生贄母学園 体験版
第2話
コンコン、ガチャッ。
「し、失礼します……こ、これは一体!?」
学園長に約束を取りつけられるまま、日曜日に応接室を訪れた千鶴子は、思いもしない代物を目の当たりにさせられていた。
荘厳な雰囲気のある部屋に似つかわしくない、身長計や体重計などが片隅に並べられていたのだ。
目の前に繰り広げられた状況に、思わず驚かされてしまう。
数日前のように、どんな行為をこれから迫られてしまうかと考えずにいられない。
「お待ちしておりましたよ、来栖川さん。もう用意も調っているので、すぐ身体測定の準備に取り掛かってもらえますか?」
その場に立ち尽くす千鶴子へと、学園長はさりげなく挨拶を交わす。
応接室のソファに腰掛けたまま、千鶴子が訪れるのをずっと待ち詫びていたのだ。
すでに準備ができていると踏まえた上で、すぐに身体測定を受けて欲しいと口にする。
「し、身体測定だなんて……まだ気持ちの準備もできてないのに」
モジモジモジッ……
不意に言い渡された行為の内容に、千鶴子はすっかり戸惑ってしまう。
すでに待ち構えていた学園長から迫られるまま、身体測定を身に受けるなど思いもしなかった。
まだ状況も飲み込めない中、本当に身体を調べられるのかと洩らさずにいられない。
心の整理もついていないのに、学園長からおかしな行為を迫られても気持ちが踏み出せそうにないのだ。
「来栖川さん、驚かせてしまってすみません。それでも『保健教材』の役目をこなすために、色々と準備を進めたいのです……それでは
慌てた素振りを見せる千鶴子の様子を窺いながら、学園長はさらに言葉を続ける。
さすがに戸惑っても当然だと踏まえた上で、すでに『保健教材』の役割を引き受けた事実を持ち出しながら、無理にでも身体検査を受けさせるつもりでいたのだ。
未だに両脚を震わせる千鶴子の気持ちを気遣おうと、一緒に待ち構えていた人物の名を呼びつける。
これから控える身体検査を嫌がらないよう、身体検査を手伝ってもらう相手を用意していたのだ。
「初めまして、来栖川さん。執事兼秘書を務めている、童守と申します。身体測定のお手伝いをさせていただきますので、まずはお洋服を脱いでもらえますでしょうか?」
学園長に呼ばれるまま、童守が別室から姿を現してきた。
初対面の千鶴子を相手に、軽い自己紹介を済ませた後、用意したメジャーを両手に構えてみせる。
ボブカットに切り揃えた髪を揺らしながら、同性である自分なら気持ちも許せるはずだと踏まえた上で、身体検査の準備を始めるよう言い放つ。
フルフルフルッ……
「そ、そんな……まさか裸にさせられるなんて」
女性執事の童守から投げ掛けられた言葉に、千鶴子は思わずうろたえてしまう。
顔を合わせて間もないにも関わらず、学園長に言いつけられるまま身体検査を受けるよう迫られて、どうしても思い悩まずにいられない。
まだ心の準備も整ってないのに、すべての衣服を脱ぎ去るよう言われても、すぐには取り掛かれそうになかった。
恐る恐る訴えを始める間も、黒のスーツを見事に着こなすまま、毅然とした振る舞いを見せつける童守の様子を見せられて、気づいたら身をこわばらせてしまう。
まさか同じ女性を相手に、破廉恥な行為を迫られるなど考えられそうになかった。
「……確か来栖川さんは『保健教材』になられたんですよね? もし役目が果たせないなら、特進学級のお話も白紙に戻すことになりますが。いかがいたしますか?」
なかなか身動きを取ろうとしない千鶴子へと、童守はさらに説明を続ける。
すでに『保健教材』としての契約を交わした以上、学園のために身を捧げて然るべきだと言い放つ。
たとえ恥じらって当然な行為だとしても、学園長に言い渡された行為を何としてもやり遂げるつもりでいたのだ。
「あ、あうぅっ……わ、分かりました。すぐ準備いたしますから……」
スルスルスルッ……
突き刺すような童守の言葉を受けて、千鶴子は思わず頷いてしまう。
同性同士なのを良いことに、おかしな行為を遠慮なく迫り出す童守の素振りに圧倒させられていたのだ。
人前で裸体を暴かれるのを恥じらう反面、すでに拒めない雰囲気が作り上げられている事実を思い知らされずにいられない。
重苦しい空気から逃れるためにも、ひとりでに震える手元を堪えながら、着込んでいる衣服を脱ぎ去るしかないのだ。
ワナワナワナッ……
(どうしよう、こんな地味な下着なんて。あまり人前に見せられるものでもないのに……!)
渋々ながら衣服を脱ぎ捨てる間も、千鶴子はおかしな焦りに駆られていた。
いくら『保健教材』として必要な準備だとしても、人前で肌を晒すような状況など恥じらわずにいられない。
とんでもない行為を強要させられながら、すでに逃げ場すら失った事実に、ますます気持ちの余裕を失ってしまう。
身に着けていたジャケットやタイトスカート、さらにはブラウスも肌蹴ると、あっけなく下着姿をさらけ出していたのだ。
露わになった肌に押し寄せる空気のせいで、思わず全身を震え上がらせてしまう。
「一体どうなされました、来栖川さん。まだ準備が整ってないみたいですが……?」
身震いを続ける千鶴子へと、童守はさらに言葉をぶつけてきた。
衣服を脱ぎ去った後、ベージュ色の下着姿を露わにした格好のまま、少しも手元を動かさない千鶴子の素振りへ注意を差し向ける。
全裸にならない限りは身体測定を始められないと踏まえた上で、学園長が望んだとおりの行為を無理にでも執り行うつもりでいたのだ。
「ご、ごめんなさい。まさか下着まで脱ぐなんて思わなかったものですから……ひうぅんっ!」
ヒクヒクヒクッ……
童守に迫られるまま、千鶴子は恐る恐る返事を返してしまう。
下着姿を晒すだけでも大変なのに、まさか全裸にさせられるなど考えられないと思いながら、童守に急かされるまま、身に着けていた下着にも手を掛けるしかなかった。
背中に手を差し向けた後も、ブラのホックを取り外すのも大変なほど、ひとりでに手元が震え上がってしまう。
激しいためらいの気持ちに苛まれながら、それでも間近で待ち受ける学園長や童守のために、どうしても裸体を晒さないといけないのだ。
プチッ、スルスルッ……
(どうしよう、まさか身体測定を受けるために、こんな格好にさせられちゃうなんて……!)
とんでもない状況を押し迫られて、千鶴子はすっかり焦り出してしまう
いきなり身体測定を言い渡されるまま、人前で衣服のすべてを剥ぎ取るような状況など、どう頑張っても気持ちが許せそうにないのだ。
未だに気持ちの整理がつかない中、気づいたら背中の金具を取り外すまま、胸元を覆っていたブラのカップを取り外してしまった。
無防備になった乳房が揺れ動くのも構わず、同じようにショーツまで下ろして、一糸纏わぬ姿を晒していたのだ。
「もう少し顎を引いてください……身長は158センチ、ちょうどですね。お次はあそこの体重計に乗っていただけますか?」
すべての衣服を脱ぎ去った千鶴子を相手に、童守は身体測定に取り掛かっていた。
肌の表面を震わせる様子も構わず、身長計の台に乗せた後、目盛りを頭の頂点へと押しつける。
千鶴子の身長を確かめた後、傍にいる学園長にも聞こえるよう、計った数値をわざわざ読み上げるのだ。
モジモジモジッ。
(一体、学園長は何を考えているの? 私を裸にさせたのも、単純に身体測定をさせるためなのかしら……?)
無防備な格好を少しも取り繕えず、淡々と身体測定を受ける間も千鶴子は思い悩んでしまう。
童守に指示されるまま、身長や体重、さらには座高や胸囲まで計測させられる間も、学園長がずっと様子を見届けていたのだ。
異性の前で裸体にさせられた後、数日前のように破廉恥な行為を迫られてしまうと思い込んでいたのに、まるで生徒達を見守る時のような視線まで差し向けてくる。
はしたない格好にさせられた後、別に何かを迫るわけでもない様子を気にせずにいられない……
「今度は両手を肩の辺りまで持ち上げてもらえますか? すぐにお胸のサイズを計測いたします」
無事に身体検査を終えた後、童守はさらなる行為を迫っていた。
千鶴子の胸元にメジャーを押し当てると、何故か胸囲だけでなくバストサイズまで測り始めるのだ。
両手を伸ばした姿勢を取るよう命じながら、乳房へとメジャーを巻きつけて、トップバストやアンダーバストまで丹念に探り出す。
グイッ。
「ひうぅんっ……! あの。どうして身体のサイズまで測るんですか……!?」
童守から強いられる行為に、千鶴子はすっかり驚かされてしまう。
延々と裸体を晒し続ける状況から脱するため、脱ぎ捨てた衣服をすぐ身に着けたいのに、普通の身体測定ではありえない行為まで押し迫られていたのだ。
執拗に乳房の形状を確かめようとする手つきに、どうしても震え上がらずにいられない。
おかしな状況を学園長に訴える間も、気づいたら乳房のサイズまで計測させられていたのだ。
「来栖川さん、もう少しだけ彼女にお付き合いください。これから『保健教材』の役目をこなすための準備を、本格的に整えたいだけですから……」
慌てた素振りを見せる千鶴子へと、学園長はさりげなく説明を挟み込む。
身体検査を無事にやり遂げた後も『保健教材』として必要な前準備に付き合って欲しいと言い放つ。
千鶴子への説明を口にする間も、露わになった乳房の膨らみや腰のくびれ、さらには丸みを帯びたお尻や秘部にも視線を向けずにいられない。
(いくら何でも、全身のサイズまで調べられるなんて……これから一体、何の準備を整えるつもりなのかしら……?)
フルフルフルッ……
おかしな申し出を口にする学園長に、千鶴子はすっかり思い悩んでしまう。
まさか身体検査と称して、全身のサイズを計測させられるなど思いもしなかった。
不意に向けられる視線に身震いを引き起こす間も、童守は丹念にメジャーを差し向けながらウエストやヒップ、さらには肩幅や胴回りのサイズまで探り出す。
だらしなく垂れ下がった部分などを、一回りも若い童守から間近で見られるだけでも気まずくてたまらない。
童守に身を預けたまま、少しも身を取り繕えず、延々と裸体を晒し続けないといけない状況のせいで背筋が震え上がってしまう……
* * * * * *
「ようこそ、来栖川さん。早速で申し訳ないのですが、注文した服を童守さんと一緒に取りに向かってもらえませんか?」
おかしな内容の身体検査を身に受けた翌週、千鶴子はまたしても応接室へと呼び出されていた。
恐る恐る応接間を訪れると、すでに待ち構えていた学園長と童守が出迎える。
発注した衣装を試着するため、童守とともに百貨店へ向かって欲しいとためらいもなく言い放つ。
「着きましたよ、来栖川さん……すみません、発注した制服の用意をお願いします」
学園長に言い渡されるまま、千鶴子は童守とともに百貨店へと辿り着いていた。
千鶴子を引き連れる形で学生衣料店へ向かった後、すぐに店員を呼び止める。
先週の身体検査を終えた後、全身のサイズを店へ伝えた上で、千鶴子のために特別な衣装を注文していたのだ。
「はい、先ほど取りに向かわれるとお電話をいただきまして……こちらにご用意しております」
スッ。
童守へと挨拶を交わしながら、店員はすぐ衣装の準備へと取り掛かる。
すでに用意してあると踏まえた上で、出来上がったばかりの衣装を千鶴子へと手渡す。
仕立て上がったばかりの衣装を差し出した後、どんな着こなしを見せているかを待ち受けずにいられない。
「ヤダっ、この服って……!」
店員から受け取った衣装に、千鶴子は思わず驚かされていた。
手渡された衣装自体は、千鶴子自身も見慣れた代物だった……衣装の形状を目の当たりにして、どうしても戸惑わずにいられない。
どうして身体検査の後も裸にさせられるまま、全身のサイズを計測させられたのか、とんでもない意味合いをありありと思い知らされる。
気づいたら作り上げられた状況に、思わず身を凍りつかせてしまう。
モジモジモジッ……
(どうして澄恋と同じ制服なんかを……もしかして、私が着るために作られたって言うの!?)
両手で衣装を広げたまま、千鶴子はすっかり思い悩んでしまう。
学生衣料店で用意された衣装は、何と澄恋が普段から着ているのと同じ、翔童学園の制服だったのだ。
白いセーラーラインが特徴の可愛らしい印象のあるセーラージャケットに、ブラウスの胸元に括りつけるための、上品な臙脂色のリボン、さらには太股のほとんどが露わになるほど短い純白のプリーツスカートなどに、これから自分が袖を通す羽目になるなど思いもしなかった。
学園長から仕組まれた行為の気恥ずかしさを、つい思い知らされずにいられない……
「発注したサイズどおりに仕立てておりますが、念のために試着の方もお願いできますか?」
すっかり身をこわばらせた千鶴子へと、店員が気兼ねなく話しかける。
用意した制服が千鶴子の身体に合っているかを確かめようと、何と試着を頼み込んできたのだ。
すぐに試着室へ入って欲しいと促しながら、さりげなく背中を押してくる。
「そ、そんな。いくら何でも、こんな格好なんて着られません……!」
フルフルフルッ……
思いもしない店員の言葉に、千鶴子はすっかり戸惑ってしまう。
まさか母親の身になって、娘の澄恋と同じ制服を身に着けるなど考えられなかった。
いくら頼まれても、はしたない格好など晒せそうにないと洩らす間も、気づいたら声が震え上がってしまう。
学園長の思惑をありありと思い知らされた後、おかしな身震いがどうしても止められそうにないのだ。
「これは『保健教材』になられる来栖川さんのために用意された、言わばあなた専用の制服なのです。学園長もお待ちですので、ぜひ袖を通していただけませんか?」
なかなか試着室へ向かおうとしない千鶴子へと、童守がさりげなく言葉を投げ掛ける。
用意した制服は『保健教材』として大切な正装だと踏まえた上で、何としても試着を済ませるよう言い放つ。
これからは生徒達と同じく制服を着たまま『保健教材』の役目を果たすよう、平然と主張してくるのだ。
(いくら何でも、娘と同じ制服まで着せられるなんて……でも、このまま学園まで引き返すわけにもいかないはずだし)
あまりに考えられない童守の発言に、千鶴子は驚かずにいられない。
いくら『保健教材』の務めだと言われても、まさか学園の制服まで押しつけられるまま、娘と同じ格好を強いられるなど考えられなかった。
おかしな焦りに駆られる中、気づいたら逃げ場を失った事実にも気づかされて、あっけなく両脚を震わせてしまう。
制服を抱え込んだまま困り果てている間に、気づいたら童守や店員が周囲を取り囲んでいたのだ……
「わ、分かりました……くうぅっ!」
ヒクヒクヒクッ。
にじり寄ってくる童守へと向けて、千鶴子は恐る恐る返事を返してしまう。
おかしな雰囲気に苛まれるまま、試着室へと脚を踏み入れるしかなかったのだ。
あまりに考えられない状況を押し迫られても、少しも跳ね除けられない状況を悔やみながら、気づいたら試着室の中へと飛び込んでしまった。
そそくさとカーテンを閉め切った後も、これから袖を通すはずの制服を前に身をこわばらせてしまう。
スルスルスルッ、フリフリッ。
(スカートもこんなに短く詰められちゃって……これじゃ太股も丸見えじゃない!)
仕方なく制服の試着を始める合間も、千鶴子はすぐに手元を震わせてしまう。
明らかに学園の制服だと分かるデザインや、丈の短いスカート穿き込んでいる自分自身の姿を、試着室にある鏡を通してありありと思い知らされる。
母親の身にも関わらず、あまりに考えられない格好など恥じらわずにいられない。
スカートを腰に巻いた後も、考えられない短さについ思い悩まされる。
可愛らしさを強調するような格好など、成人を迎えた後では照れくさい代物にしか受け止められそうにないのだ。
「もうお着替えは済みましたか? 少しだけ丈を動かしますね……」
シャッ。
戸惑う千鶴子も構わず、不意に試着室のカーテンが開けられる。
新品の制服に袖を通した千鶴子の様子を、さりげなく店員が覗き込む。
仕立てたとおりのサイズに出来上がっているか、試着を終えた状態で微調整を始める気でいたのだ。
フルフルフルッ……
(あ、あまり見ないでください……ひうぅんっ!)
ためらいもなく身を寄せる店員の素振りに、千鶴子はすっかり困り果ててしまう。
自分で見るだけでも恥ずかしい格好を、まさか着替えの途中で確かめられるなど考えられなかった。
はしたない格好へと身を通した自分自身の姿を、間近で確かめられるような状況を迫られて、どうしても身震いせずにいられない。
激しく気持ちが揺さぶられる中、袖口やスカート丈を詰められる間もすっかり落ち着きを失ってしまう……
* * * * * *
「もう調整は済みましたか……ふふっ。とても若々しくてお似合いですよ、来栖川さん。それでは学園長もお待ちですし、一緒に学園まで戻りましょう?」
試着室から現れた千鶴子の姿を、童守はまじまじと見つめていた。
注文どおりに仕立てた制服姿が似合っていると褒め称えた上で、さらなる行為を千鶴子へと仕向ける。
何と新しい制服姿のまま、すぐ学園に引き返そうと言い放つのだ。
「そ、そんな。せめてコートだけでも返して……あうぅんっ!」
グイッ。
あまりに考えられない行為を仕向けられて、千鶴子はすっかり困り果ててしまう。
まさか制服姿を晒したまま、学園まで引き返す羽目になるなど思いもしなかった……それでも童守へと預けたコートを少しも着せてもらえず、明らかに学園の制服と分かるような格好のまま、気づいたら学生衣料店を後にしていたのだ。
新品の制服に合わせるように、校章の入った紺のハイソックスや、丸っこい靴先の通学靴まで履かされた後、沢山の人達が行き交う通路を強引に歩かされてしまう。
おかしな格好を取り繕いたいのに、童守からコートを取り返せそうにないのだ……
「ねぇ見てよ、あの女の人……なんでセーラー服なんて着ちゃってるの?」
「うわぁ……確かあの格好、近くにある翔童学園の制服だよね?」
「それにスカートも、あんなに短くしちゃって。あんなはしたない格好、見ているこっちが恥ずかしくなっちゃうわ?」
延々と通路を歩く間、千鶴子の周囲ではおかしな騒ぎが繰り広げられていた。
本来なら少年少女達が身に着けるべき制服を、目の前に姿を現した婦人が年甲斐もなく着込んでいるのだ。
あまりに考えられないような姿を見せつけられて、どうしても視線を離せそうにない。
フリッ、フリッ、フリッ……
(もう母親なのに……まさか娘と同じ制服なんて着せられちゃうなんて。こんな格好なんて、あまり誰にも見られたくないのに……)
次々と差し向けられる、物珍しそうな視線に千鶴子は困り果ててしまう。
母親の身にも関わらず、娘の澄恋と同じ制服姿に身を通した姿を人前で晒すなど、周りから疑われて当たり前だった。
全身を包み込む制服姿に、思わず気が引けずにいられない。
顔をこわばらた後も全身が茹で上がるような気分に駆られて、周りの状況など確かめられそうになかった。
すぐにでも逃げ出したい気持ちに苛まれる間も、童守が傍に付き添うまま、とんでもない辱めから抜け出せそうにないのだ。
「……きゃんっ!?」
ビュルビュルビュルッ、ブワッ。
人目を避けようと百貨店を飛び出した矢先に、千鶴子はとんでもない状況に見舞われてしまう。
外に出た途端に突風を浴びせられるまま、スカートの中身を露わにさせられていたのだ。
丈の短いスカートがあっけなく捲れ上がる感覚に、つい困惑せずにいられない。
スカートの裾を押さえる間もなく、内側に穿いていた下着を見事にさらけ出してしまう。
「あれ、あの女の人。下着だけは普通みたいだよ?」
「いくらセーラー服なんて着てても、中身はやっぱりおばさんみたいだね?」
「一体なんで、あんなミニスカートなんて穿いちゃってるのかしらね……?」
千鶴子が屋外で晒した痴態へと、ますます周囲から注目を浴びせられていた。
可愛らしい制服に不似合いな、ベージュ色のショーツを目の当たりにさせられて、千鶴子のおかしな姿を気にせずにいられない。
どうして学園の制服を着たまま、百貨店や繁華街などを歩き回っているのか、はしたない行動の数々に思わず頭を捻ってしまう。
ワナワナワナッ……
「あ、あうぅんっ……!」
不特定多数の人達から向けられる視線に、千鶴子はすっかり背筋を震わせてしまう。
あまりに考えられない事態を身に受けるまま、耐え難い羞恥に掻き立てられていたのだ。
周囲から浴びせられる言葉が、次々と胸の奥へと突き刺さる。
激しい焦燥感に駆られるまま、これ以上どうしても歩けそうにないのだ。
「来栖川さん、どうしました? あまり学園長を待たせても申し訳ないので、すぐ学園まで戻りましょう?」
なかなか脚を踏み出そうとしない千鶴子を、童守は強引に引っ張り回す。
しっかりと手首を掴んだまま、少しも離そうとせず、無理にでも学園までの道のりを急かしてみせる。
発注したとおりに仕立て上がった千鶴子の制服姿を、何としても学園長にお披露目するつもりでいたのだ。
「そ、そんなぁ。これ以上は本当に……あうぅんっ」
フラフラフラッ……
童守から迫られた行為に、千鶴子はすっかり困り果ててしまう。
はしたない格好をこれ以上見られたくないのに、わざわざ繁華街の方を目指して歩かせるのだ。
少しも人目を避けられない状況のせいで、学園までの道のりを歩く間も、はしたない格好をどれだけの人達に見られてしまう、考えるだけで思い悩まずにいられない。
周囲から誰かが騒ぎ立てるうちに、思わず脚が震え上がってしまうのだ……
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