動く気力が湧かないまま、何分くらい経っただろう。

 10分か、それとも30分か――わからない。

 けれど、とにもかくにも変化のない時間は終わりを迎える。

【???】
「ねぇアリアぁ。調達できたぁ?」

 そんな声と共に、ドアが開かれたことで。

【冬真】
「あ……」

 振り返り、僕がその淫魔の存在に気づいたときには、もう手遅れ。

【サキュバス】
「――ふぅん。きみってばぁ、アリアのことヤっちゃったんだー?」

 淫魔はすでに、部屋に僕だけが残っているという状況を把握してしまっていた。

 まずい。

 彼女がいるのはこの部屋の唯一の出入り口なのだ。

【サキュバス】
「ふふー、外で待ってるからぁ、我慢できなくなったら出てきてねー?」

 赤い目を細めた淫魔は対応を迷わなかった。

 ガチャンッという絶望の音色が部屋に木霊する。

【冬真】
「う……ううう……」

 僕に残された選択肢は二つ――いや、三つ。

 玉砕か座死か、自害か。

 ……でも自殺はだめだ。

 淫魔界――異界でのそれは、明確に禁じられている。

 人としての魂が――迷子になってしまうから。

 


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