その2



翌朝、目覚まし時計は無いが、差し込んでくる朝日の眩しさで眼が覚める。



「ん……んぁ~~……、もう朝か……」



見知らぬ天井に一瞬だけ戸惑ったが、直ぐに『ゼロの使い魔』の世界に召喚された事を思い出した。

寝ぼけたままで隣を見れば、メインヒロインの美少女が眠っている。

とりあえず仕事として起こさなければならない。



「お~い、起きろぉ」

「んん~……」



声を掛けながら肩を揺さぶってみれば、すやすやと平和に眠っていた表情が迷惑そうな物に変わる。

それでも手を動かし続ければ、薄っすらと眼を明けた。

焦点の合っていない視線が俺の顔へ止まると、驚きながら後ずさる。



「だ、誰よあんた!?」

「自分が召喚した人間の事も忘れたのか?」

「あ、あぁ……そうだった。平民を召喚したんだった……」



改めて平民を召喚した事実に肩を落とすも、魔法も使えた事を思い出して、すぐにやる気が蘇った。



「服取って」



召使に用件を申し付ける口調で、命令をしてくるルイズ。

しかし、昨日の夜に掛けた暗示が効果を発揮するかが重要なので、俺が服を取る訳には行かない。



「いや、ルイズの方が近いんだから自分で選んで取ってくれよ」

「むっ、昨日メイドに使用人らしい食事を用意する様に言ったのに、そんな事を言って良いのかしら?」

「食事すらまともに取れなかったら、俺の能力が消えるかもしれないけどな」

「ぐっ……」

「それ以前に、俺を使用人扱いして困るのはルイズだろう」

「……どう言う事よ」

「他から見れば召喚出来なくて平民を連れてきたと思われるぞ?」

「なっ! あんたが出てきたんだから、召喚も契約もちゃんと出来てるわよ!」

「でも、その場に居たクラスメイトですら平民を連れてきたとか言ってただろ」

「………………そうね」

「同じクラスの人間でもそう言うんだ。その時を見ていない他のクラスや違う学年だったら簡単に信じられるぞ」

「…………」

「『公爵家の肩書きを使って平民を使い魔にした』『それで落第を力尽くで回避させた』ってな」

「くぅ……」



事実ではなくとも公爵家の立場を乱用したと言われてしまっては、自分だけではなくヴァリエール家に迷惑が掛かる事は理解できている。

幾ら証人が居ても、実際に召喚された人物が居ても、地位の高さを妬む貴族は嬉々として名に傷が付く方向で攻め立ててくるだろう。

そもそも、ルイズは決して馬鹿ではない。

切羽詰っておらず、逆上していない冷静な思考では、客観的な位置で物事を考えるだけの頭の良さを持っている。

それの足を引っ張っているのが『魔法を使える貴族としての固定概念』と『魔法を使えないプレッシャー』だ。

これらが無ければ、少なくとも望む物を貰う代償として、初対面の怪しい男に尻を触らせないだろう。



「だから、俺の事を使用人として扱うのは止めておいた方が言いと思うぞ?」

「じゃ、獣の使い魔の扱いをすれば良いじゃない!」

「そうじゃなくてだな……」

「だから何なのよ」



一見イライラした物言いだが、魔法を使えないコンプレックスを消して貰った恩がある事で、平民の話を聞く余裕が生まれていた。



「立場はともかく、使用人と思われなければ良い」

「……どういう事?」

「ルイズが今一番回避する必要があるのは、公爵家の肩書きを使って無理を通した事だ」

「そうね」

「この世界は普通の使用人だったら、主人に対して絶対服従が常識だろ? 平民なら尚更」

「平民の使用人が貴族に逆らうなんて命知らずの馬鹿ぐらいね」

「だから、俺はルイズの意見や要求に対して、適度に逆らったり文句を言ったりする」

「それじゃ、使用人じゃないわよ!」

「ほら、使用人じゃないと思われた」

「あっ……」



普通にしていた思考を改めて指摘されルイズは、ポカンと口を開ける。



「うむむ……」

「当たり前だけど、ルイズの立場や家の地位が悪くならない程度には従うよ」

「当然よ!」

「だからルイズも俺に対しては理不尽な事やら、八つ当たりはしないでくれよ」

「でも、使い魔って基本的には主人に絶対服従なのよ?」



したくも無い納得をして、伺う様に言うルイズ。

上目使いは可愛いが、ここで引いてもお互いに利点は無い。



「使い魔には出来る事しか命令し無いだろうよ。例えば水関係の使い魔に火を吹かせるとかしないだろ?」

「そんな事出来ないわよ」

「ルイズが命令する時は、使用人にさせる仕事以外の『人間の使い魔に出来る事』を命令すれば良いんだよ」

「……あんた、か、身体を、さ、ささ、触って魔法を使える様にさせる意外に何が出来るのよ」



ルイズは余程自分の身体に触れられる事実が恥ずかしい様だ。

しかし、俺に出来る事か……。



「……掃除に洗濯かな?」

「それじゃ、使用人と変わらないじゃないの!」



と、まぁそんなこんなで紆余曲折の末、暇な時は仕事として洗濯と掃除をする事となった。

たいして大変でも無いだろうと思うのと、暇を持て余してぼーっとしているだけでは時間の無駄でもあると考えた結果だ。

犯す対象をルイズだけに絞っていては、勿体無い。

この世界に来て真っ先に会ったメイドのシエスタに手を出すには、洗濯位の仕事をしていないと接点が持てない事も理由の一つ。

原作を思い出すに、サイトとの最初の会話が洗濯場であった筈。

ルイズの下着を洗いながら、下心を丸出しでシエスタに接点を持つ事になるのか。



「と言う訳で、服ぐらい自分で選んで自分で着てくれ」

「結局、服を出すのが嫌なだけじゃないの?」

「女の子のクローゼットを漁る趣味は無いよ」

「誰も見てないんだから、主人の命令ぐらい聞きなさいよ……」



ここまでルイズは透けるピンクのキャミソールに、ショーツ一枚の格好で会話をしていた。

流石に顔を向け合っている状態で、視線が薄く見えている乳首に行ってしまえば見られたと知られてしまう。

必死に視線を目に合わせておくのは、結構な精神力が要る作業だった。

葛藤を知らないルイズは、ぶつぶつ良いながらも自分で服を取りに良く。

俺と言えば魔力素の暗示が効いているのかどうかを観察しつつ、美少女の着替えを後ろから視姦するしかない。

着替えの為に自らの手で上げられていくキャミソールの下にある華奢な腰と肩は、日を浴びて綺麗な肌を浮かび上がらせる。

ショーツに包まれた小振りな尻は、左右に揺れながら情緒的な皺を作った。

そして最後の砦であった下着を下ろせば、一瞬だけ昨日散々弄り回した秘裂が見えた後、正真正銘の全裸になる。

後姿であっても少女の裸は興奮を誘う。

プルプルと揺れる尻を見ていると、すぐにでも手を伸ばしたい欲求が襲って来る様だ。

着替えを探すルイズは、態々クローゼットの奥の方からブラウスを取り出し着ていく。

少し窮屈そうに腕を通し、ショーツとスカートを履いてマントを付けると、俺の方へ振り返る。



「さ、朝食に行くわよ」

「お、おぉ」

「なによ?」

「何でもない」



クローゼットの奥から取り出したブラウスは、今のルイズにとって少し小さめの物だった。

昨晩の俺が寝る間際に残った魔力素を使って無意識を操作されたルイズは、いつも着ている物を身に付けたとしか思っていない。

暗示の効果は、『もう着られないブラウスを着てしまう』と言う物。

毎日同じ制服を着る行為は、何年もすれば殆ど無意識にしてしまう。

下着のキャミソールも着ていない所為で、胴体に張り付いた布の上からでも身体の線をハッキリと浮き上がらせている。

一番の注目は、やはり乳首。

興奮していなくても乳輪から盛り上がり、先端の膨らみまで見て取れた。

暗示で操作されたルイズは普通に着替えたと思い込んでおり、乳首が浮き上がっていても恥ずかしがる素振りが全く無い。

かなり軽い洗脳なので、誰かに言われればあっさりと気が付いてしまうだろう。

それ故に、俺が指摘する訳には行かない。



「ん? 何か変な匂いがするわね……」

「行かないのか?」

「行くわよ!」



廊下に出る際に漂っていた僅かな精液の匂いに眉を顰めるが、ルイズは正体が分からずに気にする事無く外へ出た。

二人揃って部屋の外へ出ると、殆ど同じタイミングで斜め向かいのドアが開く。

中からは長く燃える様な赤い髪を持ち、制服のボタンを大きく開いて胸の谷間を誇示した生徒が出てきた。

見るからにブラジャーを着けていないのに、ルイズのように乳首が浮いていない。



「おはよう。ルイズ」

「おはよう。キュルケ」



言わずと知れた<キュルケ・(略)・ツェルプストー>その人である。

原作では意外にルイズの事を気に掛けているが、代々の宿敵である為に険悪ではない程度に仲は悪い。

しかし、顔を顰めて嫌そうにしながらも普通に挨拶を交わしている所は、お互いの微妙に可愛いポイントではなかろうか。

本当に、救えない程に仲が悪ければ、視線すら合わせない。

キュルケは俺の姿に気が付くと馬鹿にした雰囲気で言葉を続けようとして、再びルイズへ眼を向けて服装に驚いた。

所謂、二度見である。



「ル、ルイズ、あんた何て格好してるの!?」

「何がよ……?」



てっきり使い魔が人間である事を言われると思っていたルイズは、突然話の矛先が自分へ向いた事に不審気な視線をキュルケに送った。



「ブラウスよ!」

「だから一体……っ!!?」



余りにも必死な言葉に身体を見下ろしたルイズは、自分がどんな格好をしているのかを初めて知る。

小さめのブラウスから浮かび上がる、慎ましくも膨らむ胸の頂点で存在を主張している乳首。

誰がどう見ても見間違う筈も無い程にハッキリと形を見せていた。

そんな状態を理解しても、混乱するルイズの頭脳は恥ずかしがって胸を隠すよりも、ツェルプストーに舐められてはいけないとの考えが上回る。



「ちょっ、ちょっと他の服が無かっただけよ」

「…………」



いくら気丈に振舞い、逆に胸を張っていても、羞恥で赤面している顔は内心を隠しきれていない。

当然の事ながらキュルケも嘘と分かってはいるが、自分が言っても家名のプライドが邪魔をして聞き入れられないと判断した。

少し引いた雰囲気を隠さずに居ると流石にルイズも羞恥心が虚勢を上回り、そっとマントを胸の前で留る。



「そ、それにしても本当に人間を使い魔にしたのね」

「うるさいわね」



浮かび上がっていた乳首を隠したのを見たキュルケは、露骨に話題を変えた。

未だに顔を赤くしているルイズも乗り、仲が良いのか悪いのか良く分からない会話がされる。

その後はキュルケの使い魔であるサラマンダーに驚いたり、羨ましがったりで、少なくともお互いの自己紹介は出来た。

若干、不自然な空気に耐え切れなくなったキュルケは、逃げる様に去って行く。

微妙な雰囲気の中で残される俺とルイズ。



「所で……」

「なによ」

「腹が減ったんだけど……」

「私もよ!」



女の子の会話は激しいなと思いながら、ぼーっとしていても腹は減る。

ルイズに声を掛けたのだが、やはりイライラが溜まっている声で返された。



「落ち着けよ」

「…………あんたのご飯は食堂の横にあるキッチンで用意させてるわ」



言葉の端々に怒りを感じるも、一先ず会話出来る程には落ち着く。



「それは有り難い」

「本当に感謝しなさいよ」

「異世界で屋根があって安心出来る所で寝れて、食事もまともだったら文句は言えないよ」

「それなら私が着たブラウスの事を言いなさいよ!」



何やらルイズの怒りが再燃してしまった。



「自分で選んだんだろ」

「うぐっ!」



適当に怒りを捌きながら俺は通りすがりのメイドに厨房へ案内をして貰い、ルイズは着替えずにマントで胸を隠したままで食堂へ向かう。



「どうせ一緒に教室へ行くんだから、終わったら近くで待ってなさいよ」

「分かったよ」



メイドに連れられて厨房へ入ると忙しそうに働いている料理人が居り、人間の使い魔と言う事で珍しがられたが、たいしたイベントも無く朝食を頂く。

賄い飯であっても使っている材料は貴族に出す物と同じで、その味は元居た世界でも食べた事がない程に美味い。

勢い良く食べていれば、何故か調理長のマルトーに同情をされてしまう。

ちなみにシエスタには会えなかった。











食事を済ませ、指定の場所で待っているとルイズが遣って来た。

マントを普通に肩で止めていても乳首が浮き上がっていない所を見るに、どうやら着替えて来たらしい。



「サッサと行くわよ」

「おぅ」



いかにもファンタジーっぽい石造りの講堂みたいな教室へ入ると、先に中に居た生徒達は一斉にルイズを見る。

その視線は後ろを歩いていた俺に集まり、すぐにクスクスと笑い声に変わった。

調子付いた男子生徒から馬鹿にされてしまうも、魔法を使えると言う事実はルイズに余裕をもたらす。

いつもなら売り言葉に買い言葉で言い合いになる筈だが、そうはならなかった。



「貴族なら、もう少し気品という物を学んだ方が良いんじゃないかしら?」

「なっ!?」

「ゼロの癖に!」



からかった男子生徒は予想外の反応に戸惑ってしまうも、馬鹿にされた事を理解して普段使っている渾名を口にした。

肝心のルイズは見た目は余裕たっぷりに自分の席へ付くと、持っていた教材を出して授業へ備える。



「俺は何処に座れば良いんだ?」

「使い魔なんだから、床に座ってなさい」

「む……、まぁ、良いか」

「えっ、良いの?」



すんなり床に座る事を承諾した事に、眼を丸くするルイズ。

机の下へ潜り込む俺を眼で追い、何かを言い出そうとした時に教室のドアが開かれて教師が入って来た。

ルイズは慌てて視線を戻して姿勢を正す。

下は石で固いのだが、それに眼を瞑っても机の下に潜り込みたい。

目的は勿論、ルイズの下半身だ。

ストッキングを履いていない生の足を間近で見るチャンス。

昨日の夜は上の方をじっくり見ていたので、足は精々陰茎を擦り付けた程度。

丁度良い機会なので、視姦出来るだけ視姦してやろう。



「あら、ミス・ヴァリエール」

「は、はい!」

「変わった使い魔を召喚したと聞きましたが?」

「あっ、机の下に座らせています」



慌てて答えたルイズの言葉に、男子生徒は再び馬鹿にする声を投げ掛けてきた。



「平民を連れて来たのが恥ずかしいなら、最初から連れてくるなよ。ゼロのルイズ!」

「そうだそうだ!」

「ちゃんと召喚したわよ! それで出てきたのが偶々こいつだっただけよ!」



教室へ入って来た時に聞いた声が切欠に、揶揄する声が追随する。

一見、ルイズも平静に反論をしている様に見えたが、机の下から見える手は悔しそうに握り締められていた。

そのまま生徒の野次が酷くなるかと思いきや、教師が止めに入り、やっと授業が始まる。

しかし、机の下に居る所為で内容が全く分からない。

真面目に授業を聞いているルイズの足は最初こそピッタリと膝を付けていたが、時間が進むに連れて少しずつ開いてきた。

日焼けしていない肌は影に入っていても白く綺麗なまま。

本当なら触ってみたいが、魔力素の洗脳が解かれている状態では流石に触れない。

気付かれない様にゆっくりと正面に回って、スカートの奥を覗き込む。

影に隠れる白い布は、下腹部を包み込んでいる。

座っている体勢は秘裂が椅子に接触している為に、大陰唇の膨らみは見えなかった。

足は見れても触れず、ショーツを覗いても肝心の部分が見えない。

これは床に座ったのが失敗したかと後悔していると、ルイズが錬金の実演に指名された。



「触ってやろうか?」

「結構よ。ビシッと成功させるから見てなさい」



立ち上がったルイズにこっそりと声を掛けるが、自信満々に拒否される。

やはり一度使えた事が自信に繋がっていた。

教卓に向かう後ろ姿を、机から覗いて追う。

緊張しているルイズを宥める様にアドバイスをした教師の言葉に頷いて返す。

生徒達が退避する中で、遂に呪文を唱えた。



「『錬金』!」



言い切った瞬間に目標だった石から眩い光が放たれる。

そして、後から爆発音と共に爆風が教室内を駆け巡った。

あちこちから出される悲鳴と、舞い上がった砂煙。

しばらくするとガラスが割れた窓から風が入り、辺りの光景が見え始める。

爆心地だった教卓の前には煤塗れで気絶した教師と、ボロボロの服になったルイズが立っていた。



「……今日は調子が悪いわね」

「今日『は』じゃないだろ!」

「今日『も』だろ! ゼロのルイズ!」



爆発による被害を受けた生徒達が一斉に罵倒をしているが、ルイズの格好には気が付いていないのだろうか?

ボロボロになっている制服は所々破れており、少し動けば上は乳首が、下はショーツが見えそうだ。

しかし、自分の過去を思い浮かべれば、この年代は性的な事よりも相手をからかったりする事の方が楽しかったりする。

きっとルイズのボロボロの服にも気が付いてはいるが、そこまで意識が向いていないのだろう。

そして、大人になって後悔するのだ。

やれ『あの時、もっと注意深く見ていれば』、やれ『もっと近くに居れば』と……。

もっとも、この世界は貴族が強いので、その気になれば平民の美人を好き勝手に犯せるからルイズには性的な視線を向けないのかもしれないな。

何にせよ、勿体無い事この上ない。











目を覚ました教師に罰として片付けを言い渡されたルイズは、粛々と箒片手に床を掃いている。

他の生徒達が誰も居ない中で二人きりの作業。



「なぁ、ルイズ」

「……何よ」



随分と機嫌が悪そうな答えが返ってきた。



「魔法を使って片付ければ良いんじゃないか?」

「……そんな魔法無いわよ」



この世界の魔法はコモンマジックに火、土、水、風の四種と伝説の虚無、それ以外は全て先住魔法と一括りにしているが、俺はそんな固定概念は持っていない。

元の世界に溢れていた漫画等で手に入れた、それこそ人の自由な発想の中で考え出された物がある。

この世界が元は小説である以上、出来ないと決め付けてしまう道理もないだろう。



「俺が居た世界では、魔法って言うのは何でもありだったんだよ」

「はぁ?」

「まぁ、聞きなさいよ」

「…………」



胡散臭そうな表情で聞き返してきたが、一先ず聞かせる事を優先させた。



「でな、生活に関わる魔法も一杯考えられてるんだよな」

「あんたの世界は魔法が無かったんじゃないの?」

「無いよ。だけど物語の中では、それこそ世界を破壊する魔法から、髪を整える魔法まで多岐に渡って想像されたんだ」

「ふ~ん……?」

「だからな、この教室を元に戻す魔法も使えるんじゃないかと思ってね」

「だから、そんなのは無いって言ってるじゃない!」

「ルイズ、魔法とは想像の産物だ。だからお前の頭の中に浮かんだ物が、俺の魔力素を使えば実際に出来るんだよ」

「…………」

「短い付き合いだけど、魔法に関しては俺を信じてみろ」

「それは…………、何処を触らせれば良いわけ?」

「まぁ、言うなれば全身……かな?」

「うぅ……」



実績と言うのは何にも変えがたい信用となる。

今まで俺が言った事は全て事実である為に、かなり悩んだようだが結局はルイズが折れた。

しかし、身体を触る程度で、一々こんなに説得しないといけないのは面倒極まりない。

魔力素の浸透率はルイズが信じると言ったお陰で上がった事だし、ここは魔法を使わせるよりも思考操作をする方へ重点を置こう。



「んじゃ、触るぞ」

「……えぇ、良いわ」



念の為に許可を貰ってから、ルイズの後ろから抱き付いた。



「っ!!」

「もう少し受け入れた方が魔力素は効率良く吸収されるぞ?」

「分かってるわよ!」



行き成り胸を触っては貧乳のコンプレックスと合わさって暴れられるかもしれないので、一先ず肋骨の下から腹に掛けて撫でていく。

本当なら貴族の淑女が男、しかも平民に身体を触られる等持っての他。

ルイズは魔法を使える様になるという一点のみで、自分の身体を弄ぶ平民を弾き飛ばしたい衝動を抑えていた。

なまじ、実際に魔法が使えた物だから抵抗らしい抵抗も出来ない。



「うぅ……」



屈辱で唸るルイズの全身を包み込む様に抱き締めているお陰で、魔力素は今まで以上に流し込められているのを感じる。

単に送り込むのではなく、本人の性格が大幅に変わらない程度に常識を変更していく。

真っ先に変えるのは、身体を触られる拒否感を魔法を使える事実よりも下に思わせる事。

羞恥心を残しておくのも重要だ。

こうしておけばルイズは恥ずかしがりつつも、魔法を使う為に身体を触らせる。



「くぅ……」



価値観を徐々に替えられていると気が付かないルイズは羞恥と屈辱、そして平民に身体を触らせないと魔法も使えない自分に怒りを湛えていた。

我慢をしなければいけないとの相反する心は身体にも現れており、ぷるぷると全身を小さく震わせている。

仕方が無く、『使い魔に身体を触られるのは当然』と常識を新たに植えつけていった。

洗脳に使用する魔力素は、使う端から供給してるから問題は無い。

だが、今回はここまでだ。

余り一度に洗脳の深度を深めてしまうと、対象に重大な後遺症が出る心配があった。



「うっ……」



軽い洗脳はすぐに効果を発揮し、強張っていたルイズの身体から力が抜けた気がする。

それでも完全に身を任せた状態でもないので、相変わらず強張りは残ったままだ。

最初よりは緊張も解けたと思い、腹を撫でていた手を胸へ持って行った。

ボロボロのブラウスから、僅かに膨らんだ下乳を持ち上げる様に触る。



「うぅっ!!」



寝ている時に弄り回しても特殊な興奮があるものの、やはり触った時に反応が返って来るのは良い。

産毛を撫でる様に指を這わせつつ、胸の頂点にある乳首へ到達する。



「ひぅん!」



大きめな悲鳴と共に、大きく身体を震わせて反応を返すルイズ。

肌の表面を撫でられて鳥肌が立った乳首は、若干硬さを増す。

指が持つ引っ掛かりで弾く度に、腕の中で硬くなっている身体はピクンと跳ねる。

背中から抱き付いている所為で、緊張をして力の入った尻に硬くなった陰茎が挟まってしまう。

しかし、当のルイズは身体を弄られる羞恥に精一杯で、その事に気付く余裕が無い。

時間が経つに連れて洗脳も進んできた事を感じ、次の段階に進む事にした。

小振りな尻に挟んでいた陰茎をズボンから取り出して、外へ開放する。



「ルイズ、ちょっと手を借りるぞ」

「へぁ!?」



握り締められていたルイズの手を取り、陰茎を握らせる。



「あ、熱い?」



力を込められていた拳を解かれ、何やら熱く、言い様の無い弾力に疑問を感じて思わず視線を手の方へ向けた。



「……って何よこれ!?」

「俺がルイズを触るんじゃなくて、ルイズが俺に触っても魔力素は供給出来るからな」



握らされた陰茎に驚愕していたルイズに、何処か的外れな答えを言っておいた。

だが、嘘は言っていない。



「そうじゃなくて!!」

「ん? 使い魔に触るのは変な事でも無いだろ?」

「うぇ……? そ、そうだけど」



洗脳で変えられた常識を突かれたルイズは思わず言葉を詰まらせた。

元々、持っている性的な知識は正しく乙女の様に少なく、手の中にある陰茎と男の性欲に関して甘く見ている節がある。

更に使い魔と触れ合う事に関して肯定的な認識を持たされ、普通なら身の危険を感じて絶叫物の事態になっても、逃げ出す素振りすらない。



「これを握って前後に動かしてくれ」

「う……こ、こう?」

「そうそう」



魔法の事となると信用するルイズは、言われた通りに陰茎を擦り始めた。

小さく女の子らしい手は少し冷たく、熱く猛り切った陰茎に新たな刺激となる。

血管が受け出ている上に、ピクピクと動く姿にルイズの視線は吸い付けられたままだ。

美少女の身体を弄り、その本人に手扱きをさせながら反り立つ陰茎を見せ付ける。

その全てが興奮となり、直接犯さなくても絶頂へと一気に上って行く。



「ふっん、……あっ、何か出てきたけど……?」

「あぁ、も、もう少し強く速くしてくれ」

「ぁう、えぇ、分かったわ」



鈴口からカウパー液が漏れ出てくるが、ルイズ自身も秘裂を触られていなくとも、硬く尖って摘み易くなった乳首を弄られただけで悦声が漏れ出している。

小さな胸も心成しか、張って大きさを増した感じもあった。

ルイズの手を取って陰茎を擦らせる速度を速くして行き、絶頂を目指す。

多くなったカウパー液が絡まり、ねちょねちょと音が聞こえてきた。



「あっ、こ、こんなに速くて良いの?」

「あぁ、も、もうすぐだからな」

「へっ? な、何が!?」

「うくっ、出る!」

「えっ!?」



そして細い指がカリに掛かり、最後の一押しとなった刺激で絶頂へ達する。

切羽詰った物言いに疑問を感じたルイズの手の中で、陰茎から精液が吐き出された。



「ひゃっ!?」

「うぅっ!」



突然出てきた白い体液に驚くものの、俺に手を固定されている所為で離せない。

断続的に汚されて行く光景を見たルイズは絶句してしまう。



「な、何よこれ!?」

「それも魔力素の一種でもあるよ」

「こ、これが?」



白く細い指を、栗の花の匂いを放つ白濁した体液が流れ落ちる。

魔力素と言われ、殆ど無意識に手の中で精液を弄ぶルイズ。



「何か粘々するけど……?」



折角、洗脳を施している事だし、精液に対しても嫌悪を感じない様に誘導しておく。



「でも『それを身体に浴びれば魔力素の補給にもなる』ぞ?」

「……ホントに?」

「魔法に付いては、嘘は言わないよ」

「そうだったわね」



あっさりと信じたルイズは精液を白い腹へ擦り付けた。

過去の実績と洗脳が合わされば、多少怪しい言い分でも信じられる。

精液が魔力素でもあるのは間違いないので、嘘も言っていない。

そもそも、俺の身体から出る物なら、意思一つでどんな物にも魔力素を宿らせる事が出来る。



「まっ、そんなもんだろう」

「えっ!?」



俺だけが満足した状態で身体を話すと、ルイズが声を上げた。



「何だ?」

「いえ……、その……」



何やら股間をもじもじとさせて、言い淀んだ。

散々乳首を弄られたルイズの身体には、快感が溜まっている。

それを開放しないままで身体を離されては、性的な欲求が満たされない。

ルイズは気が付いていないが、悶々とした期待が確かにあった。

しかし、身体を離されてこれ以上の性的な刺激は受けられないと理解し、思わず残念そうな声が出てしまったのだ。

洗脳しても根本を変えた訳でもないので、一々指摘して心の壁を復活させる事も無いだろう。



「じゃ、次は思い描いた効果が出る魔法をイメージするんだ」

「本当にそんなの出来るのかしら?」

「ルイズが自分の力を信じないと、どうしようもないぞ」

「……そうよね」

「眼を閉じて、身体の中にある魔力素を感じるんだ」

「えぇ」

「そこから魔法が実際に効果を発動してる場面を思い浮かべながら唱える」



俺の助言を聞き、精神を落ち着ける。

眼を閉じて大きく深呼吸を繰り返し、頭の中の創造を明確に形作っていく。

十分に息を整えた後、カッと眼を開いて魔法の名前を叫んだ。



「…………『修復』!」



魔力素を含んだ魔法は一気に教室中へ広がり、壊れた物、汚れた物を綺麗にしていく。

光を纏いながら物が移動する様は、魔法らしい幻想的な光景だった。

完全に元の破壊されていない教室へ戻ったのを見たルイズは、杖を前に出していた体勢を解いて溜息を付く。



「ふぅ…………」

「出来たな」

「えぇ……、出来たわ」



何処か力の抜けた声で答えるルイズ。

アレだけ必死に練習したにも拘らず成功しなかった魔法。

それが使い魔に身体を触らせるだけで使えた事に、少し遣り切れない気持ちがルイズの心を巡っていた。



「まだ、魔力素は残ってるだろうから、ある程度は使えるかもな。無くなれば補給すれば良いし」

「…………」

「どうした?」

「……何でも無いわよ」

「ふ~ん……」



動き出さないルイズはその場で感傷深く頷き、自分の中で気持ちを落ち着ける。



「さて、ご飯にしましょうか」

「おう」



一応返事をしてしまったが、食事をする場所は違う。

何故か晴れ晴れしたルイズと別れた俺は、朝食を取った時と同じ場所へ向かった。

厨房で忙しなく動いているマルトーへ声を掛けて、昼食を催促する。



「こんちわ~」

「おぉ、お前か」

「昼飯を下さいな」

「おう、ちょっとそこで待ってろ」

「はいはい」



言われた通りに少し離れたテーブルへ向かうと、そこには見覚えのある黒髪が食事をしていた。

近付いた俺の姿に気が付き、ふと顔を上げてこちらを向く。



「あれ? 貴方はミス・ヴァリエールの使い魔さんですか?」

「そうだよ。召喚された時に最初に見た顔だね」



お互いの自己紹介を済ませた後は、同じ黒髪は珍しいとの事で話が弾んだ。



「へぇ、シエスタのお爺さんは俺と同じ様な名前の並びなんだ」

「そうなんですよ。結構珍しいですよね」

「じゃ、俺と同じ様に東方から来たって事かな?」

「そうかもしれません」



どうせ異世界から来たと言っても、出身を誤魔化されたと思われるだろうから最初から東方から来たと言って置いた。

会話をしつつも、漏れ出している魔力素を操ってシエスタへ送る。

効果が低い今は、貴重なタイミングを逃す訳には行かない。

そうして一先ず接点を持ち、同じ様な年齢と言う事も手伝って比較的仲が良くなった気がする。

昼食も食べ終り、シエスタは貴族達のデザートを配る時間になった。

暇潰しがてらに手伝おうとしたものの、始めは遠慮をしていたシエスタ。

少しでも魔力素を吸収させておこうと何とか言い包めて、ケーキの乗ったプレートを受け取った。

外に出れば貴族が青空の下で思い思いの話題を楽しんでいる。

例外も無くルイズの姿も見えるも、案の定一人だった。

そのまま視線を巡らせれば、一段と臭い言い分で他の男子生徒の、誰と付き合っているのかという追及を交している少年が目に入る。

例によってギーシュだ。

その足元を見ると香水のビンを発見した。

これが原因で決闘騒ぎになるが、出来れば面倒な事は避けたいと思う。

かと言って、放って置いてはメイドの誰かが拾って騒ぎにもなりかねない。

仕方が無くデザートを運ぶついでに接近して、誰にも知られない様に香水のビンを草むらに蹴り込んでおいた。

地面すれすれを飛んだビンは、音も無く茂みに姿を消す。

これで平和な午後が過ごせると安心して、ルイズの元へデザートを運んだ。



「あっ、あんた! 何してんの!?」

「暇だからデザートを配ってるんだよ」

「だったら、洗濯とかしなさいよ!」

「ごもっとも」











あれから数日経った。

四六時中ルイズと同じ場所に居る事で魔力素の汚染は進み、今では就寝中なら比較的思い通りに身体を操れる段階までになる。

更に魔力素を摂取する為の行為も、羞恥心を維持したままであるが最初よりも葛藤無く許可するまでになっていた。

授業においてルイズは魔法を成功させる様になり、周囲は『使い魔を召喚してから、ゼロのルイズが魔法を使える様になった』と大騒ぎ。

それに伴い、今まで裏で表で『ゼロ』と貶していた男子達が掌を返した様に近寄ってきた。

分かり安すぎる変化を眼にしても、前の態度をシッカリと覚えているルイズは、心底幻滅した態度を隠さない。

結局、集まってきた生徒は徐々に消えて行き、魔法が使えなかった時と同じ様に孤立してしまう。

しかし、平民に取っては貴族である時点で上の存在である為、仕事の為に仕える態度は変わらない。

その所為でルイズはメイド達に対して良い印象を持ち、眼に見えて態度が柔らかくなった。

もう一つの変化と言えば、タバサの視線が頻繁に向けられてくる様になった事。

これは近い内に接触してくるかもしれない。

そんな変化もあって、俺は今日もルイズの洗濯物を洗っている。



「大分上手くなりましたね」

「そうか?」

「最初の頃よりは汚れも落ちてますよ」

「有難う」



隣に居るシエスタに褒められながら、ザブザブと水仕事に励んでいる。

魔力素を操る力も格段に上がり、密度を濃く出来る様になった事で汚染も短い時間で深く出来た。

眼の光が少しだけ曇った気がするシエスタは、大きな胸を揺らしながら同じ様に洗濯に励む。

適度に会話を楽しみつつ、交流と魔力素の汚染を深めて行った。

洗濯物も洗い終わり、青空の下で風に揺れる衣類を眺めながら小休憩を取る。

隣に居るシエスタの横顔をチラリと見てみるが、やはり何処か不自然な笑顔が張り付いていた。

魔力素から感じられる体調に変化は無いものの、多少の精神的な不具合がある。

しかし、これは数日安静にすれば元に戻る程度。

丁度良い機会であるし、この程度でどれぐらい意志を操れるか試しておくか。



「シエスタ」

「はい?」



名前を呼ばれて俺の方へ顔を向ける。



「ちょっと、胸を見せてくれないか?」

「えぇ、良いですよ? ちょっと待ってくださいね」



そう言ってメイド服のボタンを外していくシエスタ。

思った以上にあっさりと承諾された事に驚いた。



「良いのか?」

「良いですよ?」



指示をした事で眼に宿っていた光が完全に無くなり、メイド服をガバッと大きく開く。

ルイズの様に服を下ろせば見える程度の大きさではない所為で、開いた襟元から手を差し込んで引きずり出した。

たぷんと幻聴が聞こえるような揺れをした後、日中の野外で巨乳が現れる。



「どうぞ」

「お、おぅ」



胸の付け根の下にメイド服の襟が潜り込み、コルセットを少し上の方で付けた感じに強調され、両方からも締め付けを受けているので、前へ突き出す形になっていた。

向けられる乳首は少し茶色をしており、言うなれば日本人の血を引いていると思わせる色。

生地が厚いメイド服を着ている所為で日を受けない胸は、全体的に白く透き通り、よく見れば青い血管が薄く見えた。



「揉んで良いか?」

「勿論です」



思わず聞いてしまった言葉にもシエスタは快く答えた。



「では、お言葉に甘えて……」

「んっ……」



そして、美乳に手を伸ばして下から支えてみれば、触れた瞬間にたぷんと揺れる。

視界から送られる興奮は、申し分ない。

下から触っていた両手を肌に接触させたままで胸の真横に持っていき、親指で乳首をくりくりと捏ね回した。

サラサラで一切弛みが無く、少し力を入れただけで形を変えてしまう。



「はぅ……」



胸を触られる事を好意的に受けたシエスタは、吐息を漏らした。

ルイズでは絶対に味わえない心地良い感触に、手は一層激しく動く。

真正面から鷲掴みにして、パン生地を捏ねる様に思う存分指を動かす。



「あぅ」

「痛かったか?」

「大丈夫です」



苦痛の声でハッとし、シエスタの顔を見ると何処か慈愛を含めていそうな表情をしていた。

今度はなるべくシエスタに痛みを与えない様に、手を動かして胸を楽しんでく。



「んふっ……」



掌の中心にあった乳首の感触が、徐々に硬く変化してくるのが分かる。

それと同じ様にシエスタの顔色も赤くなり、性的な興奮を溜め込んでいる様子が見て取れた。

手を一旦離し、今度は乳首へ吸い付く。



「はぅん!」



口へ含んだ瞬間に身体を大きく跳ねさせるシエスタ。

悦声も大きく、下手をすれば誰かに聞かれそうだった。



「んっ、シエスタ、あんまり声を出したら誰かに聞かれるぞ」

「あっ、ご、御免なさい」



人目に付くかもしれないと注意を受けて落ち込んでも、胸は曝け出したままで隠そうとしない。

余り時間を掛けていると、他のメイドや授業が終わった貴族が出てきそうなので早々に次へ移るとする。



「次はそこの壁に手を付いて腰を突き出してくれ」





(以下は体験版用の展開です)





「ほ、本当にそんなポーズをするんですか?」

「……あぁ、頼むよ」



今まで魔力素の効果で従順に従っていたシエスタが聞き返してくる。

羞恥に顔を染めて目に光が無いのは変わらないものの、反応は正気に戻りつつありそうな雰囲気を感じた。



「でも、は、恥ずかしいです」



手を身体の前でもじもじとさせ、上目遣いで言ってくる様子は明らかに魔力素で洗脳された状態から逸脱した答え。

効力が消えたのかもしれないが、このまま押し込んで行けば従いそうだ。



「早くしないと、他の貴族に見つかって犯されるかも知れないぞ?」

「えっ!? ……そ、その時は護ってくれますか?」



自分で想像してしまったのか、羞恥から一転した顔色は青くなる。

怯えながらも保護を求める姿は、護ってやりたい気持ちを刺激して止まない。



「あぁ、護ってやるよ」



俺の言葉を聞いて心底安心した雰囲気を出して微笑む。

しかし、シエスタの変化は、すぐに違う物へと変化した。



「『だが、断る』」

「何ィ!?」



つい先程まで浮かべていた儚い笑顔が消え失せ、鋭い視線を向けて来るシエスタ。

余りにも激しい変化で戸惑うしかない。

そんな動揺を余所に、シエスタ(?)は言葉を続ける。



「この私が最も好きな事の一つは、『自分の思い通りになると思っている人間にNOと言ってやる事』よ……」



そう言い切り、一般人とは思えない跳躍力で近くにあった塀へと飛び乗った。

そして、腰を横に捻りって上半身は軽く反らせ、片手で顔を覆う。

ビシッと音が聞こえる様に機敏な動きでポーズを決めた。



「糸口を……見つけていないの?」

「糸口……?」



指の間から見える何処か見覚えのある目。

当然の事ながらシエスタの優しそうな雰囲気は無くなり、意志が強そうな物に変化していた。

しかし、変わったのは目だけではなく、着ている服は勿論の事、身長や髪の長さ、あまつさえ声まで変わっている。

丸出しだった胸は現代風のシャツを着ている所為で隠され、下半身はスカートではなく細身のジーンズ。

スラッとした長身でプロポーションも、かなり良かった。

外見は完全の大人の女性で、その姿に懐かしい雰囲気が感じられる。



「思い出した……」

「どこまで?」

「いや、確か前にもこんな事があった気がする……」

「…………」



そんな俺の様子に落胆をしたのか、決めていたポーズを解いて普通に正面から向かい合う形となる。



「だけど……」

「……?」

「何処か懐かしい感じを受ける。何処かで会った様な……」

「その調子で思い出して……、世界は貴方を助けてくれるから」

「ど、どういう意味……っ!?」



女の言葉に疑問を感じ、頭を上げた瞬間に周りの光景も一変する。

それまで異世界らしく石の建物で囲われていた場所だったのが、今は長閑な田舎の村になっていた。

どう見ても日本の原風景で、近くには小さな川が流れ、水車が音を立てて回る。

合掌造りのかやぶき屋根を持つ家屋が少数立ち並ぶ光景は、忘れていた帰省本能が沸いてくる様だ。



「これは……見た事がある?」

「そう、貴方は忘れているだけ」

「忘れている?」

「だけど、ここまで思い出せればもうすぐよ」



もはやシエスタが変わってしまった事など頭に無い。

変わった風景に、懐かしくも見覚えのある女。

しかし、考えを巡らせる時間は無くなっていった。



「そろそろ、体験版主人公には退場願いましょうか」

「何だって……?」

「貴方の出番はここまでよ」

「ちょっと待ってくれ! もうすぐ思い出せそうなんだ!」

「駄目よ」



重要な事を忘れてしまっている事を実感した喪失感を胸に、どれだけ訴えかけても女は良しとしない。



「次は、名前を思い出してね」

「待っ――」



俺が言葉を言い切り前に、女は手を一度だけ叩いた。

パンと軽い音が辺りに響いた瞬間、全てが黒と白に塗り潰されていく。

重力は確かにある筈なのに、全てが決して交わらない二色の何かが侵食を進める。

遂には足の裏に感じていた地面の感触すら消えてしまい、宙に身体を放り出された。

慌てて女の方を見ても、既に姿が見えない程に遠ざかる。

何も出来る事が無い状態で白と黒の色が下から上へ流れる光景を見ながら自由落下を続けていたと思えば、唐突に光が差し込んでくる。

自分の身体が落ちているのにも拘らず、目の前にある光は空中に固定されているかの様に動かない。

風の抵抗で上手く動かない手足を駆使し、何とか目的の場所まで到達すると身体を滑り込ませた。

そして、ガラスが割れたと思える高い音が聞こえ、またもや光景が一変する。

足の裏に感じる硬い確かな感触に視線を下せば、立っている場所が屋根と分かった。

屋根と言っても、からぶき屋根ではなくて一昔前の古い建物の物。

辺りに視線を流してみると夕暮れが過ぎた直後の薄暗く、寂れた雰囲気が漂っている。

一見すると先程見た懐かしい田舎の原風景だが、そことは違うという事だけはハッキリと分かった。

何より雰囲気が全く違う。

如何にも、何か出そうな空気がする。

しかし、いつまでも突っ立っている訳にも行かない。



「よう」



屋根の上に居る所為で自然と見下ろす事となるが、一先ず下の広場に居る女の子へと声を掛けた。





体験版終り





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