僕が運ばれたのは、どうやら彼女たちの寮部屋のようだった。

 部屋の様子を見れば、淫魔の生活様式が窺い知れる。

【冬真】
(人間界と、そんなに変わらない……のかな)

 行方不明になった姉が残した部屋と、雰囲気が似ている。

 淫魔が人間界へと来ている以上、言語を始めとした文化の輸入も可能なのだろう。

 しかしそんなことは、今の僕には関係のないことかもしれない。

 服を裂かれ、唯一の武装だった退魔札もすべて破り捨てられてしまった今の僕には。

【エナ】
「運が良かったね、可愛い退魔師くん?」

【ユリカ】
「アハハッ、ホントホントっ。キミが相手するのアタシらだけだからさ、そうそう壊れたりしないと思うよ?」

【エナ】
「もしかしたらあたしたちが卒業するまで飼っててあげられるかも」

【ユリカ】
「まあそのあとは教材行きだけどねーッ」

 僕を捕まえた淫魔たちが、僕の処遇を決めていく。

【エナ】
「そうそう、きみ名前なんていうの?」

【冬真】
「…………」

【ユリカ】
「飼い主の質問にはちゃんと応えないとオシオキだよ? どっちかっていうなら、優しくされたいでしょ?」

【冬真】
「……冬真」

【ユリカ】
「トーマかぁ。いいね、なんかペットっぽくて。アタシはユリカ、よろしくね」

【エナ】
「エナだよ。これからよろしくね、トーマ?」

【冬真】
「…………」

 こちらこそ、なんて言えるはずもなく。

 僕はただ黙っていた。

【エナ】
「えっと――とりあえず、体育が終わるまでってことにする?」

【ユリカ】
「だね。ってことで、上と下どっち使うか決めよっ。アタシもう待ちきれないしっ!」

 

 


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