その1



この田舎も少し前とは随分と様変わりした物だ。

長閑な田園風景だった土地は、久しぶりに来てみれば人気が全く無い廃村になってしまっている。

それは生徒達が消えてしまった古めかしい校舎の屋根からでも分かり、何処と無く日本ではない作り物の雰囲気すら感じた。

夕暮れ間近の赤い空の下、寂しい気持ちになりながら人の気配を感じて視線を下の校庭へと向ける。

少し荒れた土の上に居るのは車椅子の少女で、日本人が一般的に黒か濃い茶色の髪をしていると考えれば珍しい薄い栗毛。

誰かを探しているのか、しきりに辺りをキョロキョロと見回していた。

知らない他人でもないし、とりあえず声を掛ける。



「よう」

「えっ!?」

「屋根の上だよ」

「あっ!」



最初は何処から声が聞こえているか分からない様子で慌てていたが、俺の言葉を聞いて屋根の上に視線を向ける少女。



「そんな所に居たら危ないですよ!」

「大丈夫だよ。ナナリー」



ブリタニアから送られてきた王女は、原作と違って目がパッチリと開いている。

しかも、視力は良いらしく、結構遠めに居る俺の方を見ても目を細めたりしない。



「すぐにそっちに行くから待ってろ」

「はい!」



元気良く返ってきた返事を聞きながら校舎の中へ入り、足早に下へ向かう。

古めかしさを全面に出している廊下や教室は、辛うじて日が挿している黄昏時でも十分に恐怖映画並みの雰囲気があった。



「思えば、あいつらとの付き合いも長いものだな」



俺とルルーシュは、かなり長い付き合いだ。

気が付いたら廃校に寝泊りしていた所へ、小さな身体に疲労を隠せない姿でフラフラと迷い込んできたのが始まり。

初対面のルルーシュは余りにも不健康だったので、いつの間にか身に付けていた『異世界の食べ物を出せる』能力で元気が出そうな物を出してやった。

あの時は気にしていなかったが、普通の人間から見れば虚空から食物が出てくる光景はやはり異常な事だったのだろう。

初めて取り出した瞬間を見た時のルルーシュの顔は、何が起こったのか理解が追い付いていなさそうな感じでポカンと口を開けて唖然としていた。

何とか正気を取り戻した後、冷静な思考を取り戻したらしく、元気の無かった顔に僅かな生気が戻ってくる。

出された物を満足行くまで食べた後、直接は言わなかったがナナリーへ持って行く分を要求して、受け取ると足取り軽く戻っていった。

纏めて大量の食料を持って行かなかったと思ったら、次の日も、その次の日も同じ様に食料を取りに来たのに内心驚いたのは秘密だ。

そんな日々が長く続き、俺の能力の特性である『人体に害の無い物しか出せない』『魔法的な効果を持つものも出せる』事を理解したルルーシュは、毎日の食料とは別にナナリーの身体と精神を回復させる物も要求し始める。

一先ず、肉体が回復しそうな『ドラゴンの肉っぽいカツ定食』と精神を落ち着けるお茶を渡しておいた。

その後の詳しい事は分からなかったものの症状が良くなったらしく、ある日車椅子に乗った活発そうな顔をしたナナリーを連れてくる。

パッチリと開いた目で顔を合わした直後に感謝と、すっかり好物になってしまったドラゴンの肉っぽいカツ定食の素晴らしさを熱弁されて困ったのは楽しい思い出だ。

何度目かの食料を要求してきた時に、対価として何かを出したいと遠回しに言ってきたので、話し相手と将来の権力を当てにした要求は既に伝えていた。

内容を聞いて呆れた表情を隠さないものの、何やら吹っ切れたルルーシュは力強く頷いていたのが印象深い。

お互いに暗黙の了解を交し、後払いではあるが持ちつ持たれつの関係に収まった。

年寄り臭く懐かしい過去の思い出に浸りながら靴箱がある校舎口へ行けば、待ち切れず中へ入っていたナナリー。

相変わらず足は動かないみたいだが、やはり眼はハッキリと開いており俺の事を見ていた。



「迎えに来てくれたのか」

「はい、お兄様が探してますよ?」

「あぁ、済まん。すぐに行こうか」

「はい」



そう言ってナナリーの車椅子を後ろから押して、廃校を出る。

ザリザリする砂地を足に感じながら、これからの予定を話した。



「明後日からアッシュフォード学園に通うんですよね?」

「そうだよ」

「じゃぁ、これからはすぐに会えますね!」

「○等部とは結構離れてなかったか?」

「いえ、住んでいるのはお兄様と同じ所の生徒会専用のクラブハウスなので、隣にある男子寮とは近いんですよ」

「あぁ、そうか。ならすぐに会えるな」

「はい!」



しかし、少しばかり不安もある。

精神的に歳を取っているのでクラスに馴染めるのか分からないのと、何より心配なのが――



「学力とか大丈夫かな? 学校から離れて久しいんだけど……」

「大丈夫です。どうしても駄目なら記憶力が高まる食べ物でも出せば良いですし!」

「……ナナリーも俺の能力の扱い方を覚えて来たね」

「御世話になりましたから!」



原作とは違って逞しくなってしまった性格を感じてしみじみ言うものの、肝心のナナリーは振り返ってきて両手でガッツポーズをしていた。

そんな妹の兄であるルルーシュは律儀に約束を果たし、戸籍その物が無かった俺がアッシュフォード学園の生徒として入学出来る様に取り計らってくれたのだ。

ナナリーの止まらない話によると、昔、食料に関しての事とナナリーの眼と性格を元に戻した事に余程の恩を感じているらしい。

連絡も出来ずにアッシュフォードへ来た事を少しばかり悔いながら、漸く学園での居場所を確保したルルーシュは持ち前の交渉力で身元不明だった俺との約束を果たし、今日迎えに来たと言う事だった。

ナナリーと世間話をしていると車が見えはじめ、その隣にはルルーシュが腕を組んで待っている。



「遅いぞ」

「すまん」

「まぁ、良い」



一旦言葉を切ってから俺の前に立ち直し、真面目な顔で重ねて言ってきた。



「約束を果たしに来たぞ」

「律儀だねぇ」

「命を救われたとも言えるからな。ナナリーも世話になったし破る訳には行かなかったんだよ」

「そうです! 御世話になりましたからね!」

「あぁ、有難う」



笑顔のナナリーは俺を向いて同意を示す。

車のドアを開いて中へと促したルルーシュに従って入り、目的地へと走り出した。

舗装が甘い道路の揺れを感じる中、久しぶりの再会を祝って飲み物を出す。

嬉しそうに受け取ったナナリーとは別に、ルルーシュは受け取った物を物珍しげに見ていた。



「……本当、いつ見ても便利な能力だよな」

「これのお陰で、今日まで一人で生きていけたからな」

「俺もそう言う様な能力があればな……」

「まぁ、望んで得られる様な物でもないんだけどな」

「分かってるから、羨ましいんだよ」



心底羨ましそうに溜息を付くルルーシュ。

枢木家に居た時は匿うと言う名目があったとは言え、土蔵に押し込められていた時期は食べる物にも困っていた。

今でこそアッシュフォード家の保護の元でまともな生活が出来ているが、日本に来た当初はナナリーの事もあって気など抜けない状態だったに違いない。

実際、ナナリーはゲンブに命を狙われる事になるし、良い待遇で生活していたとは口が裂けても言えなかった。



「まぁ、俺が近くに居る時は好きなだけ食料は出してやるから僻むなよ」

「あんまり現実世界に無い物を出されても困るんだが……」



そう言ってチラリとナナリーに視線を送るルルーシュ。



「何ですか?」

「いや……何でもない」

「?」



出された飲み物を美味しそうに飲んでいたナナリーは不思議そうに見返すも、サッと視線を反らした。

理由は簡単に想像が付く。

何故ならナナリーの好物は、ドラゴンっぽい肉のカツ定食。

初めて食べて以来、それこそ初めて食べる味に感銘を受け、今ではすっかり大好物になった。

しかし、地球ではどう頑張っても俺以外からは入手できない為に、強請られるといつも困ると愚痴を良く聞く。

更に生肉の状態で出した時は見た目に引き攣り、「何て物をナナリーに食わせるんだ」と殴りかかってきたのも、今では笑い話になっている。



「まさか生のドラゴンの肉が、紫色の煙を出しているとはな……」

「……肉自体も紫だけど、味は良いんだよな」



若干、遠い眼をした俺達だったが、空気を変える為に長年の疑問をルルーシュがぶつけてきた。



「それにしても、異世界にもカツ定食とかあるんだな」

「まぁ、異世界って言っても、その異世界の先が一つとは限らんからな」

「つまり色んな異世界から取り出すって事か」

「そう言う事」



カツ定食と言う言葉が出る度に眼をキラキラさせるナナリーを尻目に、俺とルルーシュは久しぶりの会話を楽しんでいった。











学園の重厚な門を潜り、車が目指すのはこれから住む事になる男子寮。

洋式建築は比較的新しく、今まで住んでいた昔懐かしい廃校とは比べるまでも無い程に住み易そうだ。

車の窓から眺めていると、寮の出入り口にどこかで見た女生徒が立っている。



「ん? あれは……」

「誰か居るのか?」

「あぁ」



顔自体は知っているが、ここで俺が名前を言うのも不自然なのでルルーシュの紹介を待つ。



「あの人は学園の生徒会長をしてる<ミレイ・アッシュフォード>会長だ」

「へぇ、美人だな」



車の窓から見える姿は、ただ立っているだけでも魅力的である。

片足に体重を掛けて斜めに立ち、腕を組んでいる所為で制服の上からでも分かる大きな胸は持ち上げられていた。

肩が隠れる程度の長さを持つブロンドの髪はウェーブが掛かり、風に遊ばれる度に日の光を反射する。

ミニスカートから伸びる足はストッキングを履いておらず、遠目から見ても分かる魅力的な太股を晒していた。

ミレイの眼の前に止まった車からルルーシュが最初に降りて車椅子を取り出し、後から俺がナナリーを抱えて降りる。

車から出揃ったタイミングを見計らったミレイが、自己紹介を始めた。



「ようこそ、アッシュフォード学園へ。私が生徒会長のミレイ・アッシュフードよ」



人を警戒させないミレイの笑顔に釣られて俺も自己紹介をしてしまうも、何処か緊張した様な物言いになってしまった為、笑いが起きる。



「そこまで緊張しなくても良いだろ」

「そうですよ」

「いや、ここまで美人に微笑まれたら誰だってそうなるよ」

「あら、嬉しいわ。うふふ」



ひとしきり笑ってお互いの緊張が解けた頃、ミレイはルルーシュへ、まるで弟を見る様な目を向けた。

見られた方は何故微笑を向けられているのか分かっていない様子。



「それにしても、ルルーシュが珍しくお願いをしてきたと思ったら、こんなハンサムなお友達を連れてくるなんてねぇ」

「そりゃ友達ぐらいは居ますよ」

「でも、学校では外の友達とかは出来ないでしょう?」

「まぁ、ここに来るまでに色んな事があったんですよ」

「そこまで意味深に言われると、逆に問い詰めたくなるわね~」

「また今度教えて上げますよ」

「あら、残念」



付き合いが長いルルーシュとミレイは、気安いながらもお互いの距離を理解しており、決して不快になるまで踏み込まない。

意味深な言葉を聞いても普通に流し、険悪になる前に追求を止める。

お互いの性格を理解して、長年の信用を持っているからこそ持てる空気だろう。



「まっ、尋問は後に置いとくとして……、ルルーシュ」

「はい」



人が好みそうな笑顔だったミレイはキリッと表情を引き締めて、ルルーシュの名を呼んだ。

曲がりなりにも生徒会長であり、多少の威厳も見え隠れしている。



「生徒会長命令です。転入生を部屋まで案内してあげて」

「分かりました」

「ナナちゃんは男子寮に住む野獣共の不潔な視線から守る為に、クラブハウスで歓迎会の準備を手伝ってね」



ミレイの言葉に意外そうな顔をしたのはルルーシュ。



「あれ、生徒会に入れる心算なんですか?」

「それは本人の意思に任せるけど、ルルーシュのお友達を歓迎しないって言うのはねぇ……」

「それって職権乱用なんじゃ……?」

「良いの良いの。地位って言うのは使える時に使う物だからね」

「そうですか?」



納得いかない雰囲気で首を捻るルルーシュ諸共、俺は男子寮に押し込められる。

後ろではナナリーとミレイが俺達へ手を振り、生徒会専用のクラブハウスへ向かって行った。



「済まん。あの人は騒がしいのが好きらしくてな」

「まぁ、好き勝手できるのは今の内って理解しての行動だろうし、可愛いもんだよ」

「可愛い……?」

「あぁ、その疑問系はミレイ会長に言っといてやるよ」

「や、止めてくれ!」



慌てたルルーシュに連れられて入った寮の部屋は意外に広く、清潔感も申し分ない。

一先ず荷物を置いた後、今度はクラブハウスへ向かって歓迎会に参加した。

好奇の目に晒されるが、どうせ転入すればクラスメイト達からの視線も送られるだろうから良い予行練習にもなる、と思う事にする。

会長自らの紹介を得て、一人一人顔を覚える様に確認していく。

まずは<シャーリー・フェネット>

腰まで届く長い赤めの栗毛を持ち、腰は高く、短いスカートから伸びる足は長い。

胸はミレイ程ではないが、制服の上から見ても大き目と分かった。

自分が知らない過去のルルーシュを知っていると聞いた所為で、俺の方をチラチラと話を聞きたそうに見てくる。

次は<ニーナ・アインシュタイン>

前世では、知らぬ者など居ないと思われるアインシュタインの名を持つ生徒。

この世界でも後世に名が残りそうな大量破壊兵器『フレイヤ』を開発。

その後に『対・フレイヤ』と言える『フレイヤ・エリミネーター』を開発する。

まさに<アインシュタイン>の名に相応しい頭脳を持っているらしい。

しかし、日本人に対して、未熟な知識から来る恐怖心で差別的な意識を持つ。

俺からすれば、ただの根暗な貧乳としか映らないが……。

異世界の食べ物を使えば何か変えられるか?

そして最後は<リヴァル・カルデモンド>中途半端に跳ねる前髪を持つ男子生徒。

凄くどうでも良いです。



「ルルーシュとナナちゃんは知っているだろうし、私はさっき自己紹介したから良いよね」

「えぇ、美人はシッカリと覚えられますんで」

「あら、煽てるのが上手ね~」



最後に俺の紹介を改めて終えた後、本格的に歓迎パーティーが始まった。

若干、初対面の壁を感じるシャーリーに詰め寄られて、美少女の良い匂いを至近距離で感じつつ、ルルーシュの過去を当たり障りのない範囲で聞き出される。

ニーナは少し離れた所でミレイと話しており、最後まで挨拶以外の言葉を交わす事はなかったが、それは一人で寂しく用意された物を食べているリヴァルと同じ様な物だった。

ルルーシュはナナリーの我侭に振り回されるので忙しく、構っている暇が無さそうに忙しく世話をしている。

シャーリーの話しも一段落して一人になったので、とりあえず食事だけでも済ませておこうと料理に被り付いた。

終始和やかな空気の中で歓迎会は楽しく進み、気が付いた頃には時間も遅くなった事で、主催者でもあるミレイは歓迎会の終了を宣言する。

後片付けもそこそこに、全員が自分お部屋に戻ろうとした時、ナナリーが意を決した様子で声を上げた。



「あの、お兄様!」

「どうしたんだ、ナナリー」

「あの、折角再会したんですから、また三人一緒に寝たいです!」

「あら、ナナちゃんってば大胆ね」



思い掛けない言葉に何処と無く嬉しそうな声を出すミレイだったが、ルルーシュは良い顔をしない。



「しかし、この歳になって一緒に寝るなんてのはな……」



断ろうとした雰囲気を逸早く察知したナナリーは残念そうに肩を落とす。

それを見ていたミレイが助け船を出した。



「良いじゃない、ルルーシュ。一緒に寝てあげたら?」

「仮に寝るとしても、俺やナナリーの部屋では狭くて寝れませんよ」

「……俺の寮の部屋も一人用のベッドだったな」



何とか断る理由を探したルルーシュだったが、ミレイの更なる言葉に逃げ道を塞がれる。



「じゃぁ、ここで寝れば良いじゃない」

「えっ、ここで?」



今まで歓迎会をしていた部屋は広く、十分に寝室として利用できるだろう。

辺りを改めて見回しながら言うミレイの言葉は、ルルーシュの逃げ道を塞いでいく。



「お皿とかは隣のキッチンに押し込めば良いし。いつもと違うお泊り気分で使えるわよ」

「さすがミレイさんです!」

「ふふふ~、もっと褒めても良いわよ。ナナちゃん」



楽しげに笑い合うナナリーとミレイを見て、断れないと理解したルルーシュは俺へ視線を向けて溜息を付いた。

仕方なくシャーリーの手伝いの元、食器を片付けた後に布団を運び込む。

手伝いを終えたミレイ一向は、ある程度挨拶を交わして部屋を出て行った。

仕方なく寝る準備としてパジャマに着替えた俺達だったが、ルルーシュはナナリーを軽く叱り始める。



「ナナリー、あんまり我侭ばかり言っては駄目だろう」

「だって、久しぶりに会ったんですよ? 懐かしくて……」

「寝るだけなんだから良いじゃないか」

「お前もあんまりナナリーを甘やかしたら駄目だろう」



矛先が俺に向いた。

しかし、今はシャーリーの匂い、と言うか性欲の対象になる女の匂いを長時間嗅いでから興奮が冷めない。

犯せるかどうかで判断すれば、ナナリーも獲物の一人として捕らえられる。

既に部屋は片付けられ、布団も敷いて外堀を埋められた状況。

ルルーシュも寝巻きに着替えているので、ここで取り止めにはならないだろうがダメ押しも必要だろう。



「別に毎日じゃないんだから良いじゃないか」

「そうですよ、お兄様。今日は再会を祝してって感じで!」

「……はぁ、分かったよ」



折れるしかないルルーシュの言葉を聞いて、俺とナナリーはハイタッチを交わした。



「やったな!」

「はい!」



歯磨きの為にキッチンへ連れて行かれたナナリーを見送り、俺は能力で出した水を元々置いてあった物と摩り替える。

一つはルルーシュ用の睡眠を深くする物。

もう一つはナナリー用の、意志を混濁させて操る物。

こんな効果を持っている物は異世界であっても自然には存在しないが、例によってドラゴンっぽい肉のカツと同様に加工済みの品。

それは料理されたのではなく、生成された物だ。

要はマジックアイテム。

主に経口摂取の物で、制約も合わさって人体に害は無い。

効果の程は過去に確認済みだ。

昔、廃校で生活をしている時に興味本位で試した事があり、その時は何の問題も無く効果を発揮。

その上、副作用も無く、依存性も無さそうだった。

後はルルーシュとナナリーが飲むのを待つだけ。



「ただいま戻りました」

「じゃぁ、俺も歯を磨いて来ようかな」

「広いんだから一緒に行けば良かっただろ?」

「そう言う事は先に言ってくれよ。いつも廃校では別々に行ってただろ」

「あぁ、そう言えばそうだったな」

「んじゃ、行ってくる」

「あぁ」

「はい」



最初に誘って来なかったから良かったものの、本当に誘われていれば水を摩り替える口実を考えなければいけない。

ルルーシュが忘れていて本当に良かった。

そして、短い歯磨きから戻ってくると二人揃って布団の上で待っており、俺が座るとナナリーは待ってましたとばかりに話し始める。

それは○等部での出来事や、友達の話に年功行事での出来事。

話す時の表情が嬉しそうで、見ているルルーシュも微笑んでいた。

しかし、話題が一人で抜け出して周辺の散策を行なっている物になると笑みも消え、心配そうな物に変わる。

察知したナナリーが「しまった」と思う暇も無く、またも説教が始まってしまったが怒られていても楽しそうな笑顔が消えず、久しぶりの集まりがどれだけ嬉しいのかが表情で分かった。

それを見て何を言っても駄目だと思ったルルーシュは置いてあった水で喉を潤し、少しして眠そうな表情に変わる。



「ふぁ……、何か疲れた」

「車で長時間移動しましたもんね。もう寝ても良いですよ。お兄様?」

「ナナリーが大人しくしてくれれば、もう少し話せたんだけどな」

「あぅ、御免なさい」



説教を止めたくて言った言葉に、鋭い切り返しを受けたナナリーは胸を押さえる。



「まぁ、今日で最後と言う訳でもないし、もう寝ようか」

「まだ話したい事は一杯ありますけど、眠そうなお兄様を放っておく訳にもいきませんね」



のろのろと布団の中へ潜り込んだルルーシュを見て、同じく布団の中へ入ったナナリー。

俺は壁にあった電気のスイッチを切り、横目でナナリーが水を飲む姿を確認してから布団へ入った。

就寝の挨拶をお互いに交わし、部屋の中は暗闇と静寂に包まれる。

どこかとは違って一つしかない月が室内に差し込む中で、俺はタイミングを図って息を潜めた。

暫くして月明かりのみが照らす中で、一人起きる。



「ルルーシュ……は、もう寝たか?」



意外に行儀良く肩まで布団を掛けて眠っているルルーシュは、声を掛けても寝息しか聞こえない。



「ナナリー、起きてるか?」

「……はい」



一番の目的であるナナリーにも声を掛けてみると、感情を感じさせない声が返ってきた。

先程の元気な姿を思い出せば、水の効果の高さが知れると言うもの。

布団に入ったままで、こちらへ向ける顔も無表情で何も感情を浮かべていない。



「こっちへ来い」

「……はい」



命令を下せば、手と腰を使って寄ってくる。

手を伸ばせばすぐ掴める位置まで来たので、ナナリーを正面から抱き締めた。

腕の中にすっぽりと入る大きさの身体は、思ったよりも肩と腕の筋肉がある。

ナナリーの車椅子は手元の変な球体で動かす種類だが、散策を頻繁にしているとも言っていたし、タイヤを掴んでの移動も行なっているのかも知れない。

背中の筋肉も引き締まっている感じも受けるが、正面の胸の感触は実に慎ましやかだ。

年齢相応の大きさと言っても良いだろう。

小さな背中を抱いていた手を下せば、薄いパジャマ越しにショーツに包まれた小さな尻が掌に収まった。

指をグニグニと動かせば、固めの弾力が感じられる。

そのまま揉んでいけば、シッカリと下着の役割を果たして尻を包んでいたショーツが谷間へ追いやられていく。

完全に尻肉がズボンの中で出されると、パジャマ越しであってもサラサラの感触が返ってきた。

満足行くまで尻を揉みながら髪の匂いを嗅いだ後、抱き締めたままで押し倒す。

それから身体を離して、再度ナナリーに命令を下した。



「パジャマを脱ぐんだ」

「……はい」



無表情を保ち、自我を封じられたナナリーの細い指で、女の子らしいパジャマのボタンが外されていく。

徐々に現れてくるのはキャミソールに包まれた身体。

透ける生地の向こうには、僅かに膨らんだ胸が布を押し上げていた。

仰向けに寝たまま俺の顔を見つめながら、指示に従ってキャミソールさえも捲り上げる。

直接見るブリタニア人特有の肌は透ける様に白く、穢れを感じさせない。

乳首も色素が薄く、月明かりの下では殆ど乳輪の境目が分からなかった。

ささやかに膨らんだ胸は呼吸の度、上下に動いている。

そして、壊れ易い物を触る様に手を伸ばした。



「…………」

「この大きさでも、ちゃんとオッパイって感じの柔らかさだな」



胸を触られても何一つ反応を返さず、無意識に息を呑む事すらしないで胸を揉まれ続ける。

大胆に指を動かせる程の大きさは無いが、それでもナナリーの胸を揉んでいると言う興奮は大いに感じられた。

全体を撫でつつ、目立たない乳輪から乳首を摘んで捏ねれば、生理的な反応が返ってくる。

未だ幼く性的に成熟していなくとも、刺激をされると硬さを増す程度には成長している様だ。

ひっそりと縮こまっていた両乳首が少しだけ摘み易くなり、人差し指と親指で捏ね繰り回す分には何の問題も無くなった。

それに気を良くした俺は、顔を近づけて吸い付く。



「…………」



パッと見で小さかった乳首は、俺の口内に入っても小さい。

僅かに汗の味を感じるが、それ以上にナナリー自身の体臭が至近距離で感じる。

本当なら味等無いにも等しいとは理解していても、精神的な満足感と美少女の意識を操って乳首に吸い付いていると言う現実が興奮を高めた。

陰茎も大きさを増し過ぎて、もはやパジャマの中ですら狭苦しい。

名残惜しみつつも顔を離すと、小さな乳首が唾液で光る。

ついでにズボンから反り立つ性欲の象徴を開放した。



「さて、次はいよいよメインだ」

「…………」



可愛い柄のパジャマが包む下半身は肉付きが良いとは言えないが、太股から辺りからは平均的な太さを持っている。

足が動かないナナリーに代わって、ズボンに手を掛けてスルスルと脱がしていけば柄物のショーツが現れた。



「おっ!?」



本来ならシッカリと股間を包んでいる筈のクロッチは、先程尻を揉んだ所為で少し横にずれており、片方の大陰唇が既に見えていた。

しかも、秘裂にも食い込んで性器自体の形がハッキリと分かる。

期待に震えそうな手を押さえ、ゆっくりとショーツを下げて行く。



「ほぉ……」



無表情なナナリーに見つめられながら、歓喜の声を漏らして秘裂を晒した。

年齢的に陰毛一本無い綺麗な股間は処女の雰囲気を漂わせる。

下半身を覆っていたショーツをパジャマごと脱がし切り、拘束を解かれた細い足を広げた。

股間に鎮座する秘裂は引っ張られる筋によって開き、膣口を外気に触れる。



「っ……」



流石にここまでされれば眠っている本能が警告を発したのか、少しだけ身を強張らせるナナリー。

月明かりしかない為にイマイチ良く見えないので、股間に顔を近付けて至近距離で見つめる。

僅かに開いた秘裂から見える膣口は小さく開閉を繰り返し、明らかに指一本すら入らない大きさで、柔軟性を考慮しても陰茎は入れられそうも無い。

上に見える淫核を包んでいる包皮も大陰唇に埋もれて余り目立たず、ひっそりと息を潜めていた。

小陰唇の発達は殆ど無く、全体的に地味と言えば地味。

それも処女の物と思えば、一つの魅力でもある。

とりあえず今は挿入を出来そうも無いが、反り経つ陰茎の興奮も治めないといけない。



「ナナリー、ちょっと舐めてくれ」

「……はい」



仰向けに寝ていたナナリーに向かって陰茎を突き付ければ、無感情の返事をしてから腕の力のみでにじり寄ってくる。

そして、冷たく細い指で根元を掴むと、小さな口から舌が出て来て亀頭を舐めた。



「おぅ!」

「…………」



俺の声に反応を示さずに、言われた通りの行動を淡々と続けるナナリー。

鈴口の真下辺りを舌が這い回って唾液が塗りたくられていく陰茎は、女の子の小さな手の感触が合わさってカウパー液を滲み出させる。



「うっ、もっと先の方を口に、含んで、ア、アイスを舐める様に、してくれ」

「……ぁむ」



小さな唇を目一杯広げたナナリーは、カプッと擬音が聞こえそうな動作で亀頭を咥えた。

口内でも舌の動きは止まらず、鈴口を中心に這いずり回っている。

自然とカウパー液を味わう羽目になったナナリーだが、無表情は変わらない。



「くふっ、唇を窄めながら、一番張っている所を、締め付ける様に、じょ、上下に頭を動かすん、だ!」

「…………んむっ」



流石に小さな口内では陰茎を根元まで咥え込めないだろうと思った俺は、亀頭だけのフェラの動きをさせた。

口を一杯に開いても幅の広いカリには歯が当たってしまい、唇に比べれば強い刺激を伴うも、それすらも快感として受け取れる。

指示通りに動き始めたナナリーに、自分勝手な行動を強制しているせめてもの礼として、寝転がって裸の下半身を引き寄せた。

横を向いた69の体勢になってから腰を抱き、力なく伸ばされていた足を上になっている方だけ持ち上げ、再び股間を広げる。

露出した秘裂に指を当てれば、性器を触られたナナリーは身体をピクンと小さく跳ねさせた。



「っ…………」



頭の動きが止まらない事を確認し、大陰唇のぷにぷにとした感触を堪能しながら性感を引き出す様に指を動かしていく。

秘裂を開きつつ、膣口の縁に指を這わせて異物への感覚に慣れさせる。

粘液が少ない所為で若干突っ張った感触が返ってくるが、なるべく痛みが無い程度に力を入れて小陰唇を指先で弄ぶ。

ある程度刺激すると、淫核を包皮の上から摘んだ。



「んっ…………」



最初に触った時よりも腰を前後に痙攣させたナナリーの身体は、確実に快感を目覚めさせていく。

ぷるんと揺れた尻、さらさらで細く白い太股が揺れるのを視界に納めながら指は性器を弄り続ける。

形を変えられる大陰唇は性的な刺激を受け、愛液を流し始めた。

月明かりに光る卑猥な光沢が、膣口を弄ぶ指に絡み付く。

決して処女膜を傷付けない様に気を付け、慎重に膣内を探った。

グネグネと蠢くヒダに絡み付かれる感触は、目測通りに指先だけでも強く締め付けてきる。



「ふぅ、ん…………」



陰茎を入れられないのならば、せめて性感だけは開発しておこうとGスポットを探す。

軽く曲げた爪の先にすら引っ掛からない薄いヒダを掻き分け、白い腹の内側から指を動かした。



「んっ!」



少し探る程度で膣壁とは違ってコリッとした感触を受け、そこを刺激した途端にナナリーは腰を前後に大きく揺らす。

アッサリと見つかった胎内のGスポットと、硬くなった淫核を同時に捏ねて更に性感を刺激した。



「んっ、んんっ!」



自我を封じられて、性感に腰を振る姿は淫猥極まりない。

下半身が痙攣を繰り返して愛液を周囲に飛び散らせている状況の陥っていても、ナナリーは頭を振って唇でカリを扱く。

亀頭は口内の生暖かい感触に包まれ、小さな舌が這いずり回る。

唾液が漏れるのも構わずに、ジュルジュルと陰茎を咥え続けた。



「うっ、くほっ、ナナリー、もう少し吸ってくれ」

「んむっ……」

「うっ!?」



精液が上がって来た気配を股間に感じ、スパートを掛けさせる為にナナリーへ指示を追加する。

快感を我慢している陰茎にとって吸い付きが思った以上に気持ち良く、すぐにでも暴発してしまいそうだ。

せめてもの抵抗として股間に力を入れても、圧力で張ったカリを唇で扱かれた刺激が大きく、絶頂へと上っていく。

送られる快感と無意識に張り合い、弄っていた淫核とGスポットも反射的に力を込めて刺激してしまう。



「んっ!?」

「うぉっ!?」



女の身体で最も敏感な性感帯を二箇所も同時に強い刺激を受けたナナリーは、陰茎に塞がれた口から声を漏らした。

限界間近だった所に不意の刺激を受け、上がって来た精液の濁流は止められそうにない。



「うっく! ナナリー! 咽ない様に気を付けて、ストローから吸い上げる様にしろ」

「うっ、ぅんっ……」



もはや我慢は無理と悟った俺は、最後の指示を言い放った。

ナナリーの小さな口内で陰茎は吸い上げられ、精液も股間から力が抜けた事で勢い良く上がっていく。



「出るっ!!」

「んくっ!?」



突然口内で射精を受けたナナリーだったが、指示に従って咽ない様に気を付けながら吸い付く動きを止めずに受け止めていく。

まさに睾丸から精液を吸われる感覚が、絶頂の快感と重なって思考を白く染めた。

目を開いている筈なのに見える物は何も無く、陰茎からの性的な快楽と指先に感じる生暖かくて柔らかな膣内の感触のみが身体の感覚を支配する。

そんな状態にあっても淫核と胎内を弄る指は止めず、性感帯を攻められたナナリーも腰を震わせて絶頂に達した。

潮を軽く吹き、布団も汚しながら自我の無い身体が快感に身を弄ばれ、小さな胸を可愛く揺らして厭らしく腰を振る。

俺は精液を吸い出される刺激に思考を焦がした。



「うっ……おぅ……」

「んっ、んっ……」



短い絶頂から帰って来る頃には射精も終り、陰茎の吸い付きも心成しか緩やかになっていた。

思い掛けない攻めを受けた俺は何となくナナリーの顔を見やると、頬を膨らませ、絶頂で蕩けた目を向けて見てくる。

追加の指示を出して居ない所為で出された精液は口内に留まり続け、無表情ながらも扱いに困っている雰囲気があった。



「飲んでくれ」

「…………」



待機していたナナリーは、苦いと聞く精液を眉一つ動かさずに飲み込んでいく。

細い喉がコクコクと上下に動き、男の種が胃の中へ流し込まれた。

陰茎は咥え込まれたままだったので、精液を飲み込む動作で動く舌に亀頭の裏側が舐められる。

絶頂直後に小さな快感を受け、尿道に残った最後の雫が吐き出された。

大陰唇から漏れ出していた愛液の量を見た俺は、ナナリーも絶頂に持って行く事が出来た達成感が湧いてくる。

軽く疲れた腰を小さな口から離し、後始末をしなければならない。

流石にこのまま朝になっては、隣で寝ているルルーシュの追求は避けられなくなる。

おまけにナナリーの口の中へ思う存分射精をした今、賢者タイムの冷静な頭では妹を大事にしている兄への極僅かな罪悪感も沸き上がって来た。

しかし、性欲に思考を支配されていたのだから仕方が無いと、免罪符にならない免罪符を自分で付ける。

とりあえず潮と愛液が染み込んだ布団を軽く拭き、ナナリーの口元も綺麗にしておく。

無表情の美少女が成すがままされている顔を拭いていると、何処かペットの世話をしている気分になった。

手近にあったタオルで痕跡が分からなくなるまで掃除をしていれば、夜もかなり深まって暗闇が室内を包む。

元々、月明かりだけだった所為で、雲が掛かってしまえば殆ど見えなくなってしまった。

辛うじて痕跡が見えなくなる程度には排除できたが、後は寝る事しか出来ないだろう。

乱れていたパジャマを手探りで直させた後に、能力で出した人形状態を解除する水をナナリーに飲ませ、更に睡眠を促す水も飲ませた。



「んぁ…………」

「おやすみ、ナナリー」

「ふぁ……、おやすみ、なさい……」



自我を取り戻した瞬間に襲ってくる強烈な眠気に抗えないナナリーは即座に瞼を落とし、朦朧とした意識の中、辛うじて返答をしながら布団に倒れこんだ。

風邪を引かない様に布団を肩まで掛けてやり、俺も布団の中へ潜り込む。

今日は随分と忙しかったが、今後の拠点を手に入れられたのは嬉しい事だ。

しかも、近くには犯し甲斐のありそうな美少女が何人も居る。

ルルーシュには勘付かれない様に気を付けないといけないものの、そこだけを注意していれば問題は無い筈。

後は友人らしく、尚且つ利用価値があると思わせれば、何をするにも近くに置きたがるかも知れない。

生徒会メンバーの他にも、ルルーシュを中心として人物関係が築かれるのなら、適度に近くの立ち居地を維持するのは必須。

意外に、情に厚い性格を利用すれば、きっと上手く行く……と、信じるだけだ。

久しぶりの埃臭くない新品のシーツに包まれ、温かい温度に包まれながら、ナナリーの意識の様に暗闇に落ちて行った。











翌朝。

目覚まし時計の騒がしい音に目が覚める三人。

ルルーシュとナナリーは水を飲んだ後遺症は当然無く、逆に心地良い目覚めで起きる。



「んっ、あぁ……、もう朝か」

「んぅ…………、ふぁ、……おはようございます、お兄様」

「あぁ、おはよう、ナナリー」



最初に視界へ入ったルルーシュに挨拶をした後、俺にも声を掛けてきた。



「おはようございます」

「あぁ、おはよう」



チラリと視線を動かして布団に染み込んだ愛液の後を確認したが、完全に乾いて痕跡は分からない。

ナナリー自身も口の中と胃から精液の匂いが上がっている様子も無く、至っていつも通り。

すっきりとした寝起きで朦朧としておらず、足が動かなくても自分で出来る事はテキパキと行っていく。

朝食を作りに行ったルルーシュの分まで布団を畳んでやり、次は俺の布団の番だと眼の前に座る。



「テーブルを拭いてくるよ」

「お願いします」

「はいはい」



昨日、テーブルの上は一応片付けたとは言え、細かな拭き残し思いの他あった。



「……あっ」

「えっ、何ですか?」

「いや、何でもないよ」

「そうですか?」



拭いていて気が付いたが、今使っているタオルはナナリーの愛液を拭いた物だ。

しかし、別段不潔でもないイメージがあるので、最後まで使う。

ナナリーがテーブルに自分の愛液を塗りたくられたと知れば、どんな反応をするだろうかと想像するのも一つの楽しみだ。

見た目には汚れが無くなった頃、ルルーシュも朝食を持って帰ってきた。



「食事が出来たから、ナナリーを車椅子に乗せてくれ」

「おぉ、分かった」

「お願いします」



両手が塞がっているルルーシュに代わって、抱き上げて貰おうと両手を伸ばしてきたナナリーを正面から抱き締めて持ち上げる。

昨日散々弄り回した身体でも、疲労が取れた所為で性欲も復活した俺には欲求を隠す事に少し苦労した。

男の俺よりも柔らかく、触れば少女から大人へ変わりつつある感触。

本格的に触ったのは胸と性器だけであっても、ナナリーにとって見られたくない場所は全て見た上に弄り回した。

昨日の出来事を思い出してしまうと、朝立ちをしている陰茎が更に大きくなりそうだ。



「よっと……」

「有難うございます」

「いやいや、美少女を抱えられて役得だからな」

「……ナナリーから離れろ」

「もう、お兄様ったら……」



ルルーシュの遅すぎる警戒を呆れた様に咎めるナナリー。

これも廃校で寝泊りしていた頃に何度もやった遣り取りで、言い終わった後は誰からでもなく笑いが湧いた。



「うふふ、お兄様、もうお腹ペコペコです」

「くくっ、あぁ、分かったよ」

「さ~て、久しぶりの遣り取りも終わった事だし、久しぶりのルルーシュの手料理を食べるか」

「本当はカツ定食が良いんですけど……」

「……ナナリー、朝から油物は身体に良くないから諦めなさい」

「は~い」



すっかりドラゴンっぽい肉の魅力に嵌まったナナリーの言葉に、今度はルルーシュが呆れた。

そして、やっと付いた食卓では、今日の予定を教え合う。

二人は元々生徒なので普通に授業があるものの、俺は転入生。

参加するのは明日からなので、今日は校内の案内をすると教えられた。



「ん、ルルーシュとナナリーは授業だろ? 誰が案内してくれるんだ?」

「あぁ、それはミレイ会長がするらしい」

「生徒会長って忙しいんじゃないのか?」

「いや、合法的にサボる口実を貰って喜んでたよ」



生徒会長なのに、と溜息混じりに教えてくれる。

思ったよりも早くミレイと二人きりになる機会が訪れた。



「会長自ら案内してくれるんなら、間違いも無いだろうな」

「まぁな」



朝食も終り、ナナリーとルルーシュへ能力で出した弁当を手渡して、俺はクラブハウスの前でミレイを待つ。

既に授業が始まっているので閑散とした周囲は、人が一人も居ない。

しばらく寂しさを感じていると、ミレイが息を切らせて走ってくる。



「はぁ、はぁ、はぁ、御免なさい。待たせちゃって」

「忙しかったんじゃないですか?」

「はぁ、良いのよ。ふぅ、別に大した用事でもないし。はぁ」

「そうですか」



余りにも息を切らせて言葉も続かない感じに、チャンスと思った俺は水を出して渡す。



「あ、これどうぞ」

「あら、ふぅ、気が効くのね。ありがたく、ふぅ、頂くわ」



突然出した水だが疑う事も無く、アッサリと口を付けたミレイ。

細い喉が上下する度に、異世界の飲み物が体内へ流されていく。

まるで昨日の、精液を飲むナナリーを思い出す光景だ。

水を飲み干したミレイは、渡らされたビンを珍しそうに眺めた。



「随分と手の込んでるビンね」

「えぇ、何か職人の手作りなんだそうで」

「へぇ、綺麗ね」

「何だったら上げますよ? まだありますし」

「本当に!? 有難う」



異世界から出せる物は人体に害の無い食べる事が出来る物と言う制限があるものの、これは目的の物だけを出す訳ではない。

水を出そうとすれば虚空から滝の様に出てくると言うのは流石になく、一定の品質を持ったビンに入れられて出てくる。

料理に関しても同じ事が言え、食器類は付属品として判断されているらしい。

ともかく、今大事なのはミレイが飲んだ水の効果が出てくるのを待つ事。

生徒が多い校内でも、人が居ない場所は必ずある筈。

ある程度時間が経過した後に、そこへ連れて行かせれば後はこっちの物だ。



「じゃぁ、案内をお願いします、会長」

「えぇ、任せておいて!」



移動の前にミレイは貰ったビンを生徒会室へ置いてから、改めて案内が開始された。

右を見れば音楽室だの、左を見れば視聴覚室だの、色々な専門の教室を教えて貰う。

他にも休み時間に生徒が屯している場所や、昼食を食べるのに最適な場所まで。

普通の学校案内では決して知りえない穴場的な場所まで教えてくれた。

最終的には屋上へ案内をされ、穏やかな風を感じてミレイによる案内は終わった。



「ふぅ……、いつ来ても良い風ね」

「そうですね~」



強めの風に目を細めて髪を弄ばれているミレイは、風圧によってヒラヒラと捲れるスカートを気にしている様子は無い。

アッシュフォード財閥の孫娘と言う事もあって、フリルが下品にならない程度に付いた高そうな生地が見える。



「そう言えば、ビンを貰ったお礼がまだだったわね」



フェンスに手を付いていたミレイが俺へ振り向くと、やっと今回の最大の目的に触れた。

あの水の効果が発揮されるのはすぐだが、流石に人通りがある校舎内で性的な行いは出来ない。

見付かれば即退学もありうる。

そして、飲ませた水の効果は、『他人の願いは聞かないといけないと思わせる』と言う物。

言うなれば軽い洗脳だ。

幾ら人体に悪影響が無い物しか出せなくとも、行き成り好感度が上がってしまえば何らかの疑いを掛けられる。

特にルルーシュとナナリーは俺の能力を知っているので、真っ先に疑いを掛けてくるのは明白。

それ故に深い洗脳はしたくても、出来るにも拘らず遣れないのだ。



「それじゃ、パイズリをしてください」

「えぇ……パッ、パ……、えぇ!?」



思い掛けない要求に驚きを隠せないミレイ。

釣られて復唱しそうになったのを止めた所を見るに、知識と知っていても処女の固い羞恥心で言い切れなかったみたいだ。

財閥の跡取りとして社交界に出入りをしていても、初心な心はまだ穢れていないようで何より。



「お願いします」

「で、でも……、あっ、他の事じゃ駄目かしら? ほら、お金とか!」

「駄目です。俺はミレイ会長にパイズリをして欲しいんです!」



会ったばかりで付き合いも薄い男にこんな事を言われれば、普通は見下す視線を送って帰る筈。

特にミレイは思った事を素直に言うタイプだと、昨日今日の会話で判明している。

俺の立場はルルーシュの友達とは言っても単なる転入生なので、本心を隠して対応する理由も無い。

しかし、今のミレイは怒る事も帰る事も無く、ビンのお礼を一番に考えている。

飲ませた水の『他人の願いは聞かないといけないと思わせる』効果が、貞操観念と羞恥心の間で揺れ動いている様だ。

気に入ったビンを返す選択肢は最初から無く、貰った手前強く意見を言えない。

こんなに動揺するミレイは、普段の態度を知っている者なら驚くだろう。

俺の顔を上目遣いで覗き見ても意見を変えないと判断したらしく、顔を赤くしながらも眼の前で跪いた。



「じゃ、じゃぁ、はい! どうぞ!」



完全にやけくそ気味に胸を張って差し出してくる。

膝立ちで両手を後ろへ回し、赤い顔は横へ背けられていた。

パイズリを承諾したが、是が非でも自分ではしないと意思を示す。



「ミレイ会長がしてくれないのなら、俺が胸を触る事になりますけど良いんですか?」

「うっ……、うぅ……」



直視したくない現実を突きつけられて、言葉を詰まらせる。

自分ではやりたくない、しかし、しなければ胸を触られ、更には確実に揉まれるだろうとハッキリと認識するミレイ。

顔は横に向けたままで薄く開けられた眼はズボンの中にある俺の陰茎へ向けられ、生地の上からでも膨らんでいる様子を確認して更に頬を赤く染める。



「くぅ~……、わ、分か……、いや、やっぱり駄目!」



揺れ動く心境は言葉と表情で惜しみなく伝わってくる。

その結果、ミレイは自らパイズリをする羞恥に避け、胸を揉まれる羞恥を取った。



「わ、私はこのまま動かないから、貴方がしてちょうだい」

「良いんですか?」

「決意が変わらない内に、早くやって!」

「分かりました」



切羽詰った要求を受けて近付けば、ミレイは身体をビクリと跳ねさせた。

そして、制服のネクタイに手を掛けて、脱がしていく。



「うぅ……」



厚めの黄色いジャケットのボタンを外し、金の校章が入った緑のネクタイを解いてからブラウスのボタンを外しに掛かる。

徐々に見えてきたブラは柔らかい色合いの赤で、普段のハキハキした性格を現しているのかもしれない。

谷間を作っている巨乳は日が当たらない箇所である為に白く透き通り、染み一つなく綺麗な肌を保っている。

ブラウスを左右に広げ、最後はブラを外しに掛かった。



「っ!?」



顔を背けてなるべく現状を見ない様にしていたが、流石に服を脱がされては肌寒さが増加し、ブラを丸出しにしていると感じて身体を跳ねさせる。

背中側にあるブラのフックを外す必要があるものの、跪いたミレイの体勢の関係で難しい。

とりあえず胸を取り出さない事にはパイズリも出来ないので、手っ取り早く肩紐を下した。

そして、生徒達が授業を受ける学校の屋上で、生徒会長である財閥の孫娘が日の下で巨乳を露出する。



「うっ!?」



ブラを引き下した反動で大きく弾む胸は、たぷんと幻聴が聞こえそうだ。

頂点に息衝く濃い目のピンク色をした乳首が、白い肌と比べれば目立つ。

ミレイの準備が出来たので、次は俺の番だとズボンを下ろした。

反り立つ陰茎は天を向き、期待に張りを増させる。



「ひっ!?」



ベルトを外す音を聞いたミレイが、恐る恐る視線を正面に向けると真っ先に見えたのが陰茎。

しかも、赤黒い亀頭のカリは大きく張り出ており、処女が見れば凶悪の一言だろう。

例に漏れずに恐怖心を抱いたミレイは、俺を涙目で見上げた。



「ほ、本当にするの?」

「えぇ、だってお礼がしたいって言ってましたし」

「い、言ってたけど……、もっと――」

「駄目です」



上半身を肌蹴させられて、まるで腕を拘束されている様にも見えるミレイに笑顔で断言をする。

陰茎を胸の谷間へ挟む為に近寄れば、逃げ腰になった。

挟みにくい体勢なので肩を掴んで戻させると、再び顔を背ける。



「うぅ……」

「では、行きますよ」



宣言をした後、持ち上げた胸を左右に少し開いてから腰を近付け、ミレイの巨乳を持ち上げて陰茎を挟んだ。



「ふぁ!」

「おぉ」



最初に感じたのは胸の柔らかさ。

降ろした俺の腕には殆ど力を入れていらず、手首だけで持ち上げている所為で、重く柔らかい感触を余す事無く掌に感じられる。

少し指に力を入れるだけでも容易に沈み込み、返って来る反発も心地良い。

抵抗を示さなくなったミレイの身体は心成しか震えており、被虐心を湧き立てられもする。



「ひぅっ……」

「うっ!?」



陰茎自体が熱いので、ミレイの胸の谷間からは少しばかり冷たい感触が送られてきた。

ムニムニと指を動かす度に、柔らかい弾力に吸収された圧迫を感じる。

巨乳に挟まれた快感は思った以上に良く、腰が勝手に動き始めた。



「ひぃ……、嫌ぁ……」



正真正銘、胸を好き勝手に陵辱される嫌悪感に身の毛を弥立たせるミレイ。

処女であれば当然の反応を返すも水の効果は絶大であり、突き飛ばす程の強い拒否は示せない。

正面から打ち付ける度に、胸がミレイの身体と俺の腰に挟まれて形を変える。

左右から支えている手の付け根には、未だ平常の乳輪の感触があった。

こんな状況で胸を触られても興奮のしようが無いのも納得だが、やはり少しは変化をもたらしたい。



「ひゃっ!?」

「折角だからミレイ会長も少しは気持ち良くなってくてください」

「そ、そんなの良いわよ! ひゃぁ!?」



下から支えていた手を胸の正面を持っていくと、頂点にある乳首を摘んだ。

パイズリから離れた行為にミレイも慌てたが、中途半端に脱がされた制服で後ろへ回していた腕が拘束されてしまい、精々身体を振るぐらいしか抵抗できない。

勿論その程度で手を跳ね除ける事は不可能で、乳首は好き勝手に捏ね繰り回す事が出来た。



「んっ、んぁ!?」



興奮していない状態の乳首は柔らかめのグミの様な感触で、摘めば摘む程に生理的な反射で硬くなってくる。

ブリタニア人特有の白い肌は徐々に赤みを増し、陰茎を挟んでいる胸も張りが増す。

さらさらだった肌も緊張と不測の事態に汗が流れ、滑りが加わって動かし易くなった。



「ぁう! んっ、ふぁ!」



無理矢理性感帯の一つである乳首を弄られたミレイの声に、艶が混じり始める。

決して強く捏ねている訳でもないにも拘らず、反射的な反応と性的な反応が合わさった所為で急速に性欲が湧き上がっていく。

元々感じ易かったのか、今ではスッカリ乳首諸共性的な興奮を高めていた。

横に背けていた顔も正面にある俺の下腹部へ戻り、欲情に染まった視線はチラチラと胸の谷間から顔を出す亀頭に落とされる。

乳首を摘んだままで上下に動かしてパイズリを再開させても、ミレイは露骨に拒否を示さなくなった。

手を跳ね除け様と揺さ振っていた身体も大人しくなり、逆に俺の体へ擦り付ける力も感じる。



「ふっ、俺だけでは気分も盛り上がらないんで、おっ、お願いですから、ミレイ会長も感じてくださいね」

「ひぅん! だ、駄目!」



ダメ押しとばかりに『お願い』をすれば、身体が勝手に快感を受け入れて今まで以上に背を反らせるミレイ。

乳首を持たれて上下に動かされる胸は、谷間を陰茎の形に凹ませて左右からの圧迫を強めた。

快感的にはナナリーのフェラには遠く及ばなくても、視界的にも精神的にもミレイと言う財閥令嬢で生徒会長の胸を使ってパイズリをしているという現実が絶頂へと押し上げてくれる。

精液が上がって来た感覚を股下に感じた俺は乳首から手を離して、快感で張りを増した巨乳を再び左右から持ち上げ、陰茎を強く挟み込む。



「うっ、もうすぐ出ます!」

「ぅん、は、やく、ひんっ、出しちゃって!」



出ると宣言を受けたミレイが視線を下して谷間に埋もれる亀頭を見つめていた。

欲情した眼は潤み、射精を今か今かと待ち受けている雰囲気すら漂う。

激しく上下に動く腕によって胸の摩擦を追加された陰茎は我慢の限界を超え、精液を吐き出し始めた。



「うっ!?」

「わぷっ!?」



勢い良く出された体液は、ビチャビチャと音を立てながらミレイの顔を汚していく。

顔の中心に沿って額から唇、顎を通り、顔まで到達出来なかった物は胸の谷間に溜まった。

粘度が高い事もあってゆっくりと落ちてくる精液もあったが、へばりついた精液が殆どだ。

栗の花の様な独特の匂いはミレイの嗅覚を直撃し、欲情した女の性欲を刺激する。

俺をサッと見上げた後、顔と谷間にから漂ってくる匂いを吸い込み、ペロリと舌で唇の端にあった精液を舐めた。



「ふぅ……、良かったですよ。ミレイ会長」

「っ! そ、そう。それは何よりだわ」



正しく雄の匂いと味を味わい、光悦に浸っていたミレイは俺の言葉にハッとする。

誤魔化す様に自分の胸を見て、あまりの精液の多さに呆れた。



「こんなに出すなんて……」



パイズリをする前と後では、性的な事に対する態度が違っている。

陰茎を見ただけで顔を背けていたにも拘らず、今では胸を丸出しにしていても隠そうとはしていないし、力が抜けて精液の残りが糸を引いて垂れ下がる陰茎を見ても落ち着いたままだ。

余りにも普段体験する事の無い現実離れした行為をされ、逆に冷静になっているのかもしれない。



「え~っと、とりあえず、水があるんでそれで落とします?」

「……今度はしないわよ?」

「良いですよ。もう満足したんで」



再びお礼を求められると思ったミレイはジト目で返すが、射精をした直後では性欲も湧かない。

それは眼の前の、乳首が立った巨乳を精液で汚す美人を見ても変わらなかった。



「それなら、ありがたく頂くわ」

「じゃぁ、はい」

「有難う」



腕が拘束されていたミレイは、一度制服を脱いで上半身裸になる。

糸引く精液に塗れた胸を揺らしながらスカートのポケットからハンカチを出して、水を含ませるのをジッと見ていると不服そうに口を尖らせて視線を向けてきた。



「こう言う時、紳士なら目を逸らすべきじゃないかしら?」

「おっ、おぉ、済みません」

「よろしい」



慌てて背を向けると弾んだ声が返ってくる。

紳士ならビンを上げた程度でパイズリを求めないと思うが……。

何にせよ、何故かミレイの好感度は然程変わっていない雰囲気を感じる。

しかし、女の心は想像も出来ないので、本心はどう思っているか分からない。



「もう良いわよ」



許しが出たので振り返ると、シッカリと制服を身に付けたミレイが立っているが、どこかが先程とは違う。

顔は綺麗に拭かれて精液は残っておらず、服にも染み込んだ痕跡も見当たらない。

姿形は一切変わっていないのに、女としての魅力が高まった気がする。

男を知り、精液を僅かでも飲んだ所為で、精神的に少しは大人になったのかもしれない。



「……美人になりましたね」

「え? えぇ、有難う」



突然褒められて戸惑いながらも礼を言うミレイ。



「あぁ……、おほん。で、学校内の案内は十分かしら?」

「えっ、あぁ、そうですね。ある程度は迷わないと思いますよ」

「そう。良かったわ」



微妙になった雰囲気を散らし、話題を戻す。

元々、学校内の案内と言う名目で連れ回された事を思い出した俺は咄嗟に話を合わせた。

普通なら性的な奉仕をさせられた嫌悪感で好感度は下がるものの、感じてくれと『お願い』した事で身体には半ば無理矢理快感を送られている。

その所為でパイズリをさせられた事実に対して、好意的な感情を受けてしまったのか。

誰でも痛い事ならともかく、気持ち良い事をされて悪感情は殆どが持たないだろう。

事前に欲しい物を貰い、普段の態度も好印象であれば尚更、と言っても数日しか付き合いはないが。

変に突いて機嫌を損なっても困るので、素直に案内をして貰った礼を言っておく。



「態々、忙しい中有難うございます」

「いやいや、転入生の面倒を見るのも生徒会長の仕事なのよね~」



そういうミレイだったが本心ではないと簡単に分かり、すぐに茶化した雰囲気で本音を晒した。



「まぁ、実は詰まんない仕事があったからサボるも口実だったんだけどね」

「知ってます」

「あら、失礼ね」



即答された所為で、腰に手を当てて如何にも『怒ってます』と言う感じで俺を睨んでくる。

しかし、その厳しい表情も即座に笑顔に変わり、いつものミレイらしい雰囲気に戻った。



「それじゃ、帰りますか~」

「そうですね」



授業終りのチャイムが学園に鳴り響き、生徒達の騒がしさが広がっていく校内。

何故か綺麗になったと感じるミレイの後ろ姿に付いていきながら、未来に思いを馳せる。

何の因果かアニメの世界に転生し、あまつさえ人を操る術まで手に入れた。

前世で何の特徴も無い有象無象の人生だったが、やっと俺の物語が始まるのかもしれない。

そんな予感が胸に広がっていた。









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