【リリア】
「……つまらない」

【リリア】
「他のみんなは学園で実技を楽しんでいるのに、私は座学ばかりだなんて」

【リリア】
「……欲求不満でどうにかなりそう」

【澪】
「仕方ありません」

【澪】
「リリア様は――お力が強すぎるのです。他の皆様方のようには……」

【リリア】
「だったら、いつまでこうしてればいいの?」

【澪】
「リリア様にふさわしい方が見つかるまでかと」

【リリア】
「その男はいつ見つかるのよ?」

【澪】
「人間界に降りている淫魔には捜索の指示が出ているようですが……」

【リリア】
「見つけても、どうせその子が食べちゃうんでしょ?」

【澪】
「そんなことは……」

 ないとは、言い切れない。

 淫魔の姫にふさわしいほどの精気の持ち主ならば、どんな淫魔も食指を伸ばさずにはいられないだろう。

 そして、他の淫魔のお下がりなど淫魔の姫にはふさわしくない。

 無論――人間の女のお下がりでも、だが。

【リリア】
「どうにかしてよ。澪は私の教育係でしょ?」

【澪】
「そう仰りましても……」

 教育係兼護衛――簡単にどうにかできるほど澪の立場は高くない。

 出生の事情もあり、他の淫魔からは良く思われてもいない。

【リリア】
「例えば、人間界に連れていってくれるとか……澪は詳しいのよね?」

【澪】
「はい、それは」

【澪】
「ですが、お体に差し障りがあってはいけませんので、リリア様を連れていくことは……」

【リリア】
「けち」

【澪】
「ただ……」

【リリア】
「……なに?」

【澪】
「心当たりを罠にかけてもらうことくらいは可能かもしれません」

【リリア】
「学園の、教材調達の……?」

【澪】
「はい」

【リリア】
「そんなことしても、その場で教材にされちゃうだけじゃないの?」

【澪】
「召喚された者が反撃の手段を持っていれば、話は別ではないかと」

【リリア】
「その子が逃げ出したところを捕まえればいいのね?」

【澪】
「仰る通りです」

【リリア】
「ふふ、それは面白そうね」

【澪】
「ただ……そうなったときには少なからず学園に被害が出てしまっているかと」

【リリア】
「そんなの気にする必要ないでしょ。捕食される側からの反撃なんて、想定して然るべきなんだから」

【リリア】
「すぐに頼んできて」

【澪】
「かしこまりました」

【リリア】
「警戒なんて、させなくていいから」

【澪】
「承知しました」

【リリア】
「あ、澪」

【澪】
「はい」

【リリア】
「心当たりって、澪が人間だったころの知り合いなの?」

【澪】
「はい」

【リリア】
「そう。期待してるわね」

 


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