一級おもらしフラグ建築士・体験版 心依編
第1話
(さて困ったぞ? どうすれば心依にトイレを我慢させられる……?)
心依の様子を窺いながら、ボクはすっかり思い悩んでしまう。
トイレに行かせないために、心依を呼び止めたのはいいものの、そこから何も考えを練っていなかったのだ。
心依がトイレに行ってしまう前に、何としても言い訳を考えないといけなかった。
「ほら、いつもより様子がヘンだったから。どうしても心依に聞いてみたくって……」
上手い言い訳が何も思いつかないまま、ボクは心依へと話しかける。
無理に心依を引き止めた後も、何故かお互いに黙ってしまったせいで、どうしても気持ちが耐えられなかったのだ。
その場に立ち止まったまま、何も言葉を交わそうとしない心依の様子を窺う間も、なかなか上手く口が回らず、段々と言葉を詰まらせてしまう。
心依がトイレへ行きたがっているのを分かっているのに、これ以上どうやって場を繋げばよいか分からず、すっかり困り果てていたのだ……
「あの、先輩……ごめんなさいっ! すぐ戻りますから……!」
タッタッタッタッ……
ボクが言葉を迷っているうちに、心依は気づいたら身を遠ざけていた。
申し訳なさそうに返事を返しながら、そそくさとその場から立ち去って、トイレのある校舎の方に逃げ込んでしまう。
理由もなく呼び止めた後も、抱え込んだ尿意に焦っていたらしい。
「お、おい。心依ってば……!」
段々と遠ざかる心依の後ろ姿に、ボクは思わず呼びかけていた。
腰をくねらせながら、トイレを目指して校舎へと駆け込む心依の様子を目の当たりにしながら、すっかり途方に暮れてしまう。
心依の姿が段々と小さくなって、気づいたら声が届かなくなっていたのだ。
(どうすれば、心依をちゃんと引き止められたんだろう……)
校舎へと入り込んだ心依の様子を見つめるうちに、ボクは思わず気分が沈んでしまう。
心依が尿意を抱えていたのを分かっていながら、上手く引き止められなかったせいで、あっけなくその場を離れて、勝手にトイレに向かっていたのだ。
小さな後ろ姿を見送る間も、無理に引き止めたのを心依がどう思っているか、考えるだけで心配でたまらなかった。
今頃はトイレで用を足しているはずの心依に、どうしてもイタズラを仕掛けられなかっただけでなく、何よりも印象を悪くしたかもしれないと思うだけで、今まで目論んでいたことをどうしても悔やまずにいられない……