一級おもらしフラグ建築士・体験版 心依編
第1話
「あの、心依の代わりに説明してもいいですか?」
すっかり困り果てた心依の代わりに、ボクが部員達の前で説明を名乗り出る。
ただでさえ尿意に苦しむ心依を、あまり追い込んでも可哀相だと思っていたのだ。
周りにいる部員達から視線を向けられる中、さりげなく心依を後ろへと匿ってみせる。
今の心依では、きっとマラソン練習を遅れた理由など言えそうにないはずだ……
「準備体操の時から、心依の調子が悪そうだったのが気になってて……でも、そのままマラソンも走り始めたから、まだ平気なのかなって思ってたんだけど……」
部長への説明を繰り広げる間も、ボクはすっかり思い悩んでいた。
まさか心依が尿意を抱え込んでいるなど、他の部員達がいる前で明かすわけにもいかないので、どう理由を誤魔化せばいいかも考えないといけないのだ。
とんでもない事情を抱え込んだ心依を庇うために、言葉を選ぶのも苦労させられる。
「ひ、ひうぅんっ……!」
カクカクカクッ……
部員達へと話を続ける間も、心依はすぐ傍で震え上がっていた。
その場に立ち尽くしたまま、尿意に苦しむ心依の様子を遠くから見つめるだけで、こっちまで不安な気持ちに苛まれてしまう。
ミーティングまでの短い時間、尿意を耐え忍ぶのも苦しいほど、すでに心依の気持ちが追い詰められているらしい。
その場に休んでいるだけでも、冷え切っているはずの両脚をますます震わせてしまう。
すっかり震え上がっている両脚を見つめながら、心依が尿意を堪えられるまでの間に、何としてもミーティングを切り上げないといけないのだ……
* * * * * *
「それじゃあ朝のホームルームも始まりそうだから、すぐに着替えて教室に戻ろっか?」
ひたすら説明を繰り広げるうちに、ついにミーティングを乗り切ることが出来た。
苦しい言い訳だったかもしれないけど、マラソン練習の時に遅れた理由を、どうやら部長も納得してくれたらしい。
手短に連絡事項を済ませた後、解散を命じるとすぐに部員達が部室へと向かい出す。
朝のホームルームまで時間もない中、これから制服に着替えないといけないのだ。
(……あれ? 心依は一体どこにいったんだ?)
解散する部員達を見送りながら、ボクは必死に辺りを振り返る。
ミーティングが終わった矢先に、気づいたら心依がどこかにいなくなっていたのだ……あんなに短い間に、まさか心依の姿を見失うなど思いもしなかった。
せっかく部長や部員達からも庇ってあげたのに、あと少しで尿意の限界を迎えそうなはずの心依をどうしても逃がしたくないので、無理にでも行方を捜し出さないといけない。
どうやら部室には入り込んでないようなので、心依が行きそうな場所へと脚を向ける……