一級おもらしフラグ建築士・体験版 心依編
第1話
(心依ってば、ちゃんと走れてるのかな……?)
走り込みを続けながら、ボクは心依の姿をさりげなく見届ける。
明らかに遅れている心依の様子を気にしながら、おかしな素振りを誰かに疑われても困るので、そのままマラソン練習を始めるしかなかった。
段々と離れる心依の様子を窺うたびに、こっちまで不安な気持ちに駆られてしまう……
「はぁっ、はぁっ、はうぅんっ……」
フラフラフラッ……
心依は遅いペースのまま、相変わらず集団の後ろを走り続けていた。
抱え込んだ尿意に苦しめられているせいか、走るたびに腰をくねらせて、あまり膝も持ち上げられそうにない。
さらには上半身を前に倒したまま、ただでさえ小さな身体をますます縮ませてしまう。
どうやら走り込みを続けるのも辛いほど、抱え込んだ尿意に苦しめられているらしい。
(このままじゃ本当に、心依が我慢できなくなっちゃうかもしれないな……)
段々と遠ざかる心依の様子を目の当たりにして、ボクはますます心配を募らせてしまう。
心依がこれ以上、尿意を堪えられそうにないのは明らかだった……心依の小さな身体が段々と遠ざかるのを、これ以上見届けられそうになかった。
すでに後れを取っていた心依が、集団からこれ以上離される前に駆け寄るつもりでいたのだ。
「ご……ごめんなさいっ! どうしてもガマンできなくって……あうぅんっ!」
タッタッタッタッ……
ボクが寄り添おうとした矢先、心依が予想外の行動を取ってしまう。
先を走っている集団へと断りを入れたかと思えば、勝手にマラソンコースから外れてしまったのだ。
身体の向きを変えるまま、トイレのある校舎のある方へと大急ぎで駆け込む間も、すっかり顔を赤くしていた……どうやら他の部員達がいる前で、抱え込んだ尿意を訴えたのが恥ずかしくてたまらないらしい。
ボク達の方へ頭を下げたかと思うと、そそくさと校舎の方へ駆け込んで、ますます自分達から遠ざかってしまう。
(まさか、心依が朝練を抜け出してまで、トイレに行っちゃうなんて……)
心依の思いもしない行動に、ボクはすっかり茫然とさせられてしまう。
まさかトイレで用を足したいばかりに、一人だけでマラソン練習から逃げ出すなど思いもしなかった。
段々と遠ざかる心依の後ろ姿を、周りにいる部員達とともに見送る間も、複雑な気持ちを抱えずにいられない。
朝練が始まる前に、強引に心依を引き止めたばかりに、他の部員達がいる前で恥をかかせたことや、何よりも徹底的な瞬間に立ち会えなかったのを惜しまずにいられない……