~~!!」

「ミス・ヴァリエール!!」



初めて飛んだ事でパニックになり、コントロールを失って放物線を描きながら落ちていく。

このままでは確実に大怪我をするという状況で、コルベールは咄嗟にルイズの身体へ『フライ』の魔法を掛けた。

お陰で落ちるスピードが緩和され、ゆっくりと地面に軟着陸を果たす。

初めて魔法が成功した事と空を飛んだ事実に、ルイズはそのまま座り込んで呆然としていた。



「ミス・ヴァリエール! 大丈夫か!?」

「ぇあ、だ、大丈夫です、ミスタ・コルベール。有難う御座います」

「いや、怪我が無いなら良いが……、魔法が成功したのかね?」



怪我をさせずに着陸させても、立ち上がらない事を心配してコルベールは声を掛ける。

ルイズは話しかけられた事で何とか意識を回復させたが、改めて魔法が使えた事を言われて思わず眼の端に涙が溜まり始めた。



「はい……、『レビテーション』が使えました」



感無量の様子で言っても、教師としてコルベールは確認しないといけない事がある。



「それは、『どうやって』かな?」

「えっ!?」



魔法を教える教師として、幾ら教授しても魔法を使わせる事が出来なかったのを考えると当然の疑問。

しかし、聞かれた本人にとっては思わぬ質問でもあった。



「つ、使い魔のお陰です!」

「どんな方法かを聞いても――」

「だ、駄目です。ミスタ・コルベール!」



咄嗟に使い魔の協力で使えたと答えてしまうが、具体的な方法を教えられる筈も無い。

そりゃ、『尻を揉ませたら使える様になりました』とは言えないだろう。

明らかに何かを隠す仕草と、分かり易い態度に疑問を感じるコルベールはチラリと俺を見る。

如何にも怪しく、研究者としても追求したい所だが、魔法を使った本人が必死に隠そうとするのなら何も聞けない。



「……ミス・ヴァリエール。身体に異変は感じないのだね?」

「え、えぇ。大丈夫です」

「それなら良い」



そして、座っていたルイズを立たせると、教師として言いたかった言葉を言った。



「初めて魔法を使えたね。おめでとう」

「あ、……有難う、御座います。ミスタ・コルベール」



周りからゼロと蔑まれ、公爵家の娘としてのプレッシャーもあり、誰からも認められなかったルイズが始めて正面から賞賛を受ける。

その感動は計り知れず、平民に尻を揉まれた事等一気に吹き飛ぶ程の喜びを感じた。

静かに涙を流すルイズを残し、自らも教室へと戻るコルベールは言葉を掛ける。



「今日の授業はもう無いから、使い魔との触れ合いをしておきなさい」

「ぐすっ、……はい」



そうして去って行った。

残されたルイズは、離れた場所で暇を持て余しながら立っていた俺に近付いてくる。

もじもじと顔を伏せたかと思ったら、顔を赤くさせて気丈に振舞ってきた。



「あ、あああ――」

「よく出来たな」

「あっ……」



平民に礼を言うのは貴族としてのプライドが許さないのか、『あ』から先に進んでいない。

今まで意識して保ってきた無表情を消して、普通の笑顔で褒める。

それを見たルイズはポカンとした後、今度は詰まる事無く言葉を続けた。



「ありがと……」



顔を背けたままでも分かるのは、赤い頬と嬉しそうに微笑む口元。

ルイズは無表情で淡々とした態度に若干の恐怖を感じたが、普通の表情に戻せば別に冷酷な人間でない事は察する。

この先に俺が寝泊りするのはルイズの部屋。

しかし、不気味と思われる状況を放置して、嫌がれば馬小屋にでも泊まらせかねない。

少しでも警戒を解いておかないといけなかった。



「ミスタ・コルベールも触れ合いをしなさいって言ってたし、私の部屋に戻るわよ」

「へいへい」

「返事はちゃんとしなさい」

「分かったよ」

「……ふん、まぁ良いわ」



俺の返事はとても主人に返す物ではないものの、やはり魔法を使える様にしてくれたとの思いがある為、煩く言う事も無かった。

帰る道中で細かく『フライ』と『レビテーション』を繰り返し、嬉しそうに遊んでいたのは微笑ましい。











部屋に戻り、お互いを知る為に問答と言う形で会話を交わして行く。

その過程で俺が元居た所に付いて話していたが、答えは――



「そんなの信じられないわ」



――の一言だった。

言葉で月が一つやら携帯やメールがあって、国の端から端に情報が一瞬にして分かると説明しても信じられないだろう。

物的証拠が無い状態で『貴方が想像も出来ない物が普通にあります』と言われても妄言としか思えない。

ましてやルイズは異世界人。

国が違えば常識が全く違うのに、世界その物が違うのだ。

俺の服の素材を除けば、信じる理由も確証も無い。



「じゃぁ、あんたの魔法を使える様になる……魔法か技術か知らないけど、それも普通にあるの?」

「いや、それは召喚された時に使える様になった」

「へぇ、そうなんだ?」

「あぁ」



別に嘘を付く事でもないので正直に言う。

さも当然とばかりに魔法を使える様になると言い出したにも拘らず、召喚された時に手に入れたと聞いて意外そうな顔をしたルイズ。



「その割には自信満々に言ってきたのは何なのよ?」

「不思議と確証が持てたんだよ」

「それまで一切無かった物に対して?」

「不思議とな」

「ふ~ん……」



俺の言葉を聞いているルイズの表情は最初と違い、胡散臭そうな物は浮かんでいない。

実際に魔法を使えたので、能力に付いて余り疑いを持っていないみたいだった。



「まぁ、使い魔は召喚主に合ったのが呼ばれるらしいから、私にはピッタリかしら?」



ボソッと確認する様に呟くルイズ。



「……ねぇ、魔法を使う為には絶対に、……その、……おっ、おおお、お尻を触らせないといけないの?」

「尻が嫌なら別に胸でも股間でも良いんだけど」



やはり魔法を使う為の条件を改めて口に出すと恥ずかしいのか、真っ赤になって聞いてくる。



「嫌じゃないって言うか、他は絶対に駄目よ!」

「それは残念だね」

「淑女は無闇矢鱈に身体を触らせない物なのよ! それが平民相手なら尚の事よ!」



大きな声で言うものの、既に尻を思い切り触らせてしまっている。

俺にとっては、どうせこれからもルイズの身体を弄る事になるので、貴族の価値観は興味が無い。

恥ずかしがる姿を見ながら犯すのも一興かも知れないが……。

ともかく、嘘にならない程度に濁した事実を教えておく必要もある。



「胸やら尻やらが一番魔力素を吸収させ易いんだよ」

「他は駄目なの?」

「別に手でも良いけど、吸収率が悪いから一日中手を繋いでないといけないぞ?」

「……それは駄目ね。変な噂でも立ったら困るし」

「まぁ、そうだよな」

「でも、魔法を使う感覚はもう覚えたし、触って貰う必要も無いわよ」

「吸収させた魔力素が残ってただけだよ」

「ふふ~ん、どうかしらねぇ……」



眼を細めながら、してやったりと言いたそうな顔をするルイズ。

何を隠そう、部屋に戻って来るまでに細かく魔法を使っていたのは感覚を覚える為。

一番上の姉であるエレオノールに魔法を習っていた時は、とにかく感覚が一致するとしか教えられていない。

漠然とし過ぎる内容は、虚無のルイズには分からない。

しかし、正常な状態で魔法を使う機会が降って沸いて来たので、その内に感覚を覚えて置こうと言うつもりだった。

思惑通りに身体へ経験として刻み、その実感が先程の自信満々な態度に繋がっている。



「まぁ、次の機会に確かめてみれば良いよ」

「残念だったわね? ご主人様の魅力的な身体に触れなくて」

「…………」

「……な、何よ、その眼は!」

「別に」

「くっ!! …………御免なさい」



哀れそうな視線を流したら何処か狼狽して悔しそうに顔を歪めた後、しぶしぶと言った風に謝ってきた。

自分の身体が貧相なのは自覚しているのか。

会話をするのに忙しくて時間を気にしていなかったが、窓の外はすっかり暗くなっている。

夕食はシエスタではないメイドに言って持って来させたので、腹は減っていない。



「それで、俺は何処に寝れば良いんだ?」

「そこに藁があるでしょ。そこに寝なさい」

「……あぁ、もしかしたら精神的な負担で能力が使えないかも知れないなぁ」

「だ、大丈夫よ!」



如何にもワザとらしく言ってみたが、根拠も無く大丈夫だと言ってくる。

しかし、ジッと沈黙を保ちながら見つめていると妙に自信満々だった表情から、徐々に確信が落ちて行く。

魔法を使う感覚を覚えたと思い込んでも、『もしも使えなくなっていたら』と言う考えがルイズの心の中に湧き上がったらしい。

自分を信じ切れずに根負けし、大きく間を置いて妥協した。



「………………ベッドで寝ても良いわ」

「おっ、本当か?」

「ただし!! 私に指一本でも触れて見なさい。その時は『レビテーション』で空の彼方まで吹き飛ばしてあげるわ!」

「まぁ、ルイズが魔法を必要としない限りは触らないよ」

「約束よ!」

「はいはい」



今の性格は酷い物であっても、ルイズは正しく美少女。

常識的に考えて、手を出さない訳が無い。

尻を触って以来、ルイズの身体でも性欲を感じられると判明している。

実は今も部屋に篭った少女特有の匂いを感じて、陰茎は大きくなりつつあった。



「明かりを消すわよ」

「はいよ」

「それ以上近寄ったら――」

「分かってるって」



警戒する猫の様に威嚇してくる。

ベッドからもルイズの匂いが漂ってきており、シーツを顔まで掛ければ全身が少女の匂いに包まれた。

暗くなった部屋の中で、性行為をするに十分な成長をした男女が同じ所で寝る。

普段なら絶対に有り得ない事態に、ルイズの緊張は最高潮になっていた。

お互いが背を向けている為に見られていないが、顔色は尻を触られたと同じ位に赤面している。

心臓も破れそうな程に激しく脈打ち、念の為にと杖を持っている手にはじっとりと汗を掻く。

背中から聞こえる僅かな音でさえ、身体をピクンと反応させた。

しかし、そんな緊張感は長続きしない。

ルイズは召喚の日を迎える前日は、不安で殆ど眠れていなかった。

つまり二日続けて精神的な緊張を受け続けていた事になる。

そんな疲れた状態にあっては、どんなに警戒心を持っていても自然と瞼は落ちてくるもの。

幾ら抵抗をしても、睡魔に勝てる筈は無かった。



「……すぅ~……すぅ~」

「もう、寝たのか……?」



程無くして微かに聞こえる寝息は、一定の間隔で繰り返される様になる。

肩越しにルイズを見やれば、肩は規則正しく上下に動いていた。



「よいしょっと……」



なるべくベッドを揺らさない様に身体を起こす。

ルイズには聞かれなかったので言わなかったが、魔力素には色々な効果がある。

『相手に魔法を使わせられる』他に、『体調を正確に知る』『怪我や病気であれば治す』。

そして、これが一番大事であり、最も必要な『深く魔力素を吸収させると相手の身体や意志を操れる』特性。

しかも、魔力素は普通に立っていても、本当に僅かに漏れた物が近くに居る人間へ吸収されてしまう。

魔法を使える様になるのは一定の量が必要だが一晩同じ部屋に居るだけで、一瞬の無意識ぐらいは簡単に操れる。

つまりはいつも一緒に居る使い魔の立場を利用すれば尻を触らなくても、ルイズは将来的に思い通りの魔法が自在に使える様になるのだ。

その頃には意志を思い通りに操り、好き勝手犯しているだろう。

普段は口煩くヒステリー持ちと言えるルイズであっても、外見は素晴らしい程の美少女。

自分の思い通りに操れるなら、真っ先に候補へ上がる。

キスをして尻を触り、その上同じベッドで寝た事で、俺の興奮は右肩上がりで留まる事を知らない。

魔力素が微妙に残っているルイズは完全に眠り、更にそれがとても深い物だと特性が教えてくれた。

悪戯をするには持って来いの状況だ。

ジワジワとルイズに近寄る。



「くぅ~……くぅ~……」

「寝顔は可愛いよな。黙っていても可愛いけど」



若干の緊張から微妙に震える手で肩を掴めば、それは思った以上に小さく、嫌でもルイズが少女である事を教えられた。

ついでに魔力素を身体の中へ送り込んだ。

尻やら股間を触るよりも吸収されていく感覚が少なくとも、今は朝まで眠って貰えばそれで良い。

送り込んだ魔力素で睡眠を操り、多少の事では起きない様にする。



「よっと……」



横向きに寝ているルイズの肩を掴んで仰向けに変えた。



「うぅ~ん……」



体勢を変えられても呻くだけで起きはしない。

掛けられていたシーツを剥ぎ取り、下着姿を曝け出した。

ピンクの透けるキャミソールの下には、同じくピンク色の乳首がひっそりと息衝いている。

白いショーツに包まれている股間は、肉厚の大陰唇が土手を作っていた。

手に持っている杖を取り上げてから、現状で操れる限界を調べてみる。



「ルイズ、眠ったままで今着ている物を脱げ」

「くぅ~……くぅ~……」



命令をされたルイズは指を微かにピクピクと動かした程度で、他は何の変化も無い。

やはり魔力素を身体に送り始めた初日である為に、余り大きな動きさせられなかった。

指一本すら思い通りに出来ないのであれば、痛み等の感覚も制御出来そうに無く、破瓜で痛みを感じる事を思い浮かべれば現状では犯せそうもない。

欲望に耐え切れず入れたとしても、処女を失った瞬間に飛び起きてしまうだろう。

その後は、きっと物理的に消される。

犯せない事に対しては元々期待もしていなかった分、落胆は少ない。

仕方が無く睡眠を維持させたままで、ルイズの身体を弄り回す程度に押さえる事にする。



「じゃ、脱ぎましょうね、ご主人様」



ルイズは起きている時には絶対に言わない様な言葉を掛けつつ、キャミソールを捲り上げる。



「ほう……、綺麗な身体だな」



魔法が使えなかった分、知識で補おうとしていたルイズの肌は白い。

外に出ても只管魔法を唱え続け、走り回る事もなかった所為で日に焼ける事が無かったのだろう。

宿敵であるツェルプストーが褐色であるのも、嫌う原因かもしれないが……。



「う~ん、見た目よりは胸があるかも……?」



実際にルイズの平坦な胸に手をやってみると、思ったよりも柔らかい感触がある。

てっきり肋骨の手触りしかないと思っていた。

小さな胸に上から手を置き、少し力を入れて揉む。

指を曲げる程の大きさは無くても、形と柔らかさはちゃんと存在を主張していた。

手を腹の方向へ下げ、乳首を擦る。

指の間に挟まった感触を受けてから挟むと、刺激で柔らかかった乳首が少しずつ尖り始めた。



「んっ……」



規則正しかった寝息に吐息が混ざる。

性的な反応ではなく、乳首を擦られて反射的に出てしまったのだろう。

そのまま手を下へ持っていき、脇腹と骨盤を通ってショーツを下げる。



「やっぱり、まだ生えていないのか」



月の明かりに照らされた股間には陰毛が一本も無く、盛り上がった大陰唇の中心にスジが通っているだけだった。

淫核も埋もれたままで姿が見えない。

ショーツを完全に脱がせてから、M字に足を広げても中心に走る筋は僅かに開く程度で留まった。

人差し指で突いて、ぷにぷにと返って来る弾力を楽しんだ後にスジを開いて膣口を曝け出させる。



「ふっ……ん……」



ルイズにとっては正真正銘、人生で始めて秘裂の中が外気に触れる。

キャミソール一枚で居ても寒くない季節であっても、流石に本能的な防衛本能が刺激されて身体を震わせた。

股間を触られる感覚から逃げようと身体を動かそうとするが、足を固定して逃亡を防いだ。



「うぅ~ん……」



自分の体勢を変えられない所為で、寝苦しそうな声を出すルイズ。

しかし、今回は犯せないのでこれ以上は進めない。

このまま愛撫を繰り返しても、挿入したい欲求が膨れ上がって危険だ。

襲ってしまう前に一旦身体を離し、ベッドの上で膝立ちにルイズを見下ろした。



「……流石、メインヒロインと言った所か」



眼下には無防備に全裸で眠っている美少女が、足を開いて性器を丸出しにされている。

卑猥な格好であるのは間違いないが、月明かりに照らされている所為で何処か神秘的にも見えてしまう。

入れられないと言うのなら嬲るだけだと仰向けで寝ているルイズの隣へ寝転がり、横抱きにする格好で密着した。

背中の下から手を回して、胴体を抱く様に胸を触る。

残った手で陰茎を開放してから、サラサラの肌をしている秘裂へ指を這わせた。

それからルイズの顔を俺の方へ向けさせ、小さく寝息が漏れている唇へ口付けをする。



「んむっ……」



硬い陰茎を太股に擦り付けつつ、小さな乳首を指で転がす。

開かれた足の中心にある秘裂を大陰唇ごと弄び、口内を陵辱していく。

まさに全身でルイズを味わい、性欲の餌食にする。



「んっ、はぁ、あむぁ……」



柔らかく小さい乳首を指の腹で転がして行けば、今度は性的な反応を含ませて硬く尖ってきた。

コリッとした感触を弄び、親指と人差し指で摘む。



「んむぅ!」



大陰唇を左右から摘めば、圧力でスジを深くさせる。

指を秘裂に挿し込み、漏れ出した愛液を塗して行く。

ヌルヌルの体液を小陰唇に馴染ませる様に動かして、性器からも性的な快感を引き出す。

今はまだ包皮に護られている淫核は、指先で引っ掻きながら刺激を送った。



「ひぅ! んぁ……ん」



身体の中で最も快楽を感じる淫核を弄られたルイズは、俺の口内へ悦声を漏らす。

秘裂を人差し指と薬指で開き、中指を興奮で厚くなった小陰唇に愛液を絡ませてから処女らしく狭く硬い膣口を探る。

滑りのある体液を分泌させているが、突っ掛かりを感じて指先すら入りそうに無い。

それでも近い内に陰茎を突き入れる為に、少しずつ膣口に指を入れて異物に慣れさせる。

こうして性感帯を弄られ続けるルイズの身体は、徐々に快感を溜め込んでいく。

白かった肌には赤みが増して眉は顰められ、合わせている唇からは熱い吐息が漏れる。

ルイズが嫌う蛙の様に広がっている足もピクピクと震え、眼に見える反応が大きくなってきた。

太股の接触している陰茎も、カウパー液を漏れ出させて白い肌を汚す。



「んっ、あっ、んん」



口を塞がれている所為で聞こえてこない悦声も、乳首と秘裂を弄る程に大きくなる。

流れ出る愛液でヌチョヌチョと音が聞こえてくる頃になると、皮に護られていた淫核も顔を出していた。

柔らかい女性器の中で唯一固くなった箇所は触っている中でも目立ち、自然と集中的に弄り回してしまう。



「んむっ! んっ!」



触れば触る程にルイズの腰は上下に動き、自然と愛液も周囲に飛び散った。



「ひぅん、あっむ、んくぁ!」



腕の中に居る美少女が、自分の愛撫で全身を跳ねさせていると気分も盛り上がって来る。

カウパー液でヌルヌルになった太股で擦られた陰茎は、徐々に精液を溜めていく感覚を睾丸から送られていた。

完全にルイズの身体を使ったオナニーになってしまっているものの、おかずに直接触れて匂いも感じられるお陰で、自分だけでやるのとは快感の度合いが圧倒的に違う。



「んむっ! んんっ!」



合わせている唇からは悦声と一緒に唾液が流れ出し、枕を濡らす。

全身から送られてくる快感は、絶頂間近まで押し上げられていた。

そして、淫核に指が掛かった瞬間にルイズは一番の悦声を出して、腰を高く上げて震わせると同時に潮を噴く。



「んんっ!!」

「おぉう!」



激しく揺れた太股に擦られた陰茎は絶頂の切欠を送られてしまい、精液を吐き出す。

カウパー液で汚れていても白くサラサラだった肌に、白濁した熱い体液が噴きかかった。

この世界で始めてした射精は昼にルイズの尻を触って溜まっていた所為か、量が心成しか多い気もする。



「うっ……はぁ……はぁ……」

「ふぅ……」



眠っていても絶頂の余韻で、表情が緩んでいるルイズ。

軽いブリッジの状態になった腰は、未だに少ない量の愛液を噴出している。

弄っていた乳首も落ち着き、どれだけ摘んでも硬くはならない。

荒く息を吐き出す口は俺が口内を舐めていた所為で舌が半分食み出し、情けなくも卑猥な表情になっていた。

思ったよりも短い絶頂を経験したルイズの腰は、ベッドへ沈み込んで時折小さな痙攣を起こして余韻に浸っているかの様だ。

とりあえず射精をした満足感を感じつつも身を起こして、後始末へと取り掛からないといけない。

流石に最初の夜に痕跡を残してしまうのは駄目だ。

ルイズの股間辺りを見てみると潮を噴いたベッドは濡れているが、大した量でもないので朝には乾いているだろう。

問題は太股に掛かった精液だ。

突然、召喚されてしまっているので、拭く物が何も無い

粘度が高く、ベッドへ落ちているのが少量であり、染みになっていないのが不幸中の幸いだが、ぼやぼやしていれば普通に落ちてくる。



「あぁ……、ルイズの着替えで拭いておくか」



俺の服は一着しかなく、当然の事ながら拭ける筈も無い。

その上にハンカチやティッシュも持っていないとなれば、選択肢は一つしかなかった。

洗濯用として置かれていた籠を漁り、使用済みのショーツを取り出す。



「明日ちゃんと洗うから良いよな」



聞いていない事は知っているが、言い訳が自然と出てしまった。

汚してしまう事に対しての、せめてもの償いとして唾液で汚れている顔と枕から股間とシーツまで拭ける所まで拭いてやる。

最後に精液を綺麗にしてショーツとキャミソールを着せれば、後始末は完了だ。

原作を知っている俺からすれば、ルイズは性的な事柄には疎いイメージがある。

性行為は知っていても、具体的に何がどうなれば子を孕むかどうかは知らない……と祈っておく。

そして精液の匂いは知らない筈。

少なくとも接点が無い。

逆に知っているとするなら、伝統を異常に気にするトリステインの貴族として問題だ。

ルイズぐらいの年齢での結婚が珍しくなくても、実際にするとなれば母であるカリーヌがまだ早いと止めるだろう。

公爵家の処女は、それ程までに貴重かつ重要なのだ。

そんな感じで、多少精液の匂いが残っていても大して気にはしないだろう。



「ん~、終わったかな?」



一先ず見える所は全て綺麗にした。

最後にルイズの身体に残っている魔力素を使って、簡単な暗示を掛けて今日という日を終える。

性的に満足出来たとは言えないが、楽しみを先に残しておくのも一興。

明日からは楽しい日々の始まりだと期待に胸を膨らませながら、襲ってきた心地良い疲労と眠気に身を任せた。





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